CIAはいかにしてヤクザと自民党に手を貸し
政権獲得と原子力発電を推進したのか
by Jake Adelstein
http://www.japansubculture.com (December 17 2012)
私はティム・ウィーナーの大著『Legacy of Ashes:CIAの歴史』{1}を再び読み終えたところである。この本は中央情報局(CIA)と、その惨憺たる失敗の歴史について書かれた、おそらく史上最高の本だ。2012年12月16日、自民党が政権を奪還する前夜、自民党がどのようにして誕生したのかを振り返ってみるのも面白いかもしれないと思った。まるでジョン・ル・カレの小説のような話で、よくあることだが、事実は小説よりも奇なりで、もっと面白いからである。
日本での作戦は、CIAの稀な成功例の一つとなった。CIAは、自分たちが選んだ政党を政権に就けただけでなく、『原発 正力 CIA-機密文書で読む昭和裏面史{2}(秘密文書が語る、原子力産業と正力松太郎(元読売新聞社社長、日本テレビ創業者)のつながりに関する知られざる昭和史』(新潮社刊)によると、彼らは日本のメディアを利用して日本に原子力への投資を受け入れさせたという。もちろん米国企業はその利益を享受した。しかし、それにはまた別の長い話である。
『Legacy of Ashes』はすごい本で、特にCIAの多くの失敗を記録している点で優れているが、日本での作戦は別だった。
第12章「We Ran It In A Different Way」は、日本の影の歴史に興味がある人なら必読である。戦後の日本では、共産主義・社会主義運動を抑えるためにCIAが多額の資金を使って元戦犯の児玉誉士夫を復権させ、日本の首相の一人を抜擢したことが詳しく書かれている。児玉はヤクザとのつながりが深く、中国の闇市で巨額の資本を形成していた。(推定1億7500万ドル)。CIA東京支局は1953年9月10日に「(児玉は)プロの嘘つき、ヤクザ、詐欺師、完全な泥棒であり…利益以外には何の興味もない」と報告している。それでもCIAはその時まで、そしてその後も水面下で彼との取引を止めなかった。この章では日本が共産化しないように、CIAが岸信介を日本の総理大臣と与党の党首にするように仕向けたことも書かれている。大統領自身が岸と自民党内の他の下僕に巨額の現金を支払うことを許可したようである。
第12章「We Ran It In A Different Way」では、戦後日本におけるアメリカの暴力団とその政治家への支援について興味深い記述がある。
岸と山口組や他の組織的犯罪集団とのつながりはよく知られている。彼の元私設秘書は、元山口組/後藤組のボス、後藤忠政とFBIの間の取引をまとめるのに貢献した。その取引は、後藤が米国へのビザを取得する代わりに、日本国内の組織犯罪集団に関する情報と北朝鮮に関する情報を共有するというものだった。後藤はUCLAで肝臓移植を受けたが、この取引はFBIがやったのでもないし、関与もしていない。この一部は『東京ヴァイス』{3}で論じられている。
ピーター・ヒル著『ジャパニーズ・マフィア』{4}という素晴らしい本やその他の資料によると、岸は重罪に問われた山口組の組長の保釈金を立て替えたこともある。ヤクザのボスである後藤忠政(現在は僧侶として慈善事業を行っている)は、その回想録『憚りながら』で岸元首相との親密な関係について述べている。ロバート・ホワイティングも『東京アンダーワールド』{5}の中で、日本の組織犯罪と米国の政治的つながりを非常に深く、そしておもしろく取り上げている。ホワイティングは一時期、米国家安全保障局(NSA)に勤めていたことがあり、彼の言うことは私の知る限りとても信頼性があると思う(ロバートがNSAで働いていたことがあると書いたのは、数年前のジャパンタイムズの記事でそれが正しいことが証明されたため) 。デービッド・カプランの画期的な「ヤクザ:日本の犯罪の裏社会」は、ヤクザ、自民党、占領後の米国との間の陰のつながりを本格的に検証した最初の本であったろう。ティム・ワイナーのこの小さな章が印象的なのは、CIAから入手した膨大なメモと文書、そして明らかに彼がCIA側にもインタビューを行っていることである。感動的な作品だ。
前出の右翼実業家・児玉は、暴力団とのつながりで悪名高い人物である。しかし、それを最もよく表しているのは、60年代初頭、児玉、山口組三代目組長の田岡一雄、かつて力のあった日韓マフィア東声会の組長だった町井久之の3人が、同じ時期に日本プロレス協会の理事を務めていたことである。みんな仲良しだった。『Legacy Of Ashes』などにも書かれているように、自民党は犯罪収益とヤクザの金、そして米国の資金が混ざってできた政党である。米国が日本の政治を支配していた時代はとうに過ぎ去ったが、ヤクザは独自の絆を保ち、あらゆる政治家とコネクションを持ってきた。日本政府にとって彼らは今でも役に立つ存在で、APECサミットの前には主要なヤクザのリーダーたちに、暴力団の抗争をおこさないで反米左翼を監視するようにと電話がかかってきた。APECが終わった後には、誰かが山口組山健組の本部に手榴弾を投げ込んだ余波で、おそらく血みどろの暴力団抗争に発展することだろう。しかし当分の間、ヤクザは平和を保っている。
全面開示メモ:日本のマスコミとブログ界隈の最悪の中で、私は何度かCIA{6}のエージェントであると非難された。あるいはモサド。お好きな方をどうぞ。これは真実ではない。私はモルモン教徒ではなく、尻癖は悪く、まったく無能というわけでもなく、はなから失格だ。しかし、2006年から2007年にかけて米国務省が主催した日本における人身売買に関する調査の一環として、私はCIA/NSAの退職職員が多く所属し、CIAのフロント企業であると非難されている会社と仕事をしたことがある。彼らがフロント企業かそうでないかは知らないし、気にもしていない。この研究とそこから生まれた人身売買レポート{7}は、人身売買の問題に取り組む日本の姿勢に良い影響を与えたが、それが本当に重要なことなのだ。
もしあなたが諜報活動のアウトソーシングに興味があるなら『Spies For Hire:Secret World Of Intelligence Outsourcing {*} by Tim Shorrock {8}』を読んでみてほしい。表紙のCIA請負業者カードにはユダヤ人らしき人物の写真が部分的に載っているが、私ではないと思う。誰かが私のカードを作って私に伝えなかったのでなければ。この本は、信じられないほどよくできた本で今再版されている。 (教えてくれたShorrock氏に感謝)。
{*} およそ2ヶ月前にヤクザファン雑誌の記者から連絡があった。彼は「Spies For Hire」の表紙は私だと断言し、遠回しに金をゆすり取ろうとした。だからこの記事を書くことで「f*ck you very much」と言っている。個人的には元CIAのエージェントだと非難されることは最も侮辱的なことで、CIAのために働いている人に悪気はないが彼らの成功率は悲惨で、ブッシュ後のFEMAで働いていることを非難されるようなものだ。プライドが傷つく。「諜報機関」に属する人の多くは実はそう思っているはずで、麻薬取締局(DEA)はどの機関よりも優れた実用的な情報を持っている。
とにかく、あなたが真剣に日本を研究しているなら、『Legacy of Ashes』はその章だけでも知っておく価値がある。(この記事は2010年11月14日に投稿された記事を修正したものである)。
Links:
{1}http://www.amazon.com/Legacy-Ashes-History-Tim-Weiner/dp/0307389006/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1289693963&sr=8-1
{2}http://www.amazon.co.jp/gp/product/4106102498/ref=s9_simh_gw_p14_d0_i1?pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=center-2&pf_rd_r=0F5YXNDGXXBCKHZF8V0H&pf_rd_t=101&pf_rd_p=463376756&pf_rd_i=489986
{3}http://www.amazon.com/dp/0307378799?tag=japasubcresec-20&camp=213381&creative=390973&linkCode=as4&creativeASIN=0307378799&adid=10M92SABHV55ZG6WGG56&
{4}http://www.amazon.com/Japanese-Mafia-Yakuza-Law-State/dp/0199291616/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1289694118&sr=1-1
{5}http://www.amazon.com/Tokyo-Underworld-Times-American-Gangster/dp/0375724893/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1289694190&sr=1-1
{6}http://www.nikaidou.com/archives/1889
{7} http://www.sharedhope.org/files/demand_japan.pdf://
{8} https://www.barnesandnoble.com/w/spies-for-hire-tim-shorrock/1100332575?ean=9780743282253
How The CIA Helped The Yakuza & The LDP Get Power & Promote Nuclear Power