中国がダボス叩きに参加
by Tom Luongo
ニュースの見出しはドイツ自慢の産業基盤が崩壊しかねない、もしロシアが天然ガスの供給をすべて停止すれば銀行も道連れ、という悲惨な恐怖であふれている。もちろん、これこそEUが望んでいると言っていたことで、いまの問題はH・L・メンケンの言葉を借りれば、彼らがそれをしっかり手に入れられるかどうかである。
つまり、自国の経済を破壊した後でようやくヨーロッパの政治家たちは、“これは自分たちがやったことなのだろうか?”という適切な問いを考え始めたのだ。
昨日の朝、ユーロが20年ぶりの安値となる1.03ドルを割り込んだことは、”そう、あなた方がやったのだ”という答えが鳴り響いている。ロバート・ヘーベック副首相と彼のグリーン/ネオコン狂信者たちがノルドストリーム2パイプラインへの投資をぶちこわし、いま90億ドル以上の救済措置を見つめているユニパーの役員も市場と同意見だろう。
これはドイツが5月に30年ぶりの貿易赤字を出すなど、相次ぐ経済危機のニュースを受けて市場が世界同時不況を予想したためである。
ヨーロッパはキャッシュフロー計算書がプラスで、そのため破綻することはない、またはしない、という議論はおいといて、2月のピーター・ブックバーとのポッドキャスト{2}を参考にしてほしい。
しかし、なぜこれほど急速に事態が進んでいるのかを理解するには、米国連邦準備制度理事会(FRB)の積極性以上に、中国の役割が何で、今後どうなるのかを考えるべき時期に来ていると思う。
ウクライナ戦争が始まって以来、中国のロックダウン政策について多くの議論がなされている。
それはどんな意味だったのか?中国は本気でコロナをこわがっているのか、それとも、ダボスのコロナの黙示録によって引き起こされた大規模なサプライチェーンの崩壊を悪化させることによって、ウクライナにおけるロシアの努力を支援するという非常に中国的な方法だったのだろうか?私は後者を支持していることはご存じだろう。
だからBRICSサミットが成功してイランとアルゼンチンが加盟を申請した後(中国はサウジアラビアをBRICSとSCOに招待した{3})、中国は1週間前、外国人旅行者の入国制限(新型コロナ)を緩和すると発表したのである。{4}
突然中国は海外旅行者の隔離期間を7日間に短縮した。これは、北京がゼロコロナ政策を緩和していることを示唆している。全国的なパンデミック規制の緩和は投資家の中国株買いにつながった。
入国する旅行者の隔離期間は3週間(2週間の隔離+1週間の自宅健康観察)から10日間(1週間の隔離+3日間の自宅健康観察)になった。これは、北京と上海を数ヶ月にわたって封鎖した今年初めの制限的なゼロコロナ政策によって引き起こされた経済成長の低迷を心配し、地方当局が旅行と経済活動に対する強硬な制限を緩和していることを示している(上海は5月31日にようやく封鎖措置{5}を解除した)。
その結果、当時Zero Hedgeが指摘したように、この発表で中国の株式市場に資本流入が戻ってきた。しかし、市場は4月の底打ちから、何週間も前から中国への資本流入を予測していたのである。
とはいうものの、これは私がいつも米国の政治情勢の変化の可能性について話していることの完璧な例である。市場は常に政治家の意向の変化を探っている。
トレーダーや投資家はこのような小さな変化を勝負の端緒と見ている。うまくいかないかもしれないが、公共政策の国家的変化の確率を計算した上での賭けになる。
この目的で、ジョー(バイデン)は今週、インフレ緩和による票を期待して中国からの輸入品に対するトランプの関税を解除しようとしている。彼が船を正すためにこのようなことをするのは構わないと私は思う。制裁と同様、関税は決して解決策にはならないからだ。金融政策とも全く関係がなく、政府の独断による供給の混乱が全ての原因であることもすぐにわかる。
中国のこの変化は中国共産党(CCP)が観光とビジネスを再開しようという意図を示すものであり、これはもう覆ることはないだろう。これが現実のものとなり、夏が続いて欧米の市場が混乱する中で、中国がこのような小さな動きをさらに強めていくと私は見ている。
この変化により、資本流入が香港ドル(HKD)とハンセン指数(香港株)への圧力を弱め、その一方で中国は必ずしも金利を上げることなく金融を緩和するためのより多くの援護が与えられ、ECB(欧州中央銀行)が降伏した今、もう一つの資本の流れ込む場所が作られるのだ。
クリスティン・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁の、「科学というより芸術」でインフレと戦うという最近の発言は、穏やかな部分を声高に言っているだけである。しかしそれが2週間前のECBの緊急会合の結果であり、投資家の心の中でユーロはついに終わりを告げたのである。
ドイツの産業基盤が政府によって文字通り嬉々として破壊されているだけでなく、今やECBは溺れないようにするためにドイツ国債を売ってイタリアやスペインの国債を買おうとしている。これは、船の一方の端から水を出して、もう一方の端に水を投げ入れるようなものだ。
その上率直にいってG7サミットは悲惨だった。不真面目な愚か者の集団が集まってロシアの金塊の売却を禁止し、石油の世界的な価格制限を検討したのだ。 …言葉が見つからない。
正直言って、このG7の後、BRICS同盟とユーラシア経済連合(EAEU)への駆け込みは止まらないだろう。真の資本増価を目指す真面目な投資家がこの献身的な狂人たちを見て、「やった! ボリス・ジョンソン、ジョー・バイデン、ウルスラ・フォン・デア・ライエン(欧州委員会委員長)に私の金を預けよう!」と思うだろうか。
いや、彼らはこのくだらないものを見てTradestation(株のトレードツール)を開いている。
ジャスティン・トルドー(カナダ首相)が招待されたという事実があなたの売りシグナルになるはずだ。
BRICSが新たな貿易決済通貨とメンバー追加について話している間、G7は実質的な対話よりも写真撮影に多くの時間を費やしながら第三次世界大戦について話していたのだ。
詭弁を弄するだけで世界的な重要性に対して時代遅れの感覚を持った人たち(特にイギリスとドイツ)は、長期的な世界資本流入の処方箋にはならない。
EU、英国、カナダの脆弱性を見れば、現時点で世界市場を支えているのは米国の中間選挙がダボス会議のアジェンダを完全に否定するものになるという希望だけであることがわかる。
もしそうならなければ、もしソロスとダボス会議が議会と上院にニセ共和党員を大量に送り込みワシントンDCの改革を凍結すれば、西洋の崩壊は非常に早く進むだろう。
もう一度、冒頭で述べたことに戻るが、市場は初期の指標を探しており、一国の内政・外交政策に大きな変化をもたらす境界線である。
もし米国が11月に本当の政治革命を起こし、FRBが利上げを続ける一方で、受給権改革と財政健全化を実現したら、米国だけでなく中国にとっても大きな買いシグナルとなるだろう。
そうでなければ、米国は複数の理由で崩壊が始まる。
一つ目は明白だ。狂気の進歩主義者と共産主義者は、米国に残された法の支配を破壊するために勢いづくだろう。アメリカ最高裁判所に押しかける、銃を禁止する、等々。
そうなれば、資本はパキスタンのような比較的安全な場所に逃避することになるだろう。
二つ目もほとんど明白なことだ。政府は救いようがないことが確認されれば、ビル・フォーウェルとの最近の会話{6}にあるように、新しい州議会か分離独立が残された唯一の選択肢であることを大勢の人々が確認し、団結することになるだろう。
なぜなら、平和的な反乱の手段がすべて人々から取り上げられれば、暴力が起こるからだ。
これらの邪悪な人々は、自分たちが難攻不落であると思っているが、現実はそうではない。もし私を疑うなら、オランダの農民革命のビデオを見て、人々が本当にどれほど怒っているかを確認してほしい。
民主党を取り巻く問題は、今のところどれもうまくいっていない。
抗うつ剤中毒患者や警察による銃乱射事件がいくら起きても米国で銃規制は広がらない。
なんの役にも立たない紫色の髪の毛が金切り声を上げても、ロー対ウェイド裁判(妊娠中絶を女性の権利と認め,人工妊娠中絶を不当に規制する州法を違憲とする連邦最高裁判所の判決がくだされた裁判)は元に戻らない。
公立学校の性的逸脱がいくらあっても、小児性愛の合法化の先駆けとなることはない。
これらは、民主党が政党としての将来を賭けた立場であるが、米国の大半は、彼らのビジネスが略奪され、銀行口座が空っぽになり、子供たちが学校でストリッパーに性的暴行を受けることに心からうんざりしている。
だから私は今年の11月に有権者詐欺の費用が急増し、その結果ドキュメンタリー『2000 人の運び屋』のような不正選挙が失敗すると予想している。極右団体のプラウド・ボーイズとオースキーパーは喜んで投票箱の外に立ち、“疑わしい”一握りのニセの投票用紙を持った馬鹿を探すだろう。
つまり、何もないところから票を刷り出すということだが、それが本当にできるのはカリフォルニアのような場所だけだ。
中国がビジネスを再開するのは良いニュースだ。コロナ規制を廃止することは、資本の流れを布団の下から世界経済に戻すために必要である。しかし米国の政治革命までには間に合わないため、サプライチェーンの経路変更に伴う1、2年の混乱は回避できないだろう。
もし中国がさらに開放し、中間選挙が普通の人々に勝利となれば、米国政府の予算の観点からFRBが金利を上げ続ける余地は十分にある。Wolf Street の最近の記事{7}は、FRBが現在課している金利引き上げの対象となるのは新規債務だけであることを私たちに(そして私に)教えてくれている。
我々の債務返済コストは歴史的に低い。
予算はまだめちゃくちゃで、だからこそ給付金制度の改革が今後の重要な政治課題なのだ。つまりもしソロスがこの秋に勝利し、ダボスがワシントンをしっかり握ったままなら50州協定としての米国の未来に希望はない。彼らはこの国の支配権を手放す前に、この国の残りを焼き尽くしてしまうだろう。
もし中間選挙がうまくいったとしても、新議会が召集されるまでの移行期間は恐ろしいものになるだろう。
バイデン頼みの予算、ジョンソン、そしてショルツを助けようと、NATOによるウクライナ開戦の理由を私たちに押し付ける。
こうして彼らはもう一つの戦争を始めることで、資本誘致に動く中国に対抗するのであろう。
問題は、いずれにせよ最終的には中国が勝つということだ。先日指摘したように{8}、今日ヨーロッパと太平洋の二正面作戦を戦うための生産能力はないのだから、彼らがするのは、その避けられないことを遅らせるだけである。
もしNATOがロシアを攻撃すれば、中国は台湾を攻撃するだろう。ロシアはウクライナで自分たちと戦うためにイギリスが参戦すれば、米国が中国を自由に攻撃するようになるという見通しを歓迎している{9}。
そして、西側諸国は両方の戦争に同時に負けるだろうが、核戦争に発展しない可能性はほとんどない。米国を政治的危機に追い込むことが、ダボス会議の究極の作戦だと私は考えている。問題はプーチンがウクライナに侵攻しているため、その過程でヨーロッパを廃墟化せずにそれをやり遂げることはできないということだ。
だからダボスも今回ばかりは、自分たちのえものより、えり好みの許されない選択を見つめている。ウラジミールはなんということをしてくれたのだ!
中国はロシア以上に米国との戦争を望んでいない。だから、中国経済を開放し、バイデンが関税を解除することは正しい資本誘致の動きであり、ヨーロッパはさらに不安定になっていくのである。
もし第三次世界大戦を回避し、FRBが議会を財政的に拘束するようになれば、我々は米国の真の政治改革に影響を与えることができるだろう。
誰もが勝者になる。
これが、この数年間、他のすべてのアナリストが見逃してきた最も重要なポイントだと思う。ダボス会議に勝つためには、第三次世界大戦を止めること、誰にとっても破滅的な米国の混乱を止めること、そして何世紀にもわたるヨーロッパの植民地支配による暴力の連鎖を終わらせることである。
これで米国は財政的にも政治的にも生き残ることができる。米国の最高裁判所は共産主義者をはじき飛ばしたばかりだ。国民は、「バズ・ライトイヤー」(ディズニーのコンピュータ・アニメーションSFアクション映画)のような性差別など「社会的不公正」を説く物語や、Netflix、Amazonが制作するほとんどすべてのものを拒絶している。
最近Financial Timesで見られるように、世界最大の運用会社、ブラックロックさえ理解し始めている。
これはブラックロックのバランスシートが深刻な問題に直面していることを物語っている。運用受託資産(AUM)は減少し、環境・社会・ガバナンス(ESG)/直接投資(DEI)戦略は会社を内部から腐敗させている。Larry Fink(ブラックロックCEO)がオバマとシュワブがパウエル(FRB議長)を排除することに賭け、今彼らは崩壊を見つめながらパウエルが「今度は私の番だ」と言っているのはまちがいない。
その権力はともかく、株主資本が360億ドルしかない会社である。Appleは2ヶ月でそれくらいiPhoneを売っている。
ブラックロックが次の「リーマン・モーメント」になるのを見ることほど嬉しいことはない。ウォール街のほとんどの人がそう思っていると確信している。皆さん、水には血が流れていて、サメがヨーロッパを旋回している。ジェイミー・ダイモン(JPモルガン・チェースCEO)がミドルネームをブルース(JPモルガンのチーフエコノミスト、ブルース・カスマン、投資家はカスマン氏に同調)に変えて皆にはっきりさせるかもしれない。
ポップコーンを食べられないのが悲しい。{10}
Links:
{1} https://www.zerohedge.com/markets/german-energy-giant-talks-over-eu9-billion-bailout-package
{2} https://www.spreaker.com/episode/48688040
{5} https://www.zerohedge.com/markets/shanghai-finally-lifting-its-covid-lockdown
{6} https://www.spreaker.com/episode/50369310
{8} https://tomluongo.me/2022/06/29/the-g-7-squawks-but-theyve-already-lost-the-war-against-russia/
{9} https://www.b92.net/eng/news/world.php?yyyy=2022&mm=07&dd=04&nav_id=114046*
{10} https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN31DVC0R30C22A3000000/
https://www.zerohedge.com/geopolitical/luongo-china-queues-join-davos-beatdown