中国は冷静でなければならない …
… 米国の度重なる政策ミスの中で
by Wu Xinbo
今年に入ってから、ジョー・バイデン政権は中国を除外した「繁栄のためのインド太平洋経済枠組み(IPEF)」や、中国主導の「一帯一路構想」に対抗するプロジェクト「地球インフラと投資のためのパートナーシップ」を相次いで推進している。こうすることで米国は、対中戦略的競争力強化という計画を実質的に遂行しようと懸命になっているのである。
バラク・オバマ政権以降、米国は、アジア太平洋リバランス戦略、インド太平洋戦略、ブルードット・ネットワーク(良質なインフラ投資のための認証プロセス)から貿易戦争と、中国に対する戦略、イニシアティブ、アクションを次々と打ち出してきた。しかしこの点において米国が行ってきた多大な努力はしばしば効果がなく、あるものはひどい状態に、あるものははかなく消えた。それにもかかわらず米国は依然として中国政策の新しい計画を推進しようと躍起になっており、対中戦略において「絶えず挑戦し、失敗する」という独特の循環を構成している。このような現象をどう理解したらよいのだろうか。
第一に、米国の対中政策は、ますます国内の政治に左右されるようになっている。米国の中国政策は、政策の実現可能性を慎重に評価するというより、国内の政治的な必要性に基づいていることが多い。例えば、トランプは中国に対して貿易戦争を仕掛けることを主張した。彼の狙いは白人のブルーカラー有権者やラストベルト州(さび付いた工業地帯)の票を獲得することであった。貿易戦争が米国の国益の実現にどの程度役立つのか、そのために米国がどの程度の負担をするのかについて、トランプ陣営は決して慎重に検討することはなかった。
貿易戦争による米国の国益へのダメージは、中国へのそれよりもはるかに大きいことが事実によって示されている。貿易戦争は米国の消費者の生活費を上げ、インフレも押し上げている。バイデンはこのことを理解しているが、白人のブルーカラー層や労働組合を喜ばせたいとも思っている。したがって彼はこの過ちを続けることにしたのである。
第二に、政策立案者はしばしば米国自身の能力を過大評価している。例えばバイデンはG7サミットで「世界インフラ・投資パートナーシップ」計画を発表し、途上国のインフラに6000億ドルを投資すると主張した。実は、米国は自国でもインフラの問題を抱えており、長い間、かなりの数のインフラが未整備の状態である。そんな米国が、他国のインフラを助けるためにどうやってそれだけの投資ができるのだろうか?
第三に、米国は現実を直視しようとせず、しばしば中国を過小評価している。冷戦終結後、米国は長い間、中国との関係においてその総合的な国力を背景に、支配的かつ積極的な立場をとってきた。しかしこの10年、中国の総合的な国力が着実に向上し、大国外交が展開されるにつれて、中国は対米関係においてより積極的になってきた。しかしワシントンの政策立案者はこのことを十分に理解していない。彼らはしばしば、中国が台頭しているという事実を受け入れようとせず、状況を過小評価し、見誤っている。
バイデン政権は、米国の国益に沿った二国間関係を作るという幻想の中で、競争、対立、協力(Competition, Confrontation, Cooperation)という3つのCを特徴とする中国戦略を作り上げたが、中国は戦略的な冷静さを保ち、米国のリズムには踊らされない。中国は「リスト外交」を採用し、中国の正当な懸念に対応するよう米国に促している。米国と競争するためにサードパーティとの関係を積極的に発展させ、外交資源を蓄積している。バイデン政権の中国政策設計は、トランプ時代のそれよりも少し洗練されているように見えるが、実際にはそれも壁にぶつかり続けている。中国を過小評価し、見誤ったために、米国の対中政策はつまずき、それゆえ成功できない。
トランプ政権やバイデン政権と同様、将来の米国政権は、米国の国内政治、戦略文化、目標と能力のギャップによって決定される中国政策において、この誤った路線を継続するだろう。中国としては米国の様々な対中政策の計画に注意を払うことは必要だが、それをあまり深刻に受け止めることはないだろう。これらの計画は結局のところ希望的観測に過ぎないからだ。中国がそれらに真剣になりすぎると、米国に先導され、自国の資源と戦略的機会を浪費することになる。
覇権国家である米国は、政治体制、価値観、文化、人種などの点で自分とは全く異なる新興国との関係をどう扱うかを模索しなければならない。間違いを犯すのは普通のことである。中国は戦略的に忍耐強く、優れた対応能力を持つことが必要である。中米両国と二国間関係で起きている重要な変化を考慮すれば、中国が対米関係を処理する上で重要なのは、自らを強化し、基盤を安定させることなのである。
Wu Xinboは復旦大学 国際問題研究所の所長