No. 1544 悪化の一途をたどるウクライナ報道の質

悪化の一途をたどるウクライナ報道の質

by b

ウクライナ戦争に関するニュースは、素人でもすぐに論破できるほどフェイク(捏造)が多くなってきている。

ワシントン・ポストの記事から考えてみよう:

ウクライナの原発から川を隔てた対岸で、砲撃が恐怖を増幅させている

ザポリージャ原子力発電所 からドニエプル川を挟んでわずか2マイルのニコポルでは、原発の近くでロシア軍による砲撃が連日行われていることで、核による大惨事の脅威がさらに高まっている。

ザポリージャ原発からニコポルまでの実際の距離は、「たった2マイル」ではなく、9マイル(15キロ)である。
https://i0.wp.com/www.moonofalabama.org/13i/nikopol-s.jpg?w=1100&ssl=1

ニコポルは原発に近すぎてサイレンは使いものにならない。サイレンをオンにする時間がないのだ。その代わりに反対側の住民が、砲台が展開されるのを見たら警告を発している。

写真左上にはしっかり防護されたZNPPの6つの原子炉が見える。民間の集落は右側にあり、原発から2キロ以上離れていてその間に大きなビルがいくつも建っている。

https://i0.wp.com/www.moonofalabama.org/13i/nikopol2-s.jpg?w=1100&ssl=1

原発に「砲台が展開されている」なんて、誰がどう見たってわかるとは思えない。ロシア側は、ZNPPに大砲はなくウクライナ側が原発を砲撃していると主張している。3月上旬以降、原発はロシア側の完全な支配下にあるのだから、これは理にかなっている。

このワシントン・ポストの誤報は、戦争開始時にロシア情報機関が失敗したという大きなフェイクストーリーを掲載した後のことだ:

ロシアのスパイはウクライナを読み誤り、戦争が迫る中でクレムリンを誤って導いた{1}。

ただ、この記事の間接的なソースを考えてみてほしい:

ウクライナ侵攻前の最後の数日間、ロシア連邦保安庁はキエフの情報提供者に不可解な指示を送りはじめた。荷造りをして首都を離れろ、ただし家の鍵は置いていけ、とクレムリンの協力者たちは言われた。

これらの準備を暴露する通信は、ウクライナや他のセキュリティサービスが得た機密資料の山の一部であり、ワシントン・ポストがそれを確認している。


ウクライナの治安当局は、ロシアのスパイ機関の信用を失墜させることに関心を持っているが、この資料の主要な内容は、西側諸国の政府高官によって裏付けされている。


ウクライナの治安機関が顕著な勝利を収めた。ウクライナのある非政府組織は早くから、戦争に関連するロシア連邦保安庁(FSB)の工作員の名簿と称するものを公開し、スパイとされる数十人の身元とパスポート番号を掲載して、同庁の計画を混乱させてその人員を動揺させようとする動きを見せていた。Myrotvorets(ピースメーカー)」と呼ばれる非政府組織(NGO)の関係者によると、このデータはウクライナの治安当局によって入手されたものだという。この人物は、身の安全を脅かすとして、匿名を条件に語った。

ピースメーカーが発表し、ウクライナの治安当局が確認した詳細によると、コバレンコは47歳のスパイ機関のベテランで、近年はウクライナの議会や親ロシア派の主要政党との秘密裏のつながりを管理する責任者であったと記されている。

過激派右翼の「NGO」のMyrotvoretsは独立した組織ではなく、ウクライナ秘密情報部によって運営されている。「クライナの敵」とされる人々の「殺害リスト」{2}を公表していることで知られている。

このサイトは、ウクライナ・ルハンスク治安局事務所の元職員である「ロマン・ザイツェフ」という偽名の人物が率いるNGO「Myrotvoretsセンター」の活動を反映している。このウェブサイトは、政府の法執行・情報機関であるウクライナ治安維持庁(SBU)が監修し、ウクライナ内務省の顧問であるアントン・ゲラシチェンコが推進したとされている。 スタッフの身元は秘密で、隠されたパネルが、しばしばオープンソースのインテリジェンスから照合された情報や、個人から秘密裏に提供された情報をふるいにかけている。

2016年5月24日、ジャーナリスト保護委員会{3}は、当時のウクライナ大統領ポロシェンコに公開書簡を送り、「Myrotvoretsが公開した根拠のない有害な疑惑を非難し、アバコフ内相の以前の発言とは対照的に、ウクライナ内務省はジャーナリストの保護と彼らを脅迫する責任者の逮捕に専念していると公に明らかにする」ように促した。

2016年6月2日、キエフのG7{4}大使は共同声明を発表し、Myrotvoretsウェブサイトにおけるジャーナリストの個人データの開示について深い懸念を表明し、Myrotvoretsチームに対して個人データの公開を撤回するよう要請した。

ウクライナ政府によって出された他のそのようなリストは、米国の政治学者やジャーナリストを親ロシア派の偽情報だと告発している{5}。

ワシントン・ポストによれば、Myrotvoretsはウクライナのセキュリティサービスが入手した[データ]を使用したという。それによって発表された詳細は、その後「ウクライナの治安当局によって確認」された。これを「西側諸国の政府関係者が裏付け」、「ワシントン・ポストが確認」したという。

つまり、この疑惑の「データ」の唯一の情報源は、ワシントン・ポストが指摘するように、「ロシアのスパイ機関の信用を落とすことに関心を持つ」「ウクライナのセキュリティサービス」だということに変わりはない。

つまり、ロシア連邦保安庁の失敗とされる話全体が、ウクライナの諜報機関によって作られた空想という唯一の情報源に基づいた、Garbage In, Garbage Out(欠陥のあるデータは無意味な出力を生み出す)結果になっている。

これらすべてがワシントン・ポストによるウクライナ戦争報道の「質」を物語っている。

Links:

{1} https://www.washingtonpost.com/world/interactive/2022/russia-fsb-intelligence-ukraine-war/

{2} https://en.wikipedia.org/wiki/Myrotvorets

{3} https://en.wikipedia.org/wiki/Committee_to_Protect_Journalists

{4} https://en.wikipedia.org/wiki/G7

{5} https://www.newsweek.com/tulsi-gabbard-rand-paul-placed-list-russian-propagandists-ukraine-1727831

https://www.moonofalabama.org/2022/08/quality-of-ukraine-reporting-continues-to-deteriorate.html