トランプ大統領の批判者はトランプ以上に危険
by Ted Rall
フィナンシャルタイムズの記者エドワード・ルースは最近、政治の世界でこれまで発せられた中で最も興奮した文章の一つをツイートした。
私はこれまで世界中の過激派や暴力的なイデオロギーを取材してきたが、今の共和党ほど、虚無的で危険で卑劣な政治勢力に出会ったことはない。それに近いものもない。
米国の国家安全保障局(NSA)長官や中央情報局(CIA)長官を歴任したマイケル・ヘイデン退役空軍大将も「同感だ」と付け加えた。これらの意見、そしてマーガレット・サリバンがワシントンポスト紙のメディアライターとして最後のコラムでこれを満足気に引用していることは、民主党のエリートたちの間でトランプ精神錯乱症候群が42度の熱で猛威を振るっていることを示している。
ルースの発言は純然たる狂気である。私程、共和党(通称GOP)に拒絶反応を示す人はいないだろうが、共和党がクメール・ルージュ、ルワンダのフツ族が率いるテオネスト・バゴソラ政権、アルカイダ、ISIS、サウジアラビアよりも「虚無的で危険で卑劣」だと主張するのは狂人だけだ。 ニューヨーク・タイムズ紙のオンブズマンとしての勇気ある行動で称賛を得たサリバンのように、よく知るべきで、よく知っているであろう人物でさえ、こんな非歴史的なたわごとを繰り返している。また、地球上のあらゆる個人と組織の間のあらゆるコミュニケーションを収集し保存する絶妙に違法な努力を長年にわたって行ってきたヘイデンのような人物に民主主義についての意見を求めているのを見るにつけ、憂鬱になるくらいその狂気的な状態は明らかだ。
(情報開示:サリバンは、ロサンゼルス警察に配慮して私を解雇し中傷したロサンゼルスタイムズの決定について、ワシントンポストが調査するかもしれないという期待を持たせる電子メールのやりとりをした後で、何の説明もなく一切の連絡を絶ったのである。)
ドナルド・トランプについて警鐘を鳴らすことは何ら問題はない。しかし、民主主義制度は、前大統領やおそらく将来の大統領よりもはるかに大きな脅威に直面している。それは、「トランプは特に危険だ」「他の政治家よりも嘘、偽りが多い」「彼の政治は異常に極端だ」「彼はどこか他に類をみない」という、図々しいメディアや政治家がいくつものプラットフォームでひっきりなしに繰り返す論調だ。
ポスト紙のコラムニスト、ジェニファー・ルービンが2017年の論文で述べたように、“(トランプは)普通の大統領ではない”というよく言われる主張は、米国民に3つの確証のない想定を受け入れさせようとしている。
* 他の大統領や政治家は、トランプよりも嘘をつく数が少ないか、ずっと少ない。
* トランプが大統領になる前に、米国にもその政治体制にも、根本的な問題はなかった。
* トランプを追い出せば、すべてがうまくいく。
確かに、トランプと彼が大統領になったことは、ある意味、普通ではなかった。彼は政治的な役職や軍務に就くことなくホワイトハウスに来た唯一の人間である。彼は準備されたスピーチをしなかった。選挙運動では、全国的な組織を持たず、わずかな予算で行われた。敵とも味方とも、前提条件なしに話をする意志を表明した。彼は大統領在任中も選挙集会を開いた。しかしメディアの誇大広告は嘘である。大統領として最も重要な点、つまり政策と論調において、トランプは当時も今も、特異な存在だったのだ。
そう、トランプは2020年の選挙で譲歩することを拒否した。ジョージ・W・ブッシュは2000年の選挙で譲歩することを拒否した。
トランプのチンピラたちは選挙をひっくり返そうと暴力に訴えた。ブッシュのときもそうだった。
トランプは汚いやり方で選挙に勝とうとした。ブッシュはそれに成功した。
トランプは人種差別主義の犬笛(特定の相手だけにわかるメッセージ)にふけった。ロナルド・レーガンやジョージ・H・W・ブッシュもそうだった。
トランプの内閣は資格のないバカばかりだった。レーガンやブッシュの内閣もそうだった。
最初のステップは問題があることを認めることだ。米国の民主主義は大きな問題を抱えている。しかし、メディアも政治家も有権者もそれを認めようとしないので、解決する見込みはない。
米国の政治制度に組み込まれたシステム的な欠陥、つまり小政党を投票から締め出すために二大政党が共謀すること、資本主義が影響力を使い民主主義を本質的に腐敗させていること、選挙人団、ビジネスとメディアと政治の間の回転ドアなどを否定しているだけでなく、我々はトランプが問題であると信じることで自分自身を欺いているのだ。
トランプは問題ではない。彼は症状なのである。
民主党全国大会が、民主党予備選でトランプの最強の挑戦者であったバーニー・サンダースよりもヒラリー・クリントンを選んだために、トランプという大統領が生まれることになったのだ。お金のカルトは有権者に彼の富が大統領にふさわしいと確信させた。選挙人団は、彼の得票数が少ないにもかかわらず彼を大統領にしたのである。
トランプに執着する人たちは彼よりもはるかに危険だ。トランプは年をとっていて、太っていて、先は長くないだろう。トランプに気を取られている間に我々が無視している問題はこの先何年も私たちを苦しめるだろう。
トランプについて話すのを止めないバカと同じように。
https://www.unz.com/trall/trumps-critics-are-even-more-dangerous-than-he-is/