No. 1550 ウクライナの崩壊から6ヶ月

ウクライナの崩壊から6ヶ月…
…世界は一変した

権力が西側から移ることはもはや避けられず、それによって国家が支援するテロ行為の増加が起きる。しかしそれでもこの流れを変えることにはならない。

by Pepe Escobar

ロシアによるウクライナでの特別軍事作戦(SMO)開始から半年がたち、21世紀の地政学的プレートは驚くべき速さと深さでずれ、その歴史的影響はすでに計り知れない。

T・S・エリオットの言葉を借りれば、こうして(新しい)世界が始まるのだ。泣き言ではなく、成功と共に。

モスクワの門前で起きたテロ、ダリヤ・ドゥーギン{1}の冷酷な暗殺事件は、運命的に6ヶ月の交点に重なったかもしれないが、現在進行中の歴史の転換のダイナミクスを変えることはできないだろう。

ロシアの連邦保安局(FSB)は、24時間あまりで事件を解決し、犯人をウクライナ保安局(SBU)-それ自体がキエフを事実上支配するCIA/MI6コンビの単なる道具-に操られたネオナチ・アゾフの工作員であると断定したようである。

アゾフの工作員はスケープゴートにすぎない。FSBは命令を出した者についての多くの情報と、その対処法を決して公の場で明らかにすることはないだろう。

ウクライナの市民権を得た反クレムリンの小物、イリヤ・ポノマリョフは、ドゥーギン一家への攻撃を準備した組織と接触したと豪語した。誰も彼の話を信用しなかった。

しかし明らかに深刻なのは、ロシアのオリガルヒとつながりのある組織犯罪集団が、クレムリンがアジアへの軸足となることに影響を与えたかもしれないと彼らが言う(しかし実際には与えていない)キリスト教正教会の民族主義哲学者、アレクサンドル・ドゥーギンを排除する動機があったことだ。

これらの組織犯罪集団は、ロシアにおけるユダヤ人オリガルヒが不釣り合いに権力を持っていること対してクレムリンが協調して攻勢しているのはドゥーギンのせいだという。したがってこれらの活動家たちはクーデターを起こす動機も現地でのノウハウも持っているのである。

もしそうだとすれば、モサドに関連した作戦である可能性がある。特に、モスクワとテルアビブとの関係が最近深刻に分裂していることを考えればなおさらである。確かなことは、FSBは手の内を見せないようにして、報復は素早く、正確に、そして目に見えない形で行われるだろうということだ。

堪忍袋の緒が切れる

ウクライナでの作戦の力学に影響を与えうるロシアの精神に深刻な打撃を与える代わりに、ダリヤ・ドゥーギンの暗殺は、犯人が手段を選ばない卑劣な殺人者であることを露呈したにすぎない。

即席の爆発装置(IED)では哲学者、あるいはその娘を殺すことはできない。ドゥーギン自身は重要なエッセイ{2}の中で、米国主導の集団的西側対ロシアという真の戦争が、いかに思想の戦争であるかを説明している。それは実存的な戦争なのだ。

ドゥーギンは、米国を「タラソクラシー(海上帝国)」であり、「波を制するブリタニア」の後継者であると正確に定義している。しかし今、地政学的な地殻変動が新秩序を説明している。ハートランドの復活である。

ロシアのプーチン大統領自らが初めてそれを明言したのは2007年のミュンヘン安全保障会議であった。中国の習近平は2013年に「新シルクロード」を打ち出し、実行に移した。帝国(米国)は2014年にマイダンでやり返した。2015年、ロシアはシリアを助けることでそれに反撃した。

帝国はそれでもリスクをかけてウクライナに介入し、NATOは8年間ノンストップでウクライナを兵器化した。2021年末、モスクワはワシントンに欧州の「安全保障の不可分性」についての真剣な対話を呼びかけた。それは無回答という回答で却下された。

モスクワは米国が主導する危険な三大要素を評価するのに時間がかからなかった。キエフのドンバスに対する差し迫った電撃戦、核兵器保有をちらつかせるウクライナ、そして米国の生物兵器研究所での研究である。これで堪忍袋の緒が切れた。

この数ヶ月のプーチンの公的な介入を一貫して分析すると、クレムリン、そして安全保障会議のヨーダ、ニコライ・パトルシェフは、政治家/メディアの語り手や西側諸国のショック部隊が、いかに金融資本主義の支配者の指示で動いているかを十分に理解していることがわかる。

直接的な結果として、彼らはまた、西側の世論がいかに全く無知で、プラトンの洞窟のようで、支配的な金融階級に完全に囚われていて、それに代わるいかなる論調も許容できないかということに気づいているのである。

したがってプーチン、パトルシェフ、そして彼らの仲間たちは、ホワイトハウスの老いぼれのテレプロンプターを読む人(バイデン)やキエフのコカイン中毒のコメディアン(ゼレンスキー)が「支配」しているとは決して思っていない。

米国が世界のポップカルチャーを支配している今、米国のテレビドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」の中で、内なる悪と戦う平均的な米国人、ウォルター・ホワイト/ハイゼンベルクが述べた言葉を借りるのがふさわしいだろう。“私は帝国の仕事をしている”。そして帝国のビジネスとは、冷酷に維持された実力を、必要なあらゆる手段で行使することである。

ロシアはその呪縛を解いた。しかしモスクワの戦略は、極超音速兵器でキエフを壊滅させるよりもはるかに洗練されている。ただ完全に破壊すればいいのなら6か月前からいつでも可能だった。

その代わりにモスクワが行っているのは、事実上グローバルサウス全体に対して、二国間あるいは関係者のグループに対して、目の前で世界システムが変わりつつあることを説明することだ。その主要な参加者は、一帯一路構想(BRI)、上海協力機構(SCO)、ユーラシア経済連合(AEU)、BRICS+、大ユーラシアパートナーシップである。

そして私たちは、グローバルサウスの広大な地域、つまり世界人口の85%が、ゆっくりと、しかし確実に、金融資本家を国土から追放し、最終的に彼らを倒す準備を始めているのを目にしている。

地上での事実

もうすぐ残党となるウクライナの地上では、Tu-22M3爆撃機やMig-31迎撃機から発射されるキンジャール極超音速空対地ミサイルが引き続き使用されるだろう。

高機動ロケット砲システム(HIMARS)の山は今後も捕獲され続けるだろう。TOS 1A 重火力投射システムは地獄の門に招待状を送り続けるだろう。クリミア防空隊はIEDを取り付けたあらゆる小型ドローンを迎撃し続けるだろう。地元のSBU小集団によるテロは、最終的に粉砕されるだろう。

安価で大量生産される驚異的な砲撃を主に用いて、ロシアは土地、天然資源、産業力の点で非常に価値のあるドンバスを併合する。そして、ニコラエフ、オデッサ、ハリコフへと続く。

地理経済的には、ロシアは戦略的パートナーである中国やインドはもちろんのこと、グローバルサウスのどの顧客にも石油を値引きして販売する余裕がある。採掘コストは最大でも1バレル15ドルで、国家予算はウラル原油1バレル40ドルから45ドルに基づいているが今日の市場価値はそのほぼ2倍である。

ロシアの新しいベンチマークが近づいている。ルーブル建ての石油と同様に、ルーブル建てのガスが大成功を収めた。

ダリヤ・ドゥーギンの暗殺は、クレムリンと国防省がついに戒律を破るのではという果てしない憶測を引き起こした。しかしそうはならない。ロシアの1800マイルに及ぶ巨大な戦線での前進は、容赦なく、高度に組織的であり、大戦略的構想に深く関与している。

カギとなるベクトルはロシアが西側との情報戦に勝てるかどうかということである。グローバルサウスで次々と成功がもたらされているが、NATOの領域内でそれが起こることはないだろう。

グレン・ディーセンが最新刊『ロシア恐怖症』(2022年){3}で見事に記述しているように、西側の集団はロシアがもたらした社会的、文化的、歴史的なメリットを認めることを直感的に拒否しているのである。

彼らはすでに非合理的な成層圏に自分たちを放出している。ウクライナの帝国軍代理人を虐待し、事実上非軍事化することは、帝国の手先とその家臣を文字通り狂わせるだろう。

しかしグローバルサウスは「帝国ビジネス」を決して忘れてはならない。その産業はカオスと略奪を生み出すことに秀でており、常に強要、地元エリートの賄賂、安直な暗殺によって支えられている。分割統治の本に書かれているあらゆる手口はいつでも起こりうる。苦い傷を負い、深い屈辱を受け、衰退していく帝国を決して見くびってはならない。

この緊迫した動きがまだこれからも続くのでシートベルトを締めるように。

しかしその前に、見張り塔からずっと、冬将軍の到来に備えよう。その騎兵隊が間もなくやってくる。風が吹き始めるとヨーロッパは暗い夜の帳の中で凍え、明かりは時折金融資本家がふかす太い葉巻の火だけになるだろう。

Links:

{1} http://thesaker.is/fly-like-an-eagle-darya-dugina/

{2} https://www.geopolitika.ru/article/svo-bitva-za-konec-istorii

{3} https://www.amazon.com/Russophobia-Propaganda-International-Glenn-Diesen-ebook/dp/B09YNJ7WVM/ref=sr_1_1?crid=83IL8SCRBLRW&keywords=Russophobia+Glenn+Diesen&qid=1661330241&sprefix=russophobia+glenn+die,aps,249&sr=8-1

https://thecradle.co/Article/Columns/14747