ウクライナ戦争:ロシアは生き残り
EUは滅び、中国が得をし、米国が大勝利する
Ukraine War: Russia Survives, …
… EU Dies, China Gains, and the USA Wins Big
ロシアのウクライナ侵攻(特別軍事作戦)から6ヶ月がたち、私たちは無数の驚きと地政学的な発見をしている。勝者と敗者は2月の時点で主流となっていたコンセンサスとは全く逆である。ロシアは西側の地政学的専門家が予想していたよりもはるかに良い結果を出している。ヨーロッパ人は自分たちを待ち受けている災難を知っていたら戦争を支持しなかっただろう。中国は、後述する理由によりこれ以上ないほど幸せである。そして、これまでのところ、地政学的に最大の勝者は米国である。しかし米国のエリートは、ポストドル世界への移行を加速させたかもしれない。
ロシアは生き残る(そして繁栄する)
ロシアに起こったことは前代未聞であり、プーチンがまだ政権を維持していることが驚きだ。西側諸国はロシアの外貨準備高4000億ドルを没収し、ロシアの銀行をSWIFT(国際取引システム)から追い出し、無数の制裁措置を講じるなど、金融面での衝撃と畏怖の攻撃を行った。欧米の大企業はこぞってロシアから撤退した。ヨーロッパは、ロシアの石油、ガス、石炭の購入を間もなく止めると言った。「ルーブルは瓦礫と化す」とジョー・バイデンは大声で言った。西側諸国はまた、プーチンに対するクーデターを誘発することを期待してロシアのオリガルヒの資産を没収した。米国はロシアが世界の除け者になったと主張した。
驚くべきことに、プーチンはそれらの試みをすべて阻止した。資本規制とロシアの石油・ガスに対するルーブルの需要でプーチンはルーブルを救済しただけでなく、8年前と同じくらいルーブル高(1ドル=約60ルーブル)にしたのである。
Wall Street Journalの記事{1}にあるように、ロシアの8月の石油輸出量は日量740万バレルで、戦争前の水準より8%減少している。その一方でロシアの石油や石油化学製品による収入は、戦争前に比べて40%も増えているのだ!インドなど米国の同盟国を含め、数多くの国がロシアの石油・ガスの購入に踏み切った。世界最大のエネルギー輸入国である中国はロシアからの購入量を大幅に増やしている。
消費者向け製品(そしておそらく軍事的ニーズ)に関しては、中国がロシア市場の獲得に乗り出した。ロシア人は今、中国製の自動車、中国製のスマートフォン、中国製のおむつなどを買っている。Win-Winだ。
そして、プーチンは除け者にはならなかった。インドネシアの指導者はロシアに飛び、11月のG20会合にプーチンを招待した。ロシア外相のセルゲイ・ラブロフはアフリカに飛び、アメリカの脅迫を無視して多数の国と取引をした。
ウクライナ戦争に関しては、期待されたように早く進んでいないが、ロシアは存亡の危機と戦っているという単純な理由からいずれ勝利するだろう。ウクライナが米国とNATOの延長であることはロシアにとって安全保障上も地政学上も重大な危険をはらんでいる。一方でウクライナの人口の約4割はロシア系民族で、したがって親ロシアである。
本当にロシアを憎んでいるウクライナ人は少数派である。アゾフ大隊や、下の動画にあるウクライナのサッカースタジアムでのネオナチのように。
https://videopress.com/v/QanIXllU
数カ月以内にロシアは国民の大半がロシア系民族である地域をすべて攻略するだろう。住民投票が行われ、それらの地域はちょうど2014年にクリミアがそうしたように、ロシアに加わることになるだろう。ロシア人が多数派の地域はすべて最も工業的で生産性の高い地域なので、ウクライナにとっては死の宣告となるだろう。また、ウクライナは黒海から完全に切り離されることになるだろう。
色のついた地域はロシア系民族が大半を占めている
https://truthandsatire.files.wordpress.com/2022/09/ukraine-geography-by-language-wsj-v4.jpg
西側のプロパガンダは馬鹿馬鹿しいにもほどがある。毎日のように「ロシア軍は弾薬を使い果たしている」「ロシア兵は士気を失って離反している」「多数のロシア軍将兵が殺害された」など、センセーショナルな主張がなされている。親ウクライナのプロパガンダはハリウッドからそのまま出てきたようなものだ。コカイン中毒でコメディアンのゼレンスキーは、現代のチャーチルに変身した。ウクライナのナチスは英雄となり、「キエフの幽霊」のような漫画のような話が捏造され、米国は数百億ドルの現金と武器をウクライナに送り込んだ。しかしファンタジーは現実を変えることはできない。
英国の前首相ボリス・ジョンソンは、EUの対ロシア制裁はロシア経済をつぶすだろうと勇ましく主張した。6か月後、両国の食品価格は、英国で10.5%上がりロシアでは11%下がるなど、全く異なる物語になっている{2}。
結論はこうだ。ロシアは、少なくとも短期的にはうまくいっている。米国はロシアの資源と決意を消耗させるために、長い消耗戦になることを望んでいる。もしロシアが戦争を速やかに終結させ、ウクライナの大部分を併合することができれば、ロシアはこの試練から脱し、紛れもない地政学的大国となるだろう。
ヨーロッパは滅びる
イタリアのレストランでは、節約のためにキャンドルを灯している
熱いシャワーも、家の暖房も、電気もない。スーパーの棚に食べ物、トイレットペーパーもない! これがヨーロッパが直面している恐ろしい現実だ。(ドイツのトイレットペーパー会社Hakleは破産を宣言したばかり{3})。
まもなく、ヨーロッパの平均的な家庭では1ヶ月に500ユーロ!を{4} 、ヨーロッパはGDPの15%という驚くべき額をエネルギーに費やすことになるのである。
ヨーロッパの指導者たちは、米国のとっぴな約束を本当に信じてしまったにちがいない。石油やガスの代替資源を準備することなく、EUは愚かにもロシアとの戦争に参加してしまった。今、EUは第三世界と化し、インフレと失業が急増し、ユーロは著しく弱くなっている。
電気代は多くの国で6倍以上{5}になり、一般市民や中小企業に大きな負担を強いている。ヨーロッパでは、天然ガス(6)の価格が10倍以上になっている。この冬、暖房不足が原因で死亡するヨーロッパ人の数は、過去2年間の新型コロナによる死亡者数を上回る可能性が非常に高いだろう。
ヨーロッパ中の鉄鋼、アルミニウム、化学、製紙、肥料の大手工場でさえ、天然ガス、石油、電力不足のために閉鎖されており(7)、ドイツのGDPの大きな構成要素である自動車製造は大幅に減少している。イギリスの工場の6割{8}が倒産するかもしれない。
ヨーロッパの経済大国であるドイツで産業基盤の最大の崩壊が起きている。輸出と貿易黒字で知られる国が、今や貿易赤字に陥っている。
ヨーロッパへの壊滅的な打撃は現実のものであり、長期に渡るかもしれない{9}。
ヨーロッパの繁栄は、ロシアからの安価な石油、ガス、石炭に基づいていた。20年間、ロシアとEUは協力して、ノルドストリームを含む何千キロものパイプラインを建設してきた。しかし今、西側諸国が、中立であれば戦争が終わるウクライナに固執し、すべてのインフラとパートナーシップが破棄されようとしている。
ロシアの石油・ガスパイプラインがヨーロッパの原動力
悲しいことに、NATOと米国の操り人形としてヨーロッパは経済的自殺を図っている。
フランスを見てほしい。賃金は減少し、中産階級はすでに消滅している。フランス人労働者の半数は月収2000ユーロ以下である。マクロン大統領はこれを解決するどころか、「豊かさの時代は終わった」と説教{10}するだけだった。
中国はそれほど悪くはない
中国は数多くの点で利益を得るだろう。
* 中国はロシアの石油と天然ガスでより大きな割引を得ることができる。
* 中国はロシアの消費者市場を獲得するだろう。
* ヨーロッパ産業の死は、中国にとってより大きな世界的な市場シェアを意味するだろう。
* 人民元の国際化が加速している。
*** ロシアは外貨準備高に人民元{11}を追加しており、合計で1兆元以上となっている。
*** ロシア企業は人民元建て債券を発行している{12}。
*** ロシアの銀行が中国への送金を許可している{13}。…人民元建てて SWIFTを完全に回避している。
***ロシア最大の金融機関であるスベルバンクは、現在…元で!資金を貸し出している {14}
*** また、インドはロシアの石炭、石油、ガスを購入するために人民元(15)を使用している。
*** SWIFTに対する中国の回答はCIPSで、100カ国以上から1300の金融機関が加盟している。2021年、CIPSは80兆円{16}の国を跨ぐ取引を扱った。(ちなみに、ロシアにも独自のシステムであるSPFSがある{17})。
* このまま紛争が続けば、米国が気をとられているうちに、中国に地政学的な余裕が与えられるだろう。
* 中国政府はまた、中国が台湾を侵略した場合に米国がどのように反応するかをより良く理解するために、米国の対ロシア戦略を研究している。
米国、ハッピーでビッグなユーラシア大陸の殺し屋
この混乱の元凶は米国である。米国は20年以上にわたりウクライナを自国の軌道に引き込むために何十億ドルも費やしてきた。今、米国はユーラシア大陸が破壊されるのを見ながら楽しんでいる。
米国の軍産複合体は、米国の納税者から補助金をもらってウクライナに何十億ドルもの兵器を売って喜んでいる。米国の石油・ガス会社は、法外な値段でヨーロッパに販売している。そして、世界が混乱すればドルが強まり、世界通貨としてのドルの地位を固め、輸入品をより安くする。
さらに重要なことは、米国はその優位性を脅かす最大の脅威であるユーラシア大陸を潰しにかかっているということだ。ロシア、中国、ヨーロッパがみんな仲良くすれば、繁栄して、米国をますます無用な存在にしてしまうから。ユーラシア大陸のGDPは60兆ドル、これは米国のGDPの2.6倍なのだ。
それゆえに分割統治が行われる。EUとロシアの対立を作り出すことで、米国はヨーロッパの弱体化と機能低下を確実なものにしたのだ。次の試みはヨーロッパを中国から孤立させることだろう。今、中国からヨーロッパへは毎月1000本以上の貨物列車が走っている。もし米国がそれを妨害することができれば、ヨーロッパと中国を同時に弱体化させることができる。
ユーラシア大陸を破壊することは、米国の世紀を21世紀まで長引かせることになるだろう。
まとめ
米国の大戦略は、今のところそれなりにうまくいっているように見える。しかし、裏目に出る可能性もある。アメリカ帝国にとって最悪のシナリオでは、次のようなことが起こるだろう。
* ロシアはウクライナの豊かな地域を併合することによって、勝者となる。
* ヨーロッパでの大規模な抗議と経済的荒廃により、指導者はロシアとの和平を余儀なくされる。(フランスでの最近の抗議活動のように{18})。ナポレオン(1812年)もヒトラー(1941年)も冬に敗れたことを思い出してほしい。2022年、ヨーロッパは、またも冬に屈することになるだろう。
*ロシア、イラン、および他の国々と共に、参加国を拡大しているBRICSに中国は参加し、そこでSWIFTと米ドルを回避するための代替金融システムを構築する。
* 中国人民元が国際化され、サウジアラビアなどの国々が人民元で石油やその他の商品を売り始める。これにより米国の覇権の基盤であるペトロダラーは弱体化するだろう。米国の制裁は意味をなさなくなるだろう。
多くのことが危機に瀕している。これからの半年は非常に重要であり、世界の将来について多くのことが明らかになっていくだろう。
Links:
{1} https://www.wsj.com/articles/russia-confounds-the-west-by-recapturing-its-oil-riches-11661781928
{2} https://www.thesun.co.uk/news/19698308/russia-uk-prices-sanctions-food/
{3} https://twitter.com/disclosetv/status/1566773878055125000
{4} https://twitter.com/TrackInflation/status/1566925698933182467
{10} https://www.euractiv.com/section/politics/news/macrons-comments-over-giving-up-abundance-cause-stir/
{13} https://www.ndtv.com/business/russias-vtb-launches-transfers-in-chinese-yuan-bypassing-swift-3320611
{17} https://finance.yahoo.com/news/china-russia-india-push-forward-102044240.html
{18} https://twitter.com/JamesMelville/status/1566435380517273600