No. 1574 ジョン・ピルガーが2014年に発したウクライナに関する警告

2014年5月13日のガーディアン紙で、ジャーナリストのジョン・ピルガーはウクライナをめぐり「米国は世界を戦争に持ち込む恐れがある」と警告している。今、この言葉は新たな意味を持つことになった。(耕助)

沈黙を破り、世界大戦が始まる

http://johnpilger.com (May 13 2014)

なぜ私たちは、私たちの名において再び世界大戦の脅威を許すのだろうか?なぜこの危険を正当化するような嘘を許すのだろうか?ハロルド・ピンターは、私たちの洗脳の規模は、まるで真実が「起こっている最中にも起こらなかった」かのように、「見事で、機知に富む、非常に成功した催眠術のような行為」だと書いている。

米国の歴史家ウィリアム・ブルムは毎年、「米国の外交政策の記録に関する最新の要約」を発表している。それによると、1945年以来、米国は50以上の政府(多くは民主的に選ばれた政府)を転覆させようとした。30カ国の選挙に大きく介入し、30カ国の民間人を爆撃し、化学・生物兵器を使用し、外国の指導者を暗殺しようとした。

多くの場合、英国は協力者であった。世界で最も進んだ通信手段と名目上最も自由なジャーナリズムが存在するにもかかわらず、西側諸国においてその犯罪性はもとより人的被害の程度はほとんど認識されていない。「我々の」テロリズムの最も多数の犠牲者がイスラム教徒であることは言うには及ばない。9.11を引き起こした極端なジハード主義が、英米の政策(アフガニスタンでのサイクロン作戦)の武器として育まれたことは隠蔽されている。米国務省は4月、2011年のNATOの作戦を受け、「リビアはテロリストの安住の地となった」と指摘した。

「我々の」敵の名前は、共産主義からイスラム主義まで、時代とともに変化してきたが、一般的には、西側勢力から独立し、戦略的に有用または資源豊富な領土を占める社会のことである。これらのじゃまな国の指導者は、イランの民主主義者ムハンマド・モセデクやチリのサルバドール・アジェンデのように暴力的に突き放されるか、コンゴのパトリス・ルムンバのように殺害されるのが普通である。フィデル・カストロ、ウゴ・チャベス、そして今度はウラジーミル・プーチンのように、すべて西側メディアの風刺と中傷のキャンペーンにさらされている。

ウクライナにおけるワシントンの役割は、私たちに対する影響という点でのみ異なっている。レーガン時代以来初めて、米国は世界を戦争に巻き込むと脅しているのだ。東ヨーロッパとバルカン半島がNATOの軍事拠点となり、ロシアと国境を接する最後の「緩衝国家」が引き裂かれようとしている。ヒトラーを支持したウクライナのナチスがいる国で、私たち西側諸国はネオナチを支持しているのだ。2月にキエフの民主的に選出された政府に対するクーデターを首謀し、クリミアにあるロシアの歴史的で合法的な暖水海軍基地を奪取するというワシントンの計画は失敗に終わった。ほぼ1世紀にわたって西側からのあらゆる脅威と侵略に対して行ってきたように、ロシア人は自分たちを守ったのである。

しかしNATOの軍事的包囲網は、ウクライナのロシア系住民に対する米国の組織的な攻撃とともに加速している。もしプーチンを挑発して彼らを助けるように仕向けることができれば、プーチンはあらかじめ「のけ者」の役割を与えられているのでNATOが行うゲリラ戦を正当化し、ロシア自体に波及するようになるだろう。

しかしそうはならず、プーチンはワシントンやEUとの融和を模索し、ウクライナ国境から軍を撤退させ、ウクライナ東部のロシア系民族に週末の挑発的な住民投票を放棄するよう促すことによって主戦論者を混乱に陥れた。ウクライナの人口の3分の1を占めるロシア語も話すバイリンガルの人々は、長い間、国の民族的多様性を反映し、自治権を持ち、モスクワから独立した民主的な連邦を望んできた。その多くは「分離主義者」でも「反乱者」でもなく、祖国で安全に暮らしたいと願う市民である。

イラクやアフガニスタンの廃墟のように、ウクライナはCIAのテーマパークと化している。CIA長官のジョン・ブレナンによってキエフで運営され、CIAとFBIの「特別部隊」が「治安組織」を立ち上げ、2月のクーデターに反対した人たちへの野蛮な攻撃を監督しているのである。ビデオを見て、今月オデッサで起こった大虐殺の目撃報告を読んでほしい。バスに乗ったファシストの凶悪犯が労働組合の本部を焼き、建物の中にいた41人が死亡した。警察が待機している様子を見てほしい。一人の医師が人々を助けようとした時の様子をこう描写している:

    ...(助けようとしたが)私は親ウクライナのナチス過激派に止められた。彼らの一人が私を荒々しく押しのけ、すぐに私やオデッサの他のユダヤ人も、これと同じ運命をたどるだろうと言った… なぜ世界中が黙っているのだろう。

ロシア語を話すウクライナ人は生き残るために戦っている。プーチンが国境からロシア軍を撤退すると発表したとき、キエフ政権の国防長官(ファシスト政党スヴォボダの創設メンバー)は、「反乱者」への攻撃を継続すると豪語した。ウィリアム・ヘイグによると、オーウェル流に西側諸国のプロパガンダはこれを逆にして、モスクワが「紛争と挑発を画策している」という。彼の皮肉な言葉は、オデッサの大虐殺の後、クーデター政権に「驚くべき自制心」を示したオバマのグロテスクな祝辞に匹敵する。違法でファシストが支配するこの政権を、オバマは「正当に選出された」と説明した。重要なのは真実ではなく、「何が真実であると認識されるか」である、とかつてヘンリー・キッシンジャーは言った。

米国のメディアは、オデッサの残虐な事件は「民族主義者」(ネオナチ)が「分離主義者」(ウクライナ連邦制のための国民投票の署名を集める人々)を攻撃した「不透明」かつ「悲劇」であるとされてきた。ルパート・マードックのウォールストリート・ジャーナルは犠牲者を非難した。「致命的なウクライナの火災は反乱軍が引き起こした可能性が高いと政府は言っている」。ドイツのプロパガンダは純粋な冷戦で、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙は、その読者にロシアの「宣戦布告なしの戦争」だと警告した。ドイツ人にとってプーチンが21世紀のヨーロッパにおけるファシズムの台頭を非難する唯一の指導者であることは、腹立たしい皮肉である。

9.11以降、「世界が変わった」というのがよく言われる定説である。しかし何が変わったのだろうか?偉大な内部告発者ダニエル・エルズバーグによれば、ワシントンで静かなクーデターが起こり、横行する軍国主義が支配するようになったのだという。国防総省は現在、124カ国で「特殊作戦」(秘密戦争)を展開している。米国内では、貧困の拡大と自由の喪失が、永続的な戦争状態の歴史的な帰結である。核戦争のリスクも加わり、疑問が湧く。「なぜ、私たちはこれを容認しているのだろうか?」

This article first appeared in the Guardian, UK.

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