ロシアが勝利するための戦争
ヨーロッパ人は米国人にいいように踊らされている
by MK Bhadrakumar (インドの元外交官)
2つの大規模テロが見事に誤爆し、ウクライナ戦争に恐しい美が誕生した。ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」とクリミア大橋への攻撃という、周到に計画されたこの2つの連続攻撃は、ロシアをノックアウトする一撃として意図されたものだった。プーチン大統領によればノルド・ストリーム爆破の背後には「ロシアとEUの関係を最終的に断ち切り、ヨーロッパを弱体化させたい」人々がいるという。そして彼は「受益者」として米国、ウクライナ、ポーランドを名指しした。
インドは米国とNATOの敗北を期待すべきである。それによって多極化した世界秩序への移行が完了するからだ。
先週水曜日、ロシアの国内情報機関FSBは、クリミア攻撃の首謀者としてウクライナの軍事情報長官Kyrylo Budanovを特定した。ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙も「情報筋」からとしてキエフを指さした。ノルド・ストリーム1が機能不全に陥った一方で、ノルド・ストリーム2のうち1本は無傷のまま残っている。プーチンは先週、パイプラインを復旧させ、ロシアが約270億立方メートルのガスを供給する可能性があると述べた。「ボールはEUの側にある。もし彼らが望むなら、蛇口をひねろう」と彼は言った。
しかし、ブリュッセルからの反応は無言である。EUにとっては非常に厄介な瞬間である。米国がモスクワとのエネルギー関係を断つことを主張したため、その対ロシア制裁の反動でヨーロッパは何年も不況に陥るおそれがでてきたため、その勝ち誇った態度は消え去った。EUは今や大手石油会社の捕虜となり、米国からLNGを買うことになったが、その価格は米国内価格の6〜7倍である。 (ドイツ向けのロシアの長期供給契約価格は1000立方メートルあたり約280ドルだったが、現在の市場価格が2000ドル前後になっている。)
率直に言えば、ヨーロッパは米国にいいように踊らされている。インドは米国の権利意識に注意する必要がある。基本的にバイデン政権がエネルギー危機をでっちあげた本当の目的は戦争で儲けることだ。
10月8日のクリミア大橋への攻撃はもっと深刻である。ゼレンスキーはモスクワが繰り返し警告していたレッドラインを越えてしまった。プーチンは、クルスク原子力発電所に対して3回のテロ攻撃があったことも明らかにした。ロシアはゼレンスキー政権を崩壊させること以外は納得しないだろう。
モスクワがこれまで控えてきたウクライナの「重要インフラ」に対してロシアが報復するということは深刻な意味がある。10月9日以降、ロシアはウクライナの電力系統と鉄道を組織的に狙い始めた。ロシアの著名な軍事専門家ウラジスラフ・シュリギンはイズベスチヤ紙に、この調子が1週間ほど続けば、「ウクライナ軍の兵站全体(人員、軍事装備、弾薬、関連貨物の輸送システム、軍事・修理工場の機能)は混乱するだろう」と語っている。
米国はロシアが戦争に「負けた」という自分勝手なシナリオの現実離れした世界に閉じこもっている。しかし、現実の世界では、モスクワの内部情報に通じているベラルーシのKGB長官イワン・テルテルは、先週火曜日、ロシアが戦域の兵力を増強しており(動員された3000人の兵士と7万人のボランティア)、最新兵器の配備により、「軍事作戦は重要局面を迎えるだろう。我々の予想では、今年11月から来年2月にかけて転機が訪れるだろう」と述べている。
デリーの政策立案者や戦略家は、この時間軸を注意深く見定める必要がある。要するにロシアは全面的な勝利を望んでおり、キエフに友好的な政権が実現しないことには納得しないだろう。バイデンを含む西側の政治家は、今ロシアを止めることはできないことを理解している。キエフがさらなる要求を続ける中、米国の武器庫は枯渇しつつある。
バリでのG20でバイデンに会うかどうかを尋ねられたプーチンは、金曜日、嘲笑的にこう言った。
私とそのような交渉をする準備ができているかどうか、彼(バイデン氏)に尋ねるべきだ。正直なところ、私はその必要性を感じていない。当分の間、交渉の場はない。
しかし、ワシントンはまだタオルを投げておらず、バイデン政権はウクライナの破壊を犠牲にしてでもロシア軍を疲弊させることに執着し続けている。そしてロシアもまた戦場で解決すべきことはたくさんある。オデッサ(ネオナチから言いようのない残虐行為を受けた)、ミコライフ、ザポリツィヤ、ドニプロペトロフスク、ハリコフの抑圧されたロシア系住民たちは「解放」を待ち望んでいる。ロシアにとって非常に感情的な問題である。繰り返すが、ウクライナの「非軍事化」と「デナズ化」という包括的なアジェンダは、論理的な結論に至らざるを得ないのだ。
すべてが終わったとき、プーチンはバイデンが自分に会いたくもないだろうということを知っている。ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は先週、こう述べた。
ロシアとウクライナの交渉で戦争が終わると本気で思っている人は、別世界に住んでいる。現実は違うようだ。現実には、このような問題はワシントンとモスクワの間でしか話し合うことができない。今日、ウクライナが戦えているのは、米国から軍事援助を受けているからに他ならないのだ・・・
同時に、私はバイデン大統領がこのような真剣な交渉に本当にふさわしい人物であるとは思わない。バイデン大統領は、あまりにもやりすぎた。ロシアのプーチン大統領に対する彼の発言を思い出せば十分だろう。
インドは、米国とNATOが敗北し、多極化した世界秩序への移行が完了することを期待するべきである。悲しいことに、インドのエリートたちはまだ「一極集中の苦境」を浄化できていない。英国を含むヨーロッパは荒廃し、米国の「大西洋横断リーダーシップ」に対する不満が鬱積している。インド太平洋戦略は絶望的に漂流している。OPECのワシントンに対する反発が示しているように、インドの拡大した近隣地域には新たなパワーセンターが出現している。インドの戦略計算には深い調整が必要である。