No. 1603 ダボス会議グレートリセットの闇の起源

The Dark Origins of the Davos Great Reset

by F William Engdahl

クラウス・シュワブの、いわゆるグレートリセットのアジェンダには、新しい、または独創的なアイデアは一つもないということを理解することは重要である。第四次産業革命のアジェンダも、ステークホルダー資本主義の概念を発明したという彼の主張もシュワブの産物ではない。

クラウス・シュワブは、グローバルなテクノクラート的アジェンダ、すなわち企業権力と国連を含む政府との協調主義的一体化のための巧みな広報代理人に過ぎず、その起源は1970年代の初め、あるいはそれ以前にまでさかのぼるアジェンダなのである。ダボス会議のグレートリセットは何十年も前から開発されてきた国連の管理下にあるグローバル・ディストピア的独裁のための最新の青写真に過ぎない。主要な当事者はロックフェラーとその子分であるモーリス・ストロングである。

1970年代初頭、世界の政治にこれほど大きな影響力を持った人物は当時チェース・マンハッタン銀行の会長として知られていた故ディビッド・ロックフェラー以外にいない。

新しいパラダイムを創造する

1960年代末から70年代初頭にかけて、ロックフェラーに直結する国際的なサークルはエリート組織やシンクタンクを次々と立ち上げていった。ローマクラブ、1001、世界自然保護基金(WWF)と関連のあるネイチャートラスト、ストックホルム国連アースデイ会議、マサチューセッツ工科大学の研究「成長の限界」、そして、ロックフェラーの三極委員会などがある。

ローマクラブ

1968年、ロックフェラーは、アウレリオ・ペッチェイ、アレクサンダー・キングとともに、新マルサス主義のシンクタンク「ローマクラブ」を設立した。アウレリオ・ペッチェイは、イタリアの有力者アニエリ一族が所有するフィアット自動車会社のシニア・マネージャーであった。フィアットのジャンニ・アニエリは、ロックフェラーの親友でチェース・マンハッタン銀行の国際諮問委員会のメンバーでもあった。アニエリとディビッド・ロックフェラーは、1957年以来親しい友人だった。アニエリは1973年にディヴィッド・ロックフェラーの三極委員会の創設メンバーになった。OECD科学プログラムの責任者であるアレクサンダー・キングは、NATOのコンサルタントでもあった。{1} それが後の新マルサス主義の「人は汚染する」運動の始まりだった。

1971年にローマクラブが発表した『成長の限界』というレポートは、石油などの限りある資源に加え、急激な人口増加により、我々の知る文明の終焉を予言するものであった。このレポートは、資源の消費を大幅に変えない限り、「最も起こりうる結果は、人口と産業能力の両方がかなり急激に、制御不能に減少することであろう」と結論付けている。これはMITのコンピュータ科学者のグループによるいんちきのコンピュータ・シミュレーションに基づいていた。「世界人口、工業化、汚染、食糧生産、資源枯渇の現在の成長傾向が変わらなければ、今後100年以内にこの惑星の成長の限界に達するだろう」という大胆な予測である。これが1971年のことだ。1973年、クラウス・シュワブは第3回ダボス・ビジネスリーダー会議において、ペッチェイをダボス会議に招き、集まった企業のCEOたちに「成長の限界」を説いた。{2}

1974年、ローマクラブは「地球は癌に冒されており、その癌は人間である」と大胆に宣言した。「世界は、人口過剰、食糧不足、再生不可能な資源の枯渇、環境破壊、貧弱な統治など、前例のない一連の連動した地球規模の問題に直面している」と。{3} 彼らは次のように主張した。

    世界システムの「水平」再構築が必要だ……エネルギー危機、食糧危機などを解決するためには、規範層の抜本的な改革、すなわち人間の価値観や目標の改革が必要である。エネルギー危機、食糧危機、その他の危機を解決するためには、人間の価値観や目標を根本的に変えることが必要だ。つまり、有機的成長への移行には、社会の変化と個人の意識改革が必要なのである。{4}

ローマクラブは、1974年のレポート『転換期における人類』の中で、さらにこう主張した。

国家間、地域間の相互依存の高まりは、独立性の低下として解釈しなければならない。国や地域間の相互依存が高まるということは、すなわち独立性が低下するということであり、それぞれが独立性の一部を放棄するか、少なくともその限界を認めない限り、相互依存はあり得ない。今こそ、限りある資源のグローバルな配分と新しい世界経済システムに基づく有機的な持続可能な成長と世界の発展のためのマスタープランを描くべき時なのだ。{5}

それが、国連アジェンダ21、アジェンダ2030、2020年ダボスのグレートリセットの初期の策定であった。

ディビッド・ロックフェラーとモーリス・ストロング

1970年代初頭、ロックフェラーの「ゼロ成長」政策のオーガナイザーとして最も影響力があったのは、ディビッド・ロックフェラーの長年の友人である億万長者の石油王、モーリス・ストロングだった。

カナダ人のモーリス・ストロングは、交通機関、石炭工場、農業から排出される人為的な二酸化炭素が、「地球」を脅かす劇的で加速的な地球温度上昇、いわゆる「地球温暖化」を引き起こすという科学的に不正な説を最初に広めた中心人物の一人であった

1972年のアースデイ国連ストックホルム会議の議長として、ストロングは「環境を守る」ために世界中で人口削減と生活水準の引き下げというアジェンダを推進した。

ストロングは、過激なエコロジストのアジェンダを述べた。

    地球にとって唯一の希望は、工業化された文明が崩壊することではないだろうか?それを実現するのは、私たちの責任ではないだろうか?{6}

これが、グローバル・パンデミックと称して今行われていることなのだ。

環境に関する行動を喚起する国連の主要なイニシアチブの責任者としてストロングが選ばれるのは奇妙なことだった。なぜなら彼のキャリアとそのかなりの財産は、「エコロジカル・ピュリティ(生態の純粋さ)」の新しい提唱者たち、ロックフェラーやアスペン研究所のロバート・O・アンダーソン、シェルのジョン・ラウドンなどと同様に石油の搾取によって築かれたものだからだ。

カナダの高校を中退したストロングは、1947年、18歳の時にロックフェラーと出会い、以後、彼のキャリアはロックフェラー家のネットワークと結びついていった。{7} ディビッド・ロックフェラーとの出会いを通じて、ストロングは18歳で国連会計官Noah Monodの下で国連の重要な地位を与えられることになった。都合のよいことに国連の資金はロックフェラーのチェース銀行が扱っていた。これはストロングが展開した「官民連携」の典型的なモデル、つまり公的な政府から民間が利益を得るというものである。{8}

1960年代、ストロングは、モントリオールの巨大なエネルギー複合企業であり石油会社で、当時は有力者ポール・デマライが所有するパワー・コーポレーションの社長に就任していた。パワー・コーポレーションは、カナダの調査研究者エレイン・デュワーによれば、ダボス会議の支援者であるジャスティン・トルドーの父親ピエール・トルドーなど、カナダの選りすぐりの政治家の選挙運動のための政治裏金としても使われたと言われている。{9}

アースサミットIとリオのアースサミット

1971年にストロングはニューヨークの国連事務次官と、スウェーデンのストックホルムで開催予定のアースデイ会議「地球環境に関する国連会議(アースサミットI)」の事務局長に任命された。また、この年、ストックホルム・アースデープロジェクトの立ち上げに資金を提供したロックフェラー財団の評議員に任命された{10}。ストックホルムでは、ストロングを会長として国連環境計画(UNEP)が設立された。

1989年には、ストロングは国連事務総長から1992年の国連環境開発会議(UNCED)(「リオ・アース・サミットII」)の責任者に指名された。そして国連「持続可能な環境」目標、クラウス・シュワブ氏のグレートリセットの基礎となる「持続可能な開発のためのアジェンダ21」、また国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の草案を監督した。ダボス世界経済フォーラム(WEF)の理事でもあったストロングは、シュワブをリオのアースサミットの主要なアドバイザーとして手配していた。

国連リオ会議の事務総長として、ストロングはまたローマクラブに報告書「第一次世界革命」を依頼した。これはアレクサンダー・キングが執筆し、彼は二酸化炭素による地球温暖化という主張は、変化を強いるために作られた策略に過ぎなかったと認めている。

    人類共通の敵は人間である。我々を団結させるために新たな敵を探していると、公害、地球温暖化の脅威、水不足、飢餓などが当てはまるのではないかと思いついた。これらの危機はすべて人間の介入によって引き起こされたものであり、その克服は意識と行動の変革によってのみ可能である。真の敵は、人類そのものなのだ。 {11}

クリントン大統領がリオに派遣したティム・ワースも同じことを認め、「我々は地球温暖化問題に乗らねばならない。たとえ地球温暖化の理論が間違っていたとしても、経済政策や環境政策の面では正しいことをすることになる」と述べている。{12}

ストロングはリオで、二酸化炭素や他のいわゆる温室効果ガスを排除するというこの恣意的な目標に関連して定義された「持続可能な社会」という世論を操るための考えを初めて紹介した。アジェンダ21は、2015年9月にローマでローマ法王の祝福を受け、17の「持続可能な」目標を掲げたアジェンダ2030となった。それは次のようなことを宣言している。

土地は、そのユニークな性質と人間の居住に果たす重要な役割から、個人が管理し、市場の圧力と非効率にさらされる普通の資産として扱うことはできない。個人の土地所有はまた、富の蓄積と集中の主要な手段であり、したがって、社会的不公正を助長するものである … 社会全体の利益のために土地が使用される場合のみ、社会正義、都市再生、開発、人々のための適切な住居と健康的な環境の提供が達成される。

つまり、私有地は「社会全体」のために公有化されなければならないという、ソ連時代によく知られた考え方であり、これがダボスのグレートリセットの主要な部分なのである。

1992年リオで会長・書記長を務めたストロングはこう宣言した。

豊かな中産階級の現在のライフスタイルと消費パターン、つまり肉の大量摂取や冷凍食品、コンビニエンス・フードの大量消費、化石燃料の使用、家電製品、家庭や職場でのエアコン、郊外の住宅などは持続可能なものではないことは明らかである。{13}

その頃にはストロングは、国連を地球の絶滅と温暖化に関する悲惨な警告を利用し、「持続可能性」という不正な隠れ蓑のもとに、政府機関と企業権力とを合併させ、選挙によらずにほとんどすべてを管理する、新しいグローバル技術主義ファシズムを密かに押し付ける手段へと変貌させる中心的な存在となった。1997年、ストロングはアースサミット後の行動計画「地球規模での多様性評価」の作成を監督した。これは第四次産業革命の展開のための青写真で、地球上のあらゆる資源の目録、その制御方法、そしてこの革命の達成方法を示している。{14}

このときストロングは、クラウス・シュワブの「ダボス世界経済フォーラム」の共同議長であった。2015年、ストロングの死去に際して、ダボス会議の創設者クラウス・シュワブはこう書いている。

    彼はフォーラム創設以来の私のよき師であり、偉大な友人であり、欠くことのできないアドバイザーであり、長年にわたり我々の財団の理事会のメンバーであった。{15}

ストロングはイラクの「石油食糧」汚職事件で不名誉にも国連を追われる前はローマクラブのメンバー、アスペン研究所の評議員、ロックフェラー財団とロスチャイルド財団の評議員であった。また、ニューヨークの聖ヨハネ大聖堂にあるルシファー・トラスト(別名ルシス・トラスト)というオカルト的な神殿の理事でもあった。

  神殿では異教徒の儀式として、羊や牛を祝福のために祭壇まで連れて行くことがある。ここでは、アル・ゴア副大統領が説教をし、参拝者は堆肥とミミズを入れたボウルを持って祭壇まで行進した・・・{16}

これが「地球を救う」ためにミミズを食べ、私有財産を持たないようにというシュワッブのグレートリセットの闇の起源である。このアジェンダは邪悪でディストピア的で、私たち「普通の人間」数十億人を殺すためのものである。

Notes:

{1} Biographies of 1001 Nature Trust members, Gianni Agnelli, accessed in http://www.bibliotecapleyades.net/sociopolitica/sociopol_1001club02.htm

{2} Klaus Schwab, The World Economic Forum: A Partner in Shaping History – The First 40 Years: 1971 – 2010, 2009, World Economic Forum, page 15, https://www3.weforum.org/docs/WEF_First40Years_Book_2010.pdf

{3} Quoted from Club of Rome Report, Mankind at the Turning Point, 1974, cited in http://www.greenagenda.com/turningpoint.html

{4} Ibid

{5} The Club of Rome, Mankind at the Turning Point, 1974, quoted in Brent Jessop, Mankind at the Turning Point – Part 2 – Creating A One World Consciousness, accessed in http://www.wiseupjournal.com/?p=154

{6} Maurice Strong, Opening Speech to UN Rio Earth Summit, Rio de Janeiro, 1992, accessed in http://www.infowars.com/maurice-strong-in-1972-isnt-it-our-responsibility-to-collapse-industrial-societies/

{7} Elaine Dewar, Cloak of Green: The Links between key environmental groups, government and big business (1995), pages 259~265.

{8} Brian Akira, LUCIFER’S UNITED NATIONS, http://www.fourwinds10.com/siterun_data/religion_cults/news.php?q=1249755048

{9} Elaine Dewar, op cit, pages 269~271.

{10} Ibid, page 277.

{11} What is Agenda 21/2030 Who’s behind it ? Introduction, https://sandiadams.net/what-is-agenda-21-introduction-history/

{12} Larry Bell, Agenda 21: The UN’s Earth Summit Has Its Head In The Clouds, Forbes, June 14 2011, https://www.forbes.com/sites/larrybell/2011/06/14/the-u-n-s-earth-summit-has-its-head-in-the-clouds/?sh=5af856a687ca

{13} John Izzard, Maurice Strong, Climate Crook, December 02 2015, https://quadrant.org.au/opinion/doomed-planet/2015/12/discovering-maurice-strong/

{14} What is Agenda 21/2030 Who’s behind it? Introduction, https://sandiadams.net/what-is-agenda-21-introduction-history/

{15} Maurice Strong An Appreciation by Klaus Schwab, 2015, https://www.weforum.org/agenda/2015/11/maurice-strong-an-appreciation

{16} Dr Eric T Karlstrom, The UN, Maurice Strong, Crestone/Baca, CO, and the “New World Religion”, September 2017, https://naturalclimatechange.org/new-world-religion/part-i/

 

https://www.globalresearch.ca/dark-origins-davos-great-reset/5797113