No. 1615 すべてを説明する1枚のチャート

The One Chart That Explains Everything

By Mike Whitney

相対的に衰退している米国、伸びる中国

上のチャートをみてほしい。すべてを説明している。

これはなぜ米国が中国の爆発的な成長を心配するのか、その理由を説明している。米国が台湾と南シナ海の問題で中国を非難し続ける理由もここにある。北京からの明確な要請を無視して、米国が台湾に議会代表団を送る理由も説明している。米国防総省がなぜ台湾海峡に米軍艦を派遣し、大量の殺傷力のある武器を台北に送り続けているのかも説明している。北京を包囲し、挑発することを目的とした反中連合をアジアで構築している理由も説明している。バイデン政権が中国に対する貿易戦争を強化し、中国企業に厳しい経済制裁を課し、「電子製品や輸送からあらゆる商品の設計・生産まで、現代社会のほぼすべての側面に不可欠なだけでなく…」重要なハイテク半導体を禁止している理由も説明している。米国の国家安全保障戦略(NSS)で、中国が「国際秩序を再構築する意図を持ち、ますますその能力を高めている唯一の競争相手」として特別視されている理由もここにある。そしてワシントンがなぜ今、中国を孤立させ、悪魔化し、敗北させなければならない最大かつ最も手強い戦略的敵対者とみなしているのかを説明している。

上の図はすべてを説明している。中国を貶めようとする敵対的な外交ジャブだけでなく、ロシアをも対象とした公然たる好戦的な政策をとっているのかもわかる。人々はこれを理解する必要がある。何が起こっているのかを知り、出来事を適切な地政学的文脈に置くことができるようになる必要があるのだ。

その「文脈」とは何だろうか。

第三次世界大戦の文脈だ。ワシントンとその代理人によって徹底的に計画され、扇動され、(現在)遂行されている戦争である。それが、実際に起こっていることなのだ。ウクライナやアジアで起きているますます激しくなっている紛争は、「ロシアの侵略」や「悪のプーチン」の結果ではない。そうではなく、中国の急速な台頭を阻止し、世界秩序における米国の支配的な役割を維持するための邪悪な地政学的戦略の実現なのである。そのことに疑いはないのだろうか。

ない。まったくない。

だから私たちは、世界を戦争のブロックに再分割するのを経験しているのである。だから30年にわたるグローバリゼーションの巻き返しと、大規模な供給網の崩壊が起きているのである。そして、だからヨーロッパが極寒の暗闇と強制的な産業の空洞化へと真っ逆さまに突き進んでいるのである。これらの自殺的な政策はすべて、世界システムにおける米国の高貴な地位を維持するために、たった一つの目的のために練り上げられた。だから今、人類は第三次世界大戦に巻き込まれようとしているのだ。中国が世界最大の経済大国になるのを阻止するための戦争。米国の世界的優位を維持するための戦争である。World Socialist Web Site の記事からの抜粋を参照してほしい。

10月19日のフィナンシャルタイムズの記事でEdward Luceは「中国封じ込めがバイデンの明確な目標」と題し、次のように警鐘を鳴らした。「超大国が大国に対して宣戦布告し、誰もそれに気づかなかったとしたらどうだろう。ジョー・バイデンは今月、中国に対して本格的な経済戦争を開始し、その台頭を止めることにコミットしたが、ほとんど米国人は反応しなかった。

   確かに、ロシアのウクライナ戦争や国内でのインフレなど、ほかに注意が向いている。しかし、歴史はバイデンの動きを、米中対立を公にした瞬間として記録することになるだろう」

    さらに先週、バイデン政権のトップが、米国が主要なハイテク分野で中国に対する新たな禁止措置を準備していることを示唆した。 新アメリカ安全保障センターで講演したアラン・エステベス商務次官(産業・安全保障担当)は、米国が中国による量子情報科学、バイオテクノロジー、人工知能ソフトウェア、高度なアルゴリズムへのアクセスを禁止するかどうかを問われた。エステベスは、この件がすでに活発に議論されていることを認めこう言った。「最後にはそういう分野で何かをやることになるのだろうか?もし私が賭け事をする人間なら、それにお金を賭けるだろう」

    Luceは上に引用したフィナンシャルタイムズの記事をこう言って締めくくっている。「バイデンの賭けはうまくいくのだろうか?私はそれを知るのを楽しみにしているわけではない。良くも悪くも、世界は今、”バーン” ではなく”シクシク” という哀れな音を立てて変化している。このままであることを願おう」…(「バイデンの中国に対する技術戦争」https://www.wsws.org/en/articles/2022/11/03/njnb-n03.html)

もう一度、このチャートを見てほしい。何がわかるだろうか?

まずわかるのはウクライナ(そしていずれは台湾)で見ている敵対関係は、世界経済の根本的な変化にまで遡ることができる、ということだ。中国はますます力をつけている。10年以内に米国経済を追い越す勢いだ。そして、成長があれば、一定の利益が伴う。世界最大の経済大国となった中国は、当然ながらアジア地域の覇権国となるだろう。そしてアジアの覇権国として、中国は「自国に有利なように地域紛争を解決し、米国の地域的・世界的リーダーシップを非正当化する」ことができるようになるのだ。

あなたはこの問題がわかるだろうか?

米国は20年近く、その外交政策を「アジアへの軸足」と呼ばれる「戦力の再均衡」戦略を中心に据えてきた。つまり米国は世界で最も人口が多く繁栄している地域であるアジアで支配的なプレーヤーになることを意図している。中国の台頭がワシントンの将来計画をいかに狂わせるか、おわかりいただけるだろうか。

米国はこの事態を戦わずに放置するつもりはない。米国は自分が支配しようとする市場を中国が独占することを許さないだろう。そんなことはあり得ない。もし、中国が独占すると思っているなら、考え直した方がいい。 米国は、中国に追い抜かれるようなシナリオを避けるために戦争に踏み切るだろう。実際、外交政策の権力者たちは、米国がまさにその目的のために中国と軍事的に関わることをすでに決定している。

つまり、我々の命題は単純で、第3次世界大戦はすでに始まっていると考えている。それだけである。ウクライナの混乱は第三次世界大戦の最初の一撃に過ぎない。すでに前例のないエネルギー危機、世界的な食糧難、世界的な供給ラインの壊滅的な崩壊、制御不能な広範囲のインフレ、極度の民族主義の確実な再興、戦争中のブロックへの世界の再分裂が引き起こされているのである。これ以上証拠が必要だろうか?

そして、これはすべて経済的なことだ。対立の起源はすべて世界経済の激変、中国の台頭、米国の避けられない衰退に遡ることができる。一つの帝国がもう一つの帝国に取って代わったということである。当然、このような大きな転換は、世界の勢力分布に地殻変動をもたらすことになる。そして、このような変化とともに、より多くの衝突が起こり、より多くの破壊が起こり、核戦争の危機が迫ってくる。そして、まさにこのような事態が進行しているのである。

では、このチャートはウクライナで起きていることをどう説明しているのだろうか?

ワシントンのウクライナにおける代理戦争は、実はロシアではなく中国に向けられたものである。ロシアは競争相手ではないし世界秩序の中で米国を置き去りにするような経済的な余力は持っていない。しかし、ノルド・ストリームは、モスクワとEU、特にヨーロッパの産業大国であるドイツとロシアの経済関係を大幅に強化し、米国に大きなリスクを呈した。モスクワとベルリンの同盟は、相互利益とドイツの繁栄の鍵であったが、世界最大の自由貿易圏として大陸間の距離を縮めることになる経済統合を阻止するために、妨害されなければならなかったのである米国はヨーロッパに対する経済的支配力を維持し、世界の基軸通貨であるドルを守るために、それを阻止しなければならなかった。しかしそれでも、米国がパイプラインそのものを爆破するという、歴史上最大の産業テロ行為を行うとは誰も予想していなかった。それは実に衝撃的であった。

要するに米国はロシアを、中国を包囲し、孤立させ、弱体化させるという「アジア基軸」計画の障害とみなしているのだ。しかし、ロシアは米国の世界的優位に対する最大の脅威ではない。全く違う。その呼称がつくのは中国である。

第三次世界大戦は、ロシアではなく、中国を封じ込めるために行われている。 ウクライナでの戦争が示唆しているのは、外交エリートたちの間で、「北京への道はモスクワを通る」というのが一般的な合意となっていることだ。それがコンセンサスとなっているようである。言い換えれば、米国の権力者たちは、アジアに米軍基地を広げるためにロシアを弱体化させたいと考えている。 最終的には、アジアの新しい臣民に対するワシントンの経済支配を実施するために軍隊が必要とされることになる。もし、その日が来ればの話だが。

ワシントンの野心的な計画が成功する可能性は極めて低いと我々は考えるが、それでもやはり実行されるであろうことは間違いない。はかない「一極集中の瞬間」と同じように短命の「アメリカの世紀」に時計の針を戻そうとする絶望的な試みで、何千万人もの人々が死ぬことになりそうである。それは理解を超えた悲劇である。

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