No. 1618 ベルリン、北京へ行く:真の取引

Berlin Goes to Beijing: The Real Deal

by Pepe Escobar

ショルツのキャラバン隊は、中国を特権的なメッセンジャーとしてロシアとの平和協定を結ぶための根回しに北京に赴いた。

マイケル・ハドソン教授の最新の論文{1}は、その独特な才能で歴史の深みに浸った経済分析を行い、十字軍と、覇権国が課している現在の「ルールベースの国際秩序」との間の、驚くべき相似性を提示している。

ハドソン教授は、王よりも、特にドイツの神聖ローマ帝国皇帝よりもローマ教庁が優先された時代に、宗教とは関係のない領域(聞き覚えがあるだろう?)に対して、いかにローマ教皇が一極支配を固定化することができたかについて詳述している。ご存知のように、半分冗談で、この帝国は神聖ローマでもドイツでもなく(おそらく少しローマ)、そして帝国ですらなかった。

ローマ教皇庁の勅令には、「ローマ教会と良い関係にない者」を破門する権限を教皇に与えるという条項があった。ハドソンは、米国の制裁が、いかに現代の破門に相当するかを鋭く指摘している。

このプロセスには、間違いなく2つの日付が存在する。

最初のものは、435年の第3回エキュメニカル公会議だろう。ここでローマに世界中の権限が寄与された。例えばアレキサンドリアやアンティオキアは、ローマ帝国内の地域的な権限に限定されていた。

もう1つは1054年で、ローマとコンスタンチノープルが永久に分裂した時である。つまり、ローマカトリック教会が正教会から分裂し、ロシア、そしてモスクワが第三のローマとなり、ここからロシアに対する「西洋」の何世紀にもわたる反感が生まれたのである。

戒厳令状態

ハドソン教授は次に、”レバーソーセージ”ショルツ首相の代表団が今週中国を訪問し、「国営企業の解体と経済への補助金の停止を要求し、さもなければドイツとヨーロッパは中国との貿易に制裁を加える」と言ったことについて掘り下げている。

実はこれは、ドイツ外交評議会がフィナンシャル・タイムズ(ロンドン・シティの日系メディア)に掲載した記事で述べた、子供じみた希望的観測に過ぎない。ハドソンが正しく表現しているように、欧州評議会は、「ドイツの脱工業化と米国への依存を要求するNATOの新自由主義的な部門」なのである。

つまりフィナンシャル・タイムズ紙は、予想通り、NATOの夢物語を載せているのだ。

重要なのは文脈である。ドイツ連邦共和国大統領のフランク=ヴァルター・シュタインマイアーは、ベルビューキャッスルでの基調講演で、ベルリンが破たんしていることを全面的に認めた。「ドイツにとって逆風の時代が始まり、困難で難しい時代がやってくる。ドイツは統一以来、最も深い危機に陥っている」と。

しかし、再び精神分裂症がトップに君臨し、シュタインマイヤーは、キエフでの馬鹿げた演出(バンカーに身を寄せる素人の俳優のようなポーズ)の後、ウクライナ人にさらに2基のMARSマルチロケットランチャーと4台のPanzerhaubitze 2000遠投機を提供すると発表したのである。

だから、たとえ「世界」経済(実際にはEU)が非常に脆弱化し、加盟国が自国民を傷つけることなくキエフを助けることができなくなり、EUが壊滅的なエネルギー危機に瀕していたとしても、Country404(ウクライナ)における「我々の価値観」のための戦いはすべてに優先するのである。

大きな構図での文脈も重要である。ミラノ大学の倫理哲学教授であるアンドレア・ゾックは、ジョルジョ・アガンベンの「例外状態」の概念を新たな高みに導いた。

ゾンビ化した西洋の集団は今や「戒厳令状態」に完全に服従しており、そこでは永遠の戦争というエートスが希薄なグローバルエリートにとって究極の優先事項になっているとゾックは提示している{2}。

トランスヒューマニズムから過疎化、さらにはキャンセル・カルチャーに至るまで、他のあらゆる変数は戒厳令の下にくるもので、基本的に本質ではない。重要なのは、絶対的で生々しい支配を行使することだけなのだ。

ベルリン―モスクワ―北京

ドイツの確固たる財界筋は、ドイツ外交評議会が中国訪問で伝えた「メッセージ」と完全に矛盾している。

これらの情報源によれば、ショルツのキャラバン隊は北京に行き、中国を特権的なメッセンジャーとして、ロシアとの平和協定を結ぶための根回しをしたという。

これは文字通り、地政学的にも地経済学的にも爆発的な出来事である。以前のコラムで指摘したように、ベルリンとモスクワは、いつもの容疑者が自暴自棄になってノルド・ストリームの爆破を決意する直前まで、ビジネスの対話者を介して秘密の連絡裏ルートを持っていた。

ノルド・ストリームの爆破から1分後、リズ・トラスのiPhoneからブリンケン米国務長官に送られた、今となっては有名なショートメールが合図だった。”It’s done” (終わった)。

もっとある。ショルツのキャラバンは、最終的に米国に代わって中国を重要な同盟国とする、長く複雑なプロセスを開始しようとしているのかもしれない。忘れてはならないのは、EUにおけるBRI貿易/接続の終点のトップはドイツ(ルールバレー)であるということだ。

ある情報筋によれば、「この取り組みが成功すれば、ドイツ、中国、ロシアは同盟を結び、米国をヨーロッパから追い出すことができる」そうだ。

別の情報筋は、おまけを提供した。「オラフ・ショルツは、ドイツを実際に支配し、自分たちが破壊されるのを黙って見ていないドイツの実業家たちに連れられて、この旅に出かけている」。

モスクワは、完全に支配され、産業が空洞化され、主権を失い属国となったEUに対して持っている帝国の目的をよく知っている。

結局のところ、裏ルートはバルト海の底にボロボロになって転がっているわけではない。さらに、中国は、ドイツやEUとの大規模な貿易が消滅しそうだというヒントは何も提供していない。

ショルツ自身、キャラバンが北京に到着する前日、中国メディアに対して、ドイツは中国との関係を切るつもりはなく、「中国を孤立させようという一部の人々の声」を正当化するものは何もないと強調した。

それと並行して、習近平と新政治局は、クレムリンの立場をよく理解しており、何度も繰り返しこう述べてきた。「ワシントンがロシア恐怖症にまみれてNATOを無制限に拡張するのを終わらせる話し合いを決意するなら、我々はいつでも交渉を受け入れる。」

つまり、交渉するということは、帝国が2021年12月1日にモスクワから受け取った、「安全保障の不可分性」に焦点を当てた文書の点線に署名することを意味する。そうでなければ、交渉することは何もない。

そして国防総省のロビイストであるレイセオン・オースティンがウクライナにケルソンへの進出を進言しているのだから、交渉の余地がないことはもっと明らかである。

つまりこれは、ベルリン、モスクワ、北京のユーラシア大陸横断地政学・地理経済回廊の礎石となるのだろうか?それはサヨナラ帝国を意味するだろう。もう一度言う。すべてが終わってしまうまでは何が起こるかわからない。

Links:

{1} http://thesaker.is/germanys-position-in-americas-new-world-order/

{2} https://www.lantidiplomatico.it/dettnews-andrea_zhok__lalba_dello_stato_di_diritto_marziale/39602_47777/

https://strategic-culture.org/news/2022/11/04/berlin-goes-to-beijing-the-real-deal/