Will Japan and South Korea Learn from US Allies in Europe?
by Conor Gallagher
日本と韓国はワシントンと北京の対立激化により難しい決断を迫られている。米国は、中国の経済的な孤立化、と軍事的な封じ込めに両国に加担させようとしているのだ。
ソウルと東京は、米国が要求する犠牲の例として、ロシアに対する取り組みによって苦しんでいる欧州の同盟国を見る必要はない。しかしそれでも日本と韓国の右派政権は、自国の経済を崩壊させかねない、勝ち目のない紛争の最前線に夢遊病者のように入り込んでいるように見える。
東京とソウルはロシアへは実利主義で対応できたが、中国に対する米国の経済戦争で起こることを乗り切るためにはより困難な時間を過ごすことになりそうな兆候がでている。
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今月初め、ASEANサミットの傍らで行われた会議の後、日米韓の首脳は中国に対して共同声明を発表し、「台湾海峡の平和と安定を維持する」よう呼びかけた。声明はこうも付け加えた。
バイデン大統領は、日本と韓国を防衛するという米国のコミットメントは鉄則であり、核兵器を含むあらゆる能力によって支えられていると繰り返し述べた。首脳たちはインド太平洋水域における現状を変更しようとする、いかなる不法な海洋権益の主張、埋立地の軍事化、強制的な活動を含む一方的な試みに強く反対する。
米国は、以前は議論の余地のなかった台湾に関する「一つの中国」政策について、あらゆる手段を講じて論争を煽っている。何十億ドルもの軍事援助が台湾に行き、ナンシー・ペロシ訪台もそれにつながったで。中国による台湾「侵略」をめぐる危機を捏造し、韓国と日本(グアムなど他の地域)の軍備増強の理由としているのである。
共同通信によると、東京は中国の一部に届くような新しい長距離ミサイルの開発に取り組んでいる。陸上自衛隊の元中将、志方俊之氏はStars and Stripes誌にこう語っている。
(憲法を)変えることは必要だが、政党が一致団結することが重要だ。ミサイルの能力を変えるだけでなく、国の安全保障の概念を変える必要がある・・・中国が台湾を攻撃すれば、日本人の命が脅かされることになる。日本は兵器を強化するしかない。
岸田文雄首相は中国に対する好戦的なタカ派で知られ、しばしば「今日のウクライナは明日の東アジアになりうる」と主張し、北京が台湾への「いわれのない」侵略を計画しているというアメリカの非難を助長している。
日本の動きは「国の主権としての戦争と、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇または使用を永久に放棄する」という憲法第9条を無視しているが、その脅威は明らかに無視できないほど大きい。
読売新聞は月曜日に、12月に発表される予定の日本の国家安全保障戦略文書では、NATOと連携し、日本の利益に対する挑戦として中国を名指しすると報じた。そして、日本はその認識された挑戦に対応するために、軍事力を増強している。
ジャパンタイムズ紙によると、東京は「反撃能力」を目的として、アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」を購入する方向で動いているという。この兵器の必要性は、最近行われたアメリカとの作戦検討の後に生じた。日本の2022年版防衛白書によると、南日本や沖縄と台湾の間の島々で、対艦・対空ミサイル、複数の情報・監視・偵察部隊、電子戦や対アクセス任務に特化したグループによる防衛を強化する予定である。
東京はまた、電磁石レールガン、ドローン群に対抗する高出力マイクロ波エネルギーシステム、忠実なウイングマンドローン、スクラムジェットエンジン技術を作るための防衛研究開発努力も続けている。これまでの日本の白書とは異なり、2022年版は外交的な建前を捨て、その代わりに中国を脅威と声高に宣言した。
岸田首相は最近、「東シナ海や南シナ海など、わが国を取り巻く国家安全保障環境は厳しさを増している」と述べた。「新しい艦艇の建造、ミサイル防衛能力の強化、職員の労働条件と報酬の改善など、海軍力の強化は待ったなしだ」。
今月初め、日本はNATOのサイバー防衛協力センターに参加し、東京とベルリンも物資や後方支援の交換を目的とした軍事協定の交渉を開始するなど、防衛協力を強化することに合意した。
今年、尹錫悦大統領は、韓国として初めてNATO首脳会議に出席し、その後、NATOへの韓国代表団の派遣を受け入れた。
3月の選挙に向け、尹大統領は前任者の外交政策との決別を約束し、北朝鮮や中国と直接対決し、太平洋における米国の軍備増強に協力することを誓った。彼はその約束を実行に移しつつある。
在韓米軍は、ソウルから南に約130マイル離れた小さな星州郡に配備されている終末高高度防衛(THAAD)ミサイル防衛システムのアップグレードを行っている。THAAD配備の理由は常に北朝鮮にあるとされているが、そのレーダーは中国の領空を覗くことができる。尹大統領はTHAADシステムをもう1基追加することも支持すると表明している。
思い起こせば6年前、THAADの初期配備後、北京は非公式な制裁と関税を韓国経済に適用した。尹大統領の前任者である文在寅は、ソウルがTHAADシステムを追加配備せず、米国主導のミサイル防衛ネットワークに参加し、ワシントンや東京と軍事同盟を結ばないことを公約して、北京との関係を修復しようとした。
また、韓国では原子力潜水艦を推進する動きもあるが、その必要性が具体的に何なのかは不明である。ソウルは既に北朝鮮に対して強力な対潜能力を持ち、効果的な通常型潜水艦の艦隊を保有している。Asia Timesは次のように記している。
戦略的に重要な展開となる可能性として、米国と韓国は先月、小型モジュール原子炉(SMR)技術を共有することに合意した。これは、ソウルが原子力潜水艦を独自に開発する道を開くかもしれない。
この合意は、機密性の高い核技術の共有を制限する、1972年から続く米国の対韓国政策を変更するものであった‥‥
韓国は、東シナ海や南シナ海での潜在的な紛争において、原子力潜水艦を使って米軍を支援することができる。しかしソウルの戦略的利益は、北朝鮮との交渉のテーブルで必要とする中国を封じ込めようとする米国主導の試みとは完全には相容れないものである。
北朝鮮問題のために、ソウルにとって状況はより複雑になっており、ワシントンにとっては現状維持のほうが有益である。
トランプ政権時代には、朝鮮半島の非核化に向けた合意という壮大な話があったことを思い出してほしい。2019年のハノイ・サミットが失敗に終わりその期待は薄れたが、バイデン政権にはその協議が行き詰まったところを拾うチャンスが残っていた。その代わりに、平壌からのミサイル発射、米国主導の制裁、韓国への武器供与に再び戻ってしまった。
北朝鮮との協議には根本的な問題がある。紛争に終止符が打たれれば、米韓同盟の崩壊につながりかねないことだ。タフツ大学フレッチャー校のイ・ソンユン教授は、ザ・ディプロマット誌にこう語っている。
米国は、終戦声明が非核化なしの平和条約の前奏曲であることを知っている。 そしてそれは、連合軍司令部の解体や韓国軍の立ち退きを要求することにつながる。
また、最近、日本が豪英米の原子力潜水艦の協定に参加するという話も出てきている。中国のThe Washington Postの社説に相当するThe Global Timesから抜粋する。
中国国際問題研究所のYang Xiyu主任研究員と中国の軍事専門家でテレビ解説者のSong Zhongpingは、Global Times紙に、日本が遅かれ早かれAUKUSに参加することは予想され、それは時間の問題であると語った。
Yangは、北京との緊張関係やいわゆる中国の脅威は口実に過ぎず、東京が防衛費を増やしたり、軍事団体に参加したりするのは軍事大国となることを望んでいるからだと指摘している。
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米国は中国の高度な技術産業を締め付けるために、この10月、世界のあらゆる場所で米国製装置で製造された特定の種類の半導体チップを中国から切り離すために一連の輸出規制を実施した。
今のところ、それは米国の努力に過ぎず、中国はまだ韓国や日本などから高度なチップやチップ装置を手に入れることができる。
人工知能ガバナンス・プロジェクトのディレクターで、戦略国際問題研究所の上級研究員であるグレゴリー・C・アレンは、米国はすべての同盟国が「中国の半導体産業を抑えることに関して同じ方向に漕ぎ出す」ことを確認する必要があると書いている。これらの一方的な輸出規制を多国間的なものに変えることは大きな課題となるだろう。これが今後の欧州、日本、台湾、韓国との協議におけるホワイトハウスの重要な外交的優先事項となると思われる。
今のところはそうではない。バイデン政権はEU、日本、韓国などの同盟国を説得して規制に参加させようとしたが、最終的にすべて断られた。米国は1年間の免除を認めたが、何らかの輸出規制に直面する恐れが伴うため、圧力が強まることが予想される。以下、ジャパンタイムズより。
「長期的にはメモリーチップ産業が最も大きな影響を受ける可能性があり、米国のパートナー国に拠点を置く企業が巻き添えを食う危険性がある」。ロディウム・グループはこう指摘し、米国のライセンス決定に翻弄される韓国のチップメーカーであるSKハイニックスとサムスンがサプライチェーンの再構築に伴う多額のコストに直面する可能性があるという。
両社と世界最大のチップメーカーである台湾積体電路製造公司は、1年間の免除を得たが、最近SKハイニックスが、アメリカの輸出規制が強化されれば、中国での製造事業を売却せざるを得ないかもしれないと発表するなど、解決策を求める圧力が強まっている。
一方、日本のチップメーカーは中国にそのような規制に直面する施設を持たず、また中国に高度なチップを販売していないため、直接の影響は受けないだろう。
米国の圧力が効き始めている兆候もある。SKハイニックスのケビン・ノウ最高マーケティング責任者は先月、同社が中国での製造事業を売却せざるを得なくなる可能性があると述べた。AP通信より。
もし、装置ごとに(米国の)ライセンスを取得しなければならないような状況になれば、装置の供給が途絶えることになる……2020年代後半よりもずっと早い時期に、(中国の)製造設備の運用が困難になる可能性がある。
無錫工場を含む中国の生産設備の運用が困難になるような問題に直面した場合、それらの生産設備や装置を売却したり、韓国に持ち込むなど、さまざまなシナリオを考えている。
西安のサムスンのNAND工場と無錫のSKハイニックスのDRAM工場に加えて、韓国は半導体製品の6割を中国に販売している。2021年には5230億ドル相当の売上となり、韓国の半導体輸出の40%近くを占めている。韓国のチップメーカーは中国の部品に大きく依存しており、このような貴重な市場から切り離されれば、悲惨な経済的影響を受ける可能性がある。北京は、韓国が米国の経済戦争に参加した場合、報復措置を取ると脅している。
日本のチップ製造装置および材料メーカーは、日本のグローバルプレーヤーがこれらの分野に集中しており、中国への半導体製造装置の輸出が近年増加しているため、大きな打撃を受けることになるだろう。ジャパンタイムズより。
「この規制がどのように機能するかはまだ不明だが、素直に解釈すれば、日本のチップ産業へのダメージは甚大である」と三菱総合研究所の森重昭宏研究員は言う。…
昨年の輸出額は、過去最高の3兆3千億円(現在の為替レートで236億7千万ドル)を記録し、中国が約39%と最大のシェアを占めた。今年も1-9月期だけですでに3兆円を突破している。
西村康稔産業相は今月初め、政府が米国と連絡を取り合い、国内企業との話し合いを行っていると述べた。
日本も韓国もすでに経済的な問題に直面しており、中国との貿易戦争は壊滅的な打撃となる可能性がある。日本経済は7-9月期に縮小した。同時期に30%の円安が進行したにもかかわらず、国内総生産(GDP)は年率1.2%の縮小に止まった。
10月の韓国の輸出が前年同期比で5.7%減少したのは、中国への輸出減速が主な原因である。その結果、貿易収支は67億ドルの赤字となり、9月の37億8000万ドルの赤字より大きく、7カ月連続で輸入が輸出を上回った。
日銀のバランスシートはすでに5兆ドル規模を超えた。一方、インフレ率は、円安で物価が上昇し、目標の2%をはるかに超えている。
日本の貿易に占める中国の割合は1〜9月期で20%であり、日本の中国市場に対する依存度が高いことがわかる。
日本はチップ製造を増やそうとしているが、中国市場から切り離されれば、やはり大きな打撃を受けるだろう。Tech Monitorより。
日本は国内のチップ製造能力を急速に高めており、これまでに6000億円以上の投資額を発表している。今月初め、日本政府はソニーグループとNECが主導する新しい半導体ベンチャー企業「ラピドス」に対して約5億ドルの投資を行うことを明らかにした。この新しい投資は、TSMC、Kioxia Corp、Western Digital Corp、Micron Technologyへの複数の投資誓約に続くもので、日本が欧米資本を誘致していることを表している。
しかし、組み立てであれレアアースであれ、中国市場から切り離されることはこうしたベンチャー企業にとって大きな課題となる可能性がある。Global Timesは、このことが日本にとってどのような意味を持つか、詳しく説明している。
もし東京がアメリカの圧力に屈して、世界の主要な半導体市場である中国への輸出規制についてワシントンのリードに同調するならば、現在日本でビジネスをしている半導体企業の利益を損なうだけでなく、世界の投資家にとってこの産業の魅力が弱まることになるだろう。
中国はこれまでにも自国の強みに物を言わせてきた歴史があり、日本もそれを肌で感じてきた。2010年には、中国漁船の船長が領有権のある島の近くで逮捕されたことへの報復として、北京は日本へのレアアース輸出を阻止した。世界のレアアース加工の大半は中国で行われている。
日本は他の国々と同様、中国産レアアースへの依存を減らす計画を立てているが、簡単には解決しない。ジャパンタイムズはこう説明する。
しかし、特に米国を含む一部の国の依存度の高さと、供給源の多様化のためにこれまでに行われた投資の限定を考えると、早急な解決は望めないだろう。
現時点では、レアアースを消費する商業規模の事業について語るとき、中国を『回避』することはできない、とロンドンに拠点を置く商品調査会社CRUのコンサルタント、ダーン・デ・ヨンジは言う。
「中国がレアアースのサプライチェーンの各段階で最も大きな処理能力を占めているため、レアアース磁石の大半は中国を経由しているか、少なくともどこかの時点で中国に依存していると思われる」と述べ、これには軍事・防衛用途だけでなく電気自動車用の磁石も含まれると指摘した。
「中国以外の鉱山で鉱石を生産し、NdPr(ネオジム・プラセオジム)を分離し、それを日本の磁石メーカーに販売したとしても、高温用途のために中国からジスプロシウムを輸入しなければならない」という。
貿易戦争が激化すると日本にとってどれほどの打撃になるのだろうか。Nikkei Asiaはこう報じている。
もし、日本が中国から輸入している原材料や部品の80%、1兆4千億円相当が2カ月間途絶えたとしたら日本は家電、自動車、樹脂、衣料、食品などさまざまな製品を生産できなくなる。早稲田大学の戸堂康之教授らの試算によると、約53兆円(3600億ドル)分の生産がなくなり、製品価格も上昇するという。サプライチェーン調査会社のオウルズ・コンサルティング・グループ(東京)によると、家電や自動車など主要80製品が中国からの輸入をやめ、国内生産や他の地域からの調達に切り替わった場合、年間13兆7千億円のコストアップになるという。これは東京証券取引所プライム市場に上場する製造業企業の純利益の7割に相当する。
欧州諸国が、意図したターゲットのロシアより自らを傷つけるのと同じように、中国との経済戦争では太平洋に面した米国の同盟国にも同じ運命が待っているだろう。日本や韓国の経済は下降線をたどるだろうが、中国での先進的なチップ生産を止めるという目標全体は非現実的と見られている。
中国は、わずか数年で先進的なチップを生産する能力を獲得することができると考えられている。一方、米国は、同盟国が自陣営にしっかりととどまることを保証するだろう。負け組みではあるが。China Briefingによると。
半導体産業のサプライチェーンは、製造に必要な鉱産物をどこで調達するかという地理的な問題に徐々に絞られ始めている。米国にとっての難問はこれらの鉱物を自前で十分に保有できず、輸入に頼らざるを得ないというものだ。オーストラリアは主要な供給国であり、今後もそうであり続けるだろうし、日本や韓国もこれらの一部を埋蔵している。米国が東アジアに関与しているのはこのためである。半導体とハイテク産業の競争に打ち勝つためには、これらの国々を味方につける必要があるのである。しかしその一方で、中国、ロシア、トルコなど、米国が明らかに関係を悪くしている国もある。エネルギー争奪戦は中国、ロシアに有利であり、米国はサプライチェーン・マネージメントに細心の注意を払わなければならない。
米国が中国とロシアを抑えるためにモグラたたきをする一方で、中国とロシアは上海協力機構、ユーラシア経済連合、地域包括的経済パートナーシップなどを通じてユーラシアをまとめ続けている。
アジア相互協力信頼醸成措置会議は、先日カザフスタンで開催された首脳会議で、アジアにおける経済・安全保障協力のための本格的な組織となることを決定した。27カ国からなるこのグループは、世界のGDPの3分の2を占めている。
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