マイケル・ハドソン ドイツ語インタビュー
by Herzliche Grüße aus Berlin!
https://www.unz.com (2022年12月15日)
親愛なるハドソン教授、あらためて、Herzliche Grüße aus Berlin!(ベルリンからこんにちは)。
前回は6月にドイツの雑誌「Four」のためにお話を伺いました。今、私はMEGA Radioというドイツ、オーストリア、スイスのラジオニュース局でも働いています。ウィーンから放送しており、ベルリン、バイエルン、オーストリアに拠点があります。
ここで、私たちのラジオ番組用に録音するために、ZOOMを使ってもう一度インタビューをしたいと思います。前回のインタビューのアップデートです。20~30分程度になるかと思います。
あまりに急かもしれませんが、来週か再来週、そのような話をする時間をいただけますか?そうでなければ、1月の初めでも。以下、質問です。
1 前回の『Four』誌のインタビューであなたはいくつかの予測をしていましたが、それは現実のものとなりました。
肥料を作っているドイツ企業の危機についてお話しされました。これは私たちのインタビューの数週間後にニュースになりました。
また、あなたはこうも言いました。『あなたが「ノルド・ストリーム2を阻止する」と表現しているのは、実際にはバイ・アメリカン政策(米国製品を優先的に購入すること)なのだ』これは、ノルド・ストリームパイプラインの破壊後、より明確になりました。それについてコメントをお願いします。
マイケル・ハドソン:米国の外交政策は、長い間、国際石油貿易を支配することに集中してきました。この取引は米国の国際収支に大きく寄与しており、その支配は米国の外交官に他国を締め付ける力を与えているのです。
石油はエネルギーの主要供給源であり、主要国の労働生産性とGDPの上昇は、労働者一人当たりのエネルギー使用量の上昇を反映する傾向があります。石油やガスは燃やしてエネルギーを得るだけでなく、肥料の原料として、ひいては農業の生産性向上に寄与しています。石油とガスは、肥料や農業生産性、プラスチックやその他の化学製品の生産に必要な基本的な化学物質なのです。
だから米国の戦略家は、石油やその派生物から切り離せば、その国の産業や農業がだめになることを認識しているのです。米国がその制裁をちらつかせるために、石油取引から「追い出されたくない」各国は、米国の政策に依存せざるを得なくなります。
米国の外交官は長年にわたり、欧州に対し、ロシアの石油やガスに依存しないよう説いてきました。その目的は2つあります。ロシアから主要な貿易黒字を奪うこと、そして米国の石油生産者のために広大な欧州市場を獲得することです。米国の外交官は、ドイツの指導者たちにノルド・ストリーム2のパイプラインを承認しないよう説得し、ついにはウクライナでのロシアとのNATO戦争を口実にノルド・ストリーム1と2の両方のパイプラインの破壊を目的に、一方的に行動するよう仕向けたのです。
2 視聴者、リスナーの皆さんのために、あなたの新著『文明の運命:金融資本主義、産業資本主義、社会主義』(2022年)の中で、あなたは世界経済が今2つのグループに分かれていると述べています。アメリカとヨーロッパから成るドル化されたグループと、そしてこの西側の新自由主義圏が追いやる、ユーラシアとグローバルサウスの大部分から成るグループです。11月のインタビューであなたはこのように述べました。
これを説明していただけませんか?
マイケル・ハドソン:この分裂は地理的なものだけでなく、何よりも西側の新自由主義と、産業資本主義の伝統的な論理との間の対立を反映しています。西洋は、産業資本主義を金融資本主義に置き換えることで経済を脱工業化しました。最初は、外国人労働者を雇用するために海外に移転することで賃金を抑えようとし、その後、独占的特権と武器(そして今は石油)およびハイテク必需品の市場を確立しようとし、レンティア経済となったのです。
一世紀前、産業資本主義は産業社会主義に進化すると予想されていました。政府が補助金を出して基本的なインフラサービス(医療、教育、通信、研究開発など)を提供し、生活やビジネスのコストを最小化するのです。アメリカやドイツはそうやって工業力を高めてきたし、最近では中国やユーラシア大陸の国々がそうしてきました。
しかし、西側諸国は基本的なインフラを民営化し、金融化することを選択し、政府の役割を解体してウォール街やロンドンなどの金融センターに政策立案機能を移行させたため、他の国に提供するものがほとんどなくなってしまいました。提供できるとすれば、もし彼らが自国の富を米国の投資家や企業に移転させるのではなく、自国の富を保持しようとしても爆撃したり敵として扱ったりしないという約束だけでした。
その結果、中国や他の国々が、南北戦争の終わりから第二次世界大戦にかけて米国が行ったのと同じ方法で経済を発展させると、敵国として扱われることになったのです。まるで米国の外交官が、ゲームに負けて自分たちの経済は負債だらけで、民営化され、高コストになって競争できなくなったので、最終的にゲームが終わるまで、できるだけ長く他国を従属させ続けたいと願っているかのようなものです。
もし米国が金融新自由主義を世界に押し付けることに成功すれば、他の国も米国と同じような問題を抱えることになるでしょう。
3 現在、米国からの液化天然ガス(LNG)を受け入れるために最初のターミナル(LNGの受入・貯蔵・気化を行う施設)がドイツに開設されました。このことは、ドイツと米国の貿易や相互依存/被依存関係にどのような影響を与えるのでしょうか?
マイケル・ハドソン:米国の制裁とノルド・ストリーム1、2の破壊によって、欧州は米国の供給に依存するようになりました。LNGのコストはあまりにも高く(米国やアジア人が支払わなければならないコストの約6倍)、ドイツや他の国々は製鉄、ガラス製造、アルミニウム、その他多くの分野で競争力を失いました。このため、米国の関連会社は、他国に行った投資先、あるいは米国から直接その空白を埋めたいと考えています。
ドイツやヨーロッパの重工業、化学、その他の製造業は、ロシアやイラン、その他の国から買うなと言われている石油やその他の必需品を得るために、米国に移動しなければならなくなると予想されます。1945年以来そうであったように、制裁金や罰金を課し、アメリカのNGOや全米民主化基金(NED)の手下がヨーロッパの政治に介入することによって、ロシアやアジアに移転することを阻止することができるという想定なのです。この世界的な分裂とヨーロッパの産業の米国へのシフトに意欲的な政治家によって新たなグラディオ作戦(グラディオ作戦とは冷戦期に米国とNATOが操っていた謀略活動)が展開されることが予想されます。
問題は、ドイツの熟練労働者がそれに従うかどうかです。たぶん人の移動が起こるでしょう。バルト諸国では人口の減少が起こりました。新自由主義政策の副産物なのです。
4 ロシアとウクライナの戦争における現在の軍事的状況について、どのようにお考えですか?
マイケル・ハドソン:2月か3月にロシアが簡単に勝利しそうです。ロシア語圏(おそらくロシアに編入されることになる)を親NATOの西側から守り破壊工作やテロを防ぐための非武装地帯を作るでしょう。
ヨーロッパは、貿易や投資を通じて相互利益を求めるよりも、ロシアとその同盟国をボイコットし続けるように言われるでしょう。米国はポーランドなどに対し、ウクライナを模して「最後の一人まで戦う」あるいはリトアニアになるよう促すかもしれません。ハンガリーには圧力をかけるでしょう。しかし、なによりも、膨大な費用をかけて、主に米国の武器で、ヨーロッパに再軍備をするよう主張するでしょう。この出費は、ヨーロッパに広がる産業不況に対処するための社会支出や、産業を復興させるための補助金を圧迫することになります。つまり、軍事経済は諸経費が上がる一方で、政府債務とともに消費者と産業界の債務が増加するのです。
こうなった時ロシアはNATOに対して国境線を1991年以前のものに戻すよう要求するかもしれません。それが最も可能性の高い紛争の火種となります。
5 この戦争における現在の金融情勢をどう見ていますか?G7とEUの政府は、すでに戦後のウクライナの再建と復興について話しています。これは欧米の企業や金融資本主義にとってどのような意味を持つのでしょうか。
マイケル・ハドソン:ウクライナはほとんど再建されないでしょう。まず第一に、人口の多くが国外に流出し、住宅やインフラも破壊され、夫もいなくなり、戻ってくる可能性は低いでしょう。
第二に、ウクライナは主に狭い範囲のクレプトクラート(泥棒政治家)のグループによって所有されており、彼らは西側の農業投資家や他のハゲタカに売り渡そうとしています(彼らが誰であるかはご存じかと思います)。
ウクライナはすでに借金まみれでIMF(実質的にはNATO)の領地になっています。ヨーロッパは「貢献」するよう求められ、ロシアから押収した外貨準備は、ウクライナで見せかけの経済を再建して大儲けするアメリカ企業を雇うために使われるかもしれません。そうなればさらに債務超過になります。
民主党の新国務長官はマデリン・オルブライトと同じように、ウクライナの経済、子供、兵士を殺したことは、アメリカ式の民主主義を広めるための代償として「すべて価値があった」と言うでしょう。
6 対ロシア制裁の背景に関する報道をたくさん読みました。ロシアはすべての製品、特に技術を自分たちで生産できないので、ますます制裁はロシアを苦しめるようです。一方、ロシアは中国やインドでより安定したビジネスやバイヤーを得ることができるようになりました。あなたの分析では、制裁は実際にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
マイケル・ハドソン:米国の制裁は、ロシアにとって予期せぬ天の恵みになりました。例えば農業では、リトアニアなどバルト海沿岸の乳製品輸出に対する制裁が、ロシア国内のチーズ・乳製品分野の開花につながりました。西側の制裁が1930年代に米国が自国の農業の近代化のために用いた保護関税や輸入割当とほぼ同じ効果をもたらしたおかげで、ロシアは今や世界最大の穀物輸出国となっています。
もしバイデン大統領がロシアの秘密工作員であったとしても、これほどロシアを助けることはできなかったでしょう。ロシアは保護主義による経済的孤立状態を必要としており、新自由主義的な自由貿易政策に魅了されても、自力でそれを行うことはできませんでした。そこでアメリカが代わりにやってくれたのです。
制裁は、少なくとも食料やエネルギーといった基本的なニーズについて、より自立することを義務づけます。この自立は、政権交代や従順さを強要するアメリカの経済的不安定化に対する最善の防御策なのです。
ウクライナでの戦闘が終わった後でも、ロシアがヨーロッパから購入する必要性が大幅に減るという効果もあります。ロシアがヨーロッパに原材料を輸出する必要性も少なくなるのです。つまりヨーロッパに依存しなくなります。ヨーロッパにあった産業の中心は、アメリカよりもロシアやアジアの同盟国になるかもしれません。
これが、NATOの新しい鉄のカーテンの皮肉な結果です。
7 ロシア、中国、インドをどのようみていますか?産業資本主義、または社会主義ですか?
マイケル・ハドソン: ロシア、インド、中国(RIC)は、BRICSの当初の中核でしたが、現在はイランや中央アジアの大部分、中国の一帯一路(BRI)構想に関わる道路を含むまでに大きく広がっています。その目的は、ユーラシア大陸がもはや欧州や北米に依存する必要がなくなることです。
ドナルド・ラムズフェルド国防長官は、しばしば「旧ヨーロッパ」を縮小するデッドゾーンと呼びました。100年前に計画された、生活水準や労働生産性の向上、科学や産業への政府補助を伴う社会主義経済への進化に失敗したのです。ヨーロッパはマルクス主義だけでなく、アダム・スミス、ジョン・スチュアート・ミルやその同時代の古典的経済学にあるマルクス主義的分析の基礎も拒否しました。この路線はユーラシア大陸でも踏襲され、オーストリア学派やシカゴ学派の右翼的な反政府自由主義がNATO経済を内部から破壊しています。
産業と技術のリーダーシップの中心が東に移動すれば、ヨーロッパの投資と労働はおそらくそれに続くでしょう。
アメリカ人がイギリスを観光するように、ユーラシア諸国も観光客としてヨーロッパを訪れ、封建時代の貴族や宮殿の衛兵の配置など、騎士やドラゴンの時代の古風な思い出をテーマパークとして楽しむことでしょう。ヨーロッパ諸国は、ジャマイカやカリブ海諸国のように、ホテルや接客業が主な成長分野となり、フランス人やドイツ人のウェイターがハリウッドのような古風な衣装を身にまとって登場することでしょう。ヨーロッパそのものがポスト工業化社会の博物館のようなものになり、美術館は大繁盛するでしょう。
8 現在、暗号通貨取引所FXTの崩壊と破産を目の当たりにしています。この会社の経営者は非常に犯罪的であると思われます。あなたはそれをどのように判断しますか?
マイケル・ハドソン:犯罪が暗号通貨をここ数年成長分野にしたのです。投資家が暗号通貨を買ったのは、国際的な麻薬取引、武器取引、その他の犯罪、脱税で儲けている財産のための手段であるからです。これらは、欧米経済における産業革命後の偉大な成長セクターなのです。
ねずみ講は、その離陸の段階、つまりポンプ・アンド・ダンプ(釣り上げた後、売り逃げる)の段階では、良い投資手段になることがしばしばあります。犯罪者が暗号通貨を資金移動に使うだけでなく、実際に「抑圧的な政府の規制から解放された」独自の通貨を設定することは必然的なことでした。犯罪者たちは究極のシカゴ学派の自由市場リバータリアンです。
19世紀半ばにアメリカのワイルド・ウェストの銀行が自由に通貨を印刷したように、誰でも自分の通貨を作ることができるのです。20世紀初頭に買い物に行くと、店にはまだ、さまざまな価値の紙幣がありました。デザイン性の高いものが成功する傾向がありました。
9 FTXとウクライナ、キエフ政府とのビジネス関係について、何かご存知ですか?オルタナティヴ・メディアで、そのような噂や報道があったようですが?
マイケル・ハドソン:IMFと米国議会は、ウクライナ政府とその担当の泥棒政治家たちに多額の資金を支払っています。新聞によれば、この資金の多くはFTXに渡っており、FTXは(ウクライナの資産を買い占めようとしているとも言われるジョージ・ソロスに次いで)民主党の第2位の資金提供者になっているそうです。つまり、循環的な流れが働いているように見えます。米国議会はウクライナへの資金提供について投票し、その資金の一部をFTX暗号通貨に入れ、親ウクライナの政治家の政治活動に支払っているのです。
10 数ヶ月前、米国の報道機関が、米国連邦準備銀行(FED)がデジタルドル、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を作る計画があると報じました。また、ヨーロッパでは、ECBのラガルド総裁とドイツのリンドナー財務大臣が、デジタルユーロの導入について話しています。
ここドイツでは、一部の批判的な専門家が、これは国民と顧客の全面的な監視を推し進めるだけだと警告しています。
デジタル通貨について、どのようにお考えですか?
マイケル・ハドソン:私の専門ではありません。銀行はすべて電子化されています。では、「デジタル」とはどういう意味なのでしょうか?自由主義者にとっては、政府の監視がないことを意味しますが、政府の手にかかると、誰もが使うものすべての記録を政府が持つことになります。
11 現在のドル、ユーロ、英ポンド、金、銀の弱さや強さについて、どうお考えですか?
マイケル・ハドソン:ドルは、ユーロ圏を従属させることに成功したおかげで、需要は維持されるでしょう。英ポンドは支えが少なく、外国人が英ポンドに投資する理由もほとんどありません。ユーロはドルのジュニア・サテライト通貨です。
ドルや他の通貨で外貨準備を保有することができなければ、各国政府は金の保有比率を増やし続けるでしょう。金には政府の債務が付随しないからです。したがって、米国の当局者はロシアの外貨準備に対して行ったような略奪を、金に対してはできなくなります。ユーロ圏は、外貨準備を奪えという米国の命令に従う可能性を否定できないため敬遠されるでしょう。
ユーロの為替レートがドルに対して下落すると、海外からの投資は減少します。なぜなら、投資家は(1)縮小する市場や、(2)ドルや本国の通貨に対して価値が下がるユーロを稼ぐ企業に投資したがらないからです。
もちろん、イングランド銀行がベネズエラの金を奪って、ベネズエラの右翼のアメリカの代理人に渡したように、金を簡単に奪うことができないように、金は自国内に保管しなければならないでしょう。ドイツは、ニューヨークの米国連邦準備銀行の金庫から金の引き揚げを加速しているのは賢明です。
12 世界のエネルギー危機と金融危機について、現在どのように分析されていますか?
マイケル・ハドソン:本当の危機ではなく、ゆっくりとした崩壊です。アメリカが輸出するもの、つまり石油、食料、IT独占財に支払われる価格の上昇により消費者の生活費は賃金より速く上昇します。そのため、ほとんどの家庭で締め付けが厳しくなるでしょう。中産階級は、結局は本当に賃金を稼ぐ階級であることに気づき、より深い負債を抱えることになります。特に、住宅ローンを組んで家を買うことで身を守ろうとする場合です。
私は借金の歴史について11世紀と12世紀を研究しているのですが、あなたが質問されたことに関連する可能性のある物語に出くわしました。NATOは防衛同盟だと主張し続けています。しかし、ロシアはヨーロッパを侵略する気はさらさらありません。理由は明白で、どんな軍隊も大国を侵略することはできないからです。もっと重要なことは、ロシアには、米国の傀儡敵として欧州を破壊する動機すらありません。ヨーロッパはすでに自滅しているのです。
ビザンツ帝国がセルジューク・トルコに敗れた1071年のマンジケルトの戦いを思い出します(その原因は主に皇帝が頼りにしていた将軍、アンドロニコス・ドゥーカスが離反し、皇帝を倒したこと)。ゲームの付録『Crusade of Kings』(2008年)はこの戦いを大きく取り上げ、アルプ・アルスランとロマノスの間で次のような会話が交わされたと主張しています。
アルプ・アルスラン :もし私が捕虜としてあなたの前に現れたら、あなたはどうするのですか?
ロマノス:おそらくお前を殺すか、コンスタンティノープルの街頭で展示するだろう。
アルプ・アルスラン:私の罰はもっと重い。私はお前を許し、自由にする。
これが、ヨーロッパがユーラシアから受けるであろう罰です。ヨーロッパの指導者たちは、米国の衛星となることを選択したのですから。