No. 1701 ドイツはNATOの戦列の弱点

Germany the Weakest Link in NATO

by Finian Cunningham

砲塔を吹き飛ばされたレオパルトの車体が戻ってくる時、ベルリンの政治的代償は耐えがたいものになるだろう。

ドイツの奏でるバイオリンの音は哀れで悲痛なものである。オラフ・ショルツ首相が、ドイツはロシアと戦うためにウクライナにレオパルト2戦車を提供しないと言ったわずか数日後に、ベルリンは恥ずかしい方向転換をした。レオパルドは送られる。

報道によれば、ドイツはこの恐ろしい戦場兵器を「一団」、つまり約14台送ることになっている。さらにベルリンは他のNATO加盟国にも、ドイツ製戦車をウクライナに再輸出する独自の認可を与えている。

先週金曜日、ドイツのラムシュタインにある米空軍基地で開かれたNATO主催の戦争サミットで、ショルツ政権は米国と他のNATO同盟国からのレオパルトのリリースの要求が高まるのに抵抗し、多くのオブザーバーを驚かせた。ショルツは何ヶ月も前から、このような行動でロシアを刺激して敵対行為をエスカレートさせたくないと言い続けてきた。他のドイツの兵器に関しても何度そう言っては屈服してきたことだろうか。

ラムシュタイン会談の直後からベルリンへの圧力は強まった。米国、英国、ポーランド、バルト諸国は、ドイツが臆病で恥ずかしいと非難した。ワルシャワは、ベルリンがどう言おうとレオパードを送ると嘲り、戦車の製造元として再輸出を許可しなければならないというドイツの規約を無視した。

決定的なのはワシントンの動きだった。バイデン政権は、以前は物流上の問題から主戦闘戦車「M1エイブラムス」を送らないと言っていたのに送ることにしたのである。これによって米国が戦車を送ることを条件にレオパルトを提供するとしていたベルリンは送らざるをえなくなった。

しかしここからが問題だった。ジョー・バイデン米大統領はエイブラムス30台の供給を命じているが、アメリカの戦車が戦争で使えるようになるには数カ月から最長で1年かかるだろう。なぜなら、エイブラムスはより大きな戦車で、戦車乗組員の訓練をより多く必要とするからだ。一方、ドイツのレオパルトはすぐにでも使える。

ワシントンは間違いなくベルリンを手玉にとっている。アメリカはあえてドイツに主力戦車を送り込ませ、あとからガソリンを大量に消費する自国の戦車を運ぶつもりなのだ。

ポーランドとバルト三国の手先が威張り散らしているのを尻目に、ベルリンが前言を翻すという光景はドイツの屈辱を物語っている。このような屈辱的な降伏をするために、西側の情報機関はショルツとその政府に対してどのような脅迫材料をもっているのだろうかと思わざるを得ない。

歴史は決して正確には繰り返さない。1941年、ナチス・ドイツがパンツァータイガー戦車でソ連に激突したとき、それは第三帝国の冷徹で残忍な指導のもとでの史上最大の陸上侵攻だった。今回は、ベルリンからの戦車は形ばかりで、いわゆる同盟国からさえ「レバーウァースト(レバーソーセージ)」と揶揄される気まぐれな首相の命令下にある。

しかしこれはドイツの体制が裏切り者の同盟国によって危険な政治ゲームにはめ込まれることを危惧していることの現れである。世論調査によれば、ドイツ国民はロシアに対してウクライナ戦争をエスカレートさせることに警戒心を抱いている。第二次世界大戦の苦い恥ずべき記憶と、ドイツが主導してヨーロッパ全土で行われ、最大3000万人ものソビエト市民が亡くなったことはあまりに耐え難いことなのだ。ベルリンが、腐敗しきったウクライナ政権に「民主主義を守る」というアメリカ主導の見せかけに甘んじることは、他の西側諸国と同様に、ドイツ国民の社会的・経済的苦難が激化しているときに、巨大な政治資金をリスクにさらしていることになる。

ドイツの体制派は、アメリカの命令に従うことが無謀で悪い考えであることを知っている。軍の司令官たちはレオパルトの派遣に反対するよう警告している。ビジネスリーダーたちもロシアとの二国間関係を非常識に破壊することに反対している。しかしその他の人たちはワシントンに屈している。恐喝なのか、それともイデオロギーの弱さなのか。おそらくその両方だろう。ドイツは結局のところ、主権国家というよりも、4万人の米軍と基地を持つ米軍占領地域なのである。

アメリカ帝国の支配者たちはヨーロッパをアメリカ資本の宗主国にしようと考えている。ドイツは、このアメリカのヨーロッパ支配の牽引役である。ロシア(と中国)との地政学的関係を消滅させることは、この計画の重要な部分である。しかし、ドイツには弱点があるという問題がある。

レオパルトを派遣するという形だけの行為はロシアに対して重大な挑発行為であるが、ウクライナ戦争の結果には何の影響も与えないだろう。キエフ政権はロシア軍を押し返すためと称して、少なくとも300台の戦車をNATOに要求してきた。ドイツをはじめとするヨーロッパの同盟国から数十台の戦車を提供されたところで、何の意味もない。さらに、空からの援護がない状況で戦車だけあっても非現実的に想定されているようなインパクトはないだろう。

とはいえ、ロシアがこの挑発に答えないわけがない。モスクワは、ドイツやポーランドなどから到着した戦車は、線路から降りて前線に近づく前に破壊すると警告している。ロシアの航空戦力と精密なミサイルがあれば、このような脅威は無いに等しい。

砲塔を吹き飛ばされたレオパルドの車体が、焼死体とともにもどってくるとき、ベルリンの政治的代償は耐え難いものになるだろう。そのときNATOの手先の間の軋轢は煮えていたものが沸点に達するだろう。そしてNATOの戦争マシンの線路は外れるだろう。

キエフ政権は、戦場で優れたロシアの兵力に対して向かうという命令に従わない歩兵を撃っている。ワシントンのベルリンへの要求は同じ自滅的な強制に等しい。

Germany the Weakest Link in NATO’s War Tracks