No. 1710 ノルドストリーム破壊行為に対するノルウェーの償い

Norway’s atonement for Nord Stream sabotage

有名な米国人ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが、2022年9月の米国とノルウェーによるノルドストリーム・ガスパイプラインの破壊工作を暴露した。

by M K Bradrakumar

1月14日にブリュッセルで行われた「ラムシュタイン」形式の米国防総省のウクライナ防衛コンタクトグループの国防相会議は、キエフへの攻撃用武器の供給について大きな発表を行うことができなかった。

しかしジョー・バイデン米大統領は来週初めにポーランドに到着する予定で、ウラジーミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領と再び直接会談するかもしれない。バイデンはおそらく2024年の大統領選挙への立候補を宣言する前に、話題を提供するつもりなのだろう。

バイデン政権はドイツをウクライナ戦線に追い込みたいが、ブリュッセルでの会談は結論が出ないまま終わった。その後、ロイド・オースティン米国防長官の記者会見は、中身のない、空疎な雰囲気が漂っていた。

このような不透明な状況の中でNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長が言ったのは、「ウクライナへの軍用機供給が検討されているが、これは緊急の問題ではない」ということだけだった。彼によれば現在の紛争は「兵站」と弾薬の争いであり、NATOはウクライナに新しい兵器を提供することよりも、すでに納入されたものがすべて機能するようにすることが必要なのだという。ストルテンベルは、ドイツのマーダー歩兵戦闘車、アメリカのブラッドレー、ドイツのレオパルド2戦車に関する約束を履行する必要性を強調した。

火曜日にオースティンが行った唯一最大の発表は、ノルウェー政府{1}が今後5年間でウクライナに軍事・民生支援として75億ユーロを提供するという決定についてであった。彼はこれを「非常に重要なコミットメント」と呼んだ。

オースティンは、なぜノルウェーがこのような大げさなジェスチャーをするのか、思いもよらないふりをした。実際は、ノルドストリーム・ガスパイプラインを破壊したことに対する哀れな贖罪の行為である。ここには一つの物語が隠されている。

もちろん、ラムシュタイン会議では、ウクライナ紛争が激化する中で米国がドイツのノルドストリーム・ガスパイプラインを、ヴィクトリア・ヌーランド米国務次官の不滅の言葉を借りれば「海の底の金属の塊」にした経緯についての重大ニュースを伝えてきた調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ(2)の爆弾レポートが話題になることはなかった。

ハーシュの情報源によれば、パイプラインを破壊するという決定はバイデン大統領から直接下され、その後約9ヶ月に及ぶ米政権内の極秘討論は、いかにしてバレずに目的を達成するかというものであったとのことである。

2月8日のハーシュの報告では、ノルドストリーム1と2のパイプラインを爆破するための最適な場所を最終的に見つけたのはノルウェー海軍であったと書いている。こうして2022年9月26日、ノルウェー海軍のP8偵察機が一見日常的な飛行でソナーブイを投下し、パイプラインに仕掛けられた高出力C4爆薬を誘爆させたのである。

ハーシュはその後、ドイツ紙『Berliner Zeitung』に、ノルウェーはノルドストリーム・パイプラインに対する陰謀を成功させることに特に関心を持っていたと説明している。

ハーシュによると、

  ノルウェーは所得の増加、それゆえEUへのエネルギー供給量の増加、同じドイツへの供給に関心があった。そしてこのミッションの後に見えてきたものは?ノルウェーは成功した。ロシアに対する大きな敵意を背景に、(エネルギー)輸出量を伸ばしたのである。

ノルウェーは、バイデンの破壊工作プロジェクトに、蜜に飛んでくるハエのように惹きつけられた。もし米軍がデンマーク海域に近いノルドストリーム・パイプラインを破壊し、ロシアに代わるドイツの主要パイプライン天然ガス供給源となれば、経済的に多大な利益を得られる可能性があったからである。

確かに、ノルウェーは大儲けした。戦利品はこれまでに1,000億ドル以上と推定されている。ノルウェーは2022年にドイツのガス需要の33%を供給し、同国最大の供給国になった。

専門家は、「ドイツへの重要なエネルギー供給国としてのノルウェーの地位は、北極圏の新鉱区の稼働や北極圏上空の新発見を含めて、今後数年間でさらに高まるだろう」と推定している{4}。2026年に稼働予定のボドの西340kmにあるイルパ油田や、2022年にゴリアテに隣接するバレンツ海での新鉱区発見など、北極圏での生産拡大がピーク生産維持のカギを握るだろう。

  ドイツがロシアのパイプラインガスから大きく切り離された今、ノルウェーが市場シェアをさらに拡大し、同国の主要ガス供給国としての地位を確立するための扉は、依然として開かれている。

皮肉なことに、2022年8月にドイツのオラフ・ショルツ首相と共同記者会見したノルウェーのヨナス・ガール・ストーレ首相は、「ノルウェーはドイツにできるだけ多くのガスを供給する」と主張した。もちろん、彼がショルツに言わなかったのは、欧州最大の天然ガス消費国であるドイツを専属市場に引き込むプロジェクトを間もなく実行しようとしていることだ。実際、ノルウェーがノルドストリーム・パイプラインを爆破したのはわずか1カ月後の9月22日であった。

ノルウェーは今、(ドイツを略奪したことによる1000億ドルのたなぼた利益のうち)なんと75億ユーロをウクライナに気前よく分け与える、人の親切を搾取する金持ち国というイメージを焼き付けている。そしてオースティンは、ロシアの「侵略」を阻止するための壮大なジェスチャーとしてそれを発表したのである。

この下品なパントマイムは息が止まるくらい信じられない。この激動の時代に米国のいじめから自国の核心的利益を守る勇気のない、経験不足の怪しげな政治家たちによる平凡な政府を抱えるドイツ国民を憐れに思わざるを得ない。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、2月15日に行われたロシアに駐在する外国メディアの代表との会議で、初めてノルドストリーム・パイプラインとシーモア・ハーシュの論文について語った{5}ことは的確だった。

 主な目的はドイツが、ロシア、ドイツ、オーストリア、イタリアの企業が出資したこの2つのパイプラインを通じてガスを受け取りエネルギー分野で安心するのを阻止することだった。ドイツは単に屈辱されただけではなく米国の衛星としての立場を取らされたのである。

ノルウェーはNATOのパートナーであるドイツからの戦利品のごく一部を手放すことに、何の抵抗も感じていない。もしかしたら隣国と同盟国に対して行われた凶悪な犯罪に対する償いの行為に耽っているのかもしれない。バイデンのチームは、ノルウェーが「良きサマリア人」であることを証明するように促したのかもしれない。そしてオースティンは、ブリュッセルで行われたラムシュタイン会議の確かな成果として、これを歓迎している。

Links:

{1} https://www.regjeringen.no/en/aktuelt/broad-political-agreement-on-multi-year-support-programme-for-ukraine/id2963374/

{2} https://seymourhersh.substack.com/p/how-america-took-out-the-nord-stream

{3} https://www.rt.com/news/570572-nuland-celebrates-nord-stream-blast/

{4} https://www.highnorthnews.com/en/norway-now-germanys-largest-gas-supplier-future-supply-arctic-support-exports

{5} https://www.mid.ru/en/foreign_policy/news/1854408/

Norway’s atonement for Nord Stream sabotage