No. 1746 米国世界覇権時代の終焉は明らか

It’s clear the era of US global supremacy is over

ワシントンの権力者は突然、新たに自信を持った中国と穏やかならぬグローバルサウスの指導者たちの脅威にさらされている

by Jonathan Steele

ジョージ・W・ブッシュとトニー・ブレアが行った違法なイラク攻撃から20周年が、ウラジーミル・プーチンのウクライナへの違法な攻撃からわずか数週間後というのはよい偶然である。どちらの戦争も国連に承認されてはいない。どちらも大規模な破壊と膨大な人命が失われている。

ブッシュ・ブレアによるイラク侵攻・占領とその混乱による結果、ある調査によれば100万人以上のイラク市民の命が奪われた。米軍は捕虜となった兵士の拷問を筆頭に数え切れないほど戦争犯罪を犯した。バグダッド近郊のアブグレイブ収容所では、米軍将校がジュネーブ条約に反してイラク人捕虜に屈辱的な行為を行った。侵略は広範な抵抗を引き起こしたが、米国の対反乱戦術は非武装の民間人の虐殺につながる村への襲撃も行った。

世界はブッシュ/ブレア戦争に不支持の反応を示したが、彼らに対してほとんど何の行動も起こさなかった。アメリカやイギリスに対する国家による制裁はなかった。国際刑事裁判所の調査官も戦争犯罪の訴追を立証するための証拠を採取しなかった。少数の個人と一部の人権団体がブレアを侵略犯罪の罪で起訴するよう求めたが、どの政府も国連に彼らに対する刑事事件を起こす決議を持ちかけなかった。

ウラジーミル・プーチンのウクライナに対する違法な戦争に対する反応が全く異なることを考えよう。米国に続き、ほぼすべての西側諸国政府がロシアの輸出品に制裁を加えた。米国の銀行が保有するロシアの金融資産は凍結された。プーチンの友人たちはヨットやその他の財産を押収された。そして数日前、国際刑事裁判所は、ウクライナから子供たちを違法に追放した戦争犯罪の容疑でプーチンに逮捕状を発行した。

この2つの戦争に対する世界の反応の対比は示唆に富んでいる。ロシアのわずかな国際的権威と米国の権威の差をこれ以上説明するものはないだろう。プーチンにとってこれは屈辱的なことだ。プーチンは自国を超大国と思いたいのだろうが、実際には巨大な核兵器を保有しているだけで、ロシアは世界的な影響力をほとんど持たず、外国の友人もほとんどいない。プーチンはロシアの西部と南部の国境で土地を奪い、国家を威圧することによって、昔ながらの帝国を再現しようとしていると広く批判されている。

一方、米国は、領土を持たない新しいスタイルの帝国を運営し、大きな成功を収めた。すべての大陸で政治的、経済的に大きな影響力を持ち、国際金融システムを支配し、80カ国以上で750の軍事基地を運営している。世界の大半はワシントンの支配に反対する勇気がない。

あるアナリストは、ロシアが現在のウクライナ戦争で敗北すればヨーロッパは歴史上初めて、帝国以後の平和的関係と大陸での自治を享受できるようになると主張する。彼らはNATOを忘れている。北大西洋条約機構は1949年に始まり現在もある程度米国の欧州覇権のための道具として続いている。同盟国は2003年にフランスとドイツがイラクで行ったように、米国の軍事作戦への参加を拒否することはあっても、違法行為として公然と非難したり、制裁を求めたりすることはない。

ソ連崩壊後のNATOの拡大に反対し、あるいは敵がいなくなった今、同盟の解消を主張した欧州人や一部の米国人(過去と現在の高官を含む)は決して目的を達成することはできなかった。バルト三国とポーランドは帝国アメリカの傘の保護を切望し、アメリカの軍産複合体はどのようなことがあってもそれを手放すつもりはなかった。

同様に達成不可能だったのは、NATOにロシア連邦を加盟させ、冷戦後の和解を促進しようという提案だった。しかしそれは実現しなかった。ゴルバチョフもエリツィンも、ロシアの指導者はヨーロッパの分裂を終わらせることに熱心であったにもかかわらず、ワシントンは米国の核の潜在力に匹敵し、米国の政治的優先順位に疑問を呈するかもしれない新メンバーに同盟を開放しようとはしなかった。

ソ連崩壊から30年経った今、アメリカ一極支配の世界が終わりを告げようとしている兆しがある。主な挑戦者はプーチンのロシアではなく、自信を深めている中国である。またグローバルサウスの指導者たちも動き出している。昨年2月のロシアのウクライナ侵略に対する最初の衝撃で、140以上の国連加盟国が非難を決議した。しかし、米国とともにロシアへの制裁を発動したのは全部で40カ国程度に過ぎなかった。西側諸国がウクライナに軍備を提供する中、ウクライナの防衛を支援しているだけという考え方は、ロシアの政権交代が最終目標だろうと疑う多くのアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国にとっては疑問の余地があったのだ。

欧州外交問題評議会(ECFR)の調査によると、いくつかの主要国で世論が大きく変化していることが明らかになっている。たとえウクライナが西側諸国の支持する勝利の願望を捨て一時的に領土を失ったとしても人々はウクライナでの戦争の早期終結を望んでいる。このように考えているのは権威主義的な中国の市民だけではない。インドやトルコの市民もそうだ。

EUの外交政策責任者であるジョゼップ・ボレルは、先月のミュンヘン安全保障会議でこう語った。 「ロシアのシナリオがいかに強力で、ダブルスタンダードを非難しているかがわかる」。フランスのエマニュエル・マクロンは、「グローバルサウスで我々がどれほど信頼を失っているかにショックを受けている」と述べた。

西側諸国と中国との間で新たな冷戦が起こることを懸念する声もある。一方で、10年先には国家がどちらかに肩入れすることのない多極化した世界が訪れると予想する人もいる。いずれにせよウクライナ戦争の結果、欧州で米国の力が復活したとはいえ、米国が世界の他の地域で優位に立つ時代はまもなく終わるかもしれない。

参照:https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/mar/19/2003-iraq-invasion-legacy-west-international-law-ukraine

ジョナサン・スティールは、ガーディアン紙の元外国特派員で、『Defeat: なぜ彼らはイラクを失ったのか』(2007年)の著者

https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/mar/20/iraq-ukraine-us-global-supremacy-washington-power-china-global-south