No. 1762 ペンタゴンリークの謎解きゲーム

The Pentagon Leaks Charade

by Pepe Escobar

漏洩された情報は、これがミスディレクションでなければ、ロシアにとって有利に働くかもしれない。そしてその可能性はかなり高い。

このシナリオは1960年代の伝説的なマッドマガジンの漫画「スパイ対スパイ」からそのまま抜け出したようなものである。ペンタゴンの機密文書が、悪意あるロシアの手に落ちる。実際にはTwitterやTelegramにアクセスする数百万人の手に渡ったのだが。

つまり、額面通りに受け取れば、これはウクライナにおけるNATO対ロシアの代理戦争の次の段階に関するペンタゴンの計画についての本質的に詳細な情報漏洩である。果てしなく議論される4月中旬に始まるかもしれない、あるいは始まらないかもしれない春の「反攻」と、FVEY(ファイブ・アイズ:米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)と共有される戦争計画。

漏洩された情報は、これがミスディレクションでなければ、ロシアにとって有利になるかもしれない。「かもしれない」という言葉が重要だ。そしてその可能性はかなり高い。

CIAについて知っている尊敬すべきレイ・マクガバンは、ペンタゴンは「キエフでイースターリリーを飾るために殺傷率を偽っているのか? 最近流出したNATOの公式文書によると、ウクライナ人71,500人が戦死し、ロシア人の死者は16,000~17,500人に過ぎず、ペンタゴンの以前の『推定』とはかけ離れている」と指摘した。まるでベトナムのデジャヴのようだ。

つまりこれはベトナム戦争の再来かもしれない。ペンタゴンが失敗から学ぶことを期待してはいけないがワシントン政界の(退役)トップ情報筋によればもっと憂慮すべきものである可能性がある。「今回の情報漏洩は、ロシアとの核戦争を避けるために、米国の情報筋が重要な情報データを流したと解釈できる」

現状では、スピン戦争が暴走したことだけは確かである。つまり漏らしたのは、不満を抱えた米国の内部関係者だったのかもしれない。いや、待てよ、ペンタゴンが主張するようにこの件はすべて捏造かもしれない。スピンの話で言えば、「米国に害を及ぼす可能性のある虚偽の情報を広めようとした」ということだ。

捻じ曲げであろうがあるまいが、ロシア人とウクライナ人の戦死者数の「秘密の」ペンタゴンの比較は、やはり意味がわからない。この数字は、ロシア人の死傷率が最も高かったバクムート/アルテモフスクの死傷者を反映しているようだ。しかし現地にいる信頼できるロシア軍特派員によれば、その比率は実際には10対1であり、ロシア軍はカタツムリのテクニックに強力な砲兵マシンを組み合わせているという。

唖然とするほど無能

ペンタゴンの漏洩情報(本物か偽物かは別として)から得られる議論の余地のない結論は、米国がロシアに対して戦争状態にある、というものだ。そしてそれだけで十分に深刻である。

ワシントンは、ロシアの軍事ラインの指揮所、弾薬庫、重要なノードに関する情報をノンストップで送り続けている。キエフがロシア軍を標的にし、上級将官を殺害し、弾薬庫をロシアの前線から遠くへ移動させることができたのは、そうしたリアルタイムの情報のおかげなのだ。

ペンタゴン/NATOの速記者が、キエフがこれらの攻撃の計画と実行においてことわざのような「決定的な役割」を果たしていると言うことはすべて嘘である。ウクライナ戦争を中央司令部ベースで完全かつ絶対的にコントロールしているのは米国である。最近キンザル(極超音速弾道ミサイル)で攻撃されたリヴィウ近郊の「秘密」地下壕もその一つで、200人以上のNATO高官工作員が死亡した。

フェイクであろうとなかろうと、ペンタゴンがロシア国防省の通信に直接アクセスしていることも確認されている。そしてアメリカ人は、キエフの汗臭いTシャツを着た俳優(ゼレンスキー大統領)、ファイブ・アイズの同盟国すべて、そしてモサドの、すべての人とその隣人の話を聞いているのだ。

ペンタゴンの漏洩によってキエフが反攻の「軍事計画」を変更したという考えについては、誰もが自由に笑いのピッチをコントロールすべきである。

この騒動に対するロシアの無反応さは典型的なミスディレクションであるとも言える。米国が事実上、ハイブリッドよりはるかに熱い対ロシア宣戦布告をしていることに対して、プーチン大統領は、世界の2大核保有国であることから、ロシアは「米国との平和共存と利益バランスの確立」に関心があると述べた。

1941年7月に国防軍がモスクワ、レニングラード、コーカサスオイルに向かって突進してくる中で、スターリンが「ロシアはナチスドイツとの平和共存に興味がある」と言うことなど誰も想像できないだろう。

貴重な軍事情報という観点から不可欠な人物であるアンドレイ・マルティアノフがすべてを要約している。これらの「文書」には、ペンタゴンがSMO(ロシアの特別軍事作戦)について、なぜそれが起きているのか、その手口は何か、何を達成しようとしているのか、まったく無知であることが確認された以外なにも含まれていない。

クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は要点をこうまとめた{2}。「米国とNATOが直接的、間接的に関与していることについていささかの疑いもない(…)それは特別軍事作戦の最終結果に影響を与えることはできない」。

マルティヤノフが強調するように、ロシアは、地上の人間の情報、電子戦、衛星コンステレーションを含む極めて高度なISR(情報、監視、偵察)複合体を操っている。「戦争相関図や戦闘統計という点では、ペンタゴンから来たものには長い棒で触れないだろう」。

ペンタゴンの「極秘」情報には実にいくつかの重大な問題がある。実際の情報ではなく、オープンデータに基づいて再編集されたという印象がにじむ。しかもそのすべてが、かなり粗雑な作業によってパッケージ化されている。

例えば、ウクライナの防空ミサイルを「再装備」するという主張は、そのミサイルがどこから来るのかというデータの裏付けがない。レイセオン社が共同開発した中距離地上型防空システム「NASAMS」の名称はスペルが間違っている。

NATOの公式文書ではソ連からの兵器とロシアからの兵器はNATOのコードで表示されている。スタイルが統一されているわけではなく、公式のコード表記とロシア語から英語への音訳が雑多に混在しているのだ。

だから、米軍欧州司令部(EUCOM)がオープンソースから「情報」を入手し、ウクライナ人が実際にどれだけの武器、どれだけの装備、どれだけの人員を持っているのか全く知らないという印象が固まるのも不思議ではない。

そして、アルテモフスクで起こっていることが説明できる。ロシア軍は世界中で戦略的防衛を調整するためにあらゆる時間を割いており、ケルソンを整然と放棄した後、ウクライナ人をノンストップの殺戮に誘い込んだのである。マルティヤノフはこのような事態を予測できなかった米国とNATOの無能さを「唖然とする」と表現している。

ユーラシア大陸を支配するための死活戦争

もう一度言う。ペンタゴンの情報漏洩の最も重要な結果は、米国が事実上、そして法的にロシアと戦争状態にあることを立証することである。ブリュッセルのノルウェーの枯れ木がどんなスピンをしようとも。ロシアはウクライナの戦争犯罪法廷を設置するだろうから、選ばれた西側諸国の著名人は遅かれ早かれニュージーランドの掩蔽壕に避難したほうがいい。

またウクライナは、世界において米国が中国、ロシア、そして潜在的にはドイツに対して力を失わないためのゲームの単なる駒であることを常に念頭に置いておくことも重要である。

最初のサイコ・ストロウス系ネオコンの目標は、「レバーソーセージ」ショルツ首相を使って、ドイツをロシアから切り離すことだった。彼はノルドストリームへのテロ攻撃について事前に説明を受けていた。

ショルツはCIAのミスディレクション詐欺にも関与しており、シーモア・ハーシュが見事に報じたように、テロ攻撃の責任を無名の反体制派のウクライナ人とぶざまなヨットのせいにした。

次のステップは、ウクライナをロシアから切り離し、現在のP.R.電撃戦の焦点であるクリミアとドンバスを「再征服」し、プーチン政権交代につながるロシアの激震的な心理的動揺を引き起こすことである。

そうすれば、ストラウス派はロシアの巨大な天然資源を手に入れ、陸路と米艦隊を経由した海路によって中国を遮断することができる。

それは決して賢いとは言えないが、ストラウス派のネオコンは自分たちの知的に浅い池に酔いしれている。そして次のシーンで、あの我慢できないバカな提督ジョン・カービー(ペンタゴン報道官)が、ロシアがウクライナから撤退し、ドンバスとクリミアを放棄するまで、ロシアとの交渉はあり得ないと言っている。

だから、ウクライナでの戦争(ショー)は最後のウクライナ人まで続けなければならない。さもなければこれらの手の込んだ計画は取り返しのつかないことになる。これはユーラシア大陸の支配権をめぐるロシア・中国との「やるかやられるか」の戦争なのだ。それはより多くのペンタゴン情報漏洩を意味するのだろうか?さあ、どんどん来い。

Links:

{1} https://www.nytimes.com/2022/05/04/us/politics/russia-generals-killed-ukraine.html

{2} https://www.rt.com/russia/574372-kremlin-peskov-pentagon-leaks/

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