No. 1769 すべての道は北京に通ず

All Roads Lead to Beijing

by Pepe Escobar

これは、21世紀初期に本当に重要な道を歩む2人の巡礼者の物語である。1人はNATO同盟国から、もう1人はBRICSからやってきた。

まず、「小さな王様」エマニュエル・マクロンから始めよう。広州で習近平と並んで歩く、作り笑いを浮かべた彼の姿を思い浮かべてほしい。長く穏やかな名曲「高山流水」の音に続いて彼らは白雲ホール{1}に入り、1000年の歴史を持つ古琴の演奏に耳を傾ける。そして1000年前のお茶の香りを味わいながら、新世紀における大国の栄枯盛衰に思いを馳せるのだ。

そして習近平は小さな王様に何を語るのか?彼は、この永遠の楽器が奏でる永遠の音楽を聴くとき、あなたは親友と一緒にいることを期待し、高い山と流れる水のように同調するのだと説明する。それが25世紀前の楚の国の音楽家、俞伯牙と锺子期の昔話の深い意味で、密友関係、仲の良い友人だけが音楽を理解できるのである。

そして、習近平は「Zhiyin(知音)」という概念を持ち出した。锺子期が死んだ後、俞伯牙は自分の古琴を壊した。自分の音楽を理解できるのは、他に誰もいないと思ったからだ。この二人の話から、”知音 “という言葉が生まれた。「音楽がわかる人」、さらに「お互いを完全に理解しあえる親友」も意味することになった。

マクロンのようなナルシストの操り人形が、繊細で洗練された習近平のメッセージを理解できるほど教養があるかどうかはわからない。それを理解した者同士が真のソウルメイトとなるのだ。さらに、マクロンが支配者から北京や広州に派遣されたのは、魂の交わりをするためではなく、ロシアやウクライナに関して習近平をNATOの方向に曲げさせるためだった。

彼のボディランゲージを見れば明らかだ。腕を組んで、退屈をアピールしている。それが決定的な証拠だ。彼は最初、真の友情には相互理解と感謝が必要だという考え方に無関心だったのだろう。

しかしその後、とんでもないことが起こった。習近平のメッセージは、ナルシストの小さな王様の苦悩に満ちた、心の奥底にある重要な場所に触れたのかもしれない。もし国際関係において、相互理解と感謝こそが国家が共通の基盤を見つけ、共通の目標に向かって協力するための鍵であるとしたらどうだろう?

ヘゲモンに押し付けられた「ルールに基づく国際秩序」とは全く異なる、画期的な考え方だ。

あなたは真の主権者なのか?

習近平は「小さな王様」を中国に招き、自ら6時間以上も客人と過ごしたことで、千年来の外交の粋を尽くした。習近平はフランスとアングロサクソン諸国との間の激動の歴史を思い起こさせ、主権について語ったのである。

重要なのは微妙なサブプロットだ。 「ヨーロッパ」は帝国主義国に従属して、米国との対決の日が来たときに経済的な大混乱を可能な限り小さくする必要があることをよく考えたほうがいい。そこに暗示されているのは、北京の優先事項は、中国を包囲しようとするアメリカの試みを断ち切ること、というものだ。

つまり習近平は、フランスをEUの下でも真の主権者になりうる存在として、あるいはEUのドグマからやや離れた存在として扱ったのである。

もちろん、この儒教的な認識論的成長への誘いの下には、もう一つの重要なメッセージがあった。複雑な地政学の層のために中国と友好的になることを望まない人たちに対して、 もし状況が生じたならば、北京が中国国家の「友好的」でない面を見せるのに遅すぎるということはないだろう。

翻訳すると、西側が「マキアヴェッリ」に徹するなら、中国は「孫子」に徹するだろう。たとえ北京が、「われわれと共にあるか、われわれと敵対するか」のテロとの戦争と制裁認知症ではなく、「美」「善」「真」の庇護のもとに国際関係を築くことを望んだとしてもである。

では、小さな王様は「ダマスカスへの道」の瞬間を迎えたのだろうか?審判はまだわからない。彼は、ヨーロッパは「アメリカの追随者」となる圧力に抵抗しなければならない、という暴言を吐いて、文字通り帝国主義者に恐怖を与えた{2}。これは、北京とパリが合意した51の事項{3}とほぼ一致しており、強調されていることは「すべての当事者の正当な安全保障上の懸念」である。

マクロンが、ヨーロッパは独立した「第三の超大国」になるべきだと主張したことで、アメリカはさらに怖気づいた。小さな王様は(もちろん金融界の親玉の監視の下)、脱ドル化を支持し、永遠の戦争を支持しない、といくつかの小さな段階を前に進ませた。

そこでアメリカはパニックになり、ドイツの第5部隊(敵を支持するグループ)のアンナレーナ・ベアボック(外相)を北京に派遣して小さな王様の暴走を取り消し、ワシントンの指示によるブリュッセルの公式台本を再確認させようとした。しかしどこの誰もまったく注目しなかった。

この物語で最も目に余る小ネタがあった。欧州委員会の支配者、ウルスラ・フォン・デア・ライエンが、北京から不適切という以上にひどい扱いを受けたことである。中国のある学者は、彼女を「歯のないイヌ科の組織のマウスピースに過ぎない。彼女の吠え声でさえ安楽死させられようとしている末期の犬の鳴き声のように聞こえる」と酷評した。

その「末期の犬」は、パスポートコントロールと税関を通らなければならなかったのだ(「何か申告するものはないか?」と)。外交的地位もない。正式な招待状もない。主権もない。だから、マクロンと一緒に特別高速列車に乗って広州に行くことはできない。そこで、もう1つのメッセージ、これは非常に生々しい。「3000年の歴史を持つ中国の倫理観に手を出すな」ということだ。

ルーラと 知音

中国のトップクラスの学者たちは、習近平が25世紀前に有効だった外交術を、多極化する世界の舞台で再現したことに魅了された。

21世紀に書き直された「戦国時代の戦略」を求める声もある。「ジャングル」を真ん中に置き、マクロンとフォン・デル・ライエンを面接のように配置した中国の儀礼作法による大規模な円卓会議は、WeiboとWe Chatでモンスターヒットとなった。 その結果、中国がようやく「野蛮人の間にくさびを打ち込む」ことができるようになったという議論が延々と繰り広げられた。

このような大騒ぎに比べれば、ブラジルのルーラ大統領が上海と北京を訪れた話は、まるで「知音」の挿絵のようだ。

ルーラは最初から頸動脈を狙った。ルーラはBRICSの銀行である新開発銀行(NDB)の新総裁にディルマ・ルセフ前大統領{4}が就任した際、次のように述べた。

サハラ砂漠からシベリアまで、誰でも理解できるシンプルで直接的な言葉で、ルーラはこう言った{5}。

     私は毎晩、なぜすべての国が貿易のためにドルに縛られる必要があるのか、と自問している。なぜ自国の通貨で取引できないのだろう?そして、なぜ私たちは革新を起こすというコミットメントを持たないのだろうか?

直接的には、自国通貨での貿易を認めるだけでなく、拡大するBRICS+が独自の通貨を設計し、普及させるべきだということだ(長く複雑なプロセスはすでに始まっている)。

ルーラの力強いメッセージは、グローバル・サウス全体に向けられていた。ブラジルの例としては、中国工商銀行(ICBC)がブラジルに決済機関を設置し、人民元とレアルを直接交換できるようになる。

CIAの御用機関紙のワシントン・ポストが慌ててすぐに”ルーラは「ルールに基づく国際秩序」の命令に従っていない。”と、ディープ・ステートの評決を下したのも不思議ではない。

つまり、ディープ・ステートはルーラとその政府(の転覆)を狙うということだ。何度でもやる。そして、それを不安定化させるためには、手段を選ばないだろう。なぜならルーラの発言は、過去にサダム・フセインやガダフィ大佐が発言し、実行しようとしたこととまったく同じだからだ。

だから、ルーラにはあらゆる協力が必要となるだろう。もう一度、「知音」の登場である。

これは習近平が北京でルーラを公式に歓迎したときの様子である{6}。習近平のような大物が目の前で「中国の古い友人だ」と言えば、それが本当のことであるのを中国人以外の世界中の人々はほとんど理解していない。

すべてのドアが開かれた。彼らはあなたを信頼し、抱きしめ、守り、話を聞き、困ったときには助け、そして常に友情を胸に秘めながら最善を尽くすだろう。

そして、北京への道を歩む「仲良し」の物語はひとまずこれで終わりである。BRICSの友人は確かにすべてを理解した。真の主権者になることを夢見るNATO同盟国の小さな王様といえば、今、その扉を叩いているのである。

Links:

{1} https://www.youtube.com/watch?v=CTCRyxWg8xw

{2} https://www.politico.eu/article/emmanuel-macron-china-america-pressure-interview/

{3} https://www.fmprc.gov.cn/fra/zxxx/202304/t20230407_11056282.html

{4} https://www.youtube.com/watch?v=qe2GiD5fCQY

{5} https://www.youtube.com/watch?v=wkjM0RgUb4A

{6} https://www.youtube.com/watch?v=wK9TNtvqRas

https://strategic-culture.org/news/2023/04/15/all-roads-lead-to-beijing/