…それはメディアが独立系ジャーナリストをどれほど恐れているかということ…
テレビ司会者は代償を払った。なぜなら彼は企業メディアと批判的ジャーナリズムの間の溝をまたぐという不可能に挑戦したからである。
by Jonathan Cook
左派がタッカー・カールソンへの憎悪に躍起になっている間に、そして十分な理由があるが、それは大局を見誤ることになる。カールソンは、米国の企業メディアにおける真の異端児だった。だからこそ彼はメディアの「巨人」ルパート・マードックにクビを宣告され、消えたのだ。
確かに、カールソンは長年にわたり白人の恐怖心を利用し、右派として確固たる地位を築いてきた。しかし、彼はまた、グレン・グリーンウォルドやアーロン・メイト、ジミー・ドーアなど、最も批判的で思慮深い独立系ジャーナリストや評論家たちに、Fox Newsで彼の巨大な企業プラットフォームを提供した。
カールソンは彼らをメインストリートのリビングルームに招き入れただけでなく、間違いなくこうした独立系ジャーナリストの聴衆と影響力の拡大に貢献したのである。
タッカーは、次のようなことを最も得意とするケーブルテレビ局員だった。
* ウクライナにおける米国の代理戦争に反対した
* CIA、FBI、DHSの組織的な嘘と腐敗を糾弾した
* ジュリアン・アサンジの恩赦に力を注いだ
* キューバにおける政権交代に反対した
* トランプ政権の軍国主義を批判した pic.twitter.com/PEduNzOyW6
– グレン・グリーンワルド (@ggreenwald) 2023年4月24日
そのようなやり方で、彼は普通のアメリカ人に、特にアメリカの外交政策について、他では聞くことができないような、そしてCNNやMSNBCのようないわゆる「リベラル」とされるほとんどの企業メディアがもちろん報じない批判的な視点を伝えたのである。
そして、彼はその一方で、常に権力者と結託するメディアの卑劣さを揶揄してきた。
しかし、これらのことはすべて無視されている。カールソンの退社に関するメディアの分析は、今のところほとんどFox Newsの経営陣との衝突と、マードックが巨額の賠償金で和解を余儀なくされたドミニオンの裁判の結果明らかになった、一連の失礼なツイートにのみ焦点が当てられている。
しかしこれらの衝突は、カールソンが、ジャーナリズムの真の仕事である権力者の責任を追及することを妨げるよう設計されたFoxの組織的なメディアの制約に抵抗していたという、より広い文脈を無視して理解することはできない。
ノルドストリームの沈黙
ここでFox Newsでの彼の活躍の一部を紹介する。
* 他の米国メディアは、伝説的なジャーナリストであるシーモア・ハーシュによる大規模な調査を無視したり、気ちがいじみたヨットの乗組員が関与する半公式の陰謀説に注意を仕向けさせたが、カールソンは、ヨーロッパに向けられた前例のない産業・環境テロ行為であるノルド・ストリーム・パイプラインの爆破は米国が行ったという証拠をあえて提示した。https://youtu.be/DOqcwRTuf1Q
* 企業ジャーナリストの中で唯一、化学兵器を監視する国連の機関であるOPCWの内部告発者の証言を取り上げた。その証言は、米国の圧力により、OPCWがシリアのドゥーマでのガス攻撃に関する調査を不正に行い、アサド大統領を非難し、米国、英国、フランスの違法な空爆の口実を提供したことを認めるものだった。https://youtu.be/ojItF6MGL-0
* 最近カールソンは企業メディアのコンセンサスと惜別し、ペンタゴンのリーク情報、特に米兵がウクライナで密かに戦っていること{1}を強調した。さらに彼は、ホワイトハウスと共謀してリーク犯を追跡し、最も重要な事実を隠蔽しようとする同僚のジャーナリストたちを非難した。https://youtu.be/BesXzq2Cdlg
* そして、ジミー・ドーア(米国の政治コメンテータ―、コメディアン)にマイクを与え、米国は現在、ロシアと中国に対していわれのない戦争を行っていると言わせた。「あなたの敵は中国ではない。あなたの敵はロシアではない。あなたの敵は軍産複合体であり、米国は世界のテロリストだ」https://youtu.be/bP5dkR6QQj8
カールソンの解雇後、ドーアはこうツイートした。
企業ニュースで反戦の声を取り上げる人はほかにいない。そしてそれをする一人が今くびになった。彼の番組が最も視聴率が高かったことは問題ではない。MSNBCがネットワークでナンバーワンだったフィル・ドナヒューが反イラク戦争の報道をして解雇されたのとちょうど同じだ。#WarMachine https://t.co/zpc7gOCZr6
– ジミー・ドーア (@jimmy_dore) 2023年4月24日
危険人物
この記録を歓迎するどころか、左派の盲目的な部族主義者はグリーンワルドやメイトなどカールソンの番組にでることで自分たちが右派{2}であることをカミングアウトした人、またはFoxの白人に対する恐怖を扇動する人々を非難することを好んだ。
さらにカールソンの動画の切り取りをリツイートすると糾弾されるという不条理な事態にまで発展した。なぜなら左派は自分たちの行動が逆効果になる可能性があったからだ。我々は近いうちに社会主義から国家社会主義に転換することになるだろう。
しかしカールソンがマードックに解雇されたことが示唆するのは、企業メディアがカールソンが危険人物になってきたために恐怖心を強めていたことであり、 そして、彼のような独立系ジャーナリズムが増幅され、支持を集めていることである。
彼の視聴率が急上昇することで、カールソンは、他の企業メディアによって押しつけられた合意的な筋書きに疑問を投げかけたり、単にそう主張するのではなく実際に権力者に責任を負わせる筋書きや、欧米が世界中に干渉することが良いことだとするのを拒否する筋書きを人々が強く求めていることを証明したのである。
もし白人の恐怖心を煽ることだけが視聴者を引きつけ、ネットワーク・ニュースの司会者を一番人気に押し上げるのであれば、カールソンではなくショーン・ハニティが視聴率王になることは間違いない。
カールソンが認めた現実は、批判的で独立したジャーナリズムに耳を傾ける準備ができている聴衆が存在するということである。企業メディアの仕事は、視聴者に異論を聞かせないようにすることであり、このルールをカールソンはあまりにも長い間守らずにやってきたのである。今、彼はその代償を払っている。
封印された運命
また、Fox Newsの視聴者が左派や反体制派の視点に触れることの効果を議論するのであれば、グリーンワルドやメイトらがカールソン自身にどのような影響を与えたかを考えることも興味深い。
グリーンワルドのような、カールソンをよく知る人々は、彼がかつて抱いていた政治的見解から離れつつあると言った。確かにその証拠はある。そしてそのような証拠が彼の運命を決定づけたのかもしれない。
ノーム・チョムスキーが言っているように、カールソンは以下の動画でメディアを「コントロール装置」と呼び、「2003年のイラク戦争を推進するなど、私は人生の大半をその問題の一部として過ごしてきた」と認めている。
カールソン:「メディアは情報を提供するためにあるのではない 本当だ!経済、戦争、コロナなど、本当に重要な事柄についてさえ、彼らの仕事はあなたに情報を提供しないことだ。メディアは世界を実際に動かしている少数の人々のために働いている。メディアは彼らの召使いだ。我々はメディアを最大限に軽蔑して扱うべきだ、彼らはそれに値する」。https://youtu.be/v5dRFj_6W5U
おそらく、マードックは自分が「世界を実際に動かしている小さなグループ」「軽蔑されるべき」グループに含まれていることを理解していた。
しかしカールソンの動機を推測するよりも、より重要なことは、つまり私たちが祝福し、強調すべき点は、メディアの「視聴者」が徐々に受動的でなくなり、従来の情報源に対してより批判的になっているということである。
カールソンはこの傾向を理解し、その分水嶺をまたごうとした。彼は、企業メディア陣営と独立系陣営の両方に足を踏み入れていたのだ。カールソンはその立場がいかに不安定なものであるかを、解雇という形で証明した。
企業メディアは、私たちを楽しませ、気を紛らわせるために存在する。そして、私たちを部族的なアイデンティティに閉じ込め、互いの頭をぶつけ合わせるという完全に無駄なことをさせている。もう一方の独立系メディアは、権力について、また市民としての責任について、より批判的に考える手助けをするために存在する。
企業メディアと独立系メディアという2つのマスターに仕えることはできない。タッカー・カールソンはそのことを痛感したばかりだ。
Links:
{1} https://www.foxnews.com/video/6324993915112
{2} https://www.jonathan-cook.net/blog/2021-06-22/greenwald-trump-happened/