No. 1862 米中戦争の本当の意味とは?

What would US-China war really mean?

by Paul Malone

中国との戦争について語るコメンテーターたちは、それが何を意味するのか実際に考えているのだろうか?

「オーストラリアを確実に巻き込むことになる太平洋における軍事衝突の可能性が高まっている」とThe Australianの外信部長グレッグ・シェリダンは今年3月、同紙の一面で述べた。

しかし、彼や彼のような冷戦戦士たちは、戦争を予言するような記事を連発することでどのような対中戦争を引き起こそうとしているのだろうか?

ネットで見かける戦争ゲームのように、中国軍が黄色い服を着て整列し、赤、白、青の服を着たアメリカ軍とオーストラリア軍が台湾の浜辺で対決するようなものだろうか?あるいは、大砲を装備した帆船が台湾海峡で相手のジャンク船に立ち向かうとか?

シェリダンや、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のピーター・ジェニングスのような人たちは、つねに戦争について書き、戦争を推進しているが、彼らが想定している紛争については何も描いていない。核武装した2つの超大国が戦争に突入する間、世界は通常通り回っていくと彼らは考えているようだ。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推定{1}では、米国は5,800発、中国は320発の核弾頭を保有している。憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)は、中国の核弾頭や核爆弾が米国に到達する可能性があるのは100個以下だと考えている。しかしその数分の一でも数十万人を殺す可能性がある。もしニューヨーク上空で1発だけ爆発しても、推定{2}583,160人が死ぬことになるだろう。

シェリダンやジェニングスらが想定している戦争が完全な核紛争に発展しないと、どうして断言できるのだろうか?

中国沿岸に軍艦の艦隊を航行させるというアメリカの挑発的な行動(婉曲的に「航行の自由」演習と呼ばれている)は、戦争につながる事件を引き起こす可能性がある。

1台の米軍艦がこの海域を航行し、中国船と衝突する可能性もある。米軍艦と他の船舶の衝突は過去にも起きている。2017年にはUSSフィッツジェラルドとフィリピン船籍の商船ACXクリスタルが東シナ海の東京湾南方で衝突し、7人のアメリカ人船員の命を奪った。オーストラリア国民は1969年6月、南シナ海での訓練中にUSSフランク・E・エヴァンスが空母メルボルンの艦首を横切った悲劇もよく覚えているだろう。74人の米水兵が命を落とした。

コメンテーターたちがもっともよく予見しているのは台湾をめぐる戦争である。ジェニングスは無遠慮に{3}「ジョー・バイデン大統領の最初の国際的危機は、おそらく台湾の将来をめぐるものだろう」と言う。米太平洋軍司令官から指示を受けるシェリダンは、フィリップ・デビッドソン米提督が6年以内に北京が台湾に侵攻する可能性があると述べていることを読者に思い出させる。

このような冷戦シナリオでは、中国の習近平国家主席は常に「悪役」である。中国との軍事衝突の可能性が高まっていると述べた後、シェリダンは自分の言葉はヒステリックなものではなく、3月に北京で開催された全国人民代表大会での習主席の言葉に込められた暗黙のメッセージだと言う。

しかし、習主席は本当に中国が過去に言ってきたことと違うことを言っているのだろうか?

答えはNOだ!何十年もの間、中国は全面戦争を仕掛けることなく、台湾に対する強い見解を表明してきた。1995年、当時のクリントン米大統領は台湾訪問に関心を示した。中国の指導者である鄧小平は、今日の習近平とまったく同じような反応を示した。彼は、台湾の地位は中米関係の核心であると述べた。「この問題が適切に処理されなければ、結果は非常に爆発的なものになりかねない」。

簡単に言えば、中国政府は常に台湾は中国の一部だと言ってきたし、内戦後に台湾に逃れて政権を樹立した国民党もまた、台湾は中国の一部であることに同意し、自分たちはまだ大陸の合法的な政府であると主張してきた。

オーストラリアは、1972年に中華人民共和国と国交を樹立するまで台北の主張を受け入れていた。オーストラリアと中華人民共和国との共同声明は、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認し、台湾は中華人民共和国の省であるという中華人民共和国の立場を認めている{4}。

ジェニングスによれば、習近平はCOVID-19と米国大統領の交代によって生まれた好機を利用し、中国の台湾征服の野望を加速させることができると考えているという。しかし、彼はまた、中国共産党の目標は、2049年までに台湾を中国共産党の支配下に置くことだとも指摘する。

2049年! もしそれが本当なら中国が戦争を急ごうとしているとは思えない。また、習近平がまだ首席である可能性も低いだろう。

このような時間軸が示唆するのは、台湾と大陸の貿易と投資がますます増加し、より緊密な協力と漸進的な統合につながるような忍耐強いプロセスである。ここ数十年で繁栄したこの地域が紛争によって引き裂かれるのを見るのは、中国にとって得策ではないのは確かである。

とはいえ、もう一人の冷戦戦士、クライブ・ハミルトンは、アメリカが一方的に何らかの軍事行動を起こすことはないが、北京はそうするかもしれないと主張している。

ハミルトンは、アフガニスタン、イラク、ベトナム、その他世界中でアメリカが一方的に行った軍事行動の数々を都合よく忘れている。

しかし、中国沖の海を混乱に陥れることはアメリカにとって好都合なのだろうか?米国のタカ派は、キューバ軍事危機の際に米国の将軍たちがそうであったように、敵が米国を真剣に脅かすだけの軍事力を持つ前に、米国に敵を打ちのめす能力があると信じているのだろうか?

キューバ・ミサイル危機の際、米ソは戦争によって相互確証破壊がもたらされる核兵器の均衡に近づいているとカーティス・ルメイ米大将は主張した。ルメイはケネディ大統領に対して、ソ連がキューバに建設しているミサイル基地を撤去するよう促し、アメリカの戦略空軍司令部が通常以上の損害を被ることなくソ連を消滅させることができるという見解を示した。

アメリカの将軍や提督たちは、今日、アメリカは中国を迅速かつ臨床的に一掃できると信じているのだろうか?ケネディのように、バイデンが平静を保ち、そのような考えを抑えることを願うばかりである。

Links:

{1} https://www.sipri.org/media/press-release/2020/nuclear-weapon-modernization-continues-outlook-arms-control-bleak-new-sipri-yearbook-out-now

{2} https://www.icanw.org/nuclear_arsenals

{3} https://www.aspi.org.au/opinion/we-must-be-ready-fight-our-corner-taiwan-tensions-rise

{4} https://www.dfat.gov.au/geo/taiwan/Pages/australia-taiwan-relationship

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