No. 1869 中国との戦争を望むネオコン

Neocons Want War with China

by Pepe Escobar

それは世代を超えた記念撮影だった。習近平国家主席が百歳の「中国の旧友」ヘンリー・キッシンジャーを北京で迎えたのである。

手順に細心の注意を払う中国らしく、会談は釣魚台迎賓館の第5別荘で行われた。1972年のニクソン訪中の準備でキッシンジャーが1971年に周恩来と初めて対面した場所である{1}。

「キッシンジャー、北京へ行く」は “非公式 “なものであり、ますますこじれつつある米中関係を修復しようとする個人的な試みだった。彼はアメリカの現政権を代表していたわけではない。

そこに問題がある。地政学に携わる者なら誰でもキッシンジャーが残した伝説的な処方箋を知っている。「アメリカの敵になることは危険であり、アメリカの味方になることは致命的である」。日本や韓国からドイツ、フランス、ウクライナに至るまで歴史には多くの例がある。

多くの中国の学者は内々で、理性を保ち「百歳の外交官の知恵を尊重する」のであれば、習近平と政治局は中米関係を現状のまま、つまり「冷ややかに」維持すべきであると主張する。

結局のところ、アメリカの敵になるのは危険だが中国のような主権を持つ文明国家にとっては対処可能なことなのだ。だから北京はアメリカの敵であるという「名誉ある危険の少ない地位」を維持すべきなのだ。

ワシントンから見た世界

アメリカ現政権の奥の部屋で実際に起こっていることは、キッシンジャーの注目された和平構想ではなく{2}エドワード・ルトワックのきわめて闘争的な構想を反映している。

80歳のルトワックはキッシンジャーほど表立った影響力はないかもしれないが、舞台裏の戦略家として50年にわたりペンタゴンにさまざまな助言をしてきた。たとえばビザンチン帝国戦略に関する彼の著書は、イタリアとイギリスの一流資料を多用した古典的なものだ。

騙しの達人であるルトワックは、現在のワシントンの動きを文脈づけるという点で貴重な情報{3}を明らかにしている。それは、バイデン・コンボに代表されるアメリカが、ロシアと取引をしたくてうずうずしているという彼の主張から始まる。

CIAのトップである有能な外交官のウィリアム・バーンズが、彼のカウンターパートであるロシア対外情報庁(SVR)のトップであるセルゲイ・ナリシキンに、「あなたには心配することがもっと無制限にある」と、事態を整理するために電話した理由もそれで説明できる。

ルトワックがいう「無制限」とは、習近平が「戦争に備える」ために躍起になっていることだ。そして、もし戦争になれば、中国は「もちろん」負けるだろうとラットワックは主張する。それはワシントンにいるネオコン心理学者たちの至高の妄想とダブる。

ルトワックは中国の食料自給の追求を理解していないようだ。彼はそれを脅威とみなしている{4}。同様に、習近平氏が「中国人民の再生」という「非常に危険な」概念を用いていることについても、ルトワックは「ムッソリーニの考え」であり、「中国を再生させるには戦争が必要」だと言う。

「再生」という概念は、実際には “復興 “と訳した方がいいのだが、少なくとも1911年の清朝打倒以来、中国界隈で反響を呼んでいる。これは習近平の造語ではない。米軍が “アドバイザー “として台湾に到着するのを見たらおそらくあなたも戦う準備をするだろう、と中国の学者は指摘する。

しかし、ルトワックには使命がある。「これはアメリカでもヨーロッパでもウクライナでもロシアでもない。これは『唯一の独裁者』についてだ。 中国はない。あるのは習近平だけだ」と彼は主張する。

そしてルトワックは、EUのジョゼップ “ガーデン対ジャングル “ボレルと、欧州委員会の女帝ウルスラ・フォン・デア・ライエンが彼のビジョンを全面的に支持していることを確認している。

ルトワックは、ほんの数行の言葉で実はゲームの全貌を明かしている。「ロシア連邦は、現状では、我々が望むほど強くなく、中国を封じ込めることはできない」。

それゆえ、ドンバス紛争を「凍結」して話題を変えるというバイデン・コンボによる方向転換が行われたのだ。結局のところ、「もし(中国が)脅威なら、ロシアの崩壊は避けたいはずだ」というのがルトワックの理由である。

キッシンジャー流の「外交」もそれだけだ。

「道義的勝利」を宣言して逃げる

ロシアについて言えば、キッシンジャー対ルトワックの対立は米国が過去に経験したことのない存立危機事態に直面する中で決定的な亀裂を露呈している。

緩やかで大規模なUターンはすでに進行中であり、少なくともUターンの様相を呈している。米国の主流メディアはこのUターンに全面的に協力するだろう。そして何も知らない大衆はそれに従うだろう。ルトワックはすでに彼らの最も深い意図を代弁している。本当の戦争は中国とのもので、中国が「負けるだろう」と。

少なくとも、バーンズのようなバイデン・コンボの周りの非ネオコン勢力の何人かは、キエフに代わりロシアに対して、ハイブリッドであれ何であれ永遠の戦争を公約するという帝国の大規模な戦略的失策を理解しているようだ。

これは原則として、ワシントンがベトナムやアフガニスタンでしたように、ただ立ち去ることはできないということを意味する。それでも米国は立ち去る特権を享受している。結局のところ彼らは主権国家であり属国ではない。欧州の属国は腐敗したまま放置されるだろう。バルト海のチワワたちが自分たちだけでロシアと中国に宣戦布告する姿を想像してみてほしい。

ルトワックが確認した出口戦略は、ワシントンがウクライナで何らかの「道義的勝利」を宣言し、それはすでにブラックロックによって支配されており、そしてその後、中国に銃を向ける。

しかしそれさえも簡単にはいかないだろう。なぜなら中国と拡大しているBRICS+はすでに帝国の基盤であるドル覇権を攻撃しているからだ。ドル覇権がなければ米国自身で対中戦争の資金を調達しなければならないだろう。

非公式の場で、中国の学者たちは彼らの千年にわたる洞察力を駆使して、これが帝国が歴史の中で最後の大失態かもしれないと見ている。

彼らの中の一人はこう要約している。「帝国は自ら存亡をかけた戦争で大失態を犯し、それゆえ帝国の最後の戦争となるだろう。終わりが訪れると、帝国はいつものように嘘をつき、勝利を宣言するが、他の全ての者、特に従属国たちは真実を知ることになるだろう」。

そして、それは元国家安全保障担当顧問のズビグニュー”グランド・チェスボード“・ブジジンスキーが、死の直前に180度転換し、ルトワックではなく現在のキッシンジャーと同じ立場に立ったことを示している。

9.11が起きる以前の1997年に出版された『グランド・チェスボード』は、アメリカはユーラシア大陸で台頭する競争相手を支配すべきだと主張した。ブレジンスキーはロシアと中国の戦略的パートナーシップという、彼の究極の悪夢の現実に遭遇することはなかった。しかしすでに7年前、つまりキエフのマイダンから2年後、少なくとも彼は「グローバル・パワー・アーキテクチャの再編成」が不可欠であることを理解していた{5}。

「ルールに基づく国際秩序」の破壊

7年前と現在で決定的に違うのは、ブレジンスキーによれば、アメリカは「世界秩序を破壊することなく暴力を(…)封じ込めることができるように、世界の勢力図を再編成する先頭に立つ」ことができないことだ。

ロシア・中国の戦略的パートナーシップが主導し、それに地球の大多数が続く。彼らは覇権主義的な「ルールに基づく国際秩序」を封じ込め、最終的には破壊しようとしている。

マイケル・ハドソンが要約したように、この白熱した岐路における究極の問題は、「経済的な利益と効率が世界の貿易と投資のパターンを決定するのか {6}、それとも脱工業化した米国/NATO経済は急速に人口が減少し、産業の失われる後ソ連のウクライナやバルト諸国またはイギリスのようになることを選ぶか」である。

中国との戦争という夢物語は、これらの地政学的および地政経済的な必然性を変えるだろうか?テュキディデスによると、それは諦めるべきだろう。

本当の戦争はすでに始まった。しかしキッシンジャーやブレジンスキー、ましてルトワックやアメリカのネオコンが指摘したような戦争ではないことは確かである。再びマイケル・ハドソンはこう要約した。「経済に関して言えば、米国とEUが“自己を世界から自ら孤立させるという戦略的な誤りはあまりにも大きく、全体におよび、その影響は世界大戦に匹敵する」。

Links:

{1} https://nsarchive2.gwu.edu/NSAEBB/NSAEBB66/

{2} https://sputnikglobe.com/20230626/beijing-condemns-us-indictments-of-chinese-persons-on-fentanyl-related-charges-1111476536.html

{3} https://www.youtube.com/watch?v=2bIdcu0o9Pc&t=1665

{4} https://sputnikglobe.com/20230706/chinese-foreign-ministry-voices-concern-over-us-plans-to-send-nuclear-submarine-to-korea-1111699784.html

{5} https://www.the-american-interest.com/2016/04/17/toward-a-global-realignment/

{6} https://sputnikglobe.com/20230706/yellen-after-arriving-in-china-says-seeks-to-deepen-communication-on-range-of-issues-1111700289.html

https://www.unz.com/pescobar/neocons-want-war-with-china/