No. 1911 「新しいアフリカ」の台頭、フランスに猶予はない

No respite for France as a ‘New Africa’ rises

ドミノ倒しのように、アフリカの国家が次々と新植民地主義の束縛から抜け出している。チャド、ギニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、そして現在はガボンが、アフリカの金融、政治、経済、安全保障問題におけるフランスの長年の支配に「ノー」を突きつけている。

by Pepe Escobar

Photo Credit: The Cradle

アフリカの2カ国を新たに加盟国に加えたことで、先週ヨハネスブルグで開催されたBRICS11の拡大サミット{1}は、ユーラシアの統合がアフロ・ユーラシアの統合と表裏一体であることを改めて示した。

ベラルーシは今、BRICS11、上海協力機構(SCO)、ユーラシア経済連合(EAEU)の合同首脳会議の開催を提案している。アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の、これらの多国間組織の収束を目指すビジョンは、いずれすべての多極化サミットの母体となるかもしれない。

しかしアフロ・ユーラシアの問題はもっと複雑である。アフリカは新植民地主義の束縛を解く道においてユーラシア大陸に大きく遅れをとっている。

アフリカ大陸は今日、植民地化の金融的・政治的制度に深く根ざしたものとの戦いで、特にフランス通貨の覇権であるフランCFA(またはアフリカ金融共同体:Communauté Financière Africaine)を打破しようという、恐ろしいほどの困難に直面している{2}。

それでもチャド、ギニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、そして今度はガボンと、次々とドミノが倒れている。このプロセスはすでにブルキナファソの大統領、イブラヒム・トラオレを多極化世界の新たなヒーローに変えた。錯乱し、混乱する西側諸国は、3年足らずの間に西アフリカと中央アフリカで起きた8つのクーデターによって象徴される反撃を理解しようとさえしていない。

さよなら、ボンゴ

超フランス寄りの大統領アリ・ボンゴが「信頼性に欠ける」いかがわしい選挙で勝利した後、ガボンは軍人の将校たちが政権を掌握することを決めた。機関は解体され、カメルーン、赤道ギニア、コンゴ共和国との国境が閉鎖された。フランスとの安全保障協定はすべて無効にされた。フランス軍基地がどうなるかは誰にもわからない。

そのすべてを大衆は喜んだ。兵士たちは首都リーブルヴィルの街頭で歓喜の歌声を響かせ、見物人から喝采を浴びた。

ボンゴと前任者であるその父親は1967年からガボンを統治してきた。彼はフランスの私立学校で教育を受け、ソルボンヌ大学を卒業した。ガボンは人口240万人の小国でその軍隊は5千人とドナルド・トランプのペントハウスに収まりそうな小さなものだ。人口の30%以上が1日1ドル以下で生活し、60%以上の地域では医療や飲料水へのアクセスがない。

軍部は、ボンゴの14年にわたる統治が「社会的結束の悪化」をもたらし、国を「混沌」に陥れているとみなした。

クーデター後、フランスの鉱山会社エラメは操業を停止した。それはほぼ独占状態である。ガボンは金、ダイヤモンド、マンガン、ウラン、ニオブ、鉄鉱石、そして石油、天然ガス、水力発電など、豊富な鉱物資源に恵まれている。OPEC加盟国のガボンでは、事実上、経済全体が鉱業を中心に回っている。

ニジェールの場合はさらに複雑だ。フランスはウランや高純度ガソリンのほか、他の鉱物資源も開発している。またアメリカはニジェールに3つの基地を持ち、4千人の軍人を配備している。彼らの「基地の帝国」における重要な戦略拠点は、ジブチに次いでアフリカで2番目に大きい、ニジェール空軍基地201として知られるアガデスのドローン施設である。

しかしサハラ砂漠横断ガスパイプラインをめぐっては、フランスとアメリカの利害は衝突している。ワシントンがノルド・ストリームを爆破してロシアとヨーロッパを結ぶ鉄のへその緒を断ち切った後、EU、特にドイツは代替策が必要だった。

アルジェリアのガス供給は南ヨーロッパをかろうじてカバーする程度しかない。アメリカのガスは非常に高価である。ヨーロッパにとって理想的な解決策は、ナイジェリアのガスがサハラ砂漠を横断して地中海深部を経由することだ。

ナイジェリアには5兆7000億立方メートルのガスがあり、アルジェリアやおそらくベネズエラよりも豊富である。それに比べてノルウェーは2兆立方メートルである。しかしナイジェリアの問題は、そのガスをどうやって遠くの顧客に送り届けるかであり、そのための不可欠な中継国となるのがニジェールなのだ。

ニジェールの役割について言えば、エネルギーはよく言われるウランよりもはるかに大きな問題である。実際、ニジェールはカザフスタンやカナダに遠く及ばない世界第5位の供給国にすぎないため、フランスにとってもEUにとってもそれほど戦略的な問題ではない。

とはいえフランスにとって究極の悪夢は、おいしいウラン取引を失うことと、マリのリミックス*としてプリゴジン亡き後ロシアがニジェールに本格的に進駐し、同時にフランス軍が追放されることだ。(*昨年フランス軍はマリから撤退し、マリは安全保障をワグネルに依存していた。)

これにガボンが加われば、事態はさらに悪化する。ロシアの影響力が高まることで、カメルーンやナイジェリアの反政府勢力への補給路が強化され、すでにロシアが強く進出している中央アフリカ共和国への特権的なアクセスが可能になるかもしれない。

カメルーンで41年間権力を握ってきたフランス寄りのポール・ビヤが、ガボンでのクーデター後、軍を一掃する道を選んだのも驚くにあたらない。次に倒れるドミノはカメルーンかもしれない。

 ECOWASがAFRICOMと会う

現状ではアメリカはスフィンクスを演じている。これまでのところニジェール軍がアガデス基地の閉鎖を望んでいるという証拠はない。ペンタゴンは、この基地に莫大な資金を投資し、サヘル地域や特にリビアを監視している。

パリとワシントンが唯一合意しているのは、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)の隠れ蓑のもとで、世界で最も貧しい国(国民の21%しか電気を利用できない)の一つであるニジェールに、可能な限り厳しい制裁を行うべきだということである。そしてそれらは2010年にコートジボワールに課されたものよりもはるかに厳しいものでなければならない。

そして戦争の脅威もある。ECOWASが、すでに2つの前線でテロとの戦争を戦っている国に侵攻するという不条理を想像してみてほしい。南東部ではボコ・ハラムと、三国境地帯ではISISと戦っている。

ECOWASはアフリカに8つある政治・経済同盟のひとつだが、その実態は非常に混乱している。中央アフリカと西アフリカに15の加盟国を抱え、フランス語圏、英語圏、そしてルソフォン(ポルトガル語圏)の国が含まれ、内部分裂が絶えない。

フランスとアメリカはまず、ECOWASを「平和維持」の傀儡としてニジェールに侵攻させたかった。しかしそれは人々の抗議によりうまくいかなかった。そこで、彼らはある種の外交手段に切り替えた。それにもかかわらず軍隊は待機したままであり、謎の「D―Day(上陸日)」が侵攻のために設定された。

アフリカ連合(AU)の役割はさらに不透明だ。当初、AUはクーデターに反対し、ニジェールの加盟を停止した。その後一転して、欧米の支援を受けた侵略の可能性を非難した。近隣諸国はニジェールとの国境を閉鎖した。

ECOWASは、アメリカ、フランス、NATOの支援がなければ崩壊するだろう。実質的には歯のないチワワのようだ。特にロシアと中国がBRICSサミットを通じてアフリカ全域でソフトパワーを示した後ではなおさらである。

サヘルの混乱における西側の政策は、大失敗の可能性からできる限りのものを回収することにあるようだ。たとえニジェールのストイックな人々が、欧米がどのような物語を作り出しても耳を貸さないとしても。

留意すべきはニジェールの主要政党であるアブドゥラハマヌ・チアニ将軍が代表を務める「祖国防衛のための国民運動」が、軍事訓練を含み当初からペンタゴンの支援を受けてきたことである。

ペンタゴンはアフリカに深く浸透し、53カ国とつながっている。2000年代初頭からのアメリカの主要なコンセプトは、常にアフリカを軍事化し、テロとの戦いの餌食にすることだった。2002年、ディック・チェイニーは「アフリカはテロとの戦いにおける戦略的優先事項である」と喧伝している。

これが米軍司令部AFRICOMの基盤であり、二国間協定で結ばれた無数の「協力パートナーシップ」なのである。現実的な目的から言えば、AFRICOMは2007年以来アフリカの広大な地域を占領してきた。

私の植民地フランはどれくらい甘いのか

グローバル・サウス、グローバル・マジョリティ、あるいは “グローバル・グローブ”{4}(ルカシェンコによる)の誰にとっても、フランスの新植民地主義{5}の本質を理解することなしに、アフリカの現在の混乱を理解することは絶対に不可能である。

その鍵はもちろん、CFA(セーファー)フランである。旧フランス領西アフリカおよびフランス領赤道アフリカを中心とする国で用いられるこの共同通貨は1945年に導入された「植民地フラン」である。CFAが「アフリカ金融共同体(African Financial Community)」を意味するようになった後も、このフランはまだ存続している。

2008年の世界金融危機の後、リビアの指導者ムアンマル・カダフィが、金に連動した全アフリカ通貨の設立を呼びかけたことを世界中の人々は覚えている。

当時、リビアはロンドンやパリ、ニューヨークの銀行にではなく、自国に約150トンの金を持っていた。もう少し金があれば、全アフリカ通貨はトリポリに独自の独立した金融センターを持つことができ、そのすべてがソブリン金準備に基づいていた。

数多くのアフリカ諸国にとって、それは欧米の金融システムを回避するための決定的なプランBだった。

世界の人々は2011年に起きたことも覚えている。リビアへ最初に空爆したのはフランスのミラージュ戦闘機だった。フランスの空爆作戦はパリでの欧米首脳による緊急協議が終わる前から始まっていた。

2011年3月、フランスは反政府勢力である国家暫定評議会を、リビアの合法的な政府として世界で初めて承認した。2015年、元米国務長官ヒラリー・クリントンの有名なハッキングされたメールには、フランスがリビアで何をしようとしていたかが明らかになった。「リビアの石油生産におけるより大きなシェアを獲得したい」「北アフリカにおけるフランスの影響力を高めたい」「フランスで印刷されるCFAフランに代わる全アフリカ通貨を創設しようとするカダフィの計画を阻止したい」というものだった。

西側諸国がアフリカにおけるロシアを恐れるのは当然である。それは、チャド、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、そして現在のガボンにおける警備の交代だけではなく、その理由は、モスクワはアフリカを略奪したり奴隷化しようとしたことがないからだ。

ロシアはアフリカを主権国家として扱い、永遠の戦争に巻き込まず、アフリカから資源を奪い取りながら対価としてわずかな金を払うということはしない。一方、フランスの諜報機関とCIAの “外交政策 “は、アフリカの指導者を根底から腐敗させ、腐敗させにくい指導者を抹殺する。

あなたに通貨政策の権利はない

CFAの仕組みは、マフィアを街角の不良程度に見せる。これは基本的にアフリカの主権国家数カ国の通貨政策が、パリのフランス財務省によってコントロールされていることを意味する。

アフリカ各国の中央銀行は最初に年次外貨準備高の少なくとも65%をフランス財務省の「運用口座」に保管する必要があった。さらに、金融「負債」をカバーするために20%を追加で保管することが義務づけられていた。

2005年9月に穏やかな「改革」が実施された後も、これらの国々は外貨の50%をパリに送金し、さらに20%の付加価値税を支払わなければならなかった。

さらに悪いことは、CFA中央銀行は、各加盟国への信用に上限を設けている。フランス財務省はこれらのアフリカの外貨準備を自身の名前でパリ証券取引所に投資し、アフリカの資金で巨額の利益を得ている。

歴然たる事実は、1961年以来、アフリカ諸国の外貨準備の80%以上がフランス財務省の管理する「運用口座」にあるということだ。一言で言えば、これらのアフリカの国は金融政策に対する主権を持っていないのだ。

しかし盗みはそこで止まらない。フランス財務省は、アフリカの外貨準備をあたかもフランスの資本のように利用し、EUやECBへのフランスの支払いの担保としているのである。

FranceAfrique全域で、フランスは今でも通貨、外貨準備、商人エリート、貿易ビジネスをコントロールしている。

その例は数えきれない。フランスのコングロマリットであるボローレは西アフリカ全域の港湾と海運を支配し、ブイグ/ヴィンチは建設と公共事業、水道、配電を支配し、トタルは石油とガスに莫大な出資をしている。さらに、フランステレコムや大手銀行(ソシエテ・ジェネラル、クレディ・リヨネ、BNPパリバ、アクサ(保険)など)がある。

フランスはフランス語圏アフリカのインフラの圧倒的多数を事実上支配している。事実上の独占状態である。

FranceAfriqueは完全な新植民地主義である。政策はフランス共和国大統領と彼の「アフリカ支部」から発せられる。シャルル・ドゴールの時代から、議会や民主的なプロセスとは何の関係もない。

「アフリカ支部」は一種の総司令部である。彼らはフランスの軍事組織を利用して「友好的な」同志的指導者を任命し、体制を脅かす者を排除する。外交は関係ない。現在、この組織は「小さな王様」エマニュエル・マクロンにだけ報告している。

麻薬、ダイヤモンド、金のキャラバン

パリは1987年、ブルキナファソの反植民地指導者トマ・サンカラの暗殺を完全に監督した。サンカラは1983年の民衆クーデターで権力を握ったが、わずか4年後に転覆、暗殺された。

アフリカのサヘル地域における実際の「テロとの戦い」は、西側で喧伝されている幼稚なフィクションとは何の関係もない。サヘルにはアラブのテロリストはおらず、私が9/11の数カ月前にバックパッカーとして西アフリカを横断したときに目撃した通り、オンラインでサラフィズムに改宗した地元の人々がいる。彼らはサヘル地域を横断する密輸ルートをより効果的にコントロールするためにイスラム国を設立しようとしている。

マリから南ヨーロッパ、西アジアへとサヘルを往来する古代の伝説的な塩のキャラバンは、今や麻薬、ダイヤモンド、金のキャラバンになっている。これが、例えば、イスラム・マグレブのアルカイダ(AQIM)の資金源であり、その後、サウジアラビアと湾岸諸国のワッハーブ派の狂信者に支援された。

2011年初頭にNATOによってリビアが破壊された後、もはや「保護」は存在せず、カダフィと戦った西側の支援を受けたサラフィー・ジハードは以前と同じような保護をサヘルの密輸業者に提供し、さらに多くの武器も提供した。

さまざまなマリの部族は好きなものを密輸し続けている。AQIMは依然として違法な税金を徴収している。リビアのISISは、人身売買と麻薬密売に深く関与している。そしてボコ・ハラムはコカインとヘロイン市場で繁盛している。

これらの組織と戦うためにアフリカ諸国が協力するある程度の取り組みがある。安全保障と開発に焦点を当てたG5サヘルと呼ばれるものがあった。しかし、ブルキナファソ、ニジェール、マリ、チャドが軍事路線をとった後、モーリタニアだけが残った。新しい西アフリカ・ジュンタ・ベルトは、もちろんテログループの壊滅を望んでいるが、何よりも戦いたいのはFranceAfriqueであり、彼らの国益が常にパリで決定されるという事実と戦いたいのである。

フランスは何十年もの間、アフリカ諸国間の貿易がほとんど行われないようにしてきた。内陸の国々は通過のために隣国を必要としている。彼らは主に輸出用の原材料を生産している。ほとんどの国にまともな保管施設がなく、エネルギー供給は弱く、アフリカ内部の輸送インフラは最悪である。これが、中国の一帯一路構想(BRI)プロジェクトがアフリカで取り組んでいる課題なのである。

2018年3月、44カ国の首脳がアフリカ大陸自由貿易圏(ACFTA)を提唱した。これは人口(13億人)と地理的な規模で世界最大である。 2022年1月、彼らは全アフリカ決済システム(PAPSS)を設立した。これは、アフリカの企業が現地通貨で決済を行うことを目的としたものである。

そのため彼らは必然的に将来、共通の通貨を目指すことになるだろう。何が彼らの邪魔をしているかというと、パリが押し付けているCFAなのだ。

いくつかの表面的な措置では、依然としてフランス財務省がアフリカの新通貨に対する直接のコントロールを行うこと、入札プロセスでフランス企業の優先権、独占権、フランス軍の駐留を保証する、となっている。ニジェールでのクーデターは、一種の「もう我慢できない」という意思表示なのだ。

以上のことはすべて、経済学者マイケル・ハドソンがその著作の中で詳述してきた、採掘主義(特に輸出用の天然資源を最小限の加工で採取すること)モデルの力である。ハドソンは、世界の資源を支配することがいかに最重要課題であるかを示した。それこそがグローバルパワーを定義するものであり、フランスの場合は中堅国と定義される。

フランスは、通貨政策の支配とこれらの資源豊かな国々での独占企業を設立し、資源をコントロールすることがどれほど容易かを示している。これらの国々で事実上の奴隷労働者を使い、環境や健康に関する規制がゼロのまま資源を採掘・輸出しているのだ。

また、搾取的な新植民地主義にとって、資源国が自国の資源を自国の経済成長に利用しないようにすることも不可欠である。しかし今、アフリカのドミノ倒しはついに「ゲームオーバー」と言っている。真の脱植民地化がようやくきたのだろうか?

Links:

{1} https://new.thecradle.co/articles/welcome-to-the-brics-11

{2} https://new.thecradle.co/articles/france-never-stopped-looting-africa-now-the-tables-are-turning

{3} https://blogs.lse.ac.uk/africaatlse/2017/07/12/the-cfa-franc-french-monetary-imperialism-in-africa/

{4} https://new.thecradle.co/articles/finance-power-integration-the-sco-welcomes-a-new-global-globe

{5} https://new.thecradle.co/articles/france-never-stopped-looting-africa-now-the-tables-are-turning

https://new.thecradle.co/articles/no-respite-for-france-as-a-new-africa-rises