Fukushima’s nuclear waste:Stigmatising Russia, approving Japan
by Richard Cullen
20年前、日本はロシアに日本海での核廃棄物の投棄の中止を要求した。何が変わったのだろうか?核廃棄物には罪深いものもあれば、良いものもあるということなのだろうか?日本はそう信じているようだし、主流メディアも、なぜこのナラティブが支持に値するのか、その理由を理解している。
東京電力福島第一原子力発電所は2011年の地震と津波で壊滅的な被害を受けた。日本は最近、原発の破壊によって汚染された100万トン以上の水を、今後30年間にわたって隣接する海に放出することを決定した。
この膨大な汚染水の長期放出がもたらす本当のリスクレベルについては深刻な議論がある。東京電力によれば、同位体を除去するために水をろ過し、希釈しているといい、トリチウムを除いて、汚染水は安全に減衰した形で海に入るという。しかし、この規模の放出は前例がない。さらに、科学的根拠をめぐる議論とは関係なく、本当に興味深いのは、欧米の主要メディアがこの問題をどのように大きく取り上げているかということだ。
日本の決定は、当然のことながら、少なくとも中国と韓国、そして日本の漁業関係者の間で物議を醸している。東アジアの水産物産業への禁断の影響はすでに明らかだ。
しかし、西側主要メディアの報道を読むと、際立っているのは、ほとんどの報道が理解ある論調をしていることである。最近のロイターの報道{1}はそのことを示している。東京電力が「トリチウム濃度が規制値を下回るまで」ろ過・希釈してから海洋に放出することを強調し、「トリチウムは比較的無害と考えられている」と付け加えた。アルジャジーラ{2}が2021年に主張したことについては触れられていない。その報道では、東京電力の長期にわたる安全管理の評判の悪さを強調し、次のように指摘した:
最も重大な罪のひとつは、事故前に東電の内部調査が、原発は大津波に対して脆弱であり、防護壁が必要であると結論付けていたことである。
また、ロイターの報道は、「トリチウムを含む水は世界中の原発から日常的に放出されている」(その量についての言及はゼロ)、(匿名の)「規制当局は福島の水をこの方法で処理することを支持している」とも伝えている。この報道は、東京電力のプレスリリースにかなり基づいているようである。
次に、1993年にロシアが900トンの放射性廃棄物を日本の北の海洋に放出した際、東京がどのように対処したかを考えてみると、明らかである。
『コリア・ヘラルド』紙の最近の論評によれば、このロシアの廃棄物{3}は濾過されていなかったが、それでも低レベル廃棄物とみなされていた。さらに、『グローバル・タイムズ』紙の別の最新記事{4}によれば、国際原子力機関(IAEA)は1993年にロシアがこの廃棄物を投棄する計画を事前に知っていたにもかかわらず、介入する必要性を感じなかったという。
しかし20年前、日本はロシアによる日本海への廃棄物投棄の永久停止を直ちに要求したのである。駐日ロシア大使は東京の不満と要求を聞くために召喚された。日本はまた、IAEAが介入していないにもかかわらず、国際法上の論拠を援用しようとした。この際の廃棄物処理の総量は、福島原発からの廃水放出計画のごく一部の量であったことを忘れてはならない。
1993年当時、ロシアはソ連崩壊後、まだ主権を確立していなかったため日本や米国を含む他国からの圧力に押され、これ以上の廃棄物排出を止めるという要求に速やかに同意した。欧米の主要メディアは今日、福島の貯蔵タンクから廃水を「放出(リリース)」したと報じているが、1993年当時、ロシアは核廃棄物を「投棄」(ダンピング)した、と報じられた。
この偏向報道を理解する1つの方法は、中国の海岸にある核発電所が同様の壊滅的な破壊をおこし同じ程度の水放出を解決策とした場合を想像することである。想像してみてほしい。今ごろほぼ確実に主要な西洋メディア、特に興奮気味なメディアが掲載するであろう派手な見出しを。「中国が今後何十年も太平洋を汚染する」「中国共産党が地球を侮蔑」
つまり、立場によって、罪の思い核廃棄物もあれば良い核廃棄物もあるということだ。この話を聞いて、イギリスの労働党の有力政治家が語った若い頃のエピソードが思い起こされる。彼は原爆禁止集会でデモ行進をしていた。彼がすべての核兵器に反対だと言ったとき、より熱心な信者が、それは間違っている、ソ連が保有している原爆は人民爆弾という別のカテゴリーだ、と指摘したのだ。
Links:
{1} https://www.reuters.com/world/asia-pacific/fukushima-water-release-plan-2023-08-22/
{2} https://www.aljazeera.com/news/2021/3/10/the-costs-of-nuclear-power-japan-fukushima
{3} https://www.koreaherald.com/view.php?ud=20230901000572
{4} https://www.globaltimes.cn/page/202308/1296240.shtml
Richard Cullen:香港大学法学部非常勤教授。以前はオーストラリア、メルボルンのモナシュ大学ビジネス法・税務学部教授。
Fukushima’s nuclear waste: Stigmatising Russia, approving Japan