CHINA HAS BETTER CARDS THAN TRUMP
By Joseph Stiglitz .
トランプの間違いは単純だ。彼は貿易の数字を見ただけだった。
NuryVittachi
中国は輸入よりも輸出が多いから、米国は高関税によって中国の輸出を締め上げて中国を苦しめることができるとトランプは考えたようだ。
しかし、この貿易戦争におけるパワーバランスを評価する上で重要なのは、「代替可能性」と呼ばれるものだ。
中国は米国の農産物輸出、特に大豆やソルガムに対して厳しい関税を課すことができるが、国内でのインフレにほとんど影響を与えることはない。米国からの輸入する代わりに世界市場で他の国から購入することで対応できるからだ。
米国に代替品はない
少なくとも短期的には、米国には中国のレアアースや鉱物の代替品がない。それらは多くの分野で必要不可欠であり、中国はそれを知っている。
このことは、日本、オーストラリア、インド、トルコなど、対米貿易よりも対中貿易の方が多い他の多くの国々にも言えることであり、中国よりも米国の側に立つことで重要な商品の流れを妨げたいとは思わないだろう。
中国からの特定の輸入品への米国の依存度を下げることは簡単なことではない。例えばiPhoneの製造は、インドなど他の国に移すことも可能だが、それには長い時間とコストがかかるだろう。
中国は現在、物流、製造サプライチェーン、エンジニアリングにおいて比較優位に立っている。スマートフォンやその他多くの製品の生産で中国が優位を占めているのは偶然ではない。中国で製造するほうがずっと安価なのだ。サプライチェーンを再構築すればこれらの製品の価格は上昇するだろう。
中国は他の買い手を探さなければならない
これは、物事が不均衡である二つ目だ。貿易戦争は主に米国にとっては輸入に関するショック(供給の問題)を引き起こし、中国にとっては自国の製品に対する適切な市場を見つけることに関するショック(需要の問題)を引き起こす。
しかし、中国にはこの需要不足を補うだけのノウハウと決断力、そして資源がある。そしてそれを素早く行うことができるかもしれない。それは内需を刺激することで可能であり、国内消費がGDPに占める割合は低いため、その余地は十分にある。
購買力平価(人々が自分のお金で実際に買える商品、経済学者が物価が異なる場合の経済規模を比較する標準的な方法)で見た中国のGDPは米国よりも高く、これによって中国の国内需要を拡大する余地が再び生まれる可能性がある。
中国はまた、社会保障制度を強化し、賃金を引き上げることもできる。労働者の所得分配は、他の多くの国と比べて依然として低い。
政府支出を大幅に増やす余地がある。例えば、科学や教育の分野であれば、工学分野での米国に対するリードを広げることができるだろうし、環境や健康分野であれば、何千万人もの国民が田舎から町や都市に移り住みやすくすることができるだろう。
したがって、中国は米国への輸出の減少による総需要の不足を補うことができ、他の国々に「ダンピング」することに頼る必要はない。ただし、短期的にはそのような事例が見られる証拠はある。
米国は複数年にわたる変革が必要
このような貿易戦争で米国が必要とする供給側の調整は実行がはるかに難しく、投資、訓練、インフラを何年もかけて強化する必要がある。
さらに米国はこの調整への挑戦をより大きなものにしてきた。かけたりやめたりする関税にDOGE(いわゆる政府効率省)が実施した大幅な公共部門削減と相まって、民間・公共部門ともに大混乱が起きている。
米国に生産拠点を移すには巨額の先行投資が必要だが、こうした混乱があるため、4年後どころか3ヵ月後の経済環境についてもどの企業も確信が持てない。.
工場が戻るか?ノーだ
貿易赤字さえ悪化するかもしれない。トランプは製造業の雇用を取り戻すと言っているが、現在の製造業は米国の雇用の10%にも満たない。
トランプは未来ではなく過去に目を向けている。仮に彼が米国の製造業を復活させることに成功したとしても、国内の非工業化地域の労働者に良い雇用を生み出すことはできないだろう。
最近の自動車はロボットによって製造され、優れた企業では生産労働者と同じくらい多くのエンジニアや研究者を雇っているが多くの場合生産ラインの仕事は低賃金である。
今日、本当に重要なのはサービスと知識の分野である。しかし米国の長年にわたるサービス貿易黒字が減少するのはほぼ確実であり、特にトランプがかなりのソフト・パワーにダメージを与えていることを考えれば、なおさらである。観光業は急激に落ち込んでおり、外国人学生は米国で学ぶことをためらっている。法の支配が試されており、大統領は国内の主要大学に対して大規模な戦いを繰り広げている。
教育が鍵
最後の点は長期的な展望をさらに暗くしている。なぜなら大学教育は国の技術的優位性の礎となる科学の進歩を生み出すからだ。
これが米国の持続的な競争優位性の源となるものなのだ。
一方で中国は、過去10年間に何十もの新しい大学を建設している。
[これはノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツによる、米国の関税戦争に関するUK Sunday Timesのエッセイからの抜粋である。]