No. 2898 帝国の海峡危機:ホルムズの次はマラッカ

Imperial Dire Straits – After Hormuz, Malacca

by Pepe Escobar

ホルムズ海峡は深刻な戦略的膠着状態の中心にある。トランプは断固として、核合意なしに戦争は終結しないと主張している。だがその合意とは、よく言っても、かつてトランプ自身が破棄したJCPOA(イラン核合意)を骨抜きにしたようなものになるだろう。

一方テヘランは、戦争が終わるまで核に関する議論は一切行わないと改めて表明した。

このギャップはすぐには埋められそうもなく、世界経済は極めて大きな代償を払っている。

イランの港湾、そして遠く離れたホルムズ海峡そのものに対する米国の海上封鎖は、イランの新指導者アヤトラ・モジタバ・ハメネイの側近たちが言う「連鎖反応」の始まりに過ぎない。

テヘランの意思決定者たちはチェスボードを精査しながら、今後増大する航路/サプライチェーンの問題を痛切に認識している。彼らは、INDOPACOM(インド太平洋軍)がインド洋から東南アジアに至るまでイランのタンカーを標的にしている様子を把握しているのだ。

テヘランで見られる光景は、北京の光景と全く同じだ。マラッカ海峡を見てみよう。インド洋と南シナ海を結ぶこの海峡は、最も狭い地点でわずか2.8キロメートル(ホルムズ海峡よりもはるかに狭い)しかない。世界の海上貿易の30%を担い、現在の封鎖前は1日に2500万バレルもの石油が通過していた。

重要な点として、マラッカ経由の輸送は中国の石油輸入量の80%を供給しており、日本、韓国、台湾、そしていくつかのASEAN諸国にとっても極めて重要である。

「マラッカから逃れる」ことは、私が著書『混沌の帝国』で分析したように、2000年代初頭から中国海軍のエネルギー供給における最大の執着事項となっている 。

このため中国は複数のレベルで猛烈なスピードで攻勢を強めている。外交面ではマレーシアやインドネシアとの良好な関係構築、輸入代替(あらゆる形態のグリーンエネルギーや再生可能エネルギー源への移行)、代替貿易ルート(ロシアの「パワーオブシベリアI・II、パキスタンのグワダル港、トルクメニスタンとミャンマーからのガスパイプライン)などだ。

今やテヘランも北京も、海賊国家米国による世界的なエネルギー戦略の真意を見抜いている。米海軍による封鎖は、アジアの広範な地域のエネルギー安全保障を崩壊させ、米国が自らの戦略的資産として売り込む石油やガスを「同盟国」に購入させるための、単なる第一歩に過ぎないのだ。

INDOPACOMの司令官サミュエル・パパロ提督は、実際にその実情を明かした。「私は、米国がインド太平洋地域においても、こうした重要な要衝による脆弱性から脱却し、ますますエネルギーの純供給国となっていける能力を有していることを断言する」。

米第7艦隊は、理論上マラッカ海峡周辺の海域を「パトロール」しているのだ。

タラソクラシー・リミックス

イランの動向を注視していたインドネシアは、風向きが「要衝の主権」に向かっていることをいち早く察知した。

ちなみに、両国ともBRICSの正式加盟国である。

ジャカルタは同国の財務省を通じて、テヘランが実際に示したことで沿岸国が自国の領海を通過する船舶に通行料を課すことができることを理解していた。まさに戦略的な再配置と言えるだろう。

ここでマラッカ海峡に料金所が設置される可能性が浮上したのだ。インドネシアの財務相は次のように述べている。「インドネシア、マレーシア、シンガポールの3カ国で収益を3等分すれば、かなりの額になるだろう。我々の管轄区間が最も広く、最も長い。」

予想通り、反応は様々だった。マレーシアは慎重な姿勢を見せる一方で、自国タンカーがホルムズ海峡を通るための交渉を密かに進めている。シンガポールは「ノー」と断った。当然である。この島国の経済モデルは、自由な航行と、海峡の南端に位置する国際金融ハブとしての役割の上に成り立っているのだから。

インドネシアの財務相はこの提案をすぐに撤回した。

マラッカ海峡は基本的にマレーシアとインドネシアのスマトラ島の間を流れている。シンガポールが管理しているのは、南東の出口にあるごくわずかな区間だけだ。要するにシンガポールは、本質的には他国に属する重要な水路において、最先端のサービス提供者であることで利益を得ているのだ。

ジャカルタが計画していることは、INDOPACOMと真っ向から対立することになるだろう。米国とインドネシアが最近、ワシントンで防衛協定に署名したばかりである上、しかもそれがイランとの戦争の最中に行われたことを考慮してもなお、だ。中国はこれを快く思っていない。

米国は、ジャカルタがロンボク海峡やスンダ海峡といった他の主権的資産に「通行料徴収所」を設置することを考え始める前に、理論上はインドネシアを自国の軍事体制に組み込むことに非常に迅速だった。さらに事態を複雑にしているのが、米軍機に対する「包括的な上空通過権」の付与の可能性だ。ジャカルタの外務省はこれに断固として反対している。

要するに、海洋勢力の価値が見直されつつあるとしても、問題は、その過程が「海洋帝国」の銃艦外交という鋭い監視の下で進められていることだ。

こうした動きは第一列島線を超えて拡大している。そこでは米国が日本、台湾、フィリピンを利用し、中国が西太平洋だけでなくマラッカ海峡へもアクセスできないように制限しているのだ。INDOPACOMの夢は、言うまでもなくマラッカ海峡の支配である。

トランプ2.0が実行に移しているのは、まさに世界規模の海上封鎖戦略である。または、率直に言えば、世界規模の海賊行為だ。最初の試金石はベネズエラだった。ホルムズ海峡を支配する力がなかったため、プランBとしてイランの全港湾を封鎖する手段にでたのだ。

問題の中心はCENTCOMとINDOPACOMが中国に鋭く焦点を合わせているという点だ。「タラソクラシー・リミックス」は、ホルムズ海峡、マラッカ海峡、台湾海峡、南シナ海を、中国を包囲し「封じ込める」ための主要な拠点として結びつけている。

インドネシアはこのゲームにどう関与するのか?

ホルムズ海峡に対する事実上の二重封鎖がインドに影響を与えるかどうかという疑問は検討に値する。インドにはいつでもチェンナイ・ウラジオストク間の「東方海上回廊」という頼みの綱がある。ここで、ロシアとインドの戦略的優先事項についてさらに深く掘り下げてみよう。

この海上回廊協定は2019年のウラジオストク・フォーラムで締結された。全長1万キロメートル、運用は2年前に開始され、貿易は石油、ガス、金属、機械・設備を中心としている。そして極めて重要な点として、帝国主義的な海洋支配の圧力には影響を受けない。

そしてマラッカの話題に戻る。とりわけ、新興大国であるインドネシアがこのゲームにどう関与するかという点だ。インドネシアは世界のエネルギー安全保障にとって極めて重要で、世界のニッケル埋蔵量の25%(EVバッテリーに不可欠)を保有している。そして何より重要なのは、世界最大のイスラム教徒人口(2億4000万人、世界全体の約13%を占め、西アジア全体をはるかに上回る)を抱えていることだ。

エプスタイン・シンジケートによるイランへの「選択的」戦争は、技術力だけでは地政学を制御するには不十分であることを、グローバル・サウス全体に示した。

たとえ世界一の派手な兵器や火力をすべて持っていても、地理を理解していなければ終わりだということをイランは証明した。今後何が起ころうとも、西アジアから東南アジアに至る戦後の情勢は、ホルムズ海峡、バブ・アル・マンデブ海峡、そしてマラッカ海峡という3つの要衝の情勢を軸に展開することになるだろう。

北京はこの重要性を十分に認識している。何よりも、ユーラシアの主要な交差点であるイランは、今も昔も「新シルクロード/一帯一路」の陸路バイパスであり、中国が「マラッカからの脱出」を実際に実現するための接続回廊である。イランの次のステップは、パキスタンの複数の接続回廊を経由して大量の原油を中国へ輸送するという技術的難題を解決することだ。

インドネシアは中国を刺激することなく、制御不能な帝国(米国)をどう管理するかという綱渡りのような状況に置かれている。

トランプに至っては、5月14日に北京で習近平と会談する際、事実上なんの切り札も持っていない。エネルギー分野での完全な支配権も、石油とLNGを組み合わせたドル支配、イランを崩壊させたことによる支配権もホルムズ海峡の支配権もない。そして現時点では、マラッカ海峡の支配権もない。

残っているのは、海賊行為だけだ。

https://www.unz.com/pescobar/imperial-dire-straits-after-hormuz-malacca/