No. 2216 調停者ヴィクトルの平和シャトルの背後にある全体像

The Big Picture behind Viktor The Mediator’s peace shuttle

by Pepe Escobar

ヴィクトル・オルバンは絶好調だ。

そしてそれは、怒涛のジェットコースターの始まりでもある。

ハンガリー首相の平和のシャトルが、ウクライナとロシアから中国へと移動する光景に西側の地政学的な沼にはまり込んだ前時代的な標本たちがヒステリーの深みに達するという異常な光景に誰もが心を奪われている。

そしてそれが戦争屋のグローバル・ロボコップNATOの75周年記念の前夜に行われたことは究極の侮辱に違いない。

モスクワで行われた3時間に及ぶプーチンとヴィクトルの調停者会談は、非常に興味深いものだった。プーチンの主な発言は次の3点である:

1.キエフは停戦という考えは許さない。なぜなら停戦すれば戒厳令を延長する口実がなくなるからだ。

2.キエフが戒厳令を解除すれば、大統領選挙を実施する必要がある。現ウクライナ当局が選挙に勝利する可能性は限りなくゼロに近い。

3.キエフの兵器を追加するための休戦はあってはならない:モスクワは完全かつ最終的な終結を望んでいる。

これに比べると、オルバンの3つのポイントは間違いなく以下の通りだ:

  1. ロシアとウクライナの立場は非常にかけ離れている。多くのことを行う必要がある。
  2. ウクライナでの戦争は、欧州経済とその競争力に影響を及ぼし始めている(EUの「指導者たち」が否定しようとも)。
  3. 「プーチンが既存の和平イニシアチブ、停戦と交渉、そして戦争後のヨーロッパのビジョンについてどう考えているかを聞いた」。

オルバンはまた、「通信手段はビッグボーイズによる完全な監視下にある」として、会談前の秘密主義を強調した。

彼は、ウクライナの解決策を模索することは「キリスト教徒の義務」だと述べた。そして彼はプーチンに3つの質問をしたと語った。和平交渉が可能かどうか。和平交渉開始前の停戦が現実的かどうか。そしてヨーロッパの安全保障体制はどのようなものになりうるか、である。

オルバンによれば、プーチンはその3つすべてに答えたという。

戦争屋にとってではなくグローバル・マジョリティにとって決め手となったのは、オルバンがプーチンをこう評したことだ:

   彼との交渉では彼はいつも機嫌がいい。これが一つ目だ。二つ目は、プーチンは100%以上理性的だ。彼が交渉するとき、説明を始めるとき、イエスかノーかでオファーを出すとき、彼は超、超合理的だ。ハンガリー語で何と言うのだろう?冷静で、控えめで、慎重で、時間厳守だ。彼には規律がある。だから、彼と交渉し、彼の知的・政治的レベルに見合う準備をするのは本当に大変なことだ。

新しいユーラシアの安全保障システム

以上のことはすべて、プーチンが先月提唱し先週アスタナで開催された上海協力機構(SCO)首脳会議でも主要議題となった新しいユーラシア安全保障システムの概念と結びつく。

プーチンは、このプロセスにおけるSCOの中心的役割を強調し、「SCO地域対テロ機構を安全保障上のあらゆる脅威に対応する任務を負うユニバーサル・センターに変える決定がなされた」と述べた。

つまりSCOは、ユーラシア全体の安全保障体制の新たな不可分性において間違いなく重要なノードとなるだろう。これは非常に大きなことだ。

すべては、2015年にプーチンが提案し、2018年にセルゲイ・カラガノフが構想した「大ユーラシア・パートナーシップ」の概念から始まっている。プーチンは6月に行われたロシアの主要外交官との会談でさらにそれを一歩進めた。集団的なユーラシアの安全保障のための、二国間および多国間の重大な保証を設定する時がきたのだ。

プーチンによれば、それはEUとNATO諸国を含む「参加を望むすべてのユーラシア諸国」に開かれた安全保障アーキテクチャであるべきだと言う。

そしてそれは、「ユーラシア大陸における外部勢力」の軍事的プレゼンスを「徐々に段階的に縮小」していくとともに、「欧米に支配された経済メカニズムに代わるものの確立、決済における自国通貨の使用拡大、独立した決済システムの確立」にもつながっていくはずである。

一言で言えば、地政学的・技術的・軍事的な全面的な刷新であり、地理経済的な刷新(INSTCのような代替国際輸送回廊の開発の重要性)なのだ。

駐EUロシア代表部のキリル・ログヴィノフ臨時代理大使は先週、「ユーラシア大陸の新しい安全保障構造」というテーマで欧州側に説明を試みた。

ログヴィノフは、「ユーロ・大西洋の安全保障概念がいかに崩壊したか」を説明した。米国とNATOが支配するヨーロッパの地域安全保障の枠組みは「すべての人のための不可分な安全保障」という原則の実践的な実施を保証することができなかった。

だからユーラシアにおける安全保障と協力の将来のシステムは、「国連憲章の原則と国際法のルールに基づく多極化した世界におけるグローバルな安全保障アーキテクチャの基礎」を形成することになる。

そして大ユーラシア・パートナーシップは、この新しいユーラシア安全保障システムの経済的・社会的基盤を形成することになるだろう。

EU/NATOが新たな現実を受け入れことはありえないだろう。しかしSCOの中ですでに生まれつつある相互安全保障空間は、少なくとも当面の間は、西ヨーロッパ半島を除いたユーラシア大陸を、大国の戦略的安定という点でより強固なものにするはずである。

衰退しつつある米国の下で卑しい属国としてとどまるか、それとも主権を持ったダイナミックな未来のために東に目を向けるかは、結局ヨーロッパ次第なのだ。

ロシアのプラン 対 他のすべてのプラン

6月14日にロシア外交官たちの前で発表されたプーチンのウクライナ和平案はこの全体像の下で理解されるべきである。オルバンは確かにそれを理解した。

他のいかなる計画も(中国の修正案を除き、そしてそれがオルバンが北京に行った理由だ)モスクワの観点からすれば的外れである。

もちろん、トランプ・チームはNATO中心の独自の計画を考えなければならなかった。それは無知なヨーロッパ人への贈り物ではない。

トランプ大統領の下でNATOの役割は変わるだろう。ヨーロッパにおける「補助」勢力になるのだ。もちろん、ワシントンはドイツ、英国、トルコといった「基地の帝国」のノードを維持するが、地上軍、装甲車、大砲、兵站、あらゆるもの、高コストを含むものはぐらつく欧州経済が全額負担することになる。

トランプの国防戦略アドバイザー、エルブリッジ・コルビーの調整の下、新政権はプーチンに「NATOを東に拡大しない」ことを約束するだろう。さらに、トランプはロシアに対して「領土の譲歩を検討する」用意があるようだ。

まるでモスクワが、信頼できないことで有名な米国大統領から「譲歩」を引き出すために一斉に祈っているかのうようである。

この計画の要点は、トランプ2期目の下では米国にとっての主な「脅威」はロシアではなく中国になるということだ。

米大統領選挙まであと4カ月となり、ホワイトハウスの死体が(特に有力な献金者から)裏切られようとしている今、ロシアに戦略的敗北を与えるという夢は終わったということをゾンビ集団もようやくわかり始めた。

それでも、ワシントンDCの民主党と混乱したNATOの属国は、朝鮮戦争のシナリオを押し付けようと必死だ:

見せかけの停戦と、現在の前線の凍結である。

この場合、近い将来ウクライナが多少なりともNATOやEUに加盟する可能性を維持し、さらにロシアの西部戦線に再武装したウクライナ軍を温存するという「和平案」をモスクワが受け入れる可能性はないだろう。

今戦争を凍結しても2、3年後にはキエフが大幅に再武装した状態で新たな戦争が始まることになる。モスクワの絶対的な要求は、完全に非武装化された中立のウクライナであり、さらに公的な非ロシア化政策の終結なのだ。

オルバンは、ロシアと中国を「説得」し、北京がモスクワに圧力をかけて停戦に持ち込もうというNATOゲームをやっているわけではない。無知なEUのパートナーとは異なり、オルバンはロシアと中国の戦略的パートナーシップについて学んだのかもしれない。

今後4カ月は交渉も秘密の交渉も大変なものになるだろう。戦争は2024年には終わらないだろう。そして、長く恐ろしい数年にわたる戦争のシナリオはトランプ2期目によってのみ払拭されるかもしれない。そしてそれは、ディープ・ステートの集団が死体となったあとだ。

残るのは全体像だ。「ルールに基づく国際秩序」の未来はノヴォロシアの黒い土の中で決定されようとしている。それは一極秩序対多極的、マルチノードの秩序である。

NATO諸国はロシアにああだこうだ指図する立場にはない。プーチンの申し出はこれが最後だ。それに応じなければ?全面降伏するまで戦争はずっと続くだろう。

モスクワは、西側諸国がプーチンの申し出を受け入れるかもしれないという幻想は全く抱いていない。ロシア対外情報庁(SVR)の長官であるセルゲイ・ナリシキンは、「状況は悪化する一方だ」と露骨に語っている。プーチンはモスクワの条件の「最低レベル」を発表したにすぎない。

オルバンは、和平解決に向けた本当の条件は、DPR(ドネツク)、LPR(ルガンスク)、ザポロージェ、ケルソンの4地域が本来の行政境界線に沿ってロシアに帰属すること、ウクライナが中立、非核、非同盟となること、西側の集団制裁がすべて解除されること、ロシアの凍結資金が返還されること、だということを理解しているのだろう。

そのどれをも実現するのはあまり期待はできないが、ロシアにはたっぷり時間がある。今優先すべきは、来年10月にカザンで開催されるBRICSサミットの成功だ。ニコライ・パトルシェフ新大統領補佐官とA・ダイウミン新国防相は、ベローゾフ新国防相とともに全体像戦略に磨きをかけている。

一方で、余興として常にNATOのショーがある。とても平和的で、とても穏やかで、とても民主的だ。クールな演出。楽しみに参加しよう!

The Big Picture behind Viktor The Mediator’s peace shuttle