No. 2280 バイデンの停戦妨害工作に終止符を

Putting an End to Biden’s Ceasefire Sabotage

by Mike Whitney

ワシントンの国連安保理における投票権は危機に瀕している? …「紛争当事国は投票を棄権する」

ガザにおける停戦の主な障害はイスラエルでもハマスでもない。米国である。知っておくべきことは以下の通りだ:安全保障理事会(UNSC)は2024年6月10日、バイデンが起草した停戦合意を承認した。(3か月前)米国の外交官は、イスラエルがこの合意を支持していると安全保障理事会の他のメンバーに保証した。しかしこの主張は嘘だった。イスラエルはこの合意を支持しておらず、その規定の実施を拒否している。それでも、いわゆる「バイデン・プラン」は決議2735という形で安保理を通過した。合意の概要は以下の通りである:

 決議2735により…15カ国で構成される機関はこの提案の実施により、次の成果が3段階にわたって広がることを了承した。第1段階は、人質の即時かつ完全な解放を伴う即時の完全な停戦、 殺害された一部の人質の遺骨の返還、パレスチナ人捕虜の交換、ガザの人口密集地域からのイスラエル軍の撤退、パレスチナ民間人の自宅への帰還、ガザ全域への人道支援の安全かつ効果的な大規模配布などである。{1}

ここには何の曖昧さもなく、安全保障理事会の要求は明確である。紛争の両当事者は、国際法の下で「拘束力」を持つこの決議の規定を実施することが求められている。

ハマスは決議2735の遵守に同意しているが、イスラエルは拒否している。つまり、停戦問題に関しては、米国とハマスの立場は同じである。

イスラエルの拒否について、一般市民を混乱させるためにバイデン政権はカイロとドーハで(イスラエル、エジプト、カタール、米国との)交渉を監督し続け、交渉が継続しているという印象を与えようとしている。しかし交渉は続いていない。これは、国連が支持する停戦をイスラエルが拒否していることを隠すための茶番劇である。米国は、その欺瞞に加担している。

現在、一般市民はイスラエルとハマスがフィリデフィ回廊に関する妥協案をまとめることができれば、和平合意が可能になるだろうと確信している。しかし、これも誤解を招く表現である。なぜなら、停戦決議はすでに徹底的に議論され、国連安保理で承認されているからだ。それに、フィリデフィ回廊は決議2735の本文にはどこにも登場せず、未解決のポイントである。先週ロシアの国連安保理特使は次のように要約した:

     残念ながら、イスラエルの指導部は交渉をカムフラージュとしてみており、それによって国際社会の目をパレスチナ問題に対するイスラエルの軍事的解決策からそらそうとしている。これは西エルサレムの現地での行動だけでなく、最近、ネタニヤフが「パレスチナ自治区での軍事行動を停止するつもりはない」と発言したことからも明らかである。イスラエルの軍事内閣がこの政策を変更するつもりがあるという兆候は依然として見られない。{2}

これが現在起きていることの正確な描写である。米国は現在進行中のイスラエルの大暴れに対する責任を逃れ、10か月間にわたる紛争の解決に真剣に取り組んでいるように見せかけるために国民を欺くのを支援している。しかし紛争を解決するつもりなどなく、実際、ネタニヤフはイスラエルは戦闘を停止せず、ガザ地区からイスラエル軍を撤退させないと繰り返し述べている。ここにはグレーゾーンなど存在しない。国連の決議に従うことを露骨に拒否しているのだ。

当然ながら、安全保障理事会のメンバーはこの展開に苛立ちと怒りを示した。彼らは、国連安保理で決議案を可決することでイスラエルに圧力をかけようとしたバイデン政権に欺かれていたことに気づいたのだ。この計画が失敗に終わった今、米国はイスラエルがどんな罪を犯そうともそれを庇うという、昔ながらの策略に戻っている。ロシアの特使ドミトリー・ポリアンスキーはさらに次のように述べている:

  米国の自称仲介者が派手なパフォーマンスを続け、彼らの外交努力が「現地で」迅速な結果をもたらすという空約束を繰り返す中、私たちはいつまで傍観を続けるつもりなのか? 実際、ワシントンは10ヶ月間、安保理全体を人質に取っているようなもので、拒否権を行使すると脅し、パレスチナ問題やガザ地区の停戦、あるいは中東和平プロセス全体の前進について、厳しいかつ明確な決定を下すことを妨げてきた。

 もし決議2735が履行されていないのであれば、新たな文書を採択し、「妨害者」たちに、彼らがやっていることの対価を払うことになるという明確なメッセージを送ろうではないか。そして、紛争当事者の気まぐれに関係なく、暴力を食い止めるのに役立つツールボックスを我々の決議に用意しよう。また、ワシントンが最終的に、パレスチナ市民の根絶に利用されているイスラエルへの数十億ドルに上る軍事支援を停止することも極めて重要である。安保理がその権限に従って行動し、米国とイスラエルの先導に盲従することをやめるには、あとどれだけの犠牲者が必要なのだろうか?{3}

国連安保理で演説するドミトリー・ポヤンスキー

つまり、安保理の温度が上昇していること、そして多くの理事国がワシントンの無謀な行動にほとほと困っていることがお分かりいただけるだろう。ポリアンスキーは、次のように痛烈に非難して声明を締めくくった:

  この議場にいる誰もが、ガザで今起こっていることの主な責任は米国にあるという事実を完全に認識している。

 まさにその通りだ。

注目すべきは、最近カイロやドーハで行われた交渉に参加した米国の外交官たちが、安全保障理事会のメンバーにそれらの会議の詳細を報告さえしていないことだ。それは、現行の停戦合意を修正する権限を持たない米国の役人が主導する悪辣な作戦であり、驚くべきことにハマスの代表者を交えずに行われているのだ。すべてのことが皮肉な詐欺であり、ロシアを排除してゼレンスキーがスイスでおこなった和平会議と驚くほど似ている。偽りの和平会議の次にまた偽りの会議が生まれた。

ドミトリー・ポヤンスキーが再びこう述べた:

     当初我々はイスラエル軍の飛び地からの完全撤退について話し合っていたが、イスラエルは現在、フィラデルフィとネツァリム回廊に自国の軍を駐留させることを主張している。安全保障理事会は、まったく異なる合意内容に同意した。つまり、これらの要求は、前述の安全保障理事会決議の規定に直接違反しているということだ。米国の調停者は、残念ながら、同盟国が国連安保理決議を一貫して違反することを公然と容認している。

こうやってバイデン政権は、イスラエルが現在の国連安保理支持の停戦条件に基づく義務を回避するのを支援しているのだ。ブリンケンは欺瞞の達人芸を披露している。

(より広範な問題について)イスラエルのガザ地区における10か月間にわたる流血の惨事は、最も助けを必要としている人々に安全を提供できないのであれば、なぜ世界は安全保障理事会を必要とするのか、と多くの人々を疑問に思わせた。

それは良い質問であり、「世界的な安全保障の保証人」を自負しながら、目の前でジェノサイドが展開されているにもかかわらず、行動を起こすことができない機関の信頼性を問うものだ。

もちろん問題の根源を特定するのは難しくない。それは、実施される見込みのない独自の折衷案を押し通すまで、停戦案を次々と拒否し続けた常任理事国である。我々が話しているのは、妨害の国、米国、すなわち、テロリスト国家イスラエルの同盟国で唯一イスラエルの利益のみを追求する安保理常任理事国である。他の理事国は、米国を安保理から完全に排除するか(そうすれば、制裁、平和維持軍、その他の懲罰的措置を通じて停戦決議を強制できる)、あるいは、米国に現在の紛争に関連する問題の投票を棄権させる方法を模索するか、という困難な課題に直面している。しかし、このようなことは可能なのであろうか?

答えはYES、であるだが容易に達成できるものではない。たとえそうであっても一国のメンバーが国連の本来の役割である世界平和と安全保障の維持を妨害し続けている以上、国連安保理は国際関係における自らの特別な役割を無視することはできない。

安保理メンバーの追放に関する規則は、追放をほぼ不可能にしている。国連憲章第18章では、総会において3分の2の賛成票で特定のメンバーを安保理から追放できると定めているが、安保理は総会にその案件が提出されるのを阻止できる。まさに「キャッチ22」(身動きが取れない状態)なのだ。

第108条
この憲章の改正は、総会の構成国の3分の2の多数で採択され、且つ、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に、すべての国際連合加盟国に対して効力を生ずる。{4}

法律学者も、国連憲章第6条は加盟国を排除することを認める解釈が可能であると主張しているが、これまでのところ、その点で有効に利用されたことはない。

第6条
この憲章に掲げる原則に執ように違反した国際連合加盟国は、総会が、安全保障理事会の勧告に基いて、この機構から除名することができる。

これまで国連から正式に追放された唯一の加盟国は、1971年の台湾(中華民国)である。台湾は「総会での投票により正式に国連から追放され、1949年の同国の内戦終結後に北京で政権を握った中華人民共和国(PRC)に取って代わられた。

 中華民国政府は、共産党が政権を握った際に数百万人の難民とともに台湾島に亡命したが、国連では「中国」の地位を維持し、拒否権を持つ安全保障理事会の常任理事国であり続けた。亡命したにもかかわらず、台北の政府高官は、アジアに共産主義が広がるのではないかという西側の懸念から米国の支援を受けていた。

     「北京の加盟に関する決議」、別名決議2758は、国連における「唯一の合法的な中国代表」として、北京の中華人民共和国の権利を「回復」するよう加盟国に求めた。中国の同盟国であるアルバニアの要請により、何年もの審議を経て最終的に総会でこの決議が可決された。{5}

台湾の排除は、今日の米国の状況とはまったく比較にならない。それに、米国の問題に対処する手段として、排除が最善の策であるとは限らない。もし、安保理が本来の任務を遂行するために必要な柔軟性を確保することが目的であるならば、焦点は米国の妨害を阻止する方法に置かれるべきである。安保理が本来の職務を果たし、決議を執行し、この無意味な戦争を終結させ、パレスチナの人々に正義をもたらすことを妨げているのは、米国の妨害主義である。もし米国を安保理にとどめたまま、こうしたことが実現できるのであれば、それは望ましい結果である。しかし、それは可能だろうか?

サンフランシスコ国連協会の理事、ダン・ベッカーは、可能だと考えている。同氏は次のように述べている:

   国連憲章において、安全保障理事会の常任理事国5カ国の拒否権を規定する文章は、驚くべきことに、次の9語で締めくくられている。「紛争当事国は、投票を棄権するものとする」。

 この表現が実際に決議案に適用される前に、数多くの条件、要件、試金石、そして乗り越えなければならないハードルがあることを認める前に、この表現を少し考えてみよう。

     しかし同時に、安全保障理事会の常任理事国(P5)であるイギリス、中国、フランス、ロシア、米国も例外ではないことを忘れてはならない。彼らもまた棄権しなければならないのだ。つまり、第27条(3)に、あまり知られていないが、明白に存在するこのメカニズムがある。  

    安全保障理事会に関する独立出版物『Security Council Report』によると、この条項を発動させるために必要な条件は次の通りである:

 「第27条(3)に基づく棄権は、次のすべての条件に該当する場合にのみ義務付けられる。決定が第6章または第8章第52条(3)に該当する場合、問題が紛争とみなされる場合、安全保障理事会のメンバーが紛争当事者とみなされる場合、決定が手続き的な性質のものではない場合」

   …

2つ目は、米国がガザ地区における「紛争当事国」であるという主張である。これは通常、米国がイスラエルに大量の武器を提供していることを理由に持ち出される。この問題は激しく議論されている。しかし、このテーマに関する多くの研究の中には、非常に包括的なものもあり、この主張を極めて妥当なものとしている。

     これは学術的な試みではない。P5メンバーに棄権を強いる能力は、慎重に検討されるべきである。今、世界中の注目が米国に集まっており、その緊張感は明らかである。

 このメカニズムの原則は小学生でも理解できる。それは究極の常識に訴えるものである。紛争に関与している場合、特定の状況下では、その紛争に関する決議案への投票を棄権することが求められるべきである。

     この条項が過去に使用されたことがなかったわけではない。最も多く使用されたのは国連の初期の頃だった。

  上記の安全保障理事会報告書文書をさらに詳しく調べると、この権限が12回にわたって適切に発動されており、は提起または検討されたが失敗に終わったのが14回あった。いずれにしろかつては実際に機能していたのだ…

     この問題を掘り下げる力は、今そして将来に大きな成果をもたらす可能性を秘めている。それは安全保障理事会の計算式を変える可能性がある。だからこそ第27条3項の「紛争当事国は投票を控える」というフレーズを再び使い、その限界と制約を慎重に検討し、そして早急に声を上げるべきである。{6}

「白馬の騎士」がガザ地区に現れ、イスラエルの残虐な暴挙からパレスチナ人を救ってくれるなどということはあり得ないことを認めよう。そんなことは起こり得ない。この紛争に終止符を打つ唯一の方法は、国際社会が米国を排除し、イスラエルを孤立させ、制裁を加え、徐々に服従へと追い込んでいく戦略を積極的に追求することである。国連安全保障理事会決議2735はすでに承認されている。今こそ、これを実行に移さなければならない。

補遺:国連安全保障理事会における人権活動家ユリ・ノバックの驚くべき証言

https://twitter.com/i/status/1831692733754331629

イスラエル建国以来、その指導理念は支配下にある全領土においてユダヤ人の優越性を推進することである。

   ――B’Tselem(イスラエルの人権団体)のユリ・ノバック事務局長

 イスラエル・パレスチナにおける人権状況について、本日、安全保障理事会で発言できることを光栄に思う。

 今週、数十万ものイスラエル人が街頭に繰り出した。彼らは怒りと絶望を感じ、政府に裏切られたと感じている。おそらく初めてのことだろうが、彼らは、イスラエル政府が交渉で人質を解放するつもりはなく、無期限に戦争を継続するつもりであることを理解したのだ。 

    過去11ヶ月間のイスラエル政府の犯罪行為を理解するには、この政権の全体的な目標を理解しなければならない。イスラエル建国以来、その支配下にある領土全体においてユダヤ人の優位性を推進することが、その指導理念であった。現政権の指針にはこうある。「ユダヤ民族はイスラエルの領土のすべてに対して排他的かつ疑いの余地のない権利を有する」と。10月7日にハマスが主導した犯罪的な攻撃により、1,200人のイスラエル人が死亡し、250人が人質となった。その日以来、イスラエル国民は大きな恐怖の中で暮らしている。わが政府は、国民全体のトラウマを悪用して、イスラエルによる全土の支配を強固にするという計画を強引に推し進めている。そのために、政府はパレスチナ人全体に対して戦争を仕掛け、ほぼ毎日、戦争犯罪を犯している。

     ガザ地区では、追放、飢餓、殺戮、破壊が前例のない規模で繰り広げられている。これは復讐の域を超えている。イスラエルは、ガザ地区を居住不可能にするというイデオロギー的な計画を推進する好機としてこの事態を利用している。国連総会は繰り返し指摘しているように、ガザ地区の大部分の家屋やインフラは、パレスチナ人を地域全体から追い出して数百万人を強制移住させることで完全に破壊された。イスラエルはガザ地区を長期的に支配するための基盤を固めつつある。これによりイスラエルによる入植地の再設置につながる可能性がある。

 ヨルダン川西岸地区と東エルサレムでは、政府が状況を悪用して取り返しのつかない変化をもたらそうとしている。10月以来、イスラエルは少なくとも140人の未成年者を含む640人のパレスチナ人を殺害した。入植者たちは、政府の支援を受け、白昼堂々とパレスチナ人を攻撃し、大虐殺を行っている。

     最近、軍はヨルダン川西岸地区で数十万人のパレスチナ人が利用するインフラを破壊することを目的とした大規模な作戦を開始した。国際社会はガザ地区の民間人に対するイスラエルの大規模な攻撃政策を阻止しなかった。そして今、この残酷な政策がヨルダン川西岸地区に波及している。パレスチナ人に対する戦争は刑務所でも起きている。10月以来、イスラエルは数千人のパレスチナ人を逮捕し、非人道的な環境下で拘束している。先月、私たちは「Welcome to Hell(地獄へようこそ)」という報告書を公表したが、そこでは拷問に等しい虐待の衝撃的なパターンが示されている。イスラエル政府は戦争を利用して、イスラエルの刑務所をパレスチナ人に対する拷問キャンプのネットワークに変えてしまった。このような暴力が可能になったのは、イスラエルが何十年にもわたって免責を享受してきたからだ。この免責が続く限り、殺戮と破壊は続き、拡大していく。そして恐怖がこの地を支配し続けるだろう。

     国際社会は、市民を守るという義務を果たしていない。ガザ紛争に関する4つの国連安全保障理事会決議は、恒久的な停戦をもたらすことも、人質を解放することもできなかった。地域的なエスカレートのリスクは高まっている。外交努力は、市民の大量殺害を阻止することも、ガザ地区における人道的惨事を終結させることもできなかった。安保理は、この失敗を認め、イスラエルとハマスに即時かつ恒久的にすべての敵対行為を停止させるための効果的な行動を取らなければならない。しかし、エスカレートの阻止は第一歩に過ぎない。国連安保理は、イスラエルの占領と入植地建設計画の全体が違法であるという国際司法裁判所の意見を考慮すべき時が来た。占領とアパルトヘイトの終結を求める声に対してこの議会が何もしない日が毎日続いている。あなたは私たちを見捨てようとしている。この土地の人々は、残酷で不当なアパルトヘイト体制の下で、何万人もの人々が不必要に苦しみ、命を落としている。{7}

Links:

{1} https://press.un.org/en/2024/sc15723.doc.htm

{2} https://russiaun.ru/en/news/polyanskiymiddleeast

{3} https://russiaun.ru/en/news/polyanskiymiddleeast

{4} https://www.un.org/en/about-us/un-charter/chapter-18

{5} https://www.aljazeera.com/news/2021/10/25/chinas-un-seat-50-years-on

{6} https://www.unz.com/mwhitney/putting-an-end-to-bidens-ceasefire-sabotage/

{7} https://twitter.com/i/status/1831692733754331629

https://www.unz.com/mwhitney/putting-an-end-to-bidens-ceasefire-sabotage/