No. 2514 潮が引けば、誰が裸で泳いでいるかわかる

When the Tide Goes Out, We Know Who Is Swimming Naked

トランプは裸の王様だ

by Hua Bin

トランプの「解放の日」の直前に「中国が米国を打ち負かす戦略(No. 2503 )」を書いたとき、落ち着いたら1ヵ月後にフォローアップをしようと考えていた。事態は予測したとおりの軌跡をたどっているが、私の予想よりもはるかに速いペースで進んでいる。

金曜の深夜、トランプが中国の対米輸出のおよそ4分の1を占める中国製スマートフォン、チップ、コンピュータ、電子機器を125%の「相互(完全な茶番)」関税の対象から外すと発表したことで、トランプ国王は実質的に膝まずいて屈服した。しかしホワイトハウス報道官カロリン・リービットは「トランプは譲歩したのではなく、うまくかわした」と言った。

アンソニー・ブリンケンは正しかった。国際関係においては、テーブルにつくか、メニューに載るかのどちらかだ。臆病トランプは臆病キエフと並んでメニューに載っていることがわかったのだ。

私は前回のエッセイで、トランプの通商政策は自分の頭に銃を突きつけて世界を脅かすようなものだと記した。彼がもう片方の手でカミソリを喉に当て、ついでに殺鼠剤も食べるとは知らなかった。

いつもなら私は「もう少し弾丸が遠くに飛んでから」結論を出すだろう。しかし、4月2日の「エイプリルフール」以降、すでにいくつかのことが明らかになっている。今後数ヶ月、数年の間に何が起こるかを予測することができる。

このエッセイでは、私の予測を紹介しよう。より大局的な視点に立ち、飽和状態にあるメディアから日々(1時間ごとでさえも)確実に発信される見出しの虜にならないよう忠告する。

後日掲載する続きのエッセイでは、先週の出来事から学んだ教訓をシェアしよう。「 潮が引くと、多くの神話が崩れ、多くの赤裸々な真実が明らかになる」

以下が私の大まかな予測である:

トランプは負け、中国からほとんど譲歩を得られないだろう。

この2週間の大げさな演出をすべて取り除けば、トランプの全面的な関税戦争の主な標的が中国であることは明らかである。残念ながら、彼がゼレンスキーに言ったように、今回トランプはカードを持っていないのだ。

貿易戦争は経済と政治の2つのレベルで起こる。

経済レベルでは、米国はASEANとEUに次いで中国の輸出にとって第3の市場であり、2018年の20%から今では12.5%(3兆5000億ドルのうち4400億ドル)を占めている。4400億ドルという米国への輸出は、中国のGDP(19兆ドル)の2.3%に当たる。中国の対米貿易は2018年以降縮小している。それ以外の地域(ロシアやグローバル・サウス全般)との貿易は急増している。

中国製品にとって米国はすでにそれほど重要な市場ではない。例えば、中国は米国にEVを輸出していないが(バイデンのおかげで関税100%)、依然として世界ナンバーワンのEV輸出国である。

対米貿易がゼロになったとしても、中国は国内消費を増やし、国外への販売を増やすことで、失われた米国への輸出を補うことができる。

中国政府は、国内消費を刺激するための財政・金融手段を十分持っている。3兆ドルの外貨準備(7,600億ドルの米国債を含む)と13兆ドルの国内貯蓄がある。中国の貿易黒字だけでも2024年には1兆ドルに上る。これらの資金の多くを米国との貿易戦争による悪影響を相殺するために使うことができる。

もう少し掘り下げると、中国の対米輸出の90%はテクノロジー製品、機械、医薬品、バッテリー、グリーンエネルギー製品、重要鉱物である。靴、衣料品、玩具、家具などの低付加価値製品は10%に過ぎない。中国の対米輸出の30~40%は、部品やコンポーネントとして米国の製造工程に投入される。

グローバル・サプライ・チェーンにおける中国の地位を考えれば、米国の企業や消費者が中国製品を経済的に置き換えることは、直接的にせよ、他国との貿易で間接的にせよ、非常に困難である。そうでなければ、2018年にトランプが初めて貿易戦争を行った後、中国の対米輸出は今頃かなり減少していただろう。

一方で米国からの中国の輸入の70%は農産品とエネルギー製品であり、ブラジルやロシアなどの他のサプライヤーに置き換えることができる。

2022年までに、米国は532の主要製品カテゴリーで中国に依存しており、これは2000年のほぼ4倍の水準である一方、中国の米国製品に対する依存度は同期間に半減した。米国はハイテク製造用のレアアースと医薬品製造用の原薬(API)をほぼ独占的に中国に依存している。米国で使用される抗生物質の95%は中国で生産されている。もしこれが断たれれば、米国のテクノロジー産業と製薬産業は打撃を受けるだろう。中国が米国に最も依存しているのは半導体だが、バイデンのチップ禁輸措置によって、この貿易はすでに断ち切られている。

要するに、中国の対米貿易依存度は、その逆よりもはるかに低いということだ。大局的に見れば、中国は(生産者として)世界のサプライチェーンの頂点に位置し、アメリカは(消費者として)最下位にある。中国は米国の企業や家計に、同じくらい、あるいはそれ以上の苦痛を与える可能性がある。

さらに金融面では、もし中国が米国債を投げ売りして米国のすべての人々の借入コストを上昇させることを決定すれば、米国経済に甚大な混乱をもたらす可能性がある。米国は政府、企業、家計などあらゆるレベルでレバレッジが高いため、これは米国に大打撃を与える可能性がある。中国は今のところ、この核オプションの行使を控えているが、経済戦争がエスカレートすれば、確実にその可能性がある。

政治レベルでは、米中貿易戦争は国家の決意を競うものとなっている。これは米中対立の全領域の一部である。習近平がトランプに対して強硬姿勢をとることは国内でほぼ全面的な支持を得ているため、トランプによる中国への貿易戦争は動員の呼びかけとなる。トランプは、交渉する用意のある米国の貿易相手国(ベトナムや日本など)を完全に軽視していることは(「俺のケツにキスしろ」)、中国を反発させ、いかなる譲歩も極めて不愉快にさせるだけだ。

他方では、米国の金融市場(株式、債券、通貨)の混乱とインフレの暴走が予想されることから、億万長者から労働者階級まで、トランプが自らおこした痛みに対する広範な憤りが生じている。MAGAの熱狂的支持者でさえ、自分たちの財布への影響を心配している。トランプ王には、政治資金も個人的な気概もない。

トランプが他国から「尻にキスされている」と自慢しているとき、習近平は世界の前でズボンを下げて尻を叩いている。トランプは哀れにも「習近平は私の良い友人だ」と宣言したが、その愛情は決して報われることはなく、北京からは完全に軽蔑されている。習近平は4月2日以来、公の場でトランプの名前を口にしたことすらない。

貿易戦争の最も重要な目的は中国を傷つけることなので、中国の強硬な態度はトランプの関税政策全体を無意味なものにし、つまらないジョークのネタにした。

トランプは弱小国や属国から限定的な譲歩を引き出し、大勝利を宣言するだろう。

トランプが乱暴に言ったように、多くの国が「俺のケツにキスしてくれ……頼むから」の懇願に、と手を差し伸べてきたのだ。50カ国以上、70カ国以上、そして75カ国以上。報道官によって数字が異なるのはトランプがでたらめな数字を言ったのは間違いない。それでも、ベトナム、日本、韓国、インド、カナダ、メキシコなどの国々は、さまざまな程度で彼の強要に屈服するだろう。

彼らは関税の引き下げを提案し、米国製品をもっと買うと約束し、米国の製造業に投資したり、米国債をもっと購入するかもしれない。トランプの恐喝は、弱い犠牲者から多くのものを引き出すだろう。

しかし、トランプは二国間交渉を通じて(多くの国が主導権のない属国だから)、これらの貿易相手国に恥をかかせることなく、簡単に取引を成立させることができたはずだ。その代わりに、彼はすべての人を怒らせることを選んだ。彼の尻にキスしている人たちでさえ、そう呼ばれることを好まないのだから…。

米国の経済軌道は変わらないだろう

「相互」関税があろうとなかろうと、米国がすぐに再工業化し、製造業の雇用を取り戻すことはないだろう。

なぜなら、関税政策は今日の米国経済問題の真の根本原因に対処するものではないからだ。脱工業化は、数十年にわたる金融化、利益重視のアウトソーシング、貧弱な国内インフラと教育、過剰規制、株主優先の短期集中型の新自由主義的経済慣行の結果なのである。

AIや自動化といった技術革新は、製造業の雇用を取り戻す見通しをさらに失わせている。

今日のアメリカは高コスト経済だ。道路、橋、港湾、鉄道などのインフラは崩壊しており、大規模な工業生産を支える力はない。

労働力は熟練度が低く、ハイエンドのハイテク製造業を遂行するための訓練を受けていない。スターバックスのコーヒーのバリスタやマクドナルドのハンバーガーのフリッパーが、自動的にバッテリーの整備士になれるわけではない。また、ルトニックが丁寧に説教したように、iPhoneに小さなネジを付ける「何百万、何千万」というアメリカ人労働者は存在しないだろう。

経営者層は四半期ごとの収益に追われ、長期的な投資やリスクテイクを嫌う。

支配階級のエリートは金融業者や弁護士であり、技術者ではない。彼らは工場の建設、サプライチェーンの開発、設計や生産、労働力の管理の仕方を知らない。

結局のところ、株式市場やテレビのトーキング・ヘッドやネットのインフルエンサーとしてお金を稼ぐ方がずっと簡単なのだ。物理学や工学を学ぶよりも、マーケティングや法律を学ぶ方が簡単なのだ。モノを作るという重労働は、もはやアメリカのDNAにはない。

何兆ドルもかかる再工業化にかかるコストは、すでに36兆ドルの国家債務(企業や家計の債務を除けばさらに何兆ドルもある)を抱えるアメリカにとって多すぎる。

米国債や通貨といった伝統的なセーフ・ヘイブンは、脱ドル化の加速により崩れ去るだろう。

選挙戦では、脱ドルする国には大声で脅していたにもかかわらず(「米ドルを使いたくない国には100%の関税をかける」)、トランプ氏は脱ドル推進派に最大の贈り物をした。

不換紙幣である米ドルの価値はすべて、発行者である米国政府の信頼性にある。トランプは、気分屋、支離滅裂な放言、非合理的な意思決定、基本的な経済常識を完全に欠いたカオスのエージェントであり、米国株、債券、通貨を同時に下落させるという不可能を可能にしたのである!

彼の狂った行動の結果は、借入コストの上昇、投資の減少、インフレ率の上昇、生活水準の低下、そして米国の敵だけでなく「友好国」さえもドル離れを加速させている。

習近平やプーチンにはこういうことはできない。トランプ王だけが、米国を経済テロリストのならず者国家に変えることができるのだ!

米国の中国への対抗意識はさらに軍事化し、熱い戦争が起こる可能性がこれまで以上に高くなるだろう。

中国との貿易戦争と技術戦争で面目を潰した後、米国はさらに軍事対決の準備を進めるだろう。米国はすでに軍事費を歴史的な1兆ドルにまで増やそうとしている(ヘグセスの「ありがとう、ミスター大統領」Xの投稿による)。

人々は、トランプは平和の大統領で戦争を好まないと言う。私はそんなたわごとを一秒たりとも信じたことはない。彼の公的な行動から、彼と交流のあった人々が出版した本の棚から、彼について何かを学んだなら、ドナルド・トランプは道徳心がゼロで、詐欺師で、徹頭徹尾好戦的ないじめっ子であることを知っているはずだ。彼は平和の創造者ではない。イエメンでの彼の行動やイランに対する脅しがその明らかな証拠だ。

米国の第一の優先事項は、手段を選ばず中国を弱体化させ、破壊することなのだ。熱い戦争が勃発しない唯一の理由は、米軍が不利な状況にあり、米政権が中国を経済的・技術的に打ち負かすという妄想をいまだに抱いているからだ。しかし、中国の台頭が止められなくなり、すべてのカードが失敗すれば米国は武力に訴えるだろう。

貿易戦争や技術戦争と同様、中国は長い間、西太平洋での最終的な対決に備えてきた。熱い戦争が台湾や南シナ海で勃発しようとも、それが代理戦争であろうと直接戦争であろうと、中国は最後まで戦い、勝利するだろう。https://huabinoliver.substack.com/p/comparing-war-readiness-between-china

競争は始まった。米国が先に崩壊して破産するのか、それとも米国と中国の間で先に熱い戦争が勃発するのか?

先のエッセイで述べたように、米国を打ち負かすための中国の戦略は、ソ連を打ち負かした米国の戦略のように、熱い戦争が勃発する前に米国を破産に追い込むことである。

トランプの関税戦争と国防総省の予算はそのペースを加速させている。米国は借入コストの上昇(したがって利払い)と軍事費の増加に同時に直面している。トランプが彼の裕福な支持者のために減税を行うというネオコンの『プロジェクト2025』計画を実行することも確実だと考えられる。

歳入を減らしてコストを増やすのは破産するための確実な方法であり、ドナルド・トランプにはその経験がたくさんある。結局のところ、この男は6回も破産し、カジノを破産させることに成功した男なのだ!

中国が戦わずして勝つために孫子の兵法(Art of War)を追求する一方で、トランプはハッタリと詐欺のための彼のFart of Dealを追求する。前回も述べたように、トランプは(誇り高き)中国共産党にとって最高の無報酬の代理人なのだ。

https://huabinoliver.substack.com/p/when-the-tide-goes-out-we-know-who