Open letter to Israeli foreign minister Sa’ar
イスラエルの存続に対する最大の脅威は、アラブ諸国、パレスチナ人、イランではなく、イスラエルの過激な政府の方針である
by Jeffrey D Sachs
ギデオン・サール閣下
外務大臣 イスラエル政府
2025年8月9日
大臣殿
8月5日に国連安全保障理事会で行われたスピーチを受けて、この書簡を書いている。私はその会合に出席したが会合後にお話しする機会がなかった。スピーチに関する私の考えを共有したい。
スピーチにおいて、あなたは、私を含む多くのユダヤ人を含むほぼ全世界が、あなたの政府の行動に衝撃を受けている理由を認識していなかった。世界の大多数の意見に同意する私から見れば、イスラエルは大量虐殺と飢餓を犯している。あなたのスピーチからはその事実が全く伝わらなかった。あなたは、イスラエルが現在までに約1万8,500人のパレスチナ人の子どもを殺害した事実を認めなかった。子供たちの名前は最近、The Washington Postで公表された。あなたはイスラエル軍による民間人の大量虐殺の責任をすべてハマスに押し付けたが、世界は毎日、イスラエル軍が食料配給ポイントに近づく飢えた民間人を冷酷に殺害する動画を見ている。あなたは20人の人質が飢餓に陥ったことを嘆いたが、イスラエルが200万人のパレスチナ人を飢餓に追いやったことは言及しなかった。あなたは、あなたの首相が長年ハマスの資金調達に積極的に関与してきたことを言及しなかった。そのことについては『タイムズ・オブ・イスラエル』が文書で証明している。
あなたがこれらを見逃したことが愚かさか、またはごまかしにせよ、あなたが私と数百万の他のユダヤ人をあなたの政府の人道に対する犯罪に巻き込もうとした事実がなければイスラエルだけの悲劇だっただろう。あなたは国連総会で、イスラエルは「ユダヤ人の主権国家」だと宣言した。それは間違っている。イスラエルは市民の主権国家だ。私はユダヤ人で、アメリカ合衆国の市民である。イスラエルは私の国家ではなく、決してそうなることはないだろう。
あなたのスピーチにおけるユダヤ人に関する言葉は、私たちとの隔たりを露呈した。あなたはユダヤ教を「国籍」として言及した。これは確かにシオニストが作ったものだが、2000年に及ぶユダヤ教の信仰とユダヤ人の生活に反する。これは私と数百万の他のユダヤ人が拒否する思想である。私とイスラエル以外の数多くのユダヤ人にとって、ユダヤ教は国籍とは無関係な倫理、文化、伝統、法、信仰の生活だ。2000年間、ユダヤ人は世界のあらゆる地域で数多くの国で暮らしてきた。
実際、バビロニア・タルムードの偉大なラビの賢者たちは、ユダヤ民族のエルサレムへの大量帰還を明確に禁じ、ユダヤ民族に自らの故郷で生きるよう命じた(Ketubot 111a)。残念ながら、シオニストたちは、財政支援や脅迫的な手法を含む大規模なキャンペーンを展開し、ユダヤ人コミュニティを自らの故郷、言語、地域文化、そして同胞との関係を捨てさせイスラエルへ移住させるよう誘導した。私は世界中を旅して、ほとんど空っぽのシナゴーグや放棄されたユダヤ人コミュニティで残されたわずかな高齢のユダヤ人たちが、かつて彼らのコミュニティが非ユダヤ人の多数派と平和と調和の中で暮らしていたところを訪れた。シオニズムは、世界中の数多くの活気ある同信者のコミュニティを弱体化させたり、消滅させたりしたのだ。
皮肉な事実として1917年にシオニストがイギリス政府にバルフォア宣言を発令させるよう説得した際、内閣にいた唯一のユダヤ人サー・エドウィン・モンタギューは強く反対し、自分はユダヤ人のイギリス市民であり、ユダヤ人国家の成員ではないと言った:
私は、ユダヤ人国家は存在しないと断言する。例えば、何世代にもわたってこの国に住んでいる私の家族は、同じ宗教を多かれ少なかれ信仰しているという事実以外、他の国のユダヤ人家族とは、見解や願望の共通点などまったくない。
この文脈で、バルフォア宣言が「パレスチナにおける既存の非ユダヤ人コミュニティの市民的・宗教的権利を害するいかなる措置も取られない」と明確かつ断固として明記している点も思い出すべきだ。シオニズムはそれを達成しなかった。
あなたの政府は、パレスチナ全土を永久に占領しようとしており、パレスチナ主権国家の設立に暴力的な反対を続けている。1977年のリクード党の設立宣言は、この点について何も隠さず、公然と「海とヨルダン川の間にはイスラエルの主権のみが存在する」と宣言している。この目的を達成するため、イスラエルはパレスチナ人を悪魔化し、大量飢餓、殺人、民族浄化、行政拘禁、拷問、土地接収、その他の残虐な抑圧を通じて彼らを物理的に抑圧している。あなた自身、恥知らずにも「すべてのパレスチナ派閥がテロリズムを支持している」と宣言した。
国連安全保障理事会セッションにおけるあなたのお相手、パレスチナのリヤド・マンソー大使は正反対の主張を明確に述べた。彼は次のように述べた:
解決策はこの違法な占領を終わらせ、この破滅的な紛争を終わらせることだ。それはパレスチナ国家の独立と主権の実現であり、その破壊ではない。それは私たちの権利の実現であり、彼らの継続的な否定ではない。それは国際法の尊重であり、踏みにじることではない。それは二国家解決の実現であり、パレスチナ人がジェノサイド、民族浄化、またはアパルトヘイトに追いやられる一国家という現実ではない。
イスラエルは、二国家解決を阻むためにほぼ全世界と対立している。既に147カ国がパレスチナ国家を承認しており、さらに多くの国が間もなく承認するだろう。170の国連加盟国は最近、パレスチナ人民の政治的自己決定権を支持する投票を行い、反対はわずか6カ国(アルゼンチン、イスラエル、ミクロネシア、ナウル、パラグアイ、米国)だった。
あなたのプレゼンテーションは、2025年7月29日に開催された「二国家解決の実施に関するハイレベル国際会議」で、世界コミュニティが採択した「パレスチナ問題の平和的解決と二国家解決の実施に関するニューヨーク宣言」という強力な文書を完全に無視している。そのハイレベル会議はあなたの国連安全保障理事会での演説のわずか1週間前に開催され、サウジアラビアとフランスが共同議長を務めた。世界中のアラブ諸国とイスラム諸国は、イスラエルが国際法と道義に則り二国家解決案に従う場合、イスラエルとの平和と関係正常化を呼びかけている。あなたの政府が平和を拒否しているのは、パレスチナ全土の支配を目的としているからだ。
イスラエルは米国の支援に支えられてごくわずかな希望にすがって過激な立場を維持している。米国以外の主要大国からの支援は得られていない。また、米国がこれまで支持してきた主要な理由の一つも認識すべきだ。キリスト教福音派プロテスタントは、ユダヤ人がイスラエルに集結することが、ユダヤ人の破滅または改宗、そして世界の終焉の前兆であると信じている。彼らがあなたの政府の支持者だ。米国民の全体的な世論については、イスラエルの行動に反対する人が60%に達し、賛成は32%にとどまっている。
大臣殿、あなたが言及した世界的な反発は、あなたの政府の行動に対するものであってユダヤ人に対するものではない。イスラエルは、内部の熱狂主義と過激主義に脅かされており、これがユダヤ人と非ユダヤ人双方からイスラエルへの世界的な非難を招いている。イスラエルの存続に対する最大の脅威は、アラブ諸国、パレスチナ人、イランではなく、ベンヤミン・ネタニヤフ、ベザレル・スモトリッチ、イタマル・ベン・グビル率いるイスラエルの過激派政府の政策である。
二国家解決はイスラエルの生存への道であり、唯一の道だ。あなたは核兵器と米国政府が救いだと信じているのかもしれないが、イスラエルがパレスチナ人に対する重大な不正を続ける限り、武力はいずれ消え去るだろう。ユダヤの預言者たちは不正な国家は長く存続しないことを繰り返し教えいる。
敬具
ジェフリー・D・サックス
ニューヨークシティ
https://johnmenadue.com/post/2025/08/open-letter-to-israeli-foreign-minister-saar