Trump Colonizing Gaza.
ジェフリー・サックス教授
Iinterviewed by Judge Andrew Napolitano
今日はジェフリー・サックス教授に、ガザをジャレッド・クシュナー(トランプ娘婿)に譲渡する新植民地主義的な取引についてお話を伺う。
ナポリターノ:このディールがジャレッド・クシュナーにガザを再開発させ、「トランプ・ガザ」とするためだと言ったのは少し誇張かもしれないが、トランプ大統領はある時点でそう説明している。一歩引いて考えよう。なぜハマスがイスラエルやアメリカと交渉すべきなのか?イスラエルはドーハでハマス交渉担当者を殺害しようとした。レバノンではヒズボラの交渉担当者を殺害した。そしてトランプ大統領はイスラエルとアメリカが爆撃する直前に、イランに真剣な交渉中だと誤った期待をさせた。誰がこの交渉でイスラエルとアメリカを信頼するだろうか。
サックス:誰が信頼するかはわからないが、ハマスとの和平、そしてより広範なアラブ世界との和平は長年にわたり強く渇望されてきた。実際、プロパガンダにもかかわらずアラブ諸国は2002年に和平案をまとめ、23年間にわたりこれを繰り返し表明している。彼らの和平案は明快だ。イスラエルとの国交正常化とイスラエルの安全保障を保証しつつ、パレスチナ国家を認める。それだけだ。しかし1996年にネタニヤフが首相になってから、いや1967年、いわゆる六日戦争でイスラエルがパレスチナ全土を占領してから、ずっとイスラエルはパレスチナ国家の樹立を阻止してきた。だからこそ終わりのない戦争が続いている。今イスラエルはガザで大量虐殺を行っている。しかし実際のところ、20年以上も前からテーブルには極めて明快な和平提案が置かれているのだ。イスラエル国家と並存するパレスチナ国家、そしてイスラエル国家とパレスチナ国家が共に生きるという提案だ。この和平案ではイスラエル国家とパレスチナ国家は、1967年6月4日の境界線に基づき国際法に従って共存するというものである。パレスチナはガザ、ヨルダン川西岸地区、東エルサレムで構成され、パレスチナ国家の首都は東エルサレムに置かれる。これが最終的な解決策であり、国際司法裁判所が昨年、国際法として裁定した内容である。国連総会は毎年圧倒的多数でこれを承認し、それをイスラエルとアメリカが阻止してきた。しかしここ数週間の国連総会ではフランスやイギリス、欧州諸国、オーストラリア、そして世界の他の地域の国々がパレスチナ国家を承認した。したがって和平合意を反対する勢力は二つしかない。イスラエル政府とイスラエル政府の子会社である米国政府だ。米国政府はイスラエルの言うことを何でも聞く。世界中のほぼ全ての地域が平和を切望している状況下で、ガザでは虐殺と大規模な飢餓が進行している。だから孤立したトランプ政権は9月28日、「20ポイントガザピースプラン」を提示した。20項目計画である。しかしいつものように偽善的で戦闘を停止すべきだとか、正しいことは言っている。人質の即時解放、イスラエルに拘束されているパレスチナ人の即時解放、人道支援の即時実施など。これらは結構なことだが、政治的な問題となると基本的に植民地構造を維持する内容だ。この構造はかつてイギリスとアメリカが植民地支配者として築き、現在はアパルトヘイト国家イスラエルがパレスチナ人を支配する形で維持されている。つまり、この計画はパレスチナ国家の問題を避けている。「それはパレスチナ人の願望だ」としている。これはトランプが議長を務め、トニー・ブレアが参加する委員会という、もうひとつの植民地体制を確立するものなのだ。つまり文字通り、1921年にイギリスがパレスチナを支配下に置き、アメリカがそれを引き継いで以来続いてきた英米の植民地体制なのである。第一次世界大戦後にパレスチナを支配し、アメリカはその執行者となった。そしてイスラエルとその完全子会社米国政府以外の全世界が望んでいるようなパレスチナ国家を作るという事実については、誠実さや明確さをまったく示していない。
ナポリターノ:ネタニヤフは平和を望んでおらず、平和が訪れれば職、政府、そしておそらくは免責特権や自由さえも失うことになるから平和を許容できないというのは事実だろうか?
サックス:そうは言い切れない。言えるのは、もしイスラエルがパレスチナ全域を支配する形で平和が実現するなら、つまり「大イスラエル」が確立されるか、彼らが言うところのエリツ・イスラエル・シュレマ(ヨルダン川から地中海までの全地域を支配する大イスラエル)が成立するなら、それは彼の望むものだ。彼はイスラエルの条件での平和は受け入れるだろう。つまりパレスチナ人は死ぬか、去るか、残るなら残酷なアパルトヘイト体制下で生きるかだ。これがネタニヤフとその仲間ベン・ガビルたちが提示する選択肢である。そういうことだ。誇張ではない。私は文字通り国連総会でネタニヤフが言ったことを説明している。彼はパレスチナ国家は決して存在しないと言った。これはおかしい。イスラエルにパレスチナ国家を拒否する権利はない。国際法上イスラエルはパレスチナ領土を不法占領している。すでに約155カ国がパレスチナ国家を承認している。事実は、ネタニヤフは単に、アメリカ政府が国連で拒否権を行使し、アメリカの軍事力と財政力そして他国に対する脅威を利用して、国際法と世界の圧倒的多数の人々とアメリカ国民の圧倒的多数が望んでいることを阻止することに賭けているだけだ。トランプはこの件においてアメリカを代表しているわけではないことを忘れてはならない。トランプが代表しているのはイスラエル政府だ。もし彼が自国の国民、つまりアメリカ国民を見ているなら、トランプ大統領に進言するが、私たち国民の意見はアメリカもパレスチナ国家を承認すべきであり、イスラエルはガザでの殺戮行為を止めるべきだ。これが国民の意思であり利益でもある。したがって、ネタニヤフに残されているのは、シオニストのロビー活動によって、米国民と世界の人々に反し、国際法、国連総会および国連安全保障理事会での繰り返しの投票にもかかわらずトランプ大統領を味方につけているというわずかな望みだけなのだ。そしてそれがトランプが20項目計画に記した内容だ。彼はパレスチナ国家を明記した。なぜだ?アラブ指導者たちと会談した際、彼らが説明したからだ。パレスチナ国家の存在こそが平和と正常化をもたらすと。だが翌日、彼はネタニヤフとロン・ダーマ―――あの、米国生まれのネタニヤフの側近と会談し、計画を改変した。新植民地主義計画であることを確実にするためだ。主要課題である「平和の基盤としてのパレスチナ国家」を放棄しただけでなく、植民地主義の風刺画のような荒唐無稽な条項を書き加えた。その一部を引用しよう。計画の9項。
『ガザは暫定的な移行統治下におかれ、技術官僚的で非政治的なパレスチナ委員会が公共サービスと自治体の日常運営を担う。委員会は有資格のパレスチナ人と国際専門家で構成され、新たな国際移行機関「平和理事会」の監督を受ける。同理事会はドナルド・J・トランプ大統領が議長を務め、他のメンバーや国家元首は後日発表される。ここにはトニー・ブレア元首相も含まれる。パレスチナ自治政府が改革プログラムを完了するまでの間この機関はガザ再建の枠組みを設定し資金を管理する』
改革プログラムは様々な提案をしており、特に2020年のトランプ大統領和平計画に概説されている。ガザの統治を安全かつ効果的に取り戻せるようになるまで、この機関は国際的な最高水準を呼びかけ、近代的で効率的な統治を創出する。トランプ経済開発計画、トランプ計画、これがガザ再建と活性化のための第10項だ。これは間違いなくジャレッド・クシュナーのリビエラ計画だ。
『中東で繁栄する近代的な奇跡の都市の誕生を支援する専門家パネルを招集して作成される。多くの思慮深い投資提案や刺激的な開発構想が善意ある国際団体によって練られており、検討対象となる。特別経済区が優遇関税・アクセス率で設立される』
これはトランプの口癖の実質ゼロ関税を意味し、参加国と交渉されるアクセス率だ。これは実に荒唐無稽であり植民地主義のパロディだ。
ナポリターノ:ドナルド・J・トランプがこの委員会の議長を務める。トニー・ブレアと共に。あのブレア、イラクの虐殺者だ。なぜハマスがこれを受け入れるというのか?
サックス:ハマスがどう動くかはわからない。先週トランプ大統領と会談した国々がこの案を一瞬たりとも受け入れるとは到底考えられない。馬鹿げている。そして非常に重要な一点を理解すべきだと思う。パレスチナ人は何十年にもわたる虐待と占領、そしてイスラエルによるアパルトヘイト支配にもかかわらず、非常に訓練されたプロフェッショナルな人々がいる。彼らの多くは湾岸諸国で働いている。中東で、アメリカで、ヨーロッパで働いている人も多い。占領下のパレスチナでは専門職としてのキャリアを追求する機会はなかったが彼らは高度な教育を受けた優れた専門家だ。パレスチナ人はトランプやトニー・ブレアの後見など必要としない。何年もの信託統治など必要ない。いったいこれは何だ?1920年か?英国の委任統治時代か?120年も経った今、トランプがガザの統治委員会を支配するような下品で露骨な植民地主義を止めるべきだ。冗談じゃない。
ナポリターノ:植民地主義とは実質的な隷属、奴隷制に近い形態だ。
サックス:当然そうだろう。パレスチナ人が自治権を得る前に何年も後見が必要だなんて考えは、何十年も待たされてきた彼らにふさわしくない。これほどの虐待を受けた後で、何年も後見など必要ない。彼らに必要なのは主権だ。極めて単純明快。難しいことじゃない。今イスラエルは武力と殺戮で支配し、パレスチナ自治政府への資金援助を自由に停止したり再開したりしている。文字通り水道や電気、その他の公共サービスをオンオフしている。人々の移動の自由を完全に制限している。ガザはまるで野外監獄のように運営されていた。人々は自由に行き来できなかった。人々は商売もできなかった。こんな植民地主義は要らない。今必要なのは、パレスチナ国家がイスラエル国家と共存することだ。私はこの20項目の計画を取り上げ、その20項目それぞれに、ほんの少しの変更を加えた。そうすることで、ハマス、アラブ諸国、そして国際社会が受け入れるであろう、完全に理にかなった20項目の計画が可能であることを示すためだ。そこにはトニー・ブレアやトランプらによる統治委員会ではなく、パレスチナ自治政府が政府として存在し、諮問委員会が提案を行うと書かれている。トランプは諮問委員会に参加しても構わない。まったく問題ない。しかし主権はパレスチナ国民にある。トランプの計画では、将来、いつか、何らかの形で、おそらくパレスチナ国家が誕生するかもしれないという交渉の可能性があると述べているが、その代わりにパレスチナ国家が誕生する。難しいことではない。150カ国以上が、国連安全保障理事会でパレスチナを194番目の加盟国として承認する投票が、アメリカの拒否権を除いて全会一致で可決されたことをすでに認識している。トランプの経済開発計画などいらない。ありがとう、でもいらない。提案や助言、その他はあってもいいが、パレスチナの開発計画とは主権を持つということなのだ。今は1920年でも1820年でも1720年でもない。2025年だ。植民地主義はとっくに時代遅れで、復活させる必要もない。それが基本だ。
ナポリターノ:あなたの指摘はとても思慮深い。しかしネタニヤフがこれに同意するインセンティブは何か?彼はイスラエルをテキサス州(イスラエルの31倍)ほどの大きさにしたいのだ。
サックス:ネタニヤフにこれに同意する動機などない。だがこれはイスラエルの問題ではない。国際法によれば、イスラエルの国境は1967年6月4日時点に決められている。イスラエルはガザを違法に占領している。ガザを完全に破壊し、数万人を殺害し、数十万人を飢餓状態に追いやっている。これは完全に違法だ。これが許されるのはアメリカがそれを可能にしているからだ。実際この大量殺戮を実行できる理由は、グーグルやマイクロソフト、アマゾンのクラウドサービス、パランティアその他のアメリカ企業がAIやネットワーク、クラウドサービスをイスラエル国防軍に提供しているからだ。つまりアメリカが支援している。パレスチナが国連加盟国になることについてイスラエルに拒否権はない。拒否権を持っているのはアメリカで、イスラエルではない。だからこれはネタニヤフと交渉すべき問題ではない。これはもはやこのジェノサイドやイスラエルによるパレスチナ人民への違法な支配をアメリカが支持していないことを明確にするべき問題だ。ちなみに、イスラエルにとって非常に望ましい計画がある。それは、全ての近隣諸国がイスラエルとの関係を正常化するというものだ。また、トランプの20項目計画に書かれている内容、つまりハマスが完全に非軍事化され、政府に関与しないという点は問題ない。これは実際に実行可能だ。ただし、継続的なイスラエル支配ではなく、相手側がパレスチナ国家である場合に限る。つまり、政治的解決があれば成果はあり得たが、トランプは、いつものように、あらゆる政治的論点を回避し、純粋な植民地支配の継続を確立し、実行しようとしている。これが肝心な点だ。アラブ諸国は2002年以来、「我々は正常化する。平和を築く」と言っている。だがイスラエル国民はこれを決して聞かない。米国のプロパガンダが強いと思うなら、イスラエルのプロパガンダをみるといい。イスラエル人は毎日、パレスチナ人が望んでいるのはイスラエル人を殺すことだと教えられている。私は大使や外務大臣と席を共にし、政府の話に耳を傾け、近隣諸国の国民と話をし、近隣諸国を訪問している。それはまったくの嘘だ。パレスチナが望んでいるのは、その地域での戦争が終わり、経済発展を遂げ、インフラを構築できることだ。それが彼らの望みだ。彼らは絶え間ない戦争を望んではいない。しかしイスラエルは、パレスチナ国家の設立という明白な事実を回避するために絶えず戦争を煽り続けてきた。そしてドナルド・トランプはそれに同調している。
ナポリターノ:10月5日にネタニヤフが平和への真の道について語った内容を紹介しよう。
ネタニヤフ「真の平和への道を求めるならパレスチナ人は自分たちの土地にユダヤ人国家が存在することを認め、受け入れる必要がある。しかしそれはまだ実現していない。彼らはイスラエルの隣に国を望んでいない、いや、むしろイスラエルの代わりに国を望んでいるからだ。そして彼らが領土を手に入れると、彼らは何度も何度も我々を攻撃してきた。この状況を変えなければこの戦争は続く。もし変えられるなら、ハマスとガザの翌日に私たちが用意している計画でこの状況を変えることができれば、それは長期的な平和の確保に大きく貢献する」
サックス:彼は完全な嘘つきだ。パレスチナとアラブの和平計画、そしてイスラム協力機構と国連総会が長年にわたり主張してきたのは1967年6月4日の国境線上でパレスチナ国家とイスラエル国家がり合って共存する二国家解決だ。先週、国連総会でネタニヤフが言ったことはパレスチナ国家を決して認めないということだ。 彼は殺人者であり、嘘つきであり、凶悪犯だ。もうたくさんだ。全世界の意志が望むように、二つの国家が隣り合って共存する時が来た。そしてドナルド・トランプが誠実になり平和を実現し、ネタニヤフのまったくの嘘であるこれらの嘘を終わらせる時だ。
ナポリターノ:ではこれはどこに向かうと思う?これはどう終わると思う?
サックス:もちろん私はわからないが、先週の終わりにイスラム教徒が大多数を占める国々がドナルド・トランプと会談し「大統領、計画を提示してくださりありがとう」と言った。それは彼らがどれほど平和を望んでいるかを示している。しかしトランプはいつものようにごまかし、数日後にネタニヤフやダーマ―と会談した後、イスラムの指導者たちに見せたものとは別の計画を発表したことはアメリカ政府が依然としてイスラエルの支配下にあることを示している。トランプがアメリカに独自の外交政策を持たせるか、あるいは単にシオニストの過激主義に従属し続けるかどうか、私はわからない。トランプがガザを統治するというこの不条理な状況では平和はありえないと思う。このようなことをこの時代に提案すること自体が恥ずべきことだ。だから問題はアメリカ政府をアメリカ国民が代表し始めるかどうかだ。もしそうするならアメリカ国民は世界の他の国々とパレスチナ人と共に、二国家が隣り合って共存することを望むだろう。
ナポリターノ:これは解決困難な問題だ。どう解決されるか見当もつかない。なぜならネタニヤフがトランプを掌握しているからだ。イスラエル政府とシオニストの支援者たちがアメリカ政府を掌握している。
サックス:その通りだ。そしてアメリカがアメリカらしく振る舞い始める日が、中東に平和が訪れる日だ。