How China Aced the AI Race?| Louis-Vincent Gave
Thinkers Forum
この動画でルイ=ヴァンサン・ガヴは米中AI競争を駆り立てる根本的な力について深く掘り下げている。全編はこちらで視聴可能:https://www.youtube.com/watch?v=ngOfkDgLzBo
過去15年間、プーチンは中国にシベリア第2パイプライン建設を働きかけてきた。そして習近平はまさにこのタイミングで世界にこう宣言した。「米国がロシアからのエネルギー購入を止めるよう要求してきた。だが私はこうする。パイプラインを建設し、ロシアから3倍の量を購入する」と。
米中貿易戦争は終わった。米国はレアアース制裁発動後そしてジュネーブ合意後、後退している。過去数週間の展開を見るといい。この数週間は画期的だった。一ヶ月前、米国は「ロシアからエネルギーを購入する国には制裁を加える」と宣言した。追加関税をかけ、最悪の事態になる、と米国はメッセージを発した。
その10日後、習とプーチンとモディが上海で会談し、文字通りステージ上でフレンチキスを交わした。3人はまるで親友であるかのように振る舞っている。この点こそが極めて重要だ。
なぜなら少し考えてみよう。世界を変えるメガトレンドとは何か。米国では皆がAIばかり話題にしている。確かに刺激的だ。ヨーロッパでみんなが話題にしているのは福祉国家が崩壊寸前だということ。財政支出が制御不能だから金を買わなきゃいけないし、ビットコインを買うべきだ、福祉国家の終焉だ、といった話題でもちきりである。アジアはどうか。そこには世界一の安価な資源生産国のロシアがいる。中国は世界最大の資本財供給国であり、今や新興市場への最大の資本供給源だ。なぜなら世界で最も安い資本コストを有し、最大の消費財生産国だからだ。そしてインドは最も安価な労働力の最大の供給源である。この三つのリーダーが今、これらを一つにまとめ、鍋に混ぜて何が出てくるか見てみようと言っている。最も安い資源と最大の資本供給源、そして最大の安価な労働力の供給源だ。ここから生まれるのはまさに伝説級の大ブームとなるだろう。
世界で時価総額上位30社を見てみよう。30社のうち24社が米国企業だ。2社が中国企業、テンセントとアリババだ。あとは韓国のサムスン、サウジアラムコ、日本のトヨタ。これが上位30社である。さて、この30社の中で大ブームに参加するのは何社だろうか?今後10年の大きなマクロトレンドが、中国、インド、ロシアの経済統合だとすれば、アリババは間違いなくその動きに乗れる。テンセントもおそらくそうだろう。だが時価総額上位30社の中でその動きに乗る企業はそれほど多くないだろう。米中の緊張は終わった。米国はロシアと取引する国々に再び制裁で脅している。過去15年間、プーチンは中国にシベリア2号パイプライン建設を働きかけてきた。そして習近平はまさにこのタイミングで世界に宣言した。「米国がロシアからエネルギーを購入するなと言ったから中国はパイプラインを建設してロシアから3倍の量を買う。」これは米国の命令に対する反抗そのものだ。または中国は傲慢だと言うこともできるし、中国が自ら傷を負う道を選んだと言うこともできる。あるいはただ単に米国の中国に対する制裁能力がもはや限定的だということだ。そしてかつて欧州に供給されていたガスは中国に流れ込むことになる。しかも人民元建てで、わずかなコストで供給される。中国はすでに米国の2倍の電力を生産しているが、世界で最も安いエネルギーコストも持つことになる。エネルギー代を自国通貨で支払うという大きな転換だ。
過去15年間、米国が成長した大きな原動力の一つはシェール革命のおかげで世界で最もエネルギーコストが安かったことだった。これが今まさに変わった。中国こそが最も安いエネルギーコストを持つ国になるのだ。もしあなたがAIを強く信じていて、中国、ロシア、インドの経済統合なんてどうでもいい、どうせこいつらは田舎者だと思ってるなら、それでもいい。しかしあなたがAIこそが核心だと考えるなら、問題はこうだ。AIの制約要因はコンピューティングパワーへのアクセスだと思うか、それとも安価なエネルギーへのアクセスだと思うか?もしAIの制約要因がコンピューティングパワーへのアクセスだと考えるならNvidiaを買えばいいし米国が勝つ。もしAIの制約が安価なエネルギーへのアクセスだと考えるなら、過去3週間で起きたことは、実質的に中国がその競争に既に勝ったということだ。そして私は、AI は安価なエネルギーに制約されると思う。そして、安価なエネルギーへのアクセスを得るには10年、いや15年の投資が必要で中国は既にその競争で先行している。なぜなら米国の2倍の電力を生産しているからだ。そして中国の電力は米国よりずっと安い。だが彼らは今また実質的にコールオプションを手に入れた。つまりさらに大きな優位性を得たのだ。
だから米国はTik Tok を手に入れたいと言うのだ。これは全体的な計画の中ではそれほど重要ではないが、Tik Tokに関してはバイトダンスが現在のアルゴリズムを提供しないので彼らは別のアルゴリズムを作成するという。つまり、それは本質的にくだらないアルゴリズムで、オラクルとアンダーソンが所有するアルゴリズムに組み込むのだ。そしてバイトダンスは 20% を保持し、米国はTik Tok で勝利を宣言する。そして次に進むのだ。
正直いってそれはイランでの勝利のようなものになるだろう。彼らはイランの政権交代を行うと言った。イランに爆弾を数発投下し、勝利を宣言して、帰って行った。現地は何も変わらなかった。これと同じことだ。勝利を宣言して次に進む。ちなみにこれは20年戦争を続けるよりはるかにマシである。経済戦争であれ実戦の戦争であれこのほうが良い。勝利を宣言し次に進み、日常に戻る。言いたいことは中国が米中貿易戦争で優位に立っている、ということではなく、もう戦争は終わったってことだ。それで中国株が急騰している。今必要なのはパレードだ。5Thアベニューかマディソンアベニューで開催すればいい。それは「TikTokディール」と呼ばれるだろう。そして次に進むのだ。
実に面白いのは米国という国はオープンソサエティで自由を基盤としていると言っている。ところが今日、米国が提供しているのはオープンAIや、あるいはすべての主要な提供物など、本質的にクローズドシステムなのだ。一方、中国はオープンシステムである。これは面白い。社会の背景を考えると予想は正反対だから。でもこれは両国の資源を反映している。米国の企業は資金が豊富で現金が溢れているからクローズドでいられる。中国はそれができなかった。なぜなら高性能チップへのアクセスがなかったからDeepseekのようなシステムを開放し人々に ソリューションを提供させる必要があったのだ。例えばあなたが小さな会社なら、あなたはより安い解決策を選ぶだろう。そして中国はほぼ確実により安い解決策を提供する。私がよく言う言葉は「中国が部屋に入ってくると利益が出て行く」というものだ。中国はAIの部屋に足を踏み入れた。だからAIで莫大な利益が得られると思うなら、それは妄想だ。中国で30年暮らして学んだのは中国と競争になるならその選択は間違っているということだ。鏡をじっくり見て、自分が人生で下した選択を考え直す必要がある。中国と競争するなら事態は非常に厳しくなる。AIに関して言えば、現実を見よう。中国はその場に居座っている。AIで利益は生まれない。
もしロシア、中国、インドの統合が大きなマクロトレンドだと考えるなら、いったいどれほどの米国企業がこのトレンドに参画しているだろうか?テスラやアップルが中国でうまくいっていない理由は民族主義的な熱狂や反米感情がそれほど影響しているわけではないと思う。単に彼らの製品が良くないだけだ。正直に言うと、例えばBYDの車は今やテスラの車より優れている。比較にならないくらいに。それにずっと安い。例えばBYDシーガルは基本的にホンダ・シビックタイプのハッチバックだ。500キロの航続距離があり完全自動運転機能も付いてくる。それで総額8300ドルである。テスラがこれに対抗できるか?テスラは4倍の価格だ。iPhoneも同じで、今のファーウェイのスマホを見てほしい。カメラもバッテリーの持ちも、全てが上だ。西側の企業はどうやって競争するのかといえばかなり厳しいだろう。
我々は中国製品を「安物」と決めつけてきた。安物というのは、安価に大量生産された安物だ。しかしこの認識を改める必要がある。みんな今すぐ中国に行ってみるべきだ。中国製品と言えば安物だと思われてたし、実際そうだった。しかし安物が安く作られてた時代は終わった。これこそ我々が変えるべき認識なのだ。中国にいって提供されてるものを実際に見てほしい。電車も車もスマホもフィンテックソリューションも我々は追い越された。そして根本的問題は西側諸国が「我々の製品の方が優れている」という優越感を持っていることだ。しかし70年代末から80年代初頭にかけて日本車がアメリカ車より優れていたように、これが今起きている現象だ。自動車だけじゃない。文字通りあらゆる分野で起きている。では我々はどう競争するのか?競争できる唯一の方法はより優れたもの、より優れた製品を作ることだ。
欧米世界は今何をしているのか。アメリカがやっていることは「中国には勝てない。関税障壁を設けよう」「彼らの製品を遮断しよう」「保護主義を推進しよう」だ。しかしこの道では製品の質は向上しない。この道を進むと、ブラジルが歩んだ道、アルゼンチンが歩んだ道になる。保護主義の本質は、国内生産者に凡庸なままでいるよう促すことだ。つまり我々は「国内で持っているものを守ろう」と言っている。中国がどんどん良くなっていくのに、我々はただ凡庸なままでいるんだ。より良くなることだけが競争の唯一の方法である。テスラは本質的に5年前のテスラと同じだが、今のBYDは5年前のBYDとは全く違う。これはまったく笑えない。