No. 2729 中国レアアース産業は40年かけて独占状態を達成

Media reports that China’s rare earth industry (1) has achieved a monopoly after 40 years.

多部田俊輔 日経中国語サイト(2025年6月18日)

1980年代以前、米国やその他の国々がレアアース元素の主要生産国であった。しかし中国では数多くの鉱山会社が台頭し、低価格を武器に輸出攻勢を開始した。米国や他国の鉱山は採算悪化により閉鎖を余儀なくされ、中国の世界的なレアアース生産におけるほぼ独占状態への流れが加速した。深刻な環境破壊と健康被害を代償に、中国は主要なレアアース生産国としての地位を確立した…

トランプ米大統領の「TACO」(トランプはいつもビビッて退く)という本性を露呈させたのは、中国のレアアース産業である。トランプは中国に高関税を課したが、結局は一方的に譲歩した。以下では、世界のサプライチェーンを混乱させた中国のレアアース輸出規制の背景にある強大な力を分析する。

レアアース元素は17種類ある希少金属の一種で、軽レアアース元素は世界中で広く採掘できるが、重レアアース元素は希少で中国に集中している。

その高い市場価値は、ハイテク製品製造に不可欠だという事実に由来する。レアアース元素は人間の生命に必要なビタミンに例えられ、「産業のビタミン」として知られる。

例えば、4月に中国が輸出規制を強化したサマリウムとジスプロシウムは、戦闘機や電気自動車(EV)の高性能磁石の材料として使用される。ごく微量添加するだけで磁石の耐熱性と磁力を大幅に改善する。

中国がレアアース大国となる道のりは約40年前にさかのぼる。改革開放政策を主導した元最高指導者・鄧小平はレアアースの戦略的価値を認識していた。当時、レアアースの分離精製技術が進歩し、テレビ蛍光体やレンズ材料などの応用開発が進展していた。生産は着実に増えていたが、主にそれは米国においてであった。

1986年、鄧小平の指導のもと、中国はハイテク振興計画「863計画」を策定した。この計画には新素材開発が含まれ、レアアースも対象となり本格的な生産が実現した。1992年の南方視察演説で、鄧小平は「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」と述べ、レアアースを戦略的素材と明確に位置付けた。

1980年代以前、米国や他の国々がレアアースの主要生産国だったが、中国では多くの鉱業会社が登場し、低価格で供することで輸出攻勢をかけた。米国などの鉱山は採算悪化により閉鎖を余儀なくされ、中国が世界のレアアース生産をほぼ独占する流れが加速した。

低価格の背景には環境コストの低さがあった。当時は環境規制が緩く、軽レアアースの採掘・精製で発生する放射性廃棄物に対し、十分な対策が講じられていなかった。重レアアースについては、抽出に必要な酸性溶液が適切に処理されず、鉱山周辺の河川や土壌を汚染した。

深刻な環境破壊と健康リスクを代償に、中国は主要なレアアース生産国としての地位を確立したのである。政府が排出規制や鉱山の国有化を通じて環境対策を本格的に優先し始めたのは、2011年になってからだ。

この時から中国は、経済外交における交渉材料としてレアアースを利用し始めた。2010年に日中関係が緊張した際、中国は日本が拘束した中国漁船船長の解放を要求し、高性能磁石の原料となるレアアースの対日輸出を一時停止した。この磁石は日本企業の間で大きな市場シェアを占めていた。

強い脅威を感じた日米は対抗策を講じ始めた。2002年に閉鎖された南カリフォルニアのマウンテンパス鉱山は生産を再開した。米国地質調査所(USGS)のデータによれば、2010年のレアアース生産量で中国が占める割合は90%超だったが、この数値は2024年までに70%まで低下すると予測されている。

とはいえ、米国の生産は主に軽レアアースに集中し、より貴重な重レアアースの世界市場では依然として中国が支配的である。

さらに米国やその他の国で生産される軽レアアース元素の大部分は中国に輸出される。これは中国が過去10年間で製錬技術を継続的に向上させ、製錬工程に不可欠な放射性物質の除去に長けているためだ。これは先進国が参入するのが難しい分野である。

中国はまたレアアース製錬の世界市場シェアでも90%以上を占める。近年、レアアースが添加された磁石の製造における中国の独占はさらに強まっている。4月の輸出規制により磁石の海外出荷が減少したことで、世界のサプライチェーンは衝撃を受け、米国のフォード・モーターや日本のスズキは一時的に生産を停止した。

鄧小平がレアアースを重要産業と位置づけた産業政策を策定してからほぼ40年が経過した。中国のレアアース優位性は、採掘・製錬といった上流産業から加工などの下流産業へと拡大し、対立国との貿易・安全保障交渉における交渉力を高めている。

【関連ニュース:2025年6月9日付報道 中国はレアアース加工で世界首位、磁石市場シェア80%】上海国際貿易経済コンプライアンス法務サービスプラットフォーム(tclegal.cn)

https://www.tclegal.cn/content-detail/?id=1935167022929334273