No. 2738 中国の「債務の罠」にかかった一番大きな魚

The biggest fish caught in China’s “debt trap”

中国の公的信用供与や融資の最大の受益者としての“被害者は米国

by Hua Bin

ニューデリーにある米国国務省から資金提供を受けている政策研究センターに勤務するブラフマ・チェラニーというインド人が、「債務の罠(Debt trap)」という用語を造語し、開発途上国における一帯一路構想(BRI)のための中国の融資を非難するために使用した。

この用語の由来からしてそれが愚かな妬みによる中傷であることは明らかである。彼の主張はジョンズ・ホプキンズ大学、ハーバード大学、チャタム・ハウスの研究者やアナリストたちによってその後完全に否定されている。彼らは中国のトロール(中傷する者)とは言えない。

例えば、ニューヨークのロジウム・グループとジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、チェラニーや「債務の罠」論者たちが主張する、債務不履行を理由に中国が戦略的資産を差し押さえた事例は1件も確認されていない。

ロンドンに拠点を置くチャタム・ハウス(王立国際問題研究所)はその実績から見て非常に反中国的な組織であるが、中国の債務管理を欧米の債券保有者や機関と比較した研究を行っている。

彼らの分析によれば、中国は債務の返済期限の延長や債務救済に非常に前向きであるのに対し、世界銀行や IMF などの欧米の貸し手は、すぐに法的措置に訴える傾向がある。

欧米の融資には規制緩和や民営化といった条件が付帯し、対象国の経済生産性に悪影響を与えることも多い。

皮肉なことに、インドが「債務の罠」を警告する一方で、インド自体がアジアインフラ投資銀行(AIIB)から最大の融資を受けている。この金融機関は主に中国が資金を提供している。

もちろん、インド人はおそらく非常に「賢明」だから、いかなる「債務の罠」にも影響されないのだろう。罠に陥る心配をすべきは、彼らへの貸し手や債権者の方だ。

予想通り、そんな信用を失った嘘でも西側諸国の政府は聖典として採用する。なぜならそれは彼らの地政学的物語にぴったりはまるからだ。

そうしてこの用語は西側諸国の政府やメディアの公式用語として定着した。

米国で二番目に古い大学であるバージニア州のウィリアム・アンド・メアリー大学(W&M)による中国の公的融資に関する最近の研究は非常に示唆に富み、西側の主張と現地の実証的証拠との乖離を明らかにしている。

W&MのAidData研究所は、中国が世界最大の債権国であり、21世紀以降のグローバル融資規模が従来認識されていたよりも「はるかに」大きいこと、そして融資・無償援助が先進国へ向けられる傾向が強まっていることを明らかにした。

圧倒的に最大の受取国は米国で、2000年から2023年にかけて中国の「公的部門」が支払った2.2兆ドルのうち、約2020億ドルが米国のプロジェクトに流れた。

注記:このデータには中国による米国債購入は含まれていない。

「我々のデータは、高所得国である米国が中国からの公的部門融資の最大の単独受取国であることを示している。この結果は予想外であり、直感に反する」と、今月初めに発表された研究の調査員は記している。

「これは驚くべき発見だ。なぜなら米国は過去10年の大半を、他国に対し中国への多額の債務依存の危険性を警告し、中国が『債務の罠』外交を実践していると非難してきたからだ」と、エイドデータのブラッド・パークス執行理事は述べた。

この研究は36か月かけて24万6千以上の情報源を分析し、政策銀行、国有商業銀行、国有企業、国有基金、中央銀行など幅広い中国の公的貸し手を含んでいる。

中国による米国向け融資の一部は「重要インフラ」建設に関与しており、リオグランデ、ポートアーサー、フリーポートにおける主要な液化天然ガスパイプライン建設、ダコタ・アクセス石油パイプライン、ニューヨーク市へ電力を供給する送電線、バージニア州のデータセンター、ニューヨークとカリフォルニアの空港ターミナルなど、数多くのプロジェクトの資金調達を支援した。

中国の公的融資機関はまた、米国ハイテク企業の合併・買収を資金援助し、フォーチュン500企業に対し運転資金やリボルビング・クレジット・ファシリティを通じた流動性支援を提供した。

研究機関は、中国による米国向け融資の大半を「地政学的・地経学的優位性の追求ではなく、利益追求によって導かれている」と評した。

中国は「一帯一路」構想(BRI)を通じたグローバル・サウス諸国への融資で知られるが、報告書によれば2000年から2023年までの融資先上位20カ国のうち10カ国は英国、シンガポール、ドイツ、スイスなどの高所得国であった。

ロシアは米国に次ぐ第2位の受入国で、同期間の融資・無償援助の累計額は1717億8000万ドルに達した。次いでオーストラリアが1300億ドルだった。

AidDataによれば、中国の海外融資ポートフォリオ総額は従来公表されていた推定値の2~4倍に達し、中国は圧倒的な差で世界最大の公的債権国となっている。

融資ポートフォリオは時間とともに大きく変化してきた。2000年には中国融資の88%が低所得国向けだったが、2023年までに先進国向け融資は76%に増加した。

2000年から2023年にかけて、中国は世界中で3万件以上の「プロジェクト及び活動」に対する融資と無償援助を承認した。そのうち9,764件が高所得国向けであった。

AidData報告書は、中国が「柔軟で革新的かつ補完的な方法」で債務・出資・無償援助を提供し、「地政学的・商業的利益を推進している」と述べている。

報告書のサマリーによれば、中国はますます「最初で最後の国際債権者」と見なされている。

西側のプロパガンダと現地の実情との乖離は示唆的である。中国の融資を「債務の罠」と呼びながら、中国のお金の餌桶に群がる貪欲さこそが偽善である。

西側政府とメディアの中国に関する歪んだ物語は、冷笑と愚かさの温床の上で生き続けている。

こうした物語を信じるには、二つのうちいずれかでなければならない。読者が偏見を肥やすために明らかに虚偽の物語を飲み込むほど冷笑的であるか、あるいは読者が批判的思考の基礎能力すら持たないほど愚かであるかだ。

これは他の同様に滑稽な論点を思い起こさせる。例えば西側の評論家は、中国の持続的な「デフレ」を理由にその国内経済が不安定だと常々主張する。

確かに過去2~3年で物価は安定か小幅下落しているが、それが消費者にとって悪いことなのだろうか?

なぜ消費者は「物価上昇」——西洋諸国で蔓延するインフレ——を歓迎すべきなのだろうか?

製造業の規模と効率が向上し、企業が開放市場で消費者を奪い合うなら、商品価格は下がるべきではないだろうか?

価格上昇による企業の高利益率は、なぜ消費者にとって良いことなのか?

中国では2024年、実質世帯所得の平均伸び率は5.4%だった。物価下落により名目伸び率5.2%を0.2%上回っている。これは大半の西洋諸国でみられる実質所得のマイナス成長より優れているのではないか?

中国では、30年住宅ローン実効金利は平均3.1%、初回購入者は2.65%だ。これは他の国々の6~9%の金利よりも良いのではないか?

嘘つきのメディアのゴミのような情報を信じるには、本当に頭が悪いか、批判的思考を冷笑的に遮断している必要がある。

そして、それはメディアだけにとどまらない。こうしたデタラメの主な情報源は「選挙で選ばれた指導者」たちなのだ。

テキサス州選出の 3 期連続米国上院議員であるテッド・クルーズは、最近の論説で、中国の AI 支配は「国家による監視と強制」を意味し、一方、米国の勝利は「自由、人間の尊厳、法の支配」に基づく技術を保証すると書いた。

もしこの自己中心的なプロパガンダが、ある程度の信頼性を持つ人物から発せられたものなら、ある程度の重みを持つかもしれない。しかし、自国である米国で最も嫌われている人物の一人であるテッド・クルーズが発言したものであり、その皮肉は圧倒的である。

テッド・クルーズはドナルド・トランプから「嘘つきテッド」と名付けられた、あのテッド・クルーズである。トランプが彼の妻(クルーズは「人生で最愛の人」と言った)の容姿を侮辱し、彼の父親が JFK 暗殺に関与したことをほのめかしてから 3 ヶ月後、クルーズはトランプの最も忠実な取り巻きとなった。

テッド・クルーズといえば、元同級生(大学のルームメイトを含む)や共和党の同僚から「最も嫌われる人物」に選ばれたあのテッド・クルーズだ。

2021年にテキサスで凍死者がでたとき、有権者を置き去りにしてカンクンのリッツに逃げ込んだ、あのテッド・クルーズだ。

戦争推進者でクルーズの同僚上院議員でもあった故ジョン・マケインは、「もし上院の議場でテッド・クルーズを殺害し、その裁判が上院で行われたとしても誰も有罪判決を下すことはないだろう」と述べたと伝えられている。

クルーズと並んで最も卑劣な人間としてふさわしいリンジー・グラハムでさえ、「テッド・クルーズを撃ったとしても、陪審員は評決に達しないだろう」と述べている。

自分の妻と父親の名誉を守ることすらできなかったテッド・クルーズが、道徳的な高みから「人間の尊厳」を擁護するのは、2ペソの娼婦が貞操や美徳について説教をするようなものだ。

そこで疑問がでてくる。クルーズやグラハムのような卑劣な生き物が、中国による「債務の罠」から米国を救うことができるのだろうか?

https://huabinoliver.substack.com/p/the-biggest-fish-caught-in-chinas