No. 1956 モロッコでIMFが中国と対決

IMF Showdown with China in Morocco

by Michael Hudson

問題は今後のIMFや世界銀行の融資オペレーションの主な受益国がどの国になるかだけではなく、世界がアメリカの一極支配を支持するのか、それとも、今や機能不全に陥っていると広く見られている貿易・投資システムを維持しようとして反労働緊縮主義を押し付けるのではなく、生活水準と繁栄を向上させるための相互支援という多極化の理念に向かって明確に動き出すのか、あるいは、財政的に略奪的なアメリカの要求が、この2つの組織(IMFと世界銀行)を新冷戦政策の武器として利用するのかどうかである。

問題になっているのは、IMFと世銀の加盟国に対する割当を増やそうとするアメリカの動きである。クォータは投票力を反映するもので、政策制定には85%の投票が必要だ。15%の拒否権があれば、いかなる政策変更も阻止できる。そして1944~1945年にこの2つの組織が発足して以来、アメリカは自国が加盟するいかなる組織においても拒否権を持つことを主張してきた、 他国が自国の政策に口出しできないようにするためだ。その一方で、自国よりも他国に利益をもたらすと判断した政策を阻止することもできる。17.4%(得票率16.5%)のクォータでIMFでの拒否権が与えられている。

1945年以来の国際金融パワーのシフトに当初の割当分配が追いついていないのは必然だった。台頭する経済国は、IMFや世界銀行の政策決定においてより大きな割当と、それゆえの発言力を求めてきた。しかし、クォータ増額のたびに、米国の戦略家たちはクォータ全体の増額によって米国のクォータが独自の拒否権を維持できる15%を下回ってはならないと主張してきたのである。

他のどの国も、アメリカのパワーにはまったく及ばない。米国の戦略家たちは日本が現在6.47%という2番目に大きな割り当てを獲得したことを喜んだ。これは日本が1970年代から1980年代にかけて産業面で大きく飛躍したことを反映しているだけでなく、日本が「第二のアメリカの票」のような存在になるというアメリカの自信も反映している。(だからこそ国連安全保障理事会に日本を加えようとしたのだ。ソ連の代表は、日本がアメリカの政治衛星としての役割を担っていることを理由に、これに拒否権を行使した)。

中国が6.40%で3番目で、ドイツとイギリスの弱体化した経済が僅差で続いている。ドイツとイギリスはアメリカの優しさに徹底的に依存し、アメリカ中心の経済依存を強めている。

今年この問題の緊急性が高くなったのは、BRICS+諸国の台頭と彼らが進めている集団的な代替策のためである。彼らは、米国のサプライヤーや債権国への依存ではなく自給自足を目指す国々に対して、米国の外交官が制裁を課したり、(イラン、ベネズエラ、ロシアに対して行ったように)公的な準備通貨を没収したりするという脅威から自国を守るためにBRICS+諸国が経済の脱ドル化を進めていることである。

米国中心の一極経済ではなく多極的な世界秩序を目指す国々にとって、広く使われている「脱ドル化」という言葉は、単に貿易や投資取引の決済に他の通貨を使うこと以上の意味を持つように急速に発展している。国際金融、債権者と債務者の関係、貿易制裁や米国が仕掛ける経済戦争から自国を守るための自給自足など、根本的に異なる哲学である。長年にわたり多くの国は外国の債務返済額を減らすために労働者の賃金を十分に引き下げると言うジャンク・エコノミクスの考えに基づく労働者に対する緊縮政策をIMFから課されることを恐れ、IMFに借金をすることを避けようとしてきた。

ジャネット・イエレン米財務長官と新自由主義者一味はマラケシュで、中国にIMFでより強い発言力、つまり発言枠を与えることに関して鉄槌を下した。フィナンシャル・タイムズ紙は10月12日、元米財務省高官エドウィン・トルーマンの記事で、彼らの立場を最も明確に表明した。「好むと好まざるとにかかわらず、いかなる取引も米国財務省を満足させなければならない」と彼は言った。その第一の懸念は、理想的には各メンバーの割り当てが少なくとも3分の1ずつ増加することになるが、「これらの選択された増加額の合計が米国の投票シェアを脅かすようなものであってはならず、さもなければワシントンは妥協案を阻止するだろう」ということだ。エドウィン・トルーマンによる「IMFクォータの行き詰まりは容認できない」という記事がフィナンシャル・タイムズ(2023年10月12日)に掲載された。

さらにトルーマンは、予定されている増額は「新興市場国や発展途上国」には適用されるべきではないと説明する。彼らは債務国であり、それゆえ国際債券保有者やアメリカ・NATOの債権者、IMFからの新たな米ドル融資への依存を深める代わりに債務国の回復を助ける政策を支持するだろう。

問題は、「現在の方式では、中国を筆頭とするIMF加盟国25カ国の割当は、現在よりも少なくとも50%大きくなるはず」ということだ。しかし「アメリカの議決権比率を15%近くまで引き下げられる」脅威に加え、中国の影響力が増すことになる。「アメリカは加盟国がIMFのルールと規範を尊重しない限り、加盟国枠の拡大を支持しないと明言している。この障害を取り除くために中国は、そうでなければ自国に与えられるはずの選択的な割当増額を受け入れないことに同意すべきであり、アメリカはその妥協案を支持すべきである」

もし中国がおとなしく応じなければ、IMF総会は「またしても膠着状態」で終わることになる、と彼は脅す。この言葉は、アメリカの冷戦戦略家が国際外交を支援するためにアジアやグローバル・サウスの資源をさらに乗っ取ることを、中国やその他の国が拒否することを意味している。

ある意味でこの騒動はいったい何なのだろう。IMFの協定が何を規定し、スタッフが何を推奨しているかなんて、誰が本当に気にするのだろうか。私たちはもはや法治国家ではなく、アメリカの役人がその場しのぎでルールを決める「ルールに基づく秩序」の中にいるのだ。すでにIMFの規則や手続きは茶番と化している。

IMFによるウクライナへの最近の融資では、ウクライナの借入を割当額の7倍にまで引き上げた。IMFはもはや協定の条文に従う義務を感じておらず、公然とアメリカ国務省と軍の代理人として、ロシアと中国に対する(そしてもちろん、本当はドイツと西欧に対する)アメリカ・NATOの戦争に資金を提供している。

IMFのウクライナへの融資は加盟国の借入限度額に違反していることに加え、戦争中の国への融資であり、これも禁じられている。そして第三に、その国が返済できるという計算なしに融資をしてはならないという「ノーモア・アルヘンティーナ」ルールに違反している。モンサントやカーギルなど米国のアグリビジネス企業に農地を売却する以外には、ウクライナが返済できると考える人がいるだろうか?

IMFと世界銀行の米国の戦略家たちは、米国中心の新自由主義を推進するために融資を武器にし続けるに違いないという事実を踏まえて、私は中国にささやかな提案をする。現在の国際的な緊張状態を利用して、中国が折れる意思を強調したくないことは分かっている。だから、おそらく中国は、米国が望むものを正確に、そしてそれ以上に与えるべきだ!

実際、米国と経済的に対等であることを反映した割当を与えるよう提案することとして記録に残ることができる。アメリカの長期的な敵国ナンバーワンに指定されているのだから。しかしもしアメリカが拒否するなら、私は中国がIMFと世界銀行の加入を全面的に撤回するのを見たい。立ち去るのだ。

中国とBRICS+の同盟国の政策に逆行する国際機関に、なぜ中国が補助金を出さなければならないのか?世銀のトップはいつもアメリカの外交官で、たいていは軍関係者で、中国の「一帯一路」構想に代わる、アメリカ/NATOが支援する構想に資金を提供することを望んでいる。またIMFの新自由主義的な「安定化」政策は反労働者的であり、それゆえ米国の顧客である寡頭政治に最も従順であり、BRICS+諸国が導入しようとしている改革ではない。

中国やBRICS+諸国の脱ドル政策が実際に米国の一極的な略奪的な非対称性を相互利益の哲学に置き換えるための広範なシステム全体の取り組みであるなら、なぜこの機会を利用して中国になげかけられた米国の挑戦を受け入れてはどうだろうか?それは「膠着状態」を避けることになる。世界経済を今日の岐路に導いた哲学的な違いを明確にすることができるだろう。

外交用語でいうならこれを「意見の相違による合意」と呼ぼう。

Michael Hudson: IMF Showdown with China in Morocco