No. 2026 いかにして日本は自ら中国に未来を譲ろうとしているのか

How Japan is willingly ceding the future to China

積極的な金融緩和への10年間の依存が、イノベーション、リストラ、リスクを取るという責任をCEOから奪った

by William Pesek

東京:  日本人の精神に次に打撃を与えるのは、日本が経済大国としてドイツの次の4番目に落ちることだろう。しか日本は、12年経過した今も、国内総生産(GDP)で中国に追い越されたことに頭をかかえている。

2010年と2011年に、経済の生徒が教師よりも大きな力を得て、トップ交代を告げる見出しが躍った。中国{1}は、韓国や台湾、タイなど他のアジアの「虎」と同様に日本の発展モデルの一部を参考にしていた。

それなのに、誇り高い日本の政治エスタブリッシュメントはなぜ簡単に中国の前進を許したのだろうか?

多くの日本の評論家はこの議論の条件に強く異議を唱えている。従来の考え方では、GDPよりも一人当たりの所得の方が重要であるとされており、この点において日本が圧倒的に中国を上回っているという。

そして明らかに、中国の指導者である習近平は、経済の進歩を遅らせるのに十分なほど自国の足を撃ってきた。テクノロジーに対する破壊的な取り締まりから非人道的なコロナのロックダウンに至るまで、習近平は2020年以降、追い風よりも逆風を多く生み出している。

しかし多くの世界の投資家や学者は、アジア経済の時計が早まり、中国が勝負を仕掛けてくる中で、日本の岸田文雄首相の自民党は何を企んでいるのだろうかと思わずにはいられない。

2013年、自民党は日本経済の勢い{2}を取り戻すという大胆な計画を掲げて政権に返り咲いた。当時、安倍晋三首相はアジアが誰の大陸であるかを中国に思い出させることに言及した。

残念ながら、官僚主義の削減、技術革新と生産性の向上、労働市場の自由化、新興企業ブームの促進、女性の地位向上、外国人人材の誘致、アジアの金融センターとして上海に一石を投じる、といった彼の公約は道半ばに終わった。

安倍はコーポレート・ガバナンスの強化にはわずかながら成功したが、その他の改革が不十分だったため賃金の伸びは鈍化した。給料が増えて内需が急増するという好循環への期待は実現しなかった。

その理由は、安倍がほとんど全面的に積極的な金融緩和に頼ったからである。2013年以降の数年間で、30%の円安によって過去最高額の企業収益につながった。しかし問題は円安が日本の競争力も低下させたことである。

為替レートが円安に振れたことで企業のトップは技術革新やリストラ、リスクテイクをする必要がなくなった。政治家は1970年代のような輸出中心モデルから脱却し、内需主導の成長へとエンジンを再調整する必要はなかった。

アベノミクスは萎縮した経済システムに衝撃を与えるどころか、その欠陥を固定化させた。日本は中国との差を縮める絶好の機会であったこの10年間を事実上無駄にしたのである。そのため投資家や学者の間では、安倍の後継者の岸田が日本経済の底上げに関して何をしようとしているのか、混乱している。

故・安倍元首相とその子分の岸田現首相。写真 スクリーンショット / アルジャジーラ

2021年10月、岸田は十分に順調なスタートを切った。彼は中流階級の所得を引き上げるという、彼自身の野心的な「新しい資本主義」計画で首相の座についた。しかし彼の師匠の改革と同様に、キシダノミクス{3}も実際の再構築というより願望に近かった。

この2年余りは岸田にとってスタートアップの活動を奨励するために税制を変更する絶好の機会であった。実際、彼は日本の1.6兆ドルの政府年金積立金を活用してスタートアップに資金を提供するという大胆な計画を持っていた。

これは、日本のベンチャー・キャピタル業界の成長を加速させるために自民党がこれまでに打ち出した最も独創的なアイデアだ。しかしほとんど実現しなかった。岸田は構造改革よりも財政刺激策や日銀緩和を優先した。

未完の安倍改革を再活性化させたわけでもない。その間に中国の景気減速と過去17年間で最も高い米国債利回りが、パンデミック後の日本の回復に逆風を吹かせた。7-9月期の経済成長率は前期比2.9%減{4}となった。

最近のデータを見ても10-12月期の景気回復を示唆するものはほとんどない。このことは、岸田がいつも以上に忙しくなり、改革プロセスを復活させる可能性が低くなることを意味する。

このシフトダウンによって、日銀がすぐに「テーパリング」(量的緩和策による金融資産の買い入れ額を順次減らしていくこと)や金利政策の正常化を行う可能性も低くなる。もし植田日銀総裁が2023年に量的緩和{5}から脱却することに抵抗があったとすれば、不況が深刻化する中、その可能性はさらに低くなるかもしれない。

こうしたことはすべて日本の「機会費用」問題が続いていることを意味する。政府が成長率を高めるために安易な方法を選ぶということは、経済力を強化しないことを選ぶということだ。これは自民党が何十年も受け入れてきたトレードオフだが、特にこの10年間はそうだった。

Image: Hedgeye

もし安倍が円安に頼るのではなく、約8年間の任期をうまく使って経済を作り直していれば、日本は好景気に沸いていたかもしれない。もし安倍の後継者である菅義偉が就任から12カ月間で日本の野心的意欲を再生させていれば。あるいは岸田が26ヵ月間、大きなアップグレードをスコアボードにまったく書かずに放置していなければ。

支持率17%の今、岸田が経済に揺さぶりをかける政治資金はごくわずかしかない。スキャンダルが自民党を巻き込み、野党が襲いかかる中、岸田は2024年、そのポストを維持するのに必死で、それどころではないだろう。

改革への期待が薄れるにつれ、中国はアジアの将来をさらに自由に支配できるようになる。中国が抱える巨大な不動産危機を含むすべての課題にもかかわらず、日本の政治家が経済に与えている自己破壊行動は、まさに北京に利益を与えるものである。

岸田は不況に対処するために政府支出を増やそうとしている{6}。この最新の借金の急増は、ムーディーズ・インベスターズ・サービスのような格付け会社の興味をそそることはほぼ確実だ。ムーディーズは最近、米国と中国の格下げを予告した。

GDPの2倍以上の国家債務を抱える日本の財政的余裕は限られている。その結果、今後数年間で軍事費を50%増加させるという岸田の計画は複雑になるだろう。日本の安全保障への野心が逆風にさらされることは、習近平の中国にとっては朗報である。

アジアの投資家や学者が、なぜ日本が時間に余裕があると考えているのか、また岸田政権が何を考えているのかと問う時、その疑問はもっともである。東京がそれに答えるのに時間がかかればかかるほど、中国が将来を主導する能力を高めるのには都合がいい。 

Links:

{1} https://asiatimes.com/2023/12/china-can-accelerate-surge-in-foreign-bond-inflows/

{2} https://asiatimes.com/2022/07/kishida-has-1-45-trillion-reasons-to-reboot-abenomics/

{3} https://asiatimes.com/2023/12/how-much-longer-can-kishida-last/

{4} https://www.reuters.com/world/asia-pacific/japan-q3-gdp-revised-down-29-annualised-contraction-2023-12-07/

{5} https://asiatimes.com/2023/12/bank-of-japans-ueda-cant-quit-qe-either/

{6} https://asiatimes.com/2023/09/world-isnt-ready-for-what-uedas-trying-to-say/

 

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