No. 2036 中国が他国を征服しようとしない理由

Why China is not planning to conquer other nations

by Percy Allan

一帯一路、21世紀の地図における中国の戦略的投資

国境問題を解決し、確保する以外に中国は他国に対して領有権を主張することはない。壮大な領土的野心を持つ国はそれを隠すことはない。3部シリーズの第2部は中国が他国の征服や占領を計画していない理由を探る。

このシリーズの最初の記事{1}で、米国の「中国の脅威」というナラティブがいかにして西側の安全保障共同体に定着したかを探る中で、米共和党と民主党が米国で「国旗を掲げる集会」効果を生み出そうとして「中国の脅威」のナラティブを構築したことを概説した。これは深く分断された米国を国内で団結させるためのものであり、中国が脅威でない理由の概要を述べた。その理由には、中国には帝国の遺産がないこと、中国の外交政策が他の国家のように極端なナショナリズムではないことなどである。

中国が他国の征服や占領を目論んでいない理由をさらに4つ挙げる。

中国には領土的野心がない

国境問題を解決し確保する以外に、中国は他国に対して領有権を主張していない。壮大な領土的野心を持つ国は、それを隠すことはない。ヒトラーのドイツは急増する人口を再定住させるために東欧とロシアにさらなる「生活空間」(Lebensraum)を求めた。対照的に、中国の人口は一人っ子政策によって減少しており、住宅が高すぎることもその原因である。

大日本帝国の使命は、天然資源、特に石油、ゴム、鉄を手に入れるためにアジア太平洋地域を「植民地化」することだった{2}。日本はこれを、中国、朝鮮、その他の近隣諸国を侵略することによって行った。中国は、植民地化ではなく貿易によって天然資源を獲得できることを知っている。実際、征服が目的なら最も簡単な標的は民主化されたモンゴルだろう。モンゴルはウクライナの2倍以上の国土を持ち、資源が豊富で、人口が少なく、軍隊も少ない。中国は他の多くの国(オーストラリアを含む)と同様、モンゴルの石炭、蛍石(ホタル石)、銅、金、銀、その他の金属鉱石の採掘に投資している。

公的な演説や私的な会合で、中国の指導部は「相互尊重{3}、平和的共存、ウィンウィンの協力」を望んでいると繰り返し述べている。どこの国も侵略すると脅してはいない。

例外として台湾があげられるかもしれないが、主要国は一つの中国政策を支持しているため、台湾を主権国家として認めてはいない。民主主義国家として繁栄している台湾が、もし国民の意思に反して侵略されたら悲劇である。後述する理由により、現状が維持されるのであれば、そのようなことが起こるかどうかは疑わしい。中国の外交政策を理解する上で重要なのは、台湾を中国の内戦による未解決の問題だと考えていることであり、外国を征服しようとしているわけではないということだ。

中国はイデオロギーを輸出していない

中国はもはや共産主義を輸出していない。毛沢東時代に多くの国に存在したマルクス・レーニン主義(親中派)の共産党はとっくに閉鎖された。世界の工場として、そして最大の貿易国として、 中国は、重要な輸出市場、必要不可欠な原料供給源、貴重な海外投資が危険にさらされないよう尊敬と影響力を求めている。

中国はまた、米国やその同盟国の海軍による妨害から自国の国際海運を守るのに十分な大きさの海軍を望んでいる。中国の新しいビジョンである “Shared Prosperity”(繁栄の共有)は国際向けではなく国内消費向けに設計されている。対照的に米国の自由と解放を広めようとする試みは、しばしば外国の戦争に身を投じてした。その多くは現地の人々が独自の文化的・国家的な志向を持ち、彼らの土地に外国の軍隊を置くことを嫌悪したために失敗した。

中国の最大の国際的な推進力は、2013年に始まった「一帯一路構想」{4}(BRI)で、約150カ国で1兆米ドルを超える3,100以上のプロジェクトが含まれる。これは、アジアとアフリカ、ヨーロッパを陸路と海路のネットワークで結び、地域統合を改善し、貿易を拡大し、経済成長を促進しようとするものである。米国とは異なり、中国は軍事的同盟国ではなくグローバルな経済パートナーに焦点を当てている。

中国がグローバルサウスにアピールするポイントは3つある。中国はこれらの国々のいずれも侵略したり、政府を転覆させてはいない。一帯一路構想は、道路、空港、港湾、鉄道などの重要な経済基盤に対する補助金と安い融資を提供している。また、EUや米国が自国の産業保護政策のために躊躇する貧しい国々との自由貿易協定にも中国は前向きである。

中国が固執する分離独立

中国政府にとって最大の安全保障上の懸念は国内の分離独立運動である。チベット、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区の反体制派は民主化を望んでいるのではなく独立を望んでいる。インド(カシミールとパンジャブ)、スリランカ(タミール)、インドネシア(西パプア)、フィリピン(ミンダナオ)、ミャンマー(モン州)と同様、中国の対応は分離主義者とその支持者に対する軍事的弾圧、拘留、「再教育」である。

中国は、少数民族や宗教的少数派が独自の文化的アイデンティティを促進するよりも多数派である漢民族と同化することを望んでいる。これはオーストラリアにとって不快だが(オーストラリア先住民族の歴史を考えれば)、中国は、隣接する国々が異なる時期に少数派を排除、追放、または抹殺しようとしたことよりはこれはより包括的だと考えている(例:インド、スリランカ、ミャンマー、およびインドネシア)。

香港では民主化運動の激しい活動家(禁止された香港民族党の元メンバーを含む)が暴力に訴え、地方議会を襲撃し、要求を地方自治から中国本土からの独立へ引き上げた後、厳格な国家安全法が施行された。中国は内部分裂への不安から米国との軍事的な対立に気を取られたくないと考えている。

中国の焦点は経済

2019年のコロナパンデミックは中国経済の力強い成長に突然終止符を打ち、構造的な問題を露呈させたが、その中でも最も深刻だったのは中国が負債主導の不動産とインフラ開発に依存していることだった。中国は人口が減少していることを考えると建設が過剰である。不動産開発業者と、その資金源である地方政府の金融機関のレバレッジを下げる必要がある。計画が外されたマンションを購入した多くの中国人は、建物が未完成のままであるため、貯蓄を失った。

生活水準をさらに向上させるために、中国経済は投資主導から消費主導にシフトしなければならない。そのためには公共サービス(医療や高齢者年金など)を改善し、中国の家計が不測の事態に対応するために貯蓄する必要がなくなるようにする必要がある。これはまた、ほとんどの所得者が社会福祉ネットに寄与するように税制を改革することを意味する。現在、許容される控除のために所得の80%が課税の対象外となっている。そして、地方政府(ほとんどの公共サービスを提供する)は、収益の重要な源泉としての開発業者への土地の売却から脱却する必要がある。

ほとんどの発展途上国を苦しめている中所得層の罠から中国が抜け出すためには、中国の産業は労働集約的、資本集約的なものから、ハイテクや知識に基づくものを基盤としたものに移行しなければならない。また米国は中国が世界の他の国で製造された先進的な半導体チップを使用することを禁止しているため、中国はAIアプリケーションに秀でた独自のチップ製造能力を開発する必要がある。中国を「民主主義世界」から切り離そうとする米国の決意は、中国経済をより「循環型」にし、欧米との輸出入に依存しないようにすることを求めている。

米国の封じ込めを避けるため中国は、海上の航路よりも妨害が難しい陸上輸送網を中央アジア、中東、アフリカと整備している。中国が石炭の輸入を太陽光発電、風力発電、原子力発電で代替しようとする動きは、自給自足と排出削減のためである。大気汚染の削減は呼吸器系疾患をなくすために不可欠である。最後に、縁故資本主義や私利私欲の官僚制度を駆逐するためには蔓延する汚職の根絶が不可欠である。

これらの成果を達成することは、経済成長を復活させ、自立と強靭性を獲得すると同時に、環境の持続可能性と「共通の繁栄」を達成するために必要である。後者は、雇用者と被雇用者、都市住民と農村住民の間の所得と富の大きな格差を是正するという習主席の探求を指す。最も切迫しているのは、5人に1人が失業している若年層の雇用を増やすことである。

これら多岐にわたる課題にどれだけ成功または失敗するかは、中国共産党が市民との社会契約を維持するかどうかを決定するだろう。なぜならその合法性は民主主義ではなく、成果に基づいているからだ。

これを達成することは、西側との戦争を避けることを意味する。なぜなら戦争のためには人々の生活と幸福の向上にかかる資源を軍の人員、装備、および兵器に振り向ける必要があるからだ。

これらの理由などから、中国は脅威ではない。

Links:

{1} https://johnmenadue.com/why-china-is-not-a-threat-sinophobia-unites-americans/

{2} https://www.thoughtco.com/the-us-and-japan-before-world-war-ii-3310162

{3} http://us.china-embassy.gov.cn/eng/dshd/202306/t20230608_11091442.htm

{4} https://www.scmp.com/comment/opinion/article/3234834/all-its-flaws-chinas-belt-and-road-has-lifted-global-south?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-opinion&utm_content=20230918&tpcc=enlz-opinion&UUID=66ceaa03-840e-41e8-b36d-17fbb8b2f268&tc=4&CMCampaignID=6597f8d41e3c143eea41c887ff6723c4

Why China is not planning to conquer other nations