Netanyahu’s Assassination Spree
レバノンとイランでのイスラエルによる殺害は米国と中東を地域戦争に引きずり込む危険性がある。
by Seymour Hersh
ジョー・バイデン大統領の外交政策の失敗もあって米国と中東は危機に直面している。バイデン大統領は不測の事態が起こらない限りあと6カ月は大統領を務めることになる。核心的な問題は、イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフの無謀さと堕落をバイデンが理解できなかったことだ。ネタニヤフのパレスチナ人に対する憎悪は今や中東と米国を、望んでも必要でもない戦争の瀬戸際にまで追い込んでいる。バイデンはまた、ウラジーミル・プーチン率いるロシアが現在ウクライナに勝利しつつある戦争について、交渉による解決を求めることにも失敗した。
バイデンの失敗は民主党大会で指名されたカマラ・ハリス副大統領に引き継がれることになる。彼女はバイデンの政策が生み出した危険性についてまだ異論を示していない。しかし、もし彼女が発言すべき時があるとすれば、今しかない。
悪いのはバイデンだけではない。議会の民主党と共和党の大多数は、ウクライナの腐敗し破綻した政府を支援するために何十億ドルもの資金を送ることに日常的に票を投じており、同様にガザで使用するためにイスラエルに供給される爆弾や戦車砲弾を承認している。ネタニヤフの意向でカタールから何年も資金援助を受けていたハマスが敗北したとは言い難く、バイデン政権の圧力(というより懇願)にもかかわらず、ネタニヤフがガザ停戦に抵抗しているのは明らかだ。
ネタニヤフの不合理さの兆候は当初からあったが、それは無視された。昨年10月7日のハマスの攻撃の恐怖の後、イスラエル指導部はイスラエルに急行した米国人幹部から、大規模な爆撃攻撃で報復しないようにと注意を受けた。その代わり、イスラエル側は、ハマスが拉致したイスラエル国防軍の人質240人をすぐに返せば、イスラエルは対応を保留すると発表するよう勧告された。たとえこの提案のようにならなかったとしても、ハマス指導部が対応しないことが予想されたため、来るべき激しい空爆への対応を考えるとホワイトハウスとその同盟国にとっては緩和要因になりうると楽観的に考えられていた。それはガザが引き裂かれる中、世界の怒りを和らげようとする絶望的な神頼みのようなものだった。イスラエルは攻撃を計画したハマスの指導者たちに対する一連の刑事裁判をガザで開催することを検討すべきだという、別の情報通の米国政府高官からの提案もあった。しかし、それも聞き入れられなかった。
激怒したイスラエルの指導者たちは、代わりに集団的懲罰を選択した。この決定は何万人もの死者(社会崩壊の中でその数を測定することは不可能である)をもたらした。そしてイスラエルに対する世界的な非難が高まった。米国では大学生や若者の間で民主党に対する政治的反発が起き、その候補者たちは11月の選挙で危機に瀕している。
ネタニヤフ首相は共和党に招かれ、7月24日に米国議会の本会議で演説した。多くの民主党議員は出席しなかったが、ネタニヤフ首相は演説の中で米国の抗議者たちを非難し、ガザ地区住民の殺傷に抗議するとき、「彼らはハマスの側に立っている」と言った。ネタニヤフが「彼らは強姦者や殺人者を支持している」と言うと共和党員は拍手喝采した。「彼らは、……家に押し入り……親子を殺した人たちを支持している。彼らは恥を知るべきだ。
我々の知る限り、イランは今起こっている反イスラエルデモに資金を提供している」。最後の主張に、ネタニヤフは何の証拠も示さなかった。
ネタニヤフは核兵器について言及した。イスラエルには数百の核兵器があるが、イランにはない。「米国はイスラエルと共同で地球上で最も洗練された兵器を開発している。 私は慎重に言葉を選んでいる・・・。それは米国とイスラエルを守るためのものだ。我々はまた中東における共通の利益を守りながら、米国がそこで地上戦をしない手助けもしている」
私は1991年にイスラエルの核兵器に関する本を出版し、私の報道は多くのイスラエルの秘密情報源からのものだった。我々の「共通の利益」には、先週イランでおきたイスマイル・ハニェの暗殺は含まれないと私は確信している。彼は、イスラエルと米国の停戦案をめぐる協議に関与していたハマスの中心人物であり、ネタニヤフがそれを望んでいなかったことは今や明らかだが、バイデンと彼の外交政策スタッフはそのことに気づいていなかったようだ。しかし、ネタニヤフがイスラエルの極右勢力(イタマール・ベン・グヴィールが代表者)に完全に従順になっていることを理解していた米国の情報機関関係者は多かった。ベン・グヴィールは2022年からイスラエルの安全保障大臣を務めている。彼は激しく分裂するイスラエル・クネセトで6議席を占めているオツマ・イェフディト党のリーダーとして頭角を現した。彼は人種差別主義者であり、すべてのパレスチナ人をその土地から追い出したいと公言してはばからない。ベン・グヴィールと彼の党がネタニヤフを大統領の座にとどめ、一連の汚職起訴に起因する実刑判決から遠ざけている。これは致命的な組み合わせだ。
ネタニヤフが命じた一連の暗殺事件は先週、ベイルート郊外の人口密集地にあるヒズボラ司令官フアド・シュクルの事務所がミサイルで破壊され、同司令官が殺害されたことから始まった。2人の女性と3人の子供も殺され、10人以上が負傷した。私は、ベイルートでヒズボラの指導者ハッサン・ナスララにインタビューした数少ない西洋人の一人であり、2003年春のブッシュ政権によるイラク侵攻後、『ニューヨーカー』誌の取材で彼と5回会談した。当時も今も、彼はシーア派世界で最も重要な指導者とみなされている。
シュクル暗殺後、ナスララに近い人物との一連の電話インタビューで、私は即時報復は起こらないと聞いた。ナスララは、ネタニヤフが政権を維持するためには常に危機を作り出す必要があると結論付けている。攻撃は郊外でベイルートではなく、テヘランでもなかったため、即座に対応する必要はなかった。
イスラエルがテヘランでイスマイル・ハニェを暗殺したことは(その他に爆弾やミサイル攻撃で7人が殺された)ネタニヤフが権力の座にある限りガザでの停戦はないという明確なメッセージだった。それはまたネタニヤフとイスラエルの彼の政治家仲間以外は誰も望んでいないことになるかもしれない。まさに致命的な国際的ゲームチェンジャーになることだ。
フアド・シュクルの葬儀がベイルート南部で執り行われた際、ナスララは今後の計画について次のように語った(アラビア語からの翻訳):
「我々は代償を払っている」(シュクル暗殺を指して)「ガザ支援戦線を開いたことで……。我々は、この大義の崇高さと戦い、その重要性に対する確固たる信念に基づいて、この戦いに参戦した。敵のレバノンやイエメンへの攻撃は、我々がもはや単なる支援戦線の立場にはないことの証拠である。これは敵とのオープンな戦いなのだ。
「敵は、イラン国内でイスマイル・ハニェを殺害して何の反応もなくやり過ごせると考えているのだろうか?」
ナスララはこう問いかけた。「イランはこれを自国の主権だけでなく名誉に対する攻撃だと考えている」。イランで学んだこのシーア派指導者は、シーア派が支配するイランを代表して次のような警告を発した:
イスラエルの敵に。「あなたは殺戮を喜んだかもしれないが、レッドラインを越えたことに気づいていないのだから、すぐに泣くことになるだろう」
私はナスララが私に会うことはないだろうと聞いていたが、彼の側近の一人であるレバノン政府の元メンバーが後のインタビューで、シュクルの葬儀が終わった今、「攻撃はいつ起きてもおかしくない」と語った。ナスララのミサイルは中東全域の “可能性のある米国やイスラエルの標的 “に届くことができる。「地中海にある米国の主要な軍港や海軍基地はすべて射程圏内にある。彼は武器を持っており、武器を扱う訓練を受けた人々もいる」。さらに彼は、ロシアは現在イランに数千発の最新鋭対空ミサイルを「それを扱う専門家とともに」補給していると語った。
「狂人でなければ、この数日間にネタニヤフがしたようなことはしない」、とベイルート近郊とテヘランでの暗殺に言及した。 「彼はテヘランでの新大統領就任宣誓式に公式訪問している間に、停戦交渉の交渉官を殺した。彼は交渉官全員の信用を失墜させた」
国防総省はメッセージを受け取った。先週末に発表された声明によれば、ロイド・オースティン国防長官はバイデンからの要請に応えイスラエルへの支援を強化し、中東における米国資産の保護を確実にするため戦闘機部隊の中東への派遣と空母の増派を命じたという。その他、戦争が拡大した場合に備えて米国の軍艦がヨーロッパと中東の米軍事資産を守るために配備された。
ホワイトハウスは先週末、バイデンとカマラ・ハリスがネタニヤフと電話会談した内容をまとめた声明も発表した。その声明には、イランとヒズボラの指導者たちを安心させるために米国が流血を避けるために直ちに交渉に応じるという話はなかった。代わりにあったのは、好戦的な態度だった。
「バイデン大統領は今日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談した。大統領は、イランの代理テロリスト集団であるハマス、ヒズボラ、フーシを含むイランからのあらゆる脅威に対するイスラエルの安全保障へのコミットメントを再確認した。大統領は、新たな防衛的米軍配備を含む、弾道ミサイルや無人機に対する脅威を含むイスラエルの防衛を支援するための取り組みについて議論した。イスラエル防衛へのコミットメントとともに、大統領はこの地域におけるより広範な緊張を緩和するための継続的な取り組みの重要性を強調した。ハリス副大統領も電話会談に参加した。
空母や戦闘艦を中東に派遣することは緊張緩和の努力とは定義できない。ハリスは政治的に可能な限り早く、道を見失った大統領の強硬外向から自身を切り離さなければならない。
ニューヨーク・タイムズが日曜日に報じたところによると、バイデンは木曜日の夜、ロシアから米国人捕虜が戻ってくるのを一緒に待っていた記者団に対して、ガザ停戦への道はまだ残されていると主張した。バイデンは、ネタニヤフと会談し、まだ「停戦の根拠」があり、「今すぐ停戦に踏み切るべきだ」と伝えたという。ニューヨーク・タイムズによれば大統領は、ハニェの殺害によって取引成立が難しくなったかと問われると、「助けにはなっていない。今言えるのはそれだけだ」と答えたという。
軍でキャリアを積み、政府が直面する最も深刻な脅威に対処してきたイスラエル人は最近、私に絶望的だという電子メールを送ってきた。「イスラエルにはもはや戦争内閣はない。ネタニヤフしかいない」と彼は書いた。ネタニヤフは、法的敗北と最近の選挙までは「軍事的冒険と国内での大きな対立を非常に警戒していた」と彼は付け加えた。彼は2、3年前とは別人だ。彼は怒りと憎しみに狂っている、という。
「我々にはチャーチルが必要だが、我々はハリー・S・トルーマンでも受け入れるだろう」
その代わりに、我々そして彼らにいるのはバイデンなのだ。
https://seymourhersh.substack.com/p/netanyahus-assassination-spree