No. 2395 カオスの帝国、再装填

Empire of Chaos, Reloaded

by Pepe Escobar

すべての戦争は欺瞞に基づいている。だから攻撃できるときは攻撃できないように見せかけ、軍事力を用いるときは使わないように見せかけ、近くにいるときは遠くにいると敵に信じ込ませ、遠くにいるときは近くにいると信じ込ませなければならない。   ― 孫武、『The Art of War(孫子)』(紀元前5世紀)

カオスの帝国(米国){1}は情け容赦ない。法戦、不安定化、制裁、誘拐、カラー革命、偽旗作戦、併合:2025年は、BRICS(およびBRICSのパートナー)が標的として集中的に攻撃される年となるだろう。

マイケル・ハドソン教授は、「カオス」が米国の公式政策だと言った。それは超党派で、ディープ・ステートのすべての組織にまたがっている。

長期的な戦略的ビジョンが欠如し、ユーラシア大陸から帝国主義が徐々に追放される中、米国に残された道は西アジアからヨーロッパ、ラテンアメリカの一部にかけて混乱を引き起こすことだけだった。BRICS諸国を分裂させ、主権と国益の優位性を主張するBRICS諸国の団結した動きを阻止しようとする試みである。

米国のシンクタンクはすでに1年半前に「スイング・ステート」{2}という概念を提示していた。偏狭な米国の選挙版ではなく、それを地政学に転用したのである。

当時、候補にあがった6つは全てBRICS同盟国(ブラジル、インド、南アフリカ)かBRICSの潜在的なメンバーまたはパートナー国(インドネシア、サウジアラビア、トルコ)であった。

「スイング・ステート」という暗号は明らかだった。これらはすべて不安定化の対象であり、「ルールに基づく国際秩序」に従わなければいずれ落ちていく、ということだ。

ロンドンやニューヨークの金融市場に預けている資産を警戒しているサウジアラビアは、依然として慎重に賭けを分散させている。 理論的に、リヤドはBRICSの一員だが実際にはそうではない。トルコはパートナーとして招待されている(公式な回答はまだない)。

そして、今週、ブラジルが議長国を務めるBRICSに正式加盟した東南アジアの大国インドネシアがある。BRIIICSと呼ぼう。地政学的な地殻変動のベクトルが圧倒的に変化し、貿易、金融、ガバナンスが再形成されることになる。

BRIIICSと選ばれたパートナー国は、ゲームのルールを書き換えることを目的とした強力なネットワークを構築している。現在、10カ国のフルメンバーと8カ国のフルパートナーが参加しており、その数は増え続けている。参加国は、購買力平価ベースで世界のGDPの41.4%を占め、世界の人口のおよそ半分を占めている。これが、米国が直面しているものなのだ。

中国、インド、ロシア、イラン、インドネシア、南アフリカ、ブラジル、エジプト、サウジアラビアを、新興の多極世界における大陸横断的な真珠と想像してみよう。膨大な人口、膨大な天然資源と工業力、無数の開発可能性。

この成長する地政学上の強力なグループは、独自の開発銀行(もちろんこれは多くの作業を必要とする)を設立し、代替決済システムの開発と試験に全力を傾け、米ドルを徐々に回避することを目指す広大な大陸横断貿易同盟を結成している{3}が、米国の支配エリートはこれに対抗するものを何一つ提供していない。

外交、対話、協力に努める代わりに米国とその従属的な西側諸国がグローバル・マジョリティーに対して「提供」しているものは、民族浄化の大虐殺に対する全面的な支援と、かつての主権国家であったアラブ諸国で政権を握ったスーツとネクタイ姿のテログループ「穏健派」の首切り集団への全面的な支援である。

ようこそ、テロと大虐殺の国へ。

疑わしきはすべて併合せよ

昨年10月のカザンでのサミットの成果をさらに発展させているBRICSは、本質的には孫子の戦略を適用している。惑わす。大げさな宣言はしない。そして、IMFと世界銀行の支配からの脱却に明確に焦点を当てている以外には、米国の直接的な脅威とはならない。

BRICSの推進は、ゆっくりではあるが確実に、上海協力機構(SCO){5}からASEANまですでにチェス盤上の他の多国間ピースを動かしている。

BRICSのトップである中国は、米国との技術戦争、世界貿易におけるシェアの拡大、そして一帯一路構想(BRI)プロジェクトの再調整という3つの課題に焦点を当てることになるだろう。いくつかの側面において、BRIはBRICSへの中国のアプローチにおける中心である。

北京の焦点は、グローバル・サウス全域の市場、BRICS、ASEAN自由貿易協定、APEC(アジア太平洋地域における貿易と投資の要)に及ぶ。APECはBRIと密接に結びついている。習主席がユーラシア全域の市場の構築と強化に注目することを最初に構想化したのは2013年のBRIの立ち上げによってだった。

それと並行して、王毅外相は2022年以降、習近平の「中東における新たな安全保障体制」{6}の呼びかけを着実に拡大している。

中国にとってこれは古典的な勢力均衡である:米国に対抗するために、中国は西アジアにおいて強力な柱としてイランと提携する。2021年、中国とイランは経済協力に関する重要な25年間の青写真を締結した。

そしてエネルギーだ。中国の原油輸入の約50%は西アジアからである。中国の石油・天然ガスの供給元は多様化している。サウジアラビア、イラク、UAE、オマーン、クウェート、カタール、そしてマレーシア経由のイランである。

同時に、北京はQUADとAUKUSを些細な問題として放置しておいて何の問題もない。NATOのアジアへの軸足の転換は実現不可能であり、中国は領域拒否の複雑な戦略を急速に構築している。

アフリカでは、サヘル諸国連合が拡大し続けるだろう。そして、新植民地主義の勢力としてのフランスは終わった。アフリカのその他の地域では、新たな脱植民地化抵抗運動は今まさに始まったばかりである。

しかしラテンアメリカは大きな問題を引き起こすだろう。トランプ新政権下の米国は、カナダ、グリーンランド、パナマ運河、そしてそれ以上の範囲の穏やかな地域を併合するという狂気的な考えに加えて、モンロー主義を全面的に推進する可能性がある。全体として、荒廃した新植民地のアルゼンチンを除いて、裏庭の選ばれた地域は荒々しい航海を強いられるだろう。

ロシアに対する米国の敗北の管理

ヨーロッパの集団自殺は、社会、産業、文化モデルの腐食が極限に達し、発作的な段階にまで至るだろう。

病巣の一覧には、ブリュッセルにおけるWokeの認知症、安価なエネルギーの消滅、加速する脱工業化、自由落下する経済、支払不能な公的および民間債務、そして何よりもNATO-EUの「指導者たち」が、兵器増強のために社会サービス{7}の大幅な削減を強要して平均的な欧州市民/納税者を完全に侮蔑していることだ。

トランプ新政権がEUに対して仕掛ける可能性が高い貿易戦争は、ヨーロッパ経済の崩壊を加速させるだけだろう。

すでにひどい状況にあるフランスを例にとろう。フランスの債務は現在、ギリシャの2012年の水準で取引されており、スプレッドはドイツ国債を上回っている。2兆5000億ユーロのフランス国債市場の50%以上は、国際的なハゲタカやホットマネーによって所有されている。ユーロを新たな実存的危機から救うECBのバズーカ砲を持つマリオ・ドラギはいない。そしてマクロンはレイムダックの囚人にすぎず、パリの下層社会のネズミたちにすら嫌われている。

歴史家、人類学者、人口統計学者であるエマニュエル・トッドは、画期的な著書『西洋の敗北』(英語での最初の書評はこちら{8})の著者であり、新しいゲームのルールを実際に理解している数少ないフランスの知識人の一人だ。

フランス上流ブルジョワジーの特権的な代弁者に対する驚くべきインタビュー記事{9}で、トッドは「経済がボロボロのなか」でトランプが勝利したと考えることの不合理性を指摘し、さらに「米国が世界規模でロシアとの戦争に敗北している」という事実を指摘している。

だから、「魔法のような個人としてのトランプのハイパーパワー」という騒ぎの中で、トッドは驚くべき明確な定式を打ち出した: 「トランプの仕事はロシアに対するアメリカの敗北を管理することだ」

シリアはリビア2.0

まあ、ポップカルチャー中毒の我々は皆知っているが、米国は「勝利」し続けるだろう、ハリウッド流、いやむしろ世界レスリング連盟(WWF)流に。確かなことは、トランプ2.0が欧州やアジアとの貿易戦争でどの国にミサイルを発射しようとも、追い詰められた米国エリート層はグローバル・マジョリティーに甚大な被害をもたらすだろう。

シリアでの勝利は彼らを酔っ払いのようにさせ、そして「真の男はテヘランへ行く」という考え方が復活した(イランがBRICSのトップメンバーなのは偶然ではない)。

シリアがリビア2.0になるための条件はすべて揃っている。しかし、それは「胴元が必ず儲かる」という話ではない。第一に、「胴元」など存在しない。隣国レバノンでは、ヒズボラはすでに再編成されている。再編成と戦略の見直しを経た後、ヒズボラ、イエメンのアンサールッラー、シリアの新たな反体制派、そしてイランの革命防衛隊が異なる形態で合併し、イスラエルを相手に真の戦いを再開する可能性は依然として残っている。

スーツとネクタイ姿のサラフィ・ジハード主義者、アブ・モハメド・アル・ジョラーニことアフマド・アル・シャラアが実際に何を統治しているのかは誰にもわからない。程度の差こそあれ、西側諸国、ペルシャ湾岸諸国、イスラエルは彼を決して信用せず、使い捨ての存在とみなすだろう。彼は単に一時的に利用価値のあるカモに過ぎないのだ。

アル・ジョラーニはISIS*のニネヴェ首長であり、ジャバート・アル・ヌスラ*の首長であり、レバントにおけるアルカイダ*の最高首長であった。彼はたった一人で西側諸国が「テロ」に関して作り上げたプロパガンダのすべてを体現している。彼の信奉者たちは、彼が即座にシリアをイスラム首長国に変えなかったことにすでに激怒している。 * ロシアおよびその他多くの国々で禁止されているテロ組織

もし彼が4年後ではなく2025年に、新たに選出された議会、政府、大統領に権力を移譲しなければ、シリアに対する制裁解除はありえない。

米国(テルアビブは言うまでもなく)は、実際にはシリアが恒久的に混乱状態にあることを望んでいる。シリアの石油、ガス、小麦を盗む者と戦う安定した代表制政府など決して望んではいないのだ。

さらに、イスラエルとトルコのネオ・オスマン主義の正面衝突が迫っている。シリアを支配しようとするトルコの計画はせいぜい不安定なものである。米国はクルド人を手放さないだろう。トルコ外務省はすでに「軍事作戦」の可能性を検討している。それと並行して、シリアがペルシャ湾の君主国に完全に服従しない限り、アラブの資金がシリア再建に流れ込むことはないだろう。

すべては債務と工業生産に関わっている

もちろんBRICSは深刻な内部矛盾を抱えており、それを米国は利用しようとするだろう。イラン、UAE、エジプト、そしてサウジアラビア(サウジが会議に出席する場合)が、同じテーブルで合意に達しようと苦闘している。

それに加えて、ブラジルでは強力な反BRICSロビーが存在し、外務省内部にも抵抗の枢軸の強硬派支持者と大西洋主義者寄りの集団との間のイラン国内の対立を映し出すような国内の矛盾がある。

制度レベルで最も重要なのは、BRICSの最高レベルにおいて、またソフトパワーの分野においても、中国とロシアが平等、調和、人間開発に重点を置くことを強調し続けていることである。これは政治経済上の重要な価値観であり、グローバル・マジョリティーと完全に一致する。

米国からの容赦ない圧力があっても変わらないのは、BRICS諸国が並列の、真に民主的な国際関係システムを構築しようとしていることである。それは、NATOに対抗するBRICSを構築するという意味ではない。SCOでさえ緩やかな同盟として機能している。ウクライナにおける避けられない米国の敗北を受け、NATOはその政治的プロパガンダ部門であるEUとともに遅かれ早かれ崩壊するだろう。

マイケル・ハドソン教授は、またしても核心を突いている。{11} 問題の核心は対外債務である。「BRICS諸国が成長を遂げながら、過去100年間、特に1945年以降に背負わされた対外債務を返済することは不可能である」

これらのドル建て債券を保有しているのは、コンプラドール(外国の資本家に従属し自国内の商取引を請け負う商人)と少数独裁支配者エリートであり、彼らは「グローバル・サウス諸国とその寡頭制エリートは債務が返済できないことを理解しているため自国通貨を保有したいと思わない」。したがって、「BRICS諸国が成長するためには、債務を帳消しにしなければならない」し、既得権益と国益の衝突を解決しなければならない。

ハドソン教授は、国内の寄生虫を排除する必要があり、そうすればBRICSは「新たな国際貿易および金融構造を構築」できると断言する。 もちろん米国はカオス、政権交代、テロを駆り立てるために「地元の寄生虫たちと手を組む」だろう。

BRICSが経済に関する統一した哲学を打ち出す必要があるのは言うまでもないが、現実的に考えて、今後4年ほどでそれを達成しなければならないだろう。地経学の行方はすでに明らかになっている。2000年の初頭から、米国の工業生産は10%しか伸びておらず、2019年以降は文字通り0%である。

それと比較すると、2000年以降、中国の工業生産は1000%近く、インドは320%以上、ロシアは200%以上成長している。

先進国であるNATO加盟国は、コロナ以前の2019年以降、成長していない。西ヨーロッパは2007年から2008年をピークに成長が止まり、ドイツは2017年をピークに成長が止まっている。イタリアは非常に残念な状況で、工業生産は2000年以降、実際には25%減少している。

さらに付け加えると、米国はロシアと比較すると兵器生産においてまったく競争力がなく、極超音速やミサイル防衛に関しては、率直に言って笑えるほどである。

無秩序なカオスの帝国主義的な「戦略」に対抗するための、BRICS+およびグローバル・マジョリティーにとって実現可能なロードマップはあらゆる分野での統合を加速することである。つまり孫子の兵法を応用してトランプ2.0の動きのブローバック係数を増やすこと、ディープ・ステートの縦割り行政に一連の誤った決定を強いることである。

このようなアプローチは、BRICSが考案した「多様性こそ力」戦略と歩調を合わせて進めなければならない。そこでは、各国およびパートナーが、原材料、エネルギー資源、製造ノウハウ、ロジスティクス、そして何よりもソフトパワーという豊富な資源を共通のテーブルにもたらす。つまり、全体として、制御不能なカオスを解消できる新たな公平な秩序の輪郭が浮かび上がるのだ。

Links:

{1} https://www.amazon.com/Empire-Chaos-Roving-Eye-Collection-ebook/dp/B00OYVYD3G/ref=sr_1_1?crid=1R0FTD5089SYL&dib=eyJ2IjoiMSJ9.1ahJ_0-jC1XwN2Dg0T2jk-DX5AhD-IegnH2Iw3Q7taae3yd2hkLNIas39L6a9Vw6QSiCPDrqRA3BvGU8iPDZCSoLIEeazklhKU3ZNE_del-rgFvcndzgNFEevyeObfwvfNIVbRnwX4lfkABDwr3hU265vfaWrknJ3V4slzXvaXkNkpgjFm7dmUByobt_eK4sYtxteU1Tm_A9ebmP08LlsqXtqs5MoIjGHAt–VEggXU.F_n-XabrEUf1c5rGi4UOPlhFrj96rWhmKNkKP6M_KuA&dib_tag=se&keywords=empire+of+chaos&qid=1736270476&sprefix=Empire+of+Chaos%2Caps%2C171&sr=8-1

{2} https://foreignpolicy.com/2023/06/06/geopolitics-global-south-middle-powers-swing-states-india-brazil-turkey-indonesia-saudi-arabia-south-africa/

{3} https://sputnikglobe.com/20250105/de-dollarization-over-half-of-countries-worldwide-embark-on-boycott-of-greenback-1121360399.html

{4} https://sputnikglobe.com/20241028/pepe-escobar-brics-make-history—can-they-keep-the-momentum-1120707386.html

{5} https://sputnikglobe.com/20240705/pepe-escobar-why-the-sco-summit-in-kazakhstan-was-a-game-changer-1119251048.html

{6} http://ps.china-office.gov.cn/zxxx/202209/t20220921_10769306.htm

{7} https://www.lantidiplomatico.it/dettnews-leuropa_e_la_guerra_una_conversazione_con_il_filosofo_santiago_zabala_e_il_giornalista_claudio_gallo/5496_58521/

{8} https://sputnikglobe.com/20240118/how-the-west-was-defeated-1116245840.html

{9} https://www.youtube.com/watch?v=oTz0gnOM3NM

{10} https://sputnikglobe.com/20231023/what-do-we-know-about-the-axis-of-resistance-1114360533.html

{11} https://globalsouth.co/2025/01/05/michael-hudson-and-nima-from-dialogue-works-cracks-in-the-empire-is-the-american-superpower-fading/

https://www.unz.com/pescobar/empire-of-chaos-reloaded/