No. 2549 関税政策失敗後の米中関係を再考する

Rethinking US-China Relations After the Tariffs Shipwreck

by Mike Whitney

ドナルド・トランプ大統領が4月2日に大幅な関税を課したとき、主な目的は2つあった:
1 貿易赤字を削減する。
2 米国に雇用と製造業を取り戻す。

これらは公言された目標であったが、すぐにわかったように、本当の目的は中国が米国の消費者に商品を売らせないようにして中国を弱体化させることだった。トランプ政権はまた、関税を利用して北京との貿易を減らすことに合意した国にインセンティブを与えることで中国を孤立させようとした。要するに、関税は産業と技術生産のほぼすべての分野で米国を追い抜いた競争相手に対する貿易戦争の主要な武器だったのだ。

幸いにも、トランプの計画は失敗し、目的を達成することなく関税の緩和を余儀なくされた。「幸いにも」と言うのは、関税政策が決して米国民の利益に資するものではなかったからだ。それどころか、国際貿易のルールを無視し、不必要にサプライチェーンを混乱させる一方的な政策によって米国人は傷ついている。物価を押し上げ、雇用を減らし、成長を鈍らせただけだ。その上、ライバルを潰す目的で関税を操作することは、広く受け入れられている世界貿易機関(WTO)のルールに違反している。

米国とは対照的に、中国は独自の社会主義解釈に根ざした広範な社会哲学に沿った行動をとった。彼らは道徳的な立場を主張し、原則に基づいて行動し、トランプの強要に屈することを拒否したのだ。中国は、各国が恣意的に「拘束税率」を超過したり、145%の関税(これは禁輸措置に相当する)を一国に選択的に課すことはできないと規定する関税貿易一般協定(GATT)に明記されたルールを完全に無視したトランプの関税の電撃措置に対して、対抗措置を開始したに過ぎない。トランプは単独で行動することで基本的に国際システムや自身の権力に対する法的制約を侮蔑していることを示した。『グローバル・タイムズ』の記事より:

 WTOを中核とする多国間貿易システムは国際貿易の要であり、グローバルな経済ガバナンスにおいて重要な役割を果たしている。すべての当事者はWTOの枠組みの下、対等な対話を通じて相違や紛争を解決し、多国間主義と自由貿易を共同で支持し、世界の産業とサプライチェーンの安定と円滑な機能を促進すべきである。{1}

言い換えれば、トランプの敗北は国際貿易システムの勝利であった。しかし中国にとっても勝利だった。なぜなら中国は信念を曲げず、ワシントンのいじめに屈しなかったからである。以下はブルームバーグの記事:

習近平がドナルド・トランプに対抗するために下した決断は、中国の指導者としてこれ以上良いことはないだろう。

 スイスでの2日間に及ぶ交渉の末、世界最大の経済大国の貿易交渉担当者たちは月曜日、関税の大幅撤廃を発表した。慎重に調整された共同声明で米国は90日間、中国製品に対する関税を145%から30%に引き下げ、北京はほとんどの商品に対する関税を10%に引き下げた。

 中国の予想を上回る劇的な引き下げはドルと株価を急騰させ、国内でのインフレが加速しそうでプレッシャーに直面しているトランプにとって待望の市場救済となった。中国株も急騰した。今回の合意は、北京の核心的な要求をほぼすべて満たすものとなった。トランプが4月2日に34%に設定した中国に対する「相互」関税の引き上げは一時停止され、米国の最大のライバルで長年の同盟国であるイギリスに適用されるのと同じ10%となった。

 調査会社トリビウム・チャイナの共同設立者であるトレイ・マッカーバーは、「これは間違いなく、中国が望みうる最高の結果だ。これから中国側は米国とのいかなる交渉においても優位に立てると確信するだろう。」{2}

これは米国が引き下がるという、中国が望み得る最高の結果だったのだ。

米国の対中政策は不道徳極まりないだけではない。それは逆効果でもあった。最近の出来事を海外の報道で追った人なら誰でも米国がそのいじめっ子戦術によって自らをひどく傷つけたことを理解している。米国外の人々が見たのは、老齢で衰弱した賞金稼ぎのボクサーがリングに上がり、獰猛な若手候補に第1ラウンドでノックアウトされる姿だった。6週間足らずのうちにトランプは関税の大部分を撤廃し、彼の支援者の前で面目を保つためにわずか30%を残した。それと引き換えにトランプは中国から何も得られなかった。北京は、トランプが中国からの輸入品に対する関税を20%から30%に引き上げることを認めた以外には何の譲歩もしなかった。これは、トランプの熱烈な支持者であるブルーカラーの男女が、お気に入りのデパートでさらに10%を支払うことを意味する。つまり、トランプ大統領は超富裕層には大規模な減税を約束しているが労働者は10%も増税されたのだ。以下は『ガーディアン』からの記事:

ドナルド・トランプは月曜日の米中貿易戦争の一時休戦を勝利と主張するのはまちがいないが金融市場はそれを屈服と読んでいるようだ。

 つまりトランプは降参したのだ。彼は市場の動揺に動かされたのかもしれないが、それよりも、小売業者からの棚が空っぽになるという悲痛な警告が、米国の港への出荷量が激減しているというデータに裏打ちされ、政権内の貿易穏健派の手を強くした、という方がもっともらしく思える。

 おもちゃが足りなくなるという警告に対してトランプは記者団に、子どもたちは「30個の人形ではなく2個の人形」で満足するはずで、通常より少し高くなるかもしれないと語った。しかしこの最も強気な大統領でさえ、世界最大の経済大国におけるコロナの時のように主要商品不足の責任が自分にあると見なされ始めたら、襲いかかる攻撃に耐えられるとは考えにくい。

 その代わりに、ホワイトハウスは戦術的撤退を選んだようだ。中国と米国の対立はトランプの貿易戦争において常に最もホットな対立の舞台であり、メキシコやカナダに対する奇想天外な攻撃よりも歴史が長く、国民からの支持も厚かった。

 トランプが本当に北京に譲歩する用意があるのなら、彼の通商政策の他の攻撃的な側面のいくつかは交渉の余地があるかもしれないというシグナルを送ることになる。トランプは中国関税の勝利を主張するかもしれないが、これは降伏の日だ、ガーディアン{3}。 

トランプが表明した目標(貿易赤字の削減、雇用と製造業の米国回帰)に関して、大統領は両方とも失敗した。しかし、明言されていない目標(中国の弱体化と孤立化)についても失敗におわった。大統領が失敗した理由は3つある:

  1. 中国は多様化することで世界的な貿易の流れを維持することができた(米国向け輸出品の他の買い手を見つけた)。
  2. 中国は財政刺激策や政府介入の必要性に素早く対応した(その結果、成長目標を維持することができた)。
  3. 中国は輸出を控えることで米国に深刻な痛みを与えることができ、そのため西海岸の港は深刻な苦境に陥った。

中国が成し遂げたことは想像できる限り完全勝利に近い。それでも、和解が発表された直後から株式市場は急騰したためトランプの恥ずかしい失態は誰も気にしていないようである。

関税騒動で奇妙だったのは、トランプ陣営が中国の報復反応を予想していなかったことだ。これは実際驚くべきことだ。トランプ政権は情報バブルの中に生きているので、中国が滑稽な「解放の日」の発表の後、屈服すると思っていたのだ。彼らは何を考えているのだろうか?

スコット・ベッセント財務長官が何を考えていたか我々は知っている。彼は何度も公の場で、『我々は赤字国である』から米国は中国より有利だと発言していた。CNBCのインタビューでの発言:

「我々は赤字国だ。中国は米国にわれわれが彼らに売るよりもほぼ5倍多くの商品を売っている。だから、関税を撤廃する責任がある。彼らにとっては持続不可能なのだ」。彼は、関税が続けば中国が500万から1000万人の雇用を失う可能性があるという試算を引用し、中国の経済的脆弱性を強調した。

 これは実に愚かだ。街角のボロをまとった物乞いが、銀行に何百万ドルも預けている裕福なビジネスマンより有利だと言っているようなものだ。米国は36兆ドルの負債を抱えているが中国は3兆ドルの黒字なのだ!「無一文であること」がどうして「有利」になるのだろう?中国がいまだに我々の通貨を受け入れてくれているのは幸運なことだ。それなのに財務長官は貧乏であることが米国に「優位性」をもたらすと考えている。こんな男は財務長官になるべきではない。彼は経済がどのように機能しているのか、どのような政策が米国の利益向上に役立つのかまったくわかっていないことを何度も示してきた。ベッセントについてのGrokのコメント:

ベッセントの公の発言は、中国の経済的脆弱性や最終的なジュネーブ協定に支えられた米国の赤字状況を交渉の優位性として戦略的に利用している。しかし、中国の東南アジアへの輸出シフト、積み替え戦術、国内経済の回復力は、彼が北京の関税を乗り切る能力を過小評価し、米国の優位性を制限していることを示唆している。両国はコストに直面したが、中国の適応能力は赤字の優位性がベッセントの主張ほど決定的ではなかったことを意味する。(Grok)

これはベッセントがすべてにおいて間違っていたということをかなり長ったらしく述べているにすぎない。

トランプが米国経済にさらなるダメージを与える前に「関税戦略」を断念したことに我々は感謝しなければならない。ここ数週間の出来事を反省し、ワシントンの自滅的な対中関係を真剣に考え直してくれることを願うばかりだ。西側のエリート、メディア、そして政治家全体の一致した見解は、中国の台頭は世界秩序における米国の特権的地位に対する重大な脅威であるというものだ。この誤った思い込みが米国の対中政策を形成し、我々を軍事的対決へと向かわせるのだ。我々はこの破壊的な考えを根源から根絶し、安全保障の改善、繁栄の拡大、戦争の終結に役立つプロジェクトで中国と協力できる建設的な方法を探さなければならない。

中国は我々の敵ではないし、米国と対決を求めているわけでもない。中国が望んでいるのは、多くの普通の米国人が望んでいること、すなわち平和と安全、そして「オープンで包摂的、クリーンで美しい世界で未来を共有する人類共同体」なのだ。こられは中国の習近平首相の言葉だ。彼の言葉は、ジョン・F・ケネディ大統領の力強い言葉を思い出す年配の読者にはなじみがあるかもしれない:

結局のところ、私たちの最も基本的な共通点は私たち全員がこの小さな惑星に住んでいるということだ。私たちは皆、同じ空気を吸い、子供たちの未来を大切に思い、そして私たちは皆、死すべき存在なのである。

You Tube – ジョン・F・ケネディ、アメリカン大学での卒業式演説「平和への戦略」:

https://youtu.be/RclaV_3_eOA

Links:

{1} https://www.globaltimes.cn/page/202505/1333905.shtml

{2} https://www.swissinfo.ch/eng/xi-defiance-pays-off-as-trump-meets-most-chinese-trade-demands/89307014

{3} https://www.theguardian.com/us-news/2025/may/12/trump-china-tariff-victory-capitulation-day

https://www.unz.com/mwhitney/rethinking-us-china-relations-after-the-tariffs-shipwreck