Peter Thiele and Vladimir Ilyich Lenin – Apostles of Two Economic Orders (Part 2)
歴史的視点から見た米国と中国経済を理解する
by Hua Bin
パート1では、欧米における産業資本主義初期の市場と競争が、今日の米国政治経済を支配するシリコンバレーのテック・金融エリートたちの精神的指導者であるピーター・ティールが提唱する「最大資本主義的利益(別名:株主価値)」の追求のもとで独占的金融資本主義へと変質した経緯を概説した。
ティール自身の富への道程は技術と金融オリガキーの融合を象徴している。彼は2002年にPayPalをeBayに売却して最初の富(5500万ドル)を得た。その後、この比較的控えめな金額を元手に、Facebook、LinkedIn、スペースX、パランティア、OpenAIへの投資を通じて約230億ドルの純資産へと増やした。彼は主要なビットコイン採掘企業であるビットマインの最大株主の一人でもある。
ティールはシカゴ大学の経済史学者ジョナサン・レヴィが著書『アメリカの資本主義の時代』で提唱する「資産価値上昇資本主義」の台頭を体現している。
資産価値上昇資本主義とは、土地や金融商品といった資産価値の上昇を通じて、商品の生産ではなく価値が創出・蓄積される富の形成形態である。
米国が産業中心の資本主義から金融市場が富の創出と分配の中心となる資本主義へ移行するにつれ、「富を得る」とは労働や生産による新たな富の創造ではなく、所有資産の価値を高めることに他ならなくなった。
所有者階級の富の増加は、労働者、さらには高度な技能と高収入を得ている専門職の所得増加をはるかに上回る。その結果、富と権力の極端な集中(あるいは独占)と極端な不平等が生じる。
ソビエト連邦の創設者であり、略奪的な金融資本主義を鋭く批判したウラジーミル・レーニンはこのような独占的資本主義が、高度に金融化され寄生的な帝国主義形態へと進化し、世界覇権を追求することを正確に予測した。
レーニンの弁証法的唯物論に基づく分析は、今日の変容する世界秩序を定義づける米中間の根本的対立を完璧に描いている。
米国とは対照的に、レーニンの政治経済学を学んだ中国は、習近平国家主席の下で全く異なる道――社会主義市場経済――を選択した。
習主席は就任当初から「実体経済」(特に製造業)の育成、競争促進、ハイテク・不動産寡占勢力の取り締まりに注力してきた。こうした政策の目的は、中国が金融化され空洞化したレント経済に陥るのを防ぐことにあった。
中国は米国のように連邦準備制度のような民間金融勢力に支配されるのではなく、国家が信用・金融政策を掌握する方針を堅持した。
中国のモデルは金融資本主義に対するレーニンの警告を参考にしているが、ソ連の中央計画モデルからは進化している。
現在の中国の政治経済は、ハミルトン型経済政策と独自の歴史的伝統に基づく革新の組み合わせである。具体的には、トップダウンの戦略的指導下での地方分権的実行、官僚の能力主義的業績管理、そして過度に競争的な民間部門が含まれる。
この経済的革新の一例は、経済学者Jin Keyuがその著書『New China Playbook』 (2023)で「Mayor Economy(
市長経済)」と呼んだものである。これは地方都市が主要戦略分野で地域チャンピオン企業を育成・成長させる権限を付与される仕組みを説明している。今日の中国モデルはしばしば「資本主義や社会主義を超えたもの」と呼ばれる。
この形態の政治経済の特徴は「市場ベースの国家産業資本主義」だと言える。興味があれば、私の論文『中国産業成功の秘訣』(https://huabinoliver.substack.com/p/the-secret-sauce-of-chinese-industrial)を参照してほしい。
このように異なった経済を選択した結果、中国は競争によって「「Economy of Abundance(豊かさの経済)」(不足を前提とした経済学とは異なり、技術進歩(AI・自動化・再生エネルギーなど)によって資源や財・サービスが豊富になり、人々の基本的なニーズが低コストで満たされる社会)になりつつある。その一方で米国は独占企業が寄生的な利益を搾取することで「Economy of Scarcity(希少性の経済)」(資源や財・サービスが有限である(=希少である)ことを前提とした経済システム)へと転落している。
その兆候は至る所に見られる。
中国の過剰生産能力
よく批判される「中国の過剰生産能力」は、実は完全な市場競争の証であり、豊かさの表れである。
純粋な投資収益率の観点では、多くの中国産業は過剰投資し、短期的には高いリターンを生み出せていないかもしれない。しかし別の視点では、中国は将来の需要を見据えて建設しているということだ。対照的に、西側の企業は既存の需要に応えるためだけに建設し、レジリエンス(回復力)のための余裕をほとんど持たない。
一つの例が発電容量である。北京は40年以上にわたり、太陽光・風力・水力から原子力に至る伝統的および再生可能エネルギー開発に巨額投資してきた。結果として、中国の現在の発電量は米国・欧州・日本・インドの合計を上回る。
中国の年間電力需要増加量はドイツ全土に匹敵するが、中国は毎年ドイツ2国分に相当する新規発電容量を建設している。
電力生成のサプライチェーンにおいて、コンデンサーは電気エネルギーを蓄積し、供給の変動を安定させるために重要な役割を果たしている。中国は、全体のグローバルコンデンサー市場で50%のシェアを持ち、支配的な地位を占めている。一方、アメリカはこの重要なコンポーネント市場でわずかなシェアしか持っておらず、電力生成の拡大においてさらなる障害となっている。
中国は大規模AI展開に伴う電力需要増に対応する上で他国より優位にある。世界最大かつ最速で成長するグリーン・原子力発電容量と、最大級の超高圧送電網を保有しているからだ。
国家エネルギー局の報告によれば、猛暑による需要増で2025年7月に中国の電力消費量は1兆キロワット時を突破した。
これは前年比8.6%の増加で、ASEAN諸国の年間電力消費量に相当する。これほどの需要急増を電力系統の過負荷なく賄える国は他にない。
中国の「過剰生産能力」は需要変動への対応を容易にしている。
西側の生産能力不足はこれと対照的である。NATOのマーク・ルッテ事務総長によれば、NATO加盟国全体の年間弾薬生産量は、ロシアの3ヶ月分にも満たない。NATOの総GDPがロシアの25倍であるにもかかわらずだ。
ガーディアン紙によれば、米国とイスラエルはイランとの12日間の戦争で、米国が保有するTHAAD迎撃ミサイルの全備蓄量の25%を消費した。イランは当時400~500発のミサイルを発射したが、その多くは旧式備蓄品だった。シオニスト国家イスラエルは防空能力が枯渇寸前となり、和平を訴えざるを得なかった。
米国防総省は、全戦争計画に必要なパトリオット防空迎撃ミサイルのわずか4分の1しか保有していないことを認めている。そのためウクライナとイスラエルの間でこれらの迎撃ミサイルを配分せざるを得なかった。
イランは経済制裁が数十年に及ぶ中で限られた防衛生産基盤しか持っていない。そのイランが2週間足らずで米・イスラエルの防空網を消耗させられるなら、ランド研究所の戦争シミュレーションによれば、台湾戦争の初月だけで中国が1日2000発のミサイル集中攻撃を可能とする状況下で、米国とその従属国が中国とのハイエンド紛争を持続できるはずがない。
米海軍は中国の造船能力は米国の240倍であるとはっきり認めている。消耗戦になれば中国は米国の10倍規模の戦時生産能力を動員できる。
戦争シナリオで米軍の作戦立案者が「過剰生産能力」の問題を抱えていれば彼らは大喜びするだろう。
AIの構築
AI覇権をめぐる世界的な争いが米中テクノロジー企業間で起きている。米国企業はチップ禁輸による計算能力の優位性を有する一方、中国企業はソフトウェア最適化と限られた計算資源の効率的活用に注力している。
両国は製品戦略と市場戦略においても異なる道を歩んでいる。米国のAIリーダー企業——OpenAI、Google Gemini、xAI(Grok)、Anthropic Claude——はいずれも高価格の独自クローズドシステムに注力し、LLMからの収益最大化と巨額投資に対する高リターン追求を図っている。
市場はこれらの企業が世界AI市場を独占すると完全に予想しており、天文学的な評価額で報いている。例えばOpenAIは2024年の収益がわずか55億ドルで数十億ドルの営業損失を出しているにもかかわらず、評価額は5000億ドルである。OpenAIのCFOは収益が1250億ドルに達するまで利益が出ないと認めている。
一方、中国のEC・AIリーダーであるアリババの時価総額は2800億ドルでOpenAIの半分である。しかしアリババは2024年に1300億ドルの収益を上げ、OpenAIの20倍以上であり、純利益は110億ドルである。
中国のAIリーダー企業は「オープンソースかつオープンウェイト」戦略を選択している。これは米国の独自クローズドシステムとは正反対である。彼らの目標は世界中のユーザーと開発者に無料のフロンティアモデルへの完全なアクセスを提供することだ。
最も著名な中国AIモデル、DeepSeek R1、Moonshot AI Kimi K2、Alibaba Qwen3、Z.ai GLM4.5、MiniMax M1 は全てオープンソースかつオープンウェイトである。
これらのAI企業はLLMをオープンソース化することでコスト効率が良く、透明性・制御性が高く、自社のニーズに合致し自社データや営業秘密を保護できるAIモデルを求めるユーザー層へ、AIの利用と応用を広く拡大しようとしている。
中国AI業界は短期的な利益よりも広範なアクセスと普及を優先している。彼らの長期戦略は、使用料や推論処理の課金ではなく、アプリケーション支援やカスタマイズサービスを通じて投資を回収することだ。
中国AI企業は最先端AIモデルを独占するのではなく、大規模基盤モデルをコモディティ化し、主にこれらのモデル上に構築される付加価値アプリケーションやイノベーションを通じて投資回収を図ろうとしている。
米国AI企業が市場独占と依存関係の構築を目指す一方、中国AI企業はアクセスの民主化と真のデジタル主権を実現しようとしている。
この結果、即座に圧倒的な成果が現れた。2025年1月のDeepSeekリリース以降、数多くの高性能な中国AIモデルが「オープンソース・オープンウェイト」で登場している。それらの性能はベンチマークテストにおいて、主要なプロプライエタリモデルに匹敵し、時にはそれを上回る。
シリコンバレーのベンチャーキャピタルa16z(旧アンドリーセン・ホロウィッツ)のジェネラルパートナー、マーティン・カサドによれば、資金調達を求めるAIスタートアップの80%が中国のオープンソースフロンティアモデルを採用している。
カサドやアレンAI研究所のアリ・ファルハディら多くの業界関係者は、中国が今後広範なAI応用分野を主導する可能性が高いと予測している。
住宅危機とインフレ
現在、中国と米国はともに住宅危機に直面している。中国の住宅危機は供給過剰による価格下落が特徴であるのに対し、米国の危機は供給不足による家賃・住宅価格の高騰が特徴である。
中国では住宅価格の下落が資産価値を減らし消費を抑制したが、住宅の入手可能性は大幅に改善した。一方、米国ではブラックストーンのような金融資本家が住宅市場を独占している。ピュー・リサーチ・センターによれば、米国の平均的な世帯は可処分所得の30%以上を家賃や住宅ローンの支払いに充てている。
中国の消費者物価指数(CPI)に基づくインフレ率はここ数年ほぼゼロに近い。中国の消費者はコロナ禍の最悪期でさえ物価上昇を経験しなかった。住宅やほとんどの物理的商品は5年前よりも安くなっている。対照的に、インフレは欧米、特にアングロ圏で確固として定着しているようだ。
非常に不誠実な「コアCPI」指標で測定した場合でさえ、2025年7月の米国のインフレ率は3.1%だった。真のインフレ、つまり「財布のインフレ」ははるかに高い。
金融メディアで目にする「公式」インフレデータは通常「コアCPI」を指す。しかしこの計算では都合よく食品・エネルギー・交通・住宅が除外されている。表向きは変動要因を除去するためだが、実質的には家計レベルで実感される最重要ニーズにおける真のインフレを過小評価している。
市場競争
自動車から飲食店まで、中国は圧倒的に供給過剰であり、それが市場競争を激化させた。この競争が価格低下と消費者余剰の拡大をもたらした。
企業利益は確かに減少しているが、ピーター・ティールが正しく指摘したように、完全競争は資本家の利益低下を必然的に招く。これが自由市場の定義であるなら、市場に魔法を働かせればよいではないか。
米国でははるかに競争レベルが低いため生産能力が低下し、したがって希少性が高まり、食品・家賃・教育・医療に至るまで消費者向けのインフレが持続している。
ほとんどの産業を見渡せば、中国のほうがはるかに米国より競争が激しいことがわかる:
– スマートフォンでは、ファーウェイ、シャオミ、オッポ、ヴィヴォ、ホナーがAppleやサムスンと競合している
– EV(電気自動車)では、BYD、ジーリー、チェリー、ニオ、リーモーターズ、MG、シャオミ、アイトがテスラやVWと競合している
– 中国では60社以上の航空会社が運航しており、上位3社の合計市場シェアは40%未満である。一方米国では大手4社が75%の市場シェアを支配している
– 2025年初頭時点で中国には150の稼働中の造船所がある。米国で新しい船を生産しているのは2社のみである(ジェミニ社調べ)
企業、特に独占企業は利益を拡大し、株価や時価総額も上昇しているが、富の分配は極めて不均等で資本家階級が繁栄の大部分を独占している(「株主」という婉曲表現の下で)。
ガソリンと車の価格比較のポスター
競争は企業間だけではない。中国では地方政府がハイテク拠点の整備と人材誘致を推進する中で、都市間でも激化している:
– 杭州と深圳はAIとロボティクス分野で競合
– 重慶と合肥はEV分野で競合
– 蘇州と成都はバイオ医薬
– 貴州と広西はデータセンター
– 上海と大連は造船
– 成都、瀋陽、西安は航空宇宙・軍用ジェット・ドローン
各地方政府は企業が生産拠点・研究開発センター・地域密着型サプライチェーンを構築できるよう、優遇措置とインフラを提供している。成功は地域経済を変革するだけでなく、地方幹部の業績評価や昇進にも決定的な役割を果たす。
合肥の市長は全国的な注目を集め、同市が合肥国家ハイテク産業開発区の推進により過去10年間で後進地域からEV、太陽光発電、半導体、液晶、量子技術といったハイテク産業の活気ある拠点へと変貌したことで、国家指導部への急成長コースに乗っていると広く噂されている。
固定資産・インフラ投資
中国の「豊かさの経済」を示すもう一つの兆候は、固定資産資本投資の分野にある。数十年にわたり、中国は工場、道路、高速鉄道、港湾、電力網、通信インフラに至るまで、増分的な新規生産能力を創出するために数兆元を投資してきた。
世界の高速鉄道総延長6万キロのうち、4万8千キロは2008年以降に中国で建設された。中国は2030年までに国内高速鉄道網を6万キロに拡大する計画で、最近西江・チベット高速鉄道の建設を開始した。
世界の高架橋トップ20のうち18橋が中国にある。コンテナ取扱量トップ10港湾のうち7港が中国にある。米国最大のコンテナ港であるロサンゼルス・ロングビーチ港は17位で、中国北部の大連港に後れを取っている。水力発電ダムトップ10のうち4基が中国にある。
2024年時点で、中国は世界のEV生産の70%、ジェネリック医薬品の基幹原料(KSM)と医薬品原薬(API)の80%、太陽光パネルの80%、バッテリーの77%、鉄鋼とセメントの50%超、精製レアアースの90%を占めた。
世界銀行によれば、2024年時点で中国の製造業生産高は世界の36%を占め、米国の12%を大きく上回る。中国の製造業シェアは米国・EU・日本を合わせた規模を上回っている。
中国の資本投資の大半は国有銀行が資金調達を担っている。銀行は国民の豊富な貯蓄を市場と政府の双方の指導のもとで生産的産業へ導いている。
2000年代の不動産への盲目的な過剰投資のような行き過ぎは確かに存在するが、大半の資源配分は合理的かつ生産的だ。ハイテク製造業に焦点を当て驚異的な成果を上げた「中国製造2025」構想の10年にわたる取り組みが好例である。
こうした投資は生産性の大幅な向上をもたらし、中国を将来の技術革新の最先端に立たせた。
北京はまた、投機的な住宅バブルに見られるように、市場が絶対ではないことも学んだ。適切なバランスを実現するには政府の介入が必要なのである。
一方、米国や西側諸国では大規模なデータセンターや関連する発電設備の建設を伴う進行中のAIブームを除けば、資本投資は停滞している (ChatGPT 5の期待外れのローンチが示す通り、これも近いうちに崩壊するバブルだろう)。
資本投資の大半は既存設備に向けられ、それは主にM&Aや自社株買い、公益事業の民営化といった所有権移転のためである。新たな生産能力の増強はほとんど進んでいない。
ジョージ・W・ブッシュ政権以降、歴代米政権が掲げる「アメリカのインフラ再建」公約や、トランプ1期政権下でほぼ毎週行われた「インフラ週間」にもかかわらず、老朽化した高速道路、鉄道、港湾、橋梁、電力網の再建に実質的な投資はほとんど行われていない。
米国土木学会(ASCE)の推計によれば、2023年時点で全国に約77,800の橋梁が構造的に欠陥を抱えている。
Appleが6000億ドル規模の国内投資を発表した際、私は同社が具体的にどのプロジェクトに資金を投じるのか調べてみた。具体的な計画は次の3点のみである:1)デトロイトの製造アカデミー、2)ヒューストンの新AIサーバー工場、3)MPマテリアルズ社からの米国産レアアース調達。
製造アカデミーとレアアース調達は大規模な設備投資プロジェクトとは言えない。AIサーバー工場も、いかに壮大であろうと数十億ドル規模にはならないだろう。TSMCが建設した最先端の半導体ファウンドリ(おそらく製造プロジェクトとしては最高額)でさえ約200億ドルだ。
ティム・クックが30基の最先端3nmファウンドリ建設でも計画していない限り、Appleが提示したこれらの小規模プロジェクトが6000億ドルに達するとは想像しがたい。ちなみに確認したが、米国ではiPhoneもMac Airも製造される計画はない。
もしクックが嘘をついていないなら、Appleはどうやってそんな天文学的な金額を投資できるのだろうか?Googleジェミニで簡単に検索すれば答えはすぐにわかった。「アップルは2012年以降、自社株買いに9450億ドル以上を費やしており、直近では2024年5月に1100億ドル規模の大型買い戻し計画を承認した。これには2024年3月31日までの12ヶ月間で記録的な818億ドルの買い戻し、および2025年6月までの過去10年間で6977億ドルの数字が含まれる。」
おそらくティム・クックは「アメリカを再び偉大に」というトランプへの貢献として約束を果たすためにさらに数百億ドル規模の自社株買いを行うのだろう。
同様に、米国大企業が投資を発表する際、新規設備投資(グリーンフィールド)は稀である。むしろ株式買い戻し、レバレッジド・バイアウト、民営化取引といった所有権移転型取引がほとんどである。問題は、株式買い戻しは雇用を創出せず、生産能力にもつながらないということだ。
中国における外国直接投資(FDI)の役割を誤解から解き放つ
中国の発展について欧米で広く見られる誤解の一つは、その成長が欧米諸国、特に米国からの大規模な外国直接投資(FDI)の産物、というものがある。米国の政治家の話を聞いていると、中国の発展は米国企業が工場を移転したおかげであるかのような印象を受ける。
確かに貿易とFDIは中国経済の離陸初期段階で重要な役割を果たしたが、FDIは中国の産業能力やインフラ投資の主要な原動力では決してなかった。
米国からのFDIは中国への総FDI流入量の15%未満で、香港やシンガポールに大きく後れを取っている。
Grokの推計によれば、過去40年間の中国への総FDIは3兆6600億ドルである。米国による中国への累積直接投資総額は5000億ドルである(これに対し、中国が保有する米国債は7500億ドルで、これは中国による米国への投資に相当する)。
この数字を文脈で捉えると、中国における過去40年間の累積GDPは208兆ドルである。また、同期間の累積固定資産投資(資本形成)は89.5兆ドルである。
外国直接投資(FDI)は過去40年間の資本形成の約4%を占め、うち米国からのFDIは0.55%である。
中国のGDPに占めるFDIの割合はBRICS平均を下回り、大半のEU諸国よりも低い。むしろ米国に近い水準だ。Grokの分析によれば、中国も米国も他の主要経済圏より貿易・FDI依存度が低く、より内需主導型の経済構造になっている。
FDIではなく、中国の国内貯蓄こそが同国の投資と成長を牽引してきた真の原動力なのだ。言い換えれば、中国人の「消費不足」が資本形成を支えてきたのである。
銀行の役割
経済学の教科書では、銀行は伝統的に企業投資の資金源とされている。実際、国有銀行は中国の固定資産投資やインフラ整備の大半を融資している。銀行は国内貯蓄を新たな生産機会へと導く。
しかしマイケル・ハドソン教授が指摘しているように、今日の欧米の銀行は担保、つまり既存資産を条件にしか融資しない。高リスクな新規生産能力への融資業務はもはや行っていない。
ある分析によれば、米国における工場や在庫への事業投資の85%以上は、内部留保や新規株式発行に由来している。
欧米の銀行は、レントシーキングの機会を生み出す不動産や既存企業のM&Aへの融資を好む。前述のように、プライベート・エクイティ(PE)のハゲタカたちは銀行融資を梃子に、低所得者向け住宅、トレーラーパーク、公益事業、証券化された学生ローン、老人ホーム、さらには刑務所まで買い占め、最大限の搾取を図っている。
数十億ドル規模のPE取引の大半では、サービス容量や品質向上のための増分投資はほとんど行われない。金融業者は単に負債を積み上げ、資産を所有者間で移動させ、その過程で自らを肥やすのである。
最も収益性の高い取引は、ボトルネックあるいは通行料金道路のような投資であり、金融業者がレントシーキング(収益追求型)のビジネスモデルを確立できる分野である。理想的には、学生、受刑者、高齢者などの囲い込まれた顧客基盤を有する事業が該当する。こうしたハゲタカ金融資本主義の実例研究としては、ブレンダン・バロウ著『略奪:アメリカを略奪するプライベート・エクイティの計画』が優れた参考資料である。
中国の生産能力・研究開発・インフラ投資が経済のボトルネックを解消し豊かさの創出を目指すものだとすれば、西側の金融資本家たちの取っている行動は正反対である。なぜなら希少性を維持することが、最高のリターンを確保する最良の方法だからだ。
文字通り、金融資本家たちは現代の逆ロビン・フッドである。
今日のこうした金融化された経済は、もはやアダム・スミスが描いた資本主義ではない。富の創造は、より生産的でリスクを伴う起業家精神によるのではなく、所有権の移転を通じて行われている。
金融化は、労働者や国家の繁栄よりも投資利益率のみに関心を持つ株主のために富を蓄えることを基盤としており、米国製造業を殺した主因なのだ。
その結果は明白である。米国経済はますます「希少性のレント経済」へと変質し、そのコストは消費者が負担している。
結論として、中国がここ数十年で成功を収めた要因は、生産経済を構築し、広範な共通繁栄を実現するという意図的な政策選択に由来する。中国の経済モデルは市場を基盤としつつも、戦略的指導や資源配分において政府が高い水準で関与する国家資本主義である。
これは、19世紀後半に米国経済が飛躍する原動力となったハミルトン型経済プログラムの要素と、ソ連に触発された社会主義の要素を融合した混合モデルである。中国の歴史的伝統に根ざした能力主義的ガバナンスもまた強く反映されている。
もちろん、政治経済のモデルに静的で普遍的なものはない。中国モデルは今後も進化を続け、より公平な分配と富の創出が両立する社会主義モデルへと向かうだろう。
中国モデルの究極の貢献は世界に別の道を示したことにある――全面的な西洋化を伴わなくとも近代化は可能であり、繁栄は西洋で実践されている金融資本主義のみからもたらされるわけではない、ということを実証したのである。
https://huabinoliver.substack.com/p/peter-thiel-and-vladimir-ilyich-lenin