No. 2667 トランプは中国との間で重大な核の過ちを犯した

Trump Just Made a Massive Nuclear Mistake with China

by Cyrus Janssen

 米国は制裁においてまたもや失敗を犯した。中国の原子力産業への米国の制裁が裏目に出て、今や中国に競争優位性を与え、世界の未来にとって最も重要な分野の一つを中国に譲り渡したのだ。これは1960年代のソ連と米国の宇宙開発競争のようなものである。

今、競争の焦点は原子力発電に移った。米国も中国も、今後数十年で原子力エネルギーを急速に発展させるという野心的な目標を掲げている。米国エネルギー省は昨年、2050年までに原子力発電容量を3倍に拡大する意向を表明した。一方中国は、2040年までに原子力発電容量を2倍に拡大すると発表し、増強を進めている。

気候変動やエネルギー安全保障への懸念から、世界中のほとんどの国が将来の主要な電力源として原子力エネルギーに目を向けている。しかしここで興味深い展開がある。7年前、米国は中国を標的にし、中国の原子力産業に対する制裁を可決して中国の進歩を阻止しようと決めた。米国が中国に対して制裁を発動する時はいつも「国家安全保障上のリスク」という名の下で行われる。米国政府がTikTokを標的にした時も国家安全保障上のリスクを理由に挙げた。米国政府が中国製EVの輸入を禁止した際も国家安全保障リスクを警告した。国防総省でさえ報告書を作成し、米国内の港湾で使用される中国製貨物クレーンが潜在的な国家安全保障上のリスクとなり得るとした。米国における反中論調はもはや滑稽な域に達している。中国製の単純な料理用エアフライヤーでさえ一部のアナリストは鶏肉を調理中にデータを北京に送信すると信じているのだ。

原子力のような複雑な分野では、産業発展に必要なのは偏執ではなく協力である。世界原子力協会のビルバオ・イ・レオン事務局長の発言を聞いてほしい。「原子力産業はグローバルなものであり、各国が協力し、ベストプラクティスと教訓を共有することを望む。多くの国が原子力発電容量を3倍、いや4倍に拡大しようとしている。だがこの目標達成にはサプライチェーンと産業能力の再構築・再統合が必要となる」。つまり彼女が言いたいのは、世界が原子力へ移行するなら、各国が協力しなければ実現不可能だということだ。中国に対する米国の制裁にもかかわらず、中国は原子力産業で世界をリードしている。彼女が本質的に言っているのは、世界が原子力エネルギーへ移行するならば、それは各国が協力して初めて可能だということだ。新たな報告書によれば、米国は原子力分野で中国に15年遅れているという。そしてこの点については正直に認めざるを得ない。中国は確かに称賛に値する。米国が技術を先駆けてからほぼ40年遅れて最初の原子炉の建設に着手したにもかかわらず、中国は今や他のどの国よりもはるかに多くの核分裂発電所を建設している。2022年以降、中国政府は毎年約10基の新規原子炉を承認しており、このペースでいけば2030年までに米国を追い抜き世界最大の原子力発電国となる見込みである。

米国政府の意図は常に中国の成長を阻止することにあった。だが現実的に見て、STEM分野の卒業生数が世界最多の中国を止めることなど不可能だ。SCMPの最新記事を見れば、米国の対中核制裁が逆効果となった事実が明らかである。国家安全保障上の懸念からワシントンが課した厳格なブラックリスト規制により、北京は自給自足へと追い込まれた。これが驚くべき成果を生んだ。米中関係で繰り返し起こる典型的な事例である。米国政府は中国に対する優位性を得ようとしている。そのため、中国の台頭を封じ込めるべく、中国が重要技術にアクセスするのを制裁する計画を練る。だが文字通り、米国政府がこの手口を繰り出すたびに結果はいつも同じだ。中国は国内生産を倍増させることで対応し、研究開発に数十億ドルの投資資金を注ぎ込み、わずか数年で米国を上回る技術を生み出すのだ。

最初の米国の制裁が中国を助けた例は、2011年、米国政府が中国宇宙飛行士の国際宇宙ステーションへの参加を禁止した時だ。この措置は米国にとって完全な災難となった。なぜならISSは世界最高の宇宙飛行士が集い人類に利益をもたらす研究を行うために設計されていたからだ。米中両国の宇宙飛行士は自国の政治的対立など気にしない。彼らは世界最高の科学者・技術者だ。単に協力して複雑な問題を解決したいだけである。中国宇宙飛行士がISSへの参加を許可されなかった時、中国はどう対応したか? 自ら宇宙ステーションをゼロから建設し、わずか11年後には全く新しい恒久的な宇宙ステーションを打ち上げたのだ。

もう一つ、我々の世代でおそらく最も重要な技術分野である半導体産業の事例を紹介する。ここでも米国政府は過ちを犯した。何十年もの間、中国は数十億ドル相当のマイクロチップを米国企業から購入していた。米国企業は中国で得た収益を研究開発資金に充てていた。しかし米中間の対立、特にAI産業における対立が激化する中、バイデン前大統領は米国企業に対し、中国への米国製チップ輸出を停止するよう強制した。これは中国の台頭を封じ込め、米国の将来の優位性を確保するためだった。効果はあったか?もちろんない。中国は単純にAIチップの生産量を3倍に増やし米国との新たなAI覇権争いで競争力を維持したのだ。そして3年も経たない今、状況は完全に逆転した。中国は今週、米国に正式に追いついたとして中国企業による米国製チップの購入を禁止すると発表した。中国のAIプロセッサは今や輸出規制下で許可されているNVIDIA製品と同等かそれ以上の水準に達している。これが中国のスピードと創意工夫の真骨頂である。そしてこれは、中国が複雑な問題でさえ解決策を見出すことを決して軽視すべきでないという強い教訓だ。

この夏、世界原子力協会の事務局長が中国を訪問し、原子力施設を視察した際、事務局長は「中国の先進的な技術力と驚異的な産業規模に圧倒され、驚きに口を閉じられなかった」と語った。さらに、世界中の誰もが中国の動向に注目していると付け加えた。世界原子力協会のデータによると、昨年 7 月以降に着工した最新の原子力発電プロジェクト 10 件のうち7 件は中国で残りの 3 件はロシア、韓国、パキスタンであった。オックスフォード大学エネルギー研究所の上級研究員、フィリップ・アンドルー・スピードは、中国の進歩を完璧に要約している。「中国は原子力発電のためのほぼ完全なサプライチェーンを構築し、世界最速で成長している。発電所の建設と運営に必要な熟練労働力を確保している」。サプライチェーンの構築、熟練労働者の採用そして市場支配を可能にする規模の拡大は中国が最も得意とする分野である。

忘れてはいけないのは、中国は世界120カ国以上の国の最大の貿易手国であり、世界の生産量の35%を占める世界唯一の製造大国であるということだ。クリーンエネルギー技術に特に目を向けると、中国が今後もこの業界全体のあらゆる分野を支配し続けることは間違いない。中国はEVで70%、リチウムイオン電池で75%、風力タービンで65%、そして圧倒的な82%のシェアを太陽光パネルで占めている。またチベット山脈に世界最大のダムを建設すると発表したばかりだ。完成すればこの単一プロジェクトだけで英国全体に相当する電力を供給できる水力発電量を生み出すことになる。

しかし、米国やフランスのような国々では事情が異なる。かつて原子力技術開発を主導していたこの2つの国は、公衆の反対、コスト上昇、規制上の課題といった継続的な問題により原子力発電所の建設が停滞している。このため中国がこの産業を支配する道が開かれている。米国や欧州諸国が原子力発電所を期日通りに効率的に建設する唯一の方法は中国のメーカーと提携することだ。具体例を挙げて説明しよう。

中国が最近どのように福建省南東部の福清5号機を完成させたかを見てみよう。このプロジェクトには全国から5,300社以上のサプライヤーが関与し、全ての核心設備は中国国内で自社生産された。このプロジェクトは中国が第三世代原子力発電所の中核技術と建設における専門家を育成する助けにもなった。結果として中国は少なくとも15基の原子力発電ユニットと研究施設を世界中に輸出している。パキスタンのカラチ原子力発電所はこの新技術を採用した中国初の海外原子力発電ユニットである。

なぜ原子力が未来なのか。原子力は世界的な復活を遂げており、30カ国以上が2050年までに世界の原子力発電容量を3倍に増やすと公約している。アマゾン、グーグル、マイクロソフトといったテクノロジー大手もエネルギー集約型のAIデータセンターを稼働させ、炭素排出量を削減するために原子力発電に投資している。本日の動画で説明した通り、中国は原子力エネルギー分野で世界のリーダーとして台頭し、当面の間その地位を維持するだろう。残された唯一の疑問は、米国と欧州が自尊心を飲み込み、中国と協力してより環境に優しくカーボンニュートラルな惑星を未来の世代のために築けるかどうかなのだ。

https://www.youtube.com/watch?v=RXyC4JGZoqY