No. 1138 米国の「テロとの戦い」

アメリカの「テロとの戦い」は今年で15年目になった。2001年9月11日に起きた同時多発テロは、イスラム教のテロ組織であるアルカイダが犯人とされ、首謀者のウサマ・ビンラディンはその10年後、米軍により殺害された。

アメリカは同時多発テロにより戦争を開始する理由ができ、アフガニスタン侵略、イラクのフセイン、リビアのカダフィを倒し、シリアのアサドと、戦いをエスカレートさせてきた。しかし、なぜイスラム教徒がアメリカを攻撃したのか明確な理由は分かっていないし、同時多発テロそのものの解明もなされていない。そのため当初から陰謀説論などでさまざまな疑問点が指摘されてきた。

例えば、航空機2機が衝突して崩落した世界貿易センタービルは米国港湾公社の所有だったが、テロの起きる6週間前に建物の賃借権がユダヤ人の不動産業者に譲渡され、直後に35億ドルというテロ保険に加入していたことである(これにより再保険を引き受けていた大成火災海上は破綻した)。また同じ不動産業者の所有する、衝突したツインタワーから少し離れたところにある世界貿易センター第7ビルは、飛行機が突っ込んだわけでもないのにツインタワー崩落から8時間後に倒壊している。このビルには証券取引委員会の本部などが入っており、当時係争中だった膨大な資料が消失したことはいうまでもない。

だからといって同時多発テロがユダヤの陰謀などと言うつもりはない。しかしだからこそ、テロの実行犯とされた何人かは人違いだったり、アルカイダが飛行機をビルに追突させるような高度な操縦技術をどうやって身に付けたのかなど、数々の疑問点を無視してイスラム教徒を犯人として決めつけたのは強引すぎる。

アメリカ政府にとって同時多発テロがいかに重要であったかといえば、それ以降、外交努力なしに一方的に武力行使ができるようになったことだ。アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ソマリア、イエメンの政府を転覆させたがテロ組織を壊滅することはできず、火種は中東全域に広がり、イスラミックステート(IS)という過激派組織も生まれた。アメリカはそれもまた武力で解決しようとしている。

全世界の軍事費はソ連が崩壊した1995年頃から減少の一途をたどっていた。冷戦が終わり兵力を増強する理由を失っていたアメリカの軍需産業界にとって、同時多発テロは保有する兵器を消費し、さらに新しい武器を調達する好機以外のなにものでもなかった。さらに相手がテロリストなら外交も不要で永続的に戦い続けることができるし、戦争により国内の格差や貧困問題から国民の目をそらすこともできる。

日本でも昨年、集団的自衛権行使を容認する閣議決定がなされ、攻撃を受けていなくてもアメリカと一緒に武力攻撃に参加できるようになり、経団連は武器輸出を「国家戦略として推進すべきだ」と提言した。非正規雇用が増えて拡大する格差、貧困層の増加などアメリカと同じ問題持つ日本だが、安倍政権はアメリカと同じ戦争経済による繁栄の道を取ろうとしているように思える。