日本政府は「深刻な人手不足への対応策として」外国人労働力の受け入れを拡大しようとしている。
建設や農業など、特に人手不足が深刻な業種において外国人材を安く単純労働の現場に即戦力として使えるようにというのがその理由だという。しかし厚生労働省「外国人雇用状況」によれば、2017年の外国人労働者の数は約128万人と過去最高を更新しており、OECDの国際移住データベースによれば日本はOECD諸国の中で第4位と、すでに「移民大国」である。
自動化や技術革新が進み、人工知能(AI)やロボットによって近い将来多くの仕事がなくなるという研究を大学やシンクタンクなどが発表する中、政府は技術革新ではなく、安価な労働者を増やそうとしているのだ。
日本の大手コンビニで働く外国人店員は4万人を超えているというが、米国ではアマゾンのような企業は、技術を使ってレジ係の仕事をなくそうと試みている。この先の10年は、これまでに比べ変化のスピードはますます速くなるだろう。政府は社会的なセーフティーネットの見直しや、仕事を失った労働者への再教育など、すべきことは数多くあるはずだ。ここでなぜ移民政策を推進するのだろう。
政府の経済財政諮問会議の議員を務める大学教授などは、介護分野において外国人労働者の必要性を説いている。高齢化が進む日本では深刻な問題かもしれないが、中国ではその対応策としてAIの活用を進めている。バイドゥ、アリババ、テンセントという中国のインターネット業界の大手3社は、チャットボットを使った診断や、健康情報をオンラインで提供して医師による診断結果を伝えたり、
AIを活用したロボットがヘルパーとしての役割を果たす「介護ロボット」の投入を進めたりしているという。
これを強力に後押しするのは中国政府である。今後10年でAIを中国の経済成長の重要な推進力にするという方針のもと、中国政府は2020年までに1500億元(約2兆6千億円)、2025年には4千億元(約6兆8千億円)、2030年にはAIの基幹産業だけで1兆元(約17兆円)を目指すという目標を打ち出したのである。地方政府もAI企業を支援し、蘇州と深センは最先端企業に助成金を出している。中国政府はAI関連の新興業界を支援し、すでに先を行くバイドゥ、アリババなどもさまざまな分野に積極的に投資を強化しているのである。
去る9月、米アップル、マイクロソフト、グーグルの幹部を歴任したカイ―フー・リー氏が「AI Superpowers」という本を上梓し、AIを中国とシリコンバレーで比較するという題材でAIに必要な要素を検証した。そして大量に蓄積されているデータ、新しいツールを手にした熱心な起業家、急成長するAIの専門知識、そして政府からの資金と支援という四つの点で、中国が優位だとしている。
コピー製品から先進AIを研究開発する国に変わった中国と、一億総活躍社会と称して人生100年時代には海外からの労働者と仕事を奪い合って年金支給70歳まで働くことを国民に推奨する日本、どちらの将来に希望があるのだろう。