No. 1311 ワクチン開発の慎重さ無視

新型コロナ感染拡大を受けて日本政府は、2月7日まで東京、神奈川など1都3県はじめ各地に緊急事態宣言を発令した。そんな中で菅首相は米マイクロソフト共同創設者で慈善事業家のビル・ゲイツ氏と電話会談し、東京オリンピック・パラリンピックを開催するためにもワクチンの普及が必要だという認識で一致したという。

緊急事態宣言を受けて外出の自粛、飲食店や商業施設の営業時間短縮による経済的問題が懸念されるにもかかわらずオリンピック開催について言及し、開催するためにもワクチン接種の推奨(または強制)をゲイツ氏は日本政府に要求したのであろう。世界にワクチンを推進する「GAVIアライアンス」に日本政府は2011年から財政支援を行い、昨年安倍内閣は2021年から5年間で約3億ドル(320億円)を拠出すると表明している。

GAVIは世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において2000年、各国政府や世界保健機関(WHO)、世界銀行、そしてビル&メリンダ・ゲイツ財団からの寄付によって設立された。新型コロナのワクチンもGAVIを通じて供給される見込みだという。

問題はそのワクチンの中身である。ゲイツ氏はワクチン接種をすればオリンピックも開催でき、ある程度「ノーマル」な生活に戻れると言い、従来のワクチン開発では臨床試験の最終段階まで行き着くには何年もかかっていたにもかかわらず、製薬会社は過去にない速さでワクチンを開発している。

さらにこれまでのワクチンは病原性をなくしたウイルスを接種することで免疫をつける「不活化ワクチン」が一般的だったが、ファイザーがドイツのビオンテックと開発したワクチンは「mRNA」と呼ばれる物質を使った新たな手法を使い、これまで製品化されたことがなかったものなのである。

昨年11月9日、ファイザーは同社のワクチンが90%超の予防効果があると発表した。専門家はそのデータが第三者の審査を受けた正式なものではないとし、安全性のデータを含むより詳細な情報が必要だと述べたが、この発表でファイザーの株価が15%上昇した同日、同社のCEOアルバート・ブーラ氏は自身の持ち株の6割、560万ドル(約5億9千万円)相当を売却していたというから驚きである。

新型コロナは恐ろしい世界的感染症だとWHOがあおったためにワクチン開発の慎重さなど無視され、新しいmRNAワクチンは動物実験が省かれて人を対象に治験が行われた。接種で副作用が起きても製薬会社は法的責任を免除され、ワクチンで後遺症が起きたり亡くなったりしても賠償責任は政府がとるという。しかし数カ月、数年後に後遺症が起きた場合に因果関係を証明することが容易ではないのは薬害裁判からも想像がつく。

英国、米国ではワクチンによる強いアレルギー反応事例だけでなく死亡例も出ている。菅首相は、慈善活動家ではなく、ワクチンの安全性の保障が不十分で使用には慎重にと警告する医師や感染症の専門家の助言にこそ耳を傾けてほしい。