アースデーの4月22日、米国バイデン大統領はオンラインで気候変動サミットを主催した。米国は温室効果ガスを2030年までに2005年と比べて半減させることを表明し、中国の習近平国家主席も全体の6割を占める石炭火力発電の消費を減らしていく考えを述べ、菅総理は2030年までに2013年度と比べて温室効果ガスを46%削減することを目指すとした。トランプ前大統領の時、世界の温室効果ガスの廃棄量を2050年以降ゼロにすることを目標にしたパリ協定から離脱した米国だが、再び民主党オバマ政権時の路線に戻ったといえる。
米国の新型コロナ感染は落ち着きをみせ、州知事が共和党のテキサス州などはマスク使用の強制をやめてビジネスや各種イベントなども100%収容率で行うことが許可されている。同じく共和党州知事のフロリダ州では、個人の自由が制限されるとしてワクチンパスポートやコロナワクチンの接種を受けたことを証明する文書の使用を禁じる行政命令を出している。そんな中で新たに、バイデン大統領は気候変動を「人類の存続に関わる脅威」と位置づけて本格的に取り組み始めた。
都市封鎖のようなコロナ対策は気候変動への取り組みの前段階としてふさわしかった。昨年イタリアが数週間ロックダウンをした後、ベニスの運河がきれいになり、イルカが泳ぎ白鳥が戻ってきたという話がSNSで広がった。これはうそだったのだがいくつものメディアが報じ、以来コロナによるロックダウンは環境問題を解決する施策として演出されてきた。英ガーディアン紙は3月にも「パリ協定の削減目標を達成するためには、世界は2年ごとにコロナ対策で行ったロックダウンが必要」という英国研究者の研究成果を掲載している。
IT業界も以前から環境ビジネスには熱心だった。2016年にはビル・ゲイツ氏を理事にアマゾンのジェフ・ベゾス氏ら世界IT業界トップ20人がファンドを創設し、温室効果ガスの排出を減らす技術に投資している。ゲイツ氏は今年2月、コロナウイルスより気候変動の方がより多くの犠牲者が出るとして危機をあおるべく、「How to Avoid a Climate Disaster(いかにして気候災害を避けるか)」という本を出している。解決策はゲイツ氏が投資している「クリーンな」原子力発電や、温室効果ガスを出す畜産をやめて人工肉を食べることらしい。数年前からコロナウイルスによるパンデミックを予言し、ワクチンに多額の投資をしてきたゲイツ氏のテーマが気候変動に移ったということは、コロナは収束に向かうと考えてよいだろう。
日本では、緊急事態宣言が延長されたものの、政府はオリンピックは行うとし、新型コロナが致死率の高い感染症だという当初の説明は勢いを失いつつある。それでもコロナ感染症を理由に始めた「緊急事態の力」は維持し続けたいようで、菅総理は新型コロナを理由に内閣の権限強化を可能にする「緊急事態条項の創設」に意欲を示しているという。つまりいくら感染が減っても、これからも「コロナ対策」はなくならないと思ったほうがよさそうである。