No. 1335 同時多発テロから20年後の米国

米国の世界貿易センターに民間旅客機が追突し、ビルが崩壊するという前代未聞の出来事から早くも20年がたった。

米国政府の公式見解は、2001年9月11日朝、4機の旅客機が19人のアルカイダのテロリストによってハイジャックされたというものだ。2機は世界貿易センタービルに追突し、3機目はワシントンDCのペンタゴンビルに激突、4機目はペンシルバニア州の田舎の野原に墜落し、この米国史上最大のテロ事件で約3,000人が死亡したのである。

この政府の発表に疑惑を持つ人々は、その説明が偽りであることは証明できても、実際に誰がなぜ攻撃したのかということは追求していない。航空アナリストやパイロットはテロリストがこれほど正確に旅客機を飛行させることができたのはおかしいと疑問視し、建築の専門家は旅客機が衝突した世界貿易センターのツインタワーがなぜ崩れるように崩壊したのか、衝突していない第7ビルまで自然落下に近い速度で崩壊したことも考えあわせると、すべてあらかじめ爆弾が仕掛けられていたのではないかとして再調査を求めたが、事故現場はすぐに撤去され、十分な調査も証拠調べもなされなかった。

またこのような壮大なテロを行うには、直接的または間接的なインサイダーの協力が必要だったのではないかと推測されるため、状況証拠にもとづいてブッシュ政権のネオコンたちがイスラエルと組んで中東で新たな戦争を起こすためだったという専門家もいるが、たとえそれが事実なら政府が認めることは決してないだろう。そこで20年たった今でも信憑性に欠ける米国政府の説明をマスコミは流し続けている。

仮りに米国政府の説明が事実なら、防衛費に年間1兆ドルも費やしている軍事超大国が、ビンラディンら数人のサウジアラビア人によって数千人の死者を出す大失態をしたということである。これは大問題のはずであり、だからこそなぜ簡単に飛行機が乗っ取られたのかという検証や調査が行われるべきだったろう。

しかし9月11日の午後にはアルカイダの犯行が報じられ、明確な証拠もないまま米国は10月7日にアフガニスタンへの空爆を開始した。そして20年後の8月、米国にテロ攻撃を行った犯人をきちんと裁くことも、また将来的なテロ攻撃の可能性を減らすこともできずに米国はアフガニスタンから撤退した。911のテロ事件と同様にテロとの戦争にも米国は負けたのである。

911が陰謀論で言われるような米国政府による自作自演でなかったのなら、米国政府はテロ攻撃を犯罪事件として扱うべきだった。つまり犯人を米軍ではなく警察が追跡するべきだったし、軍事的な手段をとらなければならなかったのなら向かうべき相手はテロの立案者とされたアルカイダ元幹部のカリド・シェイク・モハメッドをかくまったパキスタンや、ビンラディンやハイジャック犯を送り込んだサウジアラビアであったはずだ。しかし米国がドローンやミサイルを使って攻撃したのはアフガニスタンやイラクといったイスラム国であり、そこで多くの罪のない人々を殺害し、世界から嫌悪と軽蔑の目で見られるようになってしまった。

タリバンにアフガニスタンを奪われ撤退するという失態を犯したバイデン政権を、その戦争を始めたブッシュ政権の中枢にいた人々が今批判をしている。結局米国は20年間の戦争から何も学ばなかった。911が起きた時も、また20年経った今でも、米国は戦争好きの愚か者に支配されているのである。