No. 1729 マイク・ホイットニー、ポール・クレイグ・ロバーツに 中国との緊張の高まりについてインタビュー

Mike Whitney Interviews Paul Craig Roberts …
… About the Rising Tensions with China

by Mike Whitney and Paul Craig Roberts

マイク・ホイットニー: バイデン政権はなんとしてでも台湾問題で中国を挑発しようとしている。ホワイトハウスは今、中国の発展を抑え、地域の覇者としてのアメリカの役割を維持するために、中国に対してより攻撃的なアプローチを取らなければならないと考えている。しかしワシントンのアプローチが皮肉なのは、過去30年間に何万もの米国企業が中国の低賃金労働力を利用するために米国から脱出したという事実である。実際、レジストレーション・チャイナによると、中国本土に登録されている外資系企業は現在100万社を超え、その多くはアメリカ人が経営しているという。同時期の中国の急激な経済上昇に大きく貢献しているのはこれらの企業なのだ。そこであなたへの質問は、なぜ米国企業が主な原因である爆発的な成長について中国が非難され、標的にされているのだろうか?それとも私の分析には反対ですか?

ポール・クレイグ・ロバーツ: あなたの質問は実に複数ある。あなたの質問自体がワシントンが1972年からの一つの中国政策を後戻りさせた主な、または最も重要な理由を示している。米国の外交政策を支配するネオコンは、彼らの言葉を借りれば、米国の一国主義を制約するのに十分な力を持つ他国の台頭を防ぐことを主目的としており、それが今、中国とロシアという米国の覇権を脅かす存在に直面している。ロシアへの仕打ちは、ウクライナ紛争、制裁、国境へのミサイル設置、ノルド・ストリーム・パイプラインの爆破である。その目的は、ロシアをヨーロッパから孤立させ、クレムリンに十分な問題を提示して、モスクワにワシントンの邪魔をさせないようにすることである。

米国がNATOを拡大しないというロシアとの合意を破り、冷戦時代に結ばれた緊張緩和のための協定から手を引いたように、ワシントンは今、一つの中国という政策がもはやワシントンの利益にならないとして否認する方向に進んでいる。

冷戦とベトナム戦争があった1972年、中国との緊張を緩和することは戦略的に理にかなっていた。ソ連の存在は米国の覇権という概念にはなかった。ネオコンがアメリカの覇権という考えを持つようになったのは、その20年後、1991年にソビエト連邦が崩壊した時である。当時は、エリツィンのロシアは米国の支配に問題はなく、中国がワシントンの邪魔をするほど強くなるには何十年もかかるだろうという意見だった。しかし質問のように、米国の製造業が中国にオフショアリングされたことで、中国は一気に経済大国となり、米国の経済力は大きく低下した。米国企業がより低い人件費でより高い利益を求めて自ら出て行ったというよりも、ウォール街の圧力により、低コストの機会を利用するために買収資金を提供すると脅されていたのである。つまり中国の急成長はウォール街と企業の強欲の結果であり、中国にはその責任はない。アメリカの新自由主義経済学者たちは、アメリカの製造業の雇用が海外に流出することを、アメリカが利益を得るための自由貿易の仕組みであると説明した。製造業の海外移転を正当化する新自由主義に異議を唱えたのは、アメリカ人とイギリス人の2人の億万長者、アメリカの繊維王ロジャー・ミリケンとイギリスの金融業者サー・ジェームズ・ゴールドスミスだった。確かに考えさせられることで、そして考えると、製造業の雇用のオフショアリングが自由貿易とは無関係であることは明らかだった。経済学者は、9.11のシナリオやmRNAの「ワクチン」、サダム・フセインの大量破壊兵器の信奉者などと同様に洗脳から解かれることは難しい。オフショアリングを自由貿易の繁栄だと主張するオフショアリング推進派の第一人者と私は議論し、ウォールストリートジャーナル紙にコロンビア大学の経済学、法学、国際関係学の教授であるジャグディッシュ・バグワティ氏との討論が大きく取り上げられた。10年前、私の著書『自由放任資本主義の失敗』(2013年)は、米国の製造業の海外移転が米国経済に多大な不利益をもたらすことを決定的に証明したが、それはすべて無駄なことであった。私はアメリカの経済学者たちは皆、ウォール街に「アドバイザー」として買われているか、オフショア企業からの研究費で生活しており、オフショア政策の正当性を作り出していると結論づけた。要するに、ウォール街と新自由主義経済学者のせいでアメリカは製造業を失ったのだ。

ドナルド・トランプ大統領は、製造業を失ったことでアメリカが傷ついたことを理解していた。中国を非難し始めたのはトランプである。有能なアドバイザーがいなかったため、トランプはアメリカの多額の対中貿易赤字の半分(私が最後に見た時)はアメリカで販売されるアメリカ企業の海外生産によって占められているという事実ではなく、中国の不公正な慣行と関連付けた。その商品は輸入品として米国に入ってくる。ウォール街やアメリカの経済学者ではなく、中国を非難するトランプの傾向は、トランプがロシアの利益のために働いていると描かれたロシアゲートの容疑によって強化された。中国に厳しくすることが、トランプがアメリカの利益を守っていることを示す方法だったのだ。

要約すると、アジアの覇者としてアメリカを追い落とした中国の罰が台湾とのトラブルである。トランプはウォール街と新自由主義経済学者の責任を中国のせいにすることで彼の敵のネオコンのために扉を開けたのだ。

私は一つの中国の事実に対するワシントンの脅威は非常識であり、ロシアの挑発行為よりもさらに非常識であるとみている。中国本土と台湾は経済統合を進めている。これをアメリカが止められるわけがない。さらに、ロシアがクリミアを放棄するのと同じように、中国が台湾を米軍基地にすることを許可する見込みは全くない。

マイク・ホイットニー: ジャーナリストのベン・ノートンは、ワシントンが台湾を問題にしている原因は、米国の大手銀行とウォール街にあるのではないかと指摘している。中国の金融システムは大部分が社会主義化されており、金融資産への投機ではなく実体経済への融資に使われている。アメリカの銀行は中国にギャンブルのカジノを持ち込もうとするが、それができない。ワシントンが台湾を利用して、中国にウォール街を入れるよう圧力をかけている可能性はあると思うか?

ポール・クレイグ・ロバーツ: ワシントンとロシア、中国、そしてイランとの間に危険な緊張が高まっている主な原因はネオコンがアメリカの外交政策の最優先目標として覇権を押し付けることに成功したことは疑う余地はない。もちろんネオコン的イデオロギーが支持されるためには、強力な経済的利益に貢献しなければならない。ロシアや中国との緊張は明らかに軍事・安全保障複合体の物質的利益に資するものである。ドルの基軸通貨としての役割に沿った覇権もアメリカの銀行の支配に役立っている。しかし米国の外交政策は、米国の銀行のためだけに中国との緊張を高めることはないだろう。実際、中国との緊張は中国を生産拠点とする多くの米国企業にとっては危険である。これらの企業は簡単に国有化されたり輸出許可を拒否されたりする可能性がある。もし米国が国際法に背くことができるなら、中国もできるのだ。中国との緊張は国債市場や米ドルの為替価値にとっても危険である。国が保有する米国債を債券市場に投棄した場合、連邦準備制度理事会は価格が暴落しないように償還資金を印刷しなければならない。しかし中国が債券の償還で得たドルを通貨市場に投棄した場合、連邦準備制度理事会はドルを購入するための外貨を印刷することができず、ドルの為替価値は下がり、米国の製造業のオフショア化によって必要となる輸入品や食料品の価格が上がり、米国のインフレが悪化して生活水準が下がる。

ネオコンがロシアと中国を敵視することは間違いなくアメリカの利益にはならない。中国の場合、この敵意によって脆弱になるのはアメリカ企業と米ドルであり、中国ではない。 ロシアの場合、敵意で苦しんでいるのはヨーロッパでありロシアではない。ネオコンが達成しようとしているのは彼らの目的とは正反対のことなのだ。彼らの政策はロシアではなくヨーロッパ人にコストを課すものであり、ヨーロッパ人は自分たちに課せられた苦しみに憤慨することになる。数年前、国防省の国際安全保障担当次官補が私に語ったように、すべての欧州政府および欧州のジャーナリストは、ワシントンの利益(私の経験では、米国人の利益と関係することはほとんどない)を代表するためにたくさんのお金を受け取っているが、遅かれ早かれ欧州国民は、「自分たちの」政府が自分たちではなくワシントンを代表しているという認識に至るだろう。苦難が耐えられなくなる前に、人々は多くの苦しみを味わうことになる。その時、「ワクチン」や放出された病原体、または核戦争によって殺されていない限り、ギロチンが到着して政府は倒れる。

マイク・ホイットニー: アメリカの重要なインフラは劣化している。道路は穴だらけで、空港は恥ずかしい代物で、毎年1000本以上の列車が脱線している。一方、国の純利益の大部分は、すでに数え切れないほどのヨットや別荘を持つ億万長者に支払われ続けている。バイデン政権が、中国の数兆ドル規模のインフラ計画「一帯一路構想」に参加することで、北京に和平を求めることにあなたは反対だろうか?そうすれば外国政府と協力して、国内の道路、橋、港、特に高速鉄道の大改修を行うことができる。明らかに中国は自分たちのしていることを理解しているし、思うにこのプロジェクトはアメリカの建設労働者にとって何万もの雇用を意味するものだろう。あなたはこのような共同作業を支持するだろうか?それとも米国は単独で行うべきと考えるだろうか?

ポール・クレイグ・ロバーツ: マイク、ご存知と思うが私はあなたをこの時代で最も鋭い人物の一人と考えている。しかしこの質問はあまりにもナイーブだ。まず第一に、私が支持するもの、あなたが支持するもの、あるいはアメリカ国民が支持するものに、何の違いもない。私たちはその決定をコントロールすることも、影響を与えることもできない。だからこそ最終的には奴隷化か革命に行き着くのだ。アメリカ国民はトランプを2度選んだ。1度目は、エリートが彼に統治をさせることを許さなかった。2度目は、彼らが彼から選挙を盗み、その不正を検証することを妨げた。既得権益からの選挙献金という金の力、今や連邦最高裁によって合法化されているため、アメリカでは国民の利益に資する政府を選ぶことは不可能であり、もしそうなったとしてもエリートは所有するメディアを使って国民の選択を排除する。

第二に、中国に何らかの形で協力しようと提案するアメリカ人は、「中国の手先/代理人」のレッテルを貼られる。私たちはすでにロシアでこれを経験している。アメリカ大統領は、「ロシアとの関係正常化」を望んだというだけで、自国の司法省からロシアのエージェントとして嫌がらせを受けた。私はウクライナ紛争に対する新保守主義者の責任について真実で正しい説明を提供したために、誰によって資金提供されたのかわからないが、ワシントンポスト紙によって注目されたウェブサイトによって、プーチンの代理人/手先の烙印を押されたのである。

第三に、現代通貨理論によれば、生産性の向上や企業のコスト削減につながるインフラ整備に政府が資金を提供することはインフレにならない。むしろ生産コストを下げ、その国の企業の生産性を向上させ、国際競争においてより成功を収めることができる。米国のインフラ整備は私たち自身で容易に達成できる目標なのである。

一帯一路(BRI)のようなインフラプロジェクトに米国が参加する必要はまったくない。ワシントンがすべきことは、2つの成長している大国とのいわれのない緊張を取り除くことである。彼らを受け入れ、彼らの成功に溶け込む。そうすれば、すべての人に利益がもたらされ、核戦争の危険もなくなる。

しかし、アメリカや西側諸国の指導者でビジョンを持った人はどこにいるのだろう?

https://www.unz.com/mwhitney/mike-whitney-interviews-paul-craig-roberts-about-the-rising-tensions-with-china/