No. 1829 米国はBRICS+に対してハイブリッド戦争に踏み切るだろう

The Hegemon Will Go Full Hybrid War Against BRICS+

by Pepe Escobar

グローバル・サウスに対するハイブリッド戦争2.0はまだ始まってもいない。スイングステート(揺れ動く国)には警告がなされた。

米国シンクタンク・ランドの専門家はモンテーニュに精通しているわけではない:

   世界で最も高い位置にある玉座に座っても、我々はまだ自分の尻にしか座っていない。

傲慢な彼らは、自分たちのゆるんだ尻が他の誰よりも高い位置にあると思い込んでいる。その結果、傲慢さと無知の混ざった特徴的な組み合わせは、常に彼らの予測の予測可能性を明らかにする。

米国シンクタンク・ランドは、自分たちが作り出した権力のオーラに酔いしれて、自分たちが何をしようとしているのか常に事前に電信を出す。プロジェクト9.11(「新たな真珠湾攻撃が必要だ」)がそうだった。ロシアの過剰な拡張と不均衡に関するランド研究所報告書{1}もそうだった。そして今、ニューヨークを拠点とするユーラシア・グループの会長{3}が概説する、BRICS{2}に対するアメリカのきたるべき戦争がそれである。

知的に浅薄なシンクタンク・ランドの「分析」という仮面をかぶった夢物語に悩まされるのはいつも苦痛だが、特に今回は、主要なグローバル・サウスのプレーヤーは自分たちを待ち受けているものをしっかりと認識する必要がある。

予想通り、「分析」全体は米国とその家臣に差し迫った壊滅的な屈辱を与えること、すなわちウクライナで次に何が起こるかを中心に展開されている。

ブラジル、インド、インドネシア、サウジアラビアは、アメリカ/NATOのロシアに対する代理戦争に関して「静観する4ヶ国」として無視されている。これは「われわれの味方か、われわれの敵か」という、昔ながらの図式である。

しかし、次にグローバル・サウスの主要な6つの容疑者が提示される。ブラジル、インド、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコだ。

アメリカの選挙にちなんだキャッチフレーズをまたもや粗雑で偏狭なものに変えて、これらの国は重要な「スイングステート」(有権者で浮動票が多い激戦区)と認定され、「ルールに基づく国際秩序」の支配を保証するためにアメリカは誘惑、説得、脅迫、威嚇する必要があるのだ。

サウジアラビアと南アフリカは前回の報告書に追加され、報告書は「静観する4ヶ国」に焦点を当てている{4}。

スイングステート宣言は、これらの国がすべてG20のメンバーであり、「地政学と地球経済学の両方で活発である」ことを指摘している(そうか、これは大ニュースだ)。そのうちの3カ国はBRICS(ブラジル、インド、南アフリカ)のメンバーであり、残る3カ国はBRICS+への参加に向けた真剣な候補であるということは書かれていない。8月に南アフリカで開催されるBRICSサミットで審議が加速するだろう。

つまりスイングステート宣言の目的は明確で、BRICSに対するアメリカの戦争のための武器をとれという呼びかけなのである。

だからBRICSは何のパンチもない。

スイングステート宣言は、近隣製造や友好製造が中国から離れていくという夢物語を抱いている。ナンセンスだ。 BRICS+内の貿易を強化することがこれからの順序となるだろう。特に、自国通貨建て貿易の拡大(ブラジル-中国やASEAN内を参照)は脱ドル化の第一歩となる。

スイングステートは、非同盟運動(NAM)や「G-77やBRICSのような、グローバル・サウスが支配する他のグループ」の「新しい姿ではないもの」として特徴づけられている。

指数関数的なナンセンスの話だ。いまBRICS+は、冷戦時代にNAMが達成できなかったことを実現するための手段(NDB、BRICS銀行などの新開発銀行を含む)を手に入れたのである。ブレトンウッズや米国と連動した強制メカニズムを回避する、新しいシステムの枠組みの確立である。

BRICSが「あまりパンチがない」と言うのは、BRICS+が何なのかについて、米国シンクタンク・ランドが宇宙的に無知であることを明らかにしているに過ぎない。

インドの立場は、クアッドメンバーであるという点でのみ考慮されている。これは、中国のバランスを取るための米国主導の努力、と定義される。 訂正:中国を封じ込めるため。

半導体、AI、量子技術、5G、バイオテクノロジーについてスイングステートが米国と中国のどちらを「選択」するかということについては、 それは「選択」ではなく、中国の技術を悪者扱いする米国の圧力にどの程度耐えられるかということである。例えばブラジルに対してサウジアラビアやインドネシアよりもはるかに重く圧力をかけている。

しかし結局のところ、すべてはストラウス系ネオコンの執念に帰結する。ウクライナだ。スイングステートは、程度の差こそあれ、制裁に反対したり衰えさせるという罪を犯している。例えばトルコは、ロシアに「二重用途」の品物を流していると非難されている。しかし米国の金融システムがトルコの銀行に対してロシア製MIRカードの使用を中止させるという非情な行為については一言も触れていない。

希望的観測としては次のような記述が目立つ。「クレムリンは、貿易を南と東に向けることで生計を立てられると信じているようだ」。

まあ、ロシアはすでにユーラシアや広大なグローバル・サウス全域で素晴らしい生活を送っている。

経済は再始動している(牽引役は国内観光、機械製造、金属産業)。インフレ率はわずか2.5%(EUのどこよりも低い)、失業率はわずか3.5%、中央銀行のエルビラ・ナビウリナ総裁は2024年までにSMO以前の成長レベルに戻ると述べている。

米国シンクタンク・ランドは先天的に能力が欠如しているため、たとえBRICS+諸国がまだ深刻な貿易信用問題をかかえているかもしれないが、モスクワがすでに通貨を暗に裏付けることを示唆するだけで即座にゲームチェンジャーになり得ることを理解できない。ロシアはルーブルだけでなく、人民元も同時に裏付けている。

一方、グローバル・サウスの脱ドル化は、代理戦争のハイエナが暗闇で吠え続けているのと同じように、容赦なく進んでいる。ウクライナにおけるNATOの屈辱の全容が明らかになったとき、おそらく真夏には、脱ドル化の高速列車はノンストップで満席になることだろう。

「断れないオファー」に再び乗る

上記のことがまだ十分にバカげてないとすれば、「スイングステート宣言」は核兵器に関しても強調し、彼らを「将来の(核)拡散リスク」として、特にイラン(他に誰がいる)を非難している。

ちなみにロシアは、「衰退する中堅国家」と定義されている。そして、「超改訂主義者」ともされている。やれやれ。こんな「専門家」がいれば米国人には敵も必要ないだろう。

そして、もうそろそろあなたは笑ってもいいかもしれない。中国はBRICSを指示して共闘させようとしていると非難されている。スイングステートに対するマフィア流の「提案」、つまり「断れない申し出」は、「中国が主導し、ロシアが支援する、米国に積極的に対抗する組織」には参加するな、というものなのだ。

メッセージは明確である。「拡大するBRICS、そしてそれを通じてグローバル・サウスを中露が共闘する脅威は現実のものであり、それに対処する必要がある」というものだ。

そして、それに対処するためのレシピは以下の通りである。ほとんどのスイングステートをG7に招待する(これは惨めにも失敗した)。「米国の主要な外交官によるハイレベルな訪問を増やす」(クッキーの販売業者ビッキー・ヌーランドへようこそ)。そして最後に「米国市場へのアクセスという難題を解決する、より軽快な貿易戦略」というマフィアの戦術である。

スイングステート宣言は、「米中間の緊張が劇的に高まり、冷戦型の対立に発展する」ことを予測し、むしろ祈るように、ドラ猫大将を袋から出さずにいられなかったのだ。それはすでに起こっている。米国が放ったのだ。

ではその後に何が待っているのだろうか。それは、「デカップリング(分離)」と呼ばれるもので、「どちらか一方により近くなる」よう主要国を強制するものである。「私たちと共にいるか、私たちに対抗するか」の繰り返しだ。

さあどうぞ。明瞭でない脅威を内蔵する、生の、実物を。グローバル・サウスへのハイブリッド戦争2.0はまだ始まっていない。スイングステートの皆さん、警告されましたよ。

Links:

{1} https://www.rand.org/pubs/research_briefs/RB10014.html

{2} https://foreignpolicy.com/2023/06/06/geopolitics-global-south-middle-powers-swing-states-india-brazil-turkey-indonesia-saudi-arabia-south-

{3} https://www.eurasiagroup.net/

{4} https://www.gmfus.org/global-swing-states

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