No. 2072 未来を決める5つの変数

Five Variables Defining Our Future

by Pepe Escobar

1930年代後半、第二次世界大戦が勃発し、レオ・トロツキー(ウクライナ生まれのソ連の政治家、ボリシェヴィキの革命家)は、暗殺されるわずか数カ月前に未来の「混沌の帝国」が何を企むかについて、すでにビジョンを描いていた。

    ドイツにとって、「ヨーロッパを整備する」ことが問題だった。米国は世界を『整備』しなければならない。歴史は、人類をアメリカ帝国主義の火山噴火と対面させている。さまざまな口実やスローガンの下で、米国は、世界支配を維持するために壮大な衝突に介入するだろう。

次に何が起こったかは皆知っている。今、我々はトロツキーでさえ識別できなかった新たな火山の下にいる。衰退する米国が、ロシアと中国の「脅威」に直面しているのだ。そして再び、地球全体が地政学的チェス盤の大きな動きに影響を受けている。

米国の外交政策を担当するシュトラウス派のネオコンたちは、ロシアと中国が多極化する世界を先導することを決して受け入れられなかった。今のところ、ロシアを衰弱させる戦略としてNATOの永久拡張主義があり、中国を衰弱させる戦略として台湾がある。

しかし、この2年間、ウクライナでの悪質な代理戦争は多極化したユーラシア主導の世界秩序への移行を加速させただけだった。

マイケル・ハドソン教授{1}の貴重な助けを借りて、現在の移行を条件付ける5つの重要な変数を簡単に振り返ってみよう。

条件を決めるのは敗者ではない

膠着状態:それがウクライナに関するさらに強まった米国の新たな強迫観念的なシナリオである。戦場でのNATOの屈辱に直面したホワイトハウスと国務省は、文字通り、即興的な対応をせざるを得なかった。

しかし、モスクワは動じていない。クレムリンはずっと前に条件を出している:完全降伏とウクライナをNATOの一部にしないこと。ロシアから見た「交渉」とはこの条件を受け入れることなのだ。

そしてもしワシントンの決定権者が、キエフの武装化を加速させるか、あるいは「事態の流れを変えるために、最も凶悪な挑発行為」を繰り広げることを選ぶのであれば、 セルゲイ・ナリシキンロシア調査庁長官が今週主張したように、それでも構わないとしている。

前途は血なまぐさいものになるだろう。いつもの容疑者たちが、人気のあるザルジニーを脇に追いやり、ブダノフをウクライナ軍(AFU)のトップに任命する場合、AFUはNATOの将軍ではなく、CIAの完全な支配下に置かれることになるだろう。

これによってキエフの汗臭い傀儡(ゼレンスキー)に対する軍事クーデターは防げるかもしれない。しかし、事態はさらに悪化するだろう。ウクライナは完全なゲリラ戦に入り、攻撃目標はロシアの民間人と民間インフラだけになる。もちろん、モスクワはその危険性を十分に認識している。

一方、いくつかの地域ではNATOがウクライナの分割を準備している可能性さえある。それがどのような形であれ、条件を決めるのは敗者ではない。決めるのはロシアだ。

EUの政治家たちは予想通り、ウクライナを掃討した後、ロシアがヨーロッパへの「脅威」となると信じて全面的なパニック状態にある。それはナンセンスだ。モスクワはヨーロッパが何を「考えて」いるかはどうでもいいとしている。ロシアが望む、または必要としていることはバルトや東欧のヒステリーを併合することなのだ。さらに、ヤンス・ストルテンベルグでさえも「NATOは、ロシアの脅威を領土のいずれにも感じていない」と認めている。

2 BRICS: 2024年の開始以来、これが「全体像」である。BRICS+のロシアの議長職は、多極化への粒子加速器として機能している。ロシアと中国の戦略的パートナーシップは、ヨーロッパがロシアへの制裁の反動やドイツの非工業化によって引き起こされた不況に陥る中、いくつかの分野で実際の生産を増加させるだろう。さらにこれはまだ終わりではなく、ワシントンはまたブリュッセルに対して中国に対する全方位の制裁を命じている。

マイケル・ハドソン教授の言うように、我々は現在、「過去5世紀にわたる植民地拡張を元に戻し、取り消し、巻き戻す」試みの中で、中国、ロシア、イラン、BRICSを中心に世界が分裂し、転換している真っ最中なのだ。

あるいは、セルゲイ・ラブロフ外相が国連安全保障理事会で定義したように、BRICS{3}が欧米のいじめっ子たちを置き去りにしていくこのプロセスは、変化する世界秩序は「欧米が負けている遊び場での喧嘩」のようなものなのだ。

 バイバイ、ソフトパワー

3 独な皇帝:「膠着状態」、実際には戦争に負けるということは、その補償に直結する。すなわち帝国は属領化したヨーロッパを圧迫し、縮小させる。しかし、これらの比較的裕福な属国をほぼ完全に支配しながらも、グローバル・サウスを永久に失う。その指導者だけでなく公衆の圧倒的多数もだ。さらに悪い事には、地球全体がリアルタイムで追いかける大量虐殺を支援している。バイバイ、ソフトパワー。

4 脱ドル化: グローバル・サウス全域はこう推定した。「もし米国とその属国のEUが核・軍事大国のトップであるロシアからその外貨準備高3000億ドル以上を盗むことができるのなら、彼らは誰からも盗めるし、盗むだろう。」

現在BRICS 10のメンバーであるサウジアラビアが、ガザでの大量虐殺に対しておとなしくしている主要な理由は、彼らの持つ多額の米ドル準備高が米国の人質になっているからである。

それでも、米ドル離れは2024年にはさらに拡大するだろう。それは、ユーラシア経済連合(EAEU)とBRICS 10の内部での重要なクロスオーバー審議次第になるだろう。

5 庭とジャングル:プーチンと習近平が、エネルギーが豊富なアラブ諸国を含むグローバル・サウスに基本的に言ってきたことは極めてシンプルである。貿易の改善と経済成長を望むなら、誰と手を結べばいいのか?

つまり「庭とジャングル」症候群に戻る。この言葉は、大英帝国の東洋主義者、ラドヤード・キップリングが最初に作った言葉である。イギリスの「白人の重荷」という概念も、米国の「明白な運命」という概念も、「庭とジャングル」の比喩から派生している。

NATO諸国のほとんどは庭のはずだ。グローバル・サウスはジャングルだ。再びマイケル・ハドソン:現状ではジャングルは成長しているが、庭は成長していない。なぜならその哲学は工業化ではないから。庭の哲学は、価値を生み出さずに眠っている間に受け取る単独利益、つまり独占技術に対する特権的な権利を持ち、寝ている間にお金を徴収する特権をもっているということである。

今の違いは、数十年前の帝国的なフリーランチと比べて「技術の進歩の大きなシフト」である。それは北米や米国から、中国、ロシア、そしてアジア全域の特定のノードへ移行したのだ。

永遠の戦争。そしてプランBはない

これらすべての変数、‐ 膠着状態、BRICS、孤独の皇帝、脱ドル化、庭とジャングル ‐を組み合わせて最も可能性の高いシナリオを探ると、追い詰められた帝国の「逃げ道」は他でもない既定路線であることは容易にわかる。永遠の戦争。

それが西アジアにおける現在のアメリカ空母{4}なのだ。完全に制御不能に陥りながらも、常に覇権国に支えられ、パレスチナ、ヒズボラ、シリア、イラクの武装勢力、イエメンのアンサールアッラー、そしてイランという「抵抗の枢軸」に対する多面的な戦争をしようとしている。

ある意味。私たちは911直後の状況に戻っている。当時ネオコンたちが本当に望んでいたのはアフガニスタン侵略ではなく、イラクへの侵略だった。それは石油を支配するためだけでなく(最終的には支配できなかったが)、「イラクにおいてISISとアルカイダという形で、米国の外国部隊を作ることだった」とマイケル・ハドソンは分析し、現在、「米国は近東で戦うためにISIS/アルカイダ外人部隊(アラビア語を話す外人部隊)とイスラエル人部隊という2つの軍隊を持っている」と言う。

ISISとイスラエルを類似したものとして見るハドソンの直感は貴重である。ISISとイスラエルはともに抵抗の枢軸と戦い、決してお互いは戦わない。シュトラウス派ネオコンの計画は、そのように卑劣なものだが、本質的には「最後のウクライナ人まで戦う」ということの変形である。イランを空爆しつくし(ジョン・マケインの言葉)、政権交代を引き起こすという聖杯への道程で「最後のイスラエル人まで戦う」のである。

しかしこの「計画」がイラクやウクライナでうまくいかなかったように、「抵抗の枢軸」に対してもうまくいくことはないだろう。

プーチン、習近平、そしてライシが、グローバル・サウスに対して明白に、あるいは極めて微妙な方法で説明してきたことは、われわれはまさに文明戦争の核心にあるということだ。

マイケル・ハドソンはこのような壮大な闘いを現実的なレベルに落とし込むために多くのことを行ってきた。我々は、私がテクノ封建主義{5}と表現したもの、つまり地代収奪型ターボ新自由主義のAIフォーマットに向かっているのだろうか?それとも、産業資本主義の起源に似たものに向かっているのだろうか?

マイケル・ハドソンは、幸福な未来を特徴づけるものは「生活水準の向上であり、ドル圏にIMFの金融緊縮財政を押し付けることではない」という。ビッグファイナンス、ビッグバンク、ビッグファーマ、そしてレイ・マクガバンの造語MICIMATT(軍産複合体、産業、議会、情報、メディア、学術、シンクタンクの複合体)というシステムをコントロールできないようなシステムを考案することなのだ。Alea jacta est.(賽は投げられた。)

Links:

{1} https://globalsouth.co/2024/01/21/michael-hudson-on-russia-iran-and-the-red-sea-natos-war-economy-collapses/

{2} https://sputnikglobe.com/20240124/norways-top-general-urges-defense-spending-hike-amid-nato-fearmongering-1116352362.html

{3} https://sputnikglobe.com/20240107/time-is-ripe-for-dollar-free-grain-trade-within-brics-1116027452.html

{4} https://sputnikglobe.com/20240101/us-pulls-back-aircraft-carrier-from-mediterranean—report-1115926634.html

{5} https://www.amazon.com/Raging-Twenties-Politics-Techno-Feudalism-COVID-19-ebook/dp/B08WHKK3XN/ref=sr_1_1?crid=3CJ90FSDOGDGK&keywords=Raging+Twenties&qid=1704277839&s=digital-text&sprefix=raging+twenties,digital-text,182&sr=1-1

Pepe Escobar: Five Variables Defining Our Future